夏に心許さない



三十度を優に超える平日の昼間

空調だって汗かいて臭い息吐いてるし

電車に充満するスプレーと汗臭い人熱

猿みたいな学生達がキーキー騒いでさ

人の間に虚しさを放り込んだ




夏だからって何もねえよ

ただ暑いだけで青い夏なんてない

青春みたいな夏は虚構だけ

だって春と夏は同居できないんだから

あいつら喧嘩しかしないんだぜ、笑えるよな

間に雨が仲介人で緩衝材




あいつも嫌いだ






僕はと言えば虫けらと同居して呆けて

陽炎立ち上るアスファルトでアイス食うんだ

こいつは僕の代わりに溶けてくれたんだ

ただいまって一人でつぶやいて

鳴かなくなった蝉を箒で掃いた






消耗した一夏の思い出とかいうフィクションで

漠然とヒーローみたいに世界を救った

世界を破壊する方が僕にとって勇者みたいなものだが

マイノリティはいつだって悪人だ

だから夏は英雄みたいに心を揺さぶるってさ





笑ってばっかりだ





笑ってばっかりだ





この夏笑ってばっかりだ






いつのまにか僕は一人暮らしで

馬鹿みたいに笑った顔を思い出した

この夏に中指立てながら

ビールの美味さくらいは認めてやった

夏に心許さない

夏に心許さない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-21

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