J・G・バラードのバラード

J・G・バラードのバラード

   






 眼も舌も鱗もないのに、なぜわたしたちは夜の嗚咽に蝕まれる血脈しかないのだろう。まだ跳躍する弾力すら知らないのに。

 立体的に再現されてぶつ切りの断面で浮腫する虚。唇が始めに降伏する。図面どおりに裂かれていく顔、アーキテクト。8102ジュールの熱量で各部陳列される煉瓦影の少女。
 兵士不在のコールドゲーム。液晶がないから切開された脳幹を手に包んで10周の円環を撤収する爆心地II-4591。終わりも始まりもないから眼球だけで笑うエスプリ。

 痙攣する敵性語で無人を退場する彼や彼女。

 コクピット一つに覆われた魂が伝達される。どんな記憶を? どんなまぬけな哀しみを? 流刑の母体が入ったDNAコマンドが排泄するビンゴゲームになにを希う?

 最期になにが生き残る?

 眼を、唇を、焦がれた魂だけのわたしが、順調に繰り延べされるカタストロフィに気化した涙を吹く。




  

J・G・バラードのバラード

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

J・G・バラードのバラード

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-12

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