【超短編小説】フキダシ

六井 象 作

 からっぽのフキダシを、両手で揉みながら、公園のベンチにおじいさんが、うつむいてこしかけている。

 もう何も言うことがなくなってしまった、かわいそうな、かわいそうな、おじいさん、少し長く生きすぎてしまって。

 しわだらけの掌の中で、フキダシが柔らかく崩れていく。
 遠くのベビーカーの中で、赤ん坊がけたたましい泣き声をあげる。

【超短編小説】フキダシ

【超短編小説】フキダシ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-06-22

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