なつぞらダイバー 第11週 なつよ、アニメーターは君だ

別所高木

ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。

突然大雨に降られて、俺は、ムービーダイバーの店舗に駆け込んだ。

ちくしょう、天気予報では降水確率10パーセントだったのに、雨に降られてるなんて、運がないなぁ。。。

「いらっしゃいませ。あら、ずぶ濡れ!」
いつもの女性店員の声だ。
「いやぁ、参りました。天気予報を信じて、傘を持ってなかったから。。。 」
「ほんと、凄いことですよね。映画やドラマだったら、雨のシーンとか余計な費用が必要で、予算が厳しかったら入れたく無いのに、
自然ってタダで雨が降るんですもんね。」
俺はハンカチで顔を拭き、頭を拭き、グショグショになった、ハンカチを絞って、首を拭きいろいろ拭いているが、
女性店員は外を見ながら喋り続けた。
「雨が降るたびに思い出すんです。私、女優になりたいって夢があったんです。
私は雨の中で涙を流す演技に自信があったんですが、、、、
あの頃は景気が悪くて、予算カットするのは雨のシーンとか、ストーリーに必然のない雨はまず降ることはなかったんです。
それに、私は強烈な晴れ女だから、屋外のロケでも晴ればっかしで、、、」
いや、その売りが雨の中で涙を流すって、、、どうよ。。。。
それもかまわず、女性店員はしゃべり続けている。
「レースクイーンをやってる頃は、みんなに晴れるって喜ばれてたんですけどね。。。」
いろんな経歴があるもんだなぁ、、、、と納得しつつも、
そろそろ、接客してくれよ。。。。
俺の想いが通じたのか、女性店員はハッとした。
「申し訳ありません。自分の事ばっかりベラベラ喋っちゃって、、、」

「いえ、人それぞれいろんなスイッチがあるもんですね。ところで、今日もなつぞら。」
「今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
女性店員は興味深げに俺を見つめている。
「今日は、人形の家を見に行った、雪次郎の感想を聞きたいんですが、、、」
「雪次郎君の感想ですか、、、、ディープでマニアックな感じになりそうですが、大丈夫でしょうか?」
女性店員は心配そうに尋ねた。
「大丈夫です。雪次郎の想いの熱さが聞ければいいです。後でクレームつけたりしませんよ。」
女性店員は渋々承知して、俺をカプセルに案内してくれた。

「お客様、今回は雪次郎君が2回目の人形の家の公演におとづれた時にダイブします。
観客席に直接ダイブしますので、体裁としては公演を最初から見ている事になってます。
公演終了後雪次郎君と会話してください。」

カプセルに収まると、俺の視界は七色の光に包まれた。
しばらくして、七色の光が消えると、俺は観客席にいて、目の前では人形の家が始まった。

平たく大規模に端折ると、
人形の家はイプセンという作家が書いた作品。
ヘルメル(夫)とノラ(妻)という夫婦がいて、とっても愛妻家の家庭でした。
ある日、ノラさんの弱みを握っている、ヘルメルの部下が、ノラさんに便宜をはかって貰うようにお願い(恫喝?)に来ました。
いろいろ、やり取りはあるけど、結果的にノラさんは部下に便宜をはかることはできなかった。
部下大激怒!
ノラさんの弱みを書いて手紙をヘルメルさんに送付。
ヘルメルさん大激怒!
ノラさんめっちゃ怒られる。。。
しかし、いつもは優しいのに急にヘルメルさんが態度を豹変させるとはどう言うこっちゃ!?
ノラさん大激怒!(←自分の過去の誤ちは、忘却の彼方へ!)
ノラさんは家を出て行きました。
めでたし?めでたし???

カーテンコールも終わり、客席が明るくなった。
なんと、俺の右隣に雪次郎が涙を流しながら座っていた。
俺の視線を感じたのか、雪次郎は俺の方を見て、大きく驚いた。
「青函連絡船のおじさん!」
俺は青函連絡船ではないが、覚えていてくれたことは嬉しかった。
「お、君はバターせんべいの青年じゃないか。あれ、美味しかったよ。」
雪次郎は瞼をパチクリさせながら、あの後青函連絡船内を探したけど、見つからなかったこと。
東京で頑張っていればまた会えるかもしれないって思っていたことなどを語ってくれた。
ひとしきり、あれから後の話を語った後、人形の家について質問してきた。
「おじさん、人形の家どうでしたか?」
あまりにも大雑把な質問だ。
「うーん、人に聞く前に、君はどう思ったかな?」
雪次郎はジッと考えた。
「僕、この公演見るの2回目なんですが、前回見たときは亀山蘭子さん、あぁノラ役の人は、
家庭に閉じ込められて、自由のない、タイトル通り人形として扱われた事に対する怒りを表現した演技だったんです。
それが、今日は、今までの愛情が嘘で、騙されていた自分に対する怒りと、この家では愛情を得ることができない事に対する絶望が伝わってくるように思えました。」
雪次郎は慎重に言葉を選びながら語ってくれた。
「たしかに舞台は演者の気持ちで大きく変わってくるよね。私は、人間の生活で一番楽しいのは、家族の為に汗を流す事で、
男が一番愛している妻のために、自分が外で働き、人生の一番楽しい部分を妻に譲っているつもりだった。
でも、女性から見ると、外で働くことが楽しいことで、男だけが外で楽しんでるように思われていたことがショックだったよ。」
雪次郎は、俺の話をしっかり聞いてくれている。
「そういう見方もあるか、、、ぼく、ヘルメルの気持ちをしっかり考えてなかったかもしれません。
おじさんのおかげで、見方が広がりそうです。」
雪次郎としばらく談笑した。
「そうだ、おじさんに飴ちゃんあげます。」
雪次郎は笑顔で飴を差し出した。
俺はお礼を言って右手で飴を受け取った。
「君、若いのに、大阪のおばちゃんみたいだね。」
「え?大阪のおばちゃんって飴くれるんですか?」
そうだよ、飴のことを飴ちゃんって言うし、話しをしていると突然くれる人が多いんだ。」
へぇぇぇ雪次郎は感心している。

すると、背後で咲太郎の声がした。
「雪次郎、今日も来てたのか。」
雪次郎が視線を咲太郎の方に写した途端、俺の視界は虹色に包まれた。

気がつくと、俺はムービーダイバーのカプセルの中に戻っていた。
「お客様、いかがでしたか?」
女性店員が心配そうに見ている。
「ああ、大丈夫。雪次郎君は好青年だ。楽しかったよ。人形の家も初めて見ることができてよかった。
ずっと、風車の壁にポスターが貼ってあったから気になってたんだ。」
俺はカプセルから出ようとすると右手に違和感を感じた。

雪次郎の飴ちゃんだ。。。。。

なぜ?
ムービーダイバーではダイブした先の飲み食いしたものは、空想の筈だ。。。。

ムービーダイバーの店から出ようとすると、まだ雨が降っている。
雨だから飴?

だいぶ親父ギャグを抑えることができない齢になってきたようだ。。。。

なつぞらダイバー 第11週 なつよ、アニメーターは君だ

なつぞらダイバー 第11週 なつよ、アニメーターは君だ

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
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