ミエナイ


 自動ドアが開いて、目をつむった人が杖をつく
その人は店内に少し入って、立ち止まった
レジを打ち終えた定員さんがその人に駆け寄って、導いた


学校帰り、僕は友達といつものコンビニでアイスを買って、食べながら、外からそれを見ていた



 「進路どーすっかなー」
友達の一人がぼそっとつぶやいた
車が出たり、入ったり、コンビニの駐車場のはじっこで
夏の時よりもちゃんと感じるアイスの冷たさが
少し凍みた


 「どーにかなるっしょー」
友達のもう一人が少し不安そうなのに、そう答えた


みえない、見えない、ミエナイ


なにがしたいとか、どうすべきとか、なにをしなきゃいけないとか


わからない、解らない、ワカラナイ


あー、コンビニの駐車場で
アイスを食べながら
僕らの進路は決まらないよなー


 「俺、大学受かる可能性あるって!」
遅れて来た友達が嬉しそうにそう言った
僕らの中で唯一、彼女がいる友達
でも、彼女は、もう、
僕だけ知っている

アイスの棒をしがみながら、思うようにいかない


 「俺カップラーメン買ってくる!」
「俺も食おっ」
そう言って友達三人はコンビニに入って行った
自動ドアが開いて、入れ違いに、さっきの人が出てきた
その人はビニール袋を杖を持ってないほうの手で握りしめ、目をつむって、少し笑っていた



バキッ



それをみていた僕の口の中で
僕にしか聞こえないぐらいの音をたてて
アイスの棒が折れた


 その人は少し歩いて、横断歩道を赤信号だけど、渡ろうとした
慌てて隣にいたおばちゃんがその人を止めた
その人は、会釈して、少し笑った

青信号になって、ゆっくりと歩いていく
その背中、その人



みえない、見える、ミエナイ



ゆっくりと遠のいていく
少し、オレンジのひかりに照されて



後ろから声がした


 「しゃーねえーからお前の分のラーメンも買ってやったぞ!」
コンビニから出てきて、嬉しそうな顔をしてそう言う友達の顔を見て

少し笑った

ミエナイ

ミエナイ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-11

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