The LOVE Legacy
このお話を読むにあたっての注意事項
①米印の箇所は、ト書きです。読まないように。
②米印のないカッコ内のセリフは、読んでください。(登場人物の気持ちを表したりしています。)
③このお話の男女比は、3:3です。
The LOVE Legacy
〔登場人物〕
男性:秀太(しゅうた)、孝一(こういち)、哲哉(てつや)
女性:香織(かおり)、真弓(まゆみ)、陽子(ようこ)
香織「ねぇ、秘密の話なんだけど。」
秀太「ん?どうした?香織。」
香織「実は、私、もうすぐ結婚するの。」
秀太「ほぉ、おめっとっさん。んで、相手はどちら様で?」
香織「とある有名な消防士の息子さん。彼も消防士で、真面目な方なの。周りからの評判も良くてね。」
秀太「なるほどね。
俺、祖父が消防士だから、どんな家庭になるのかは知っているし経験もあるから、わからないことがあれば、俺にでも聞いてくれ。」
香織「ありがとう、しゅうちゃん。」
(※しゅうちゃんとは、秀太のこと。)
秀太「このやりとりから3年ほど時が経ち、香織は、その方と無事にゴールイン。
旦那が消防士だということで、あまり彼は家にいることはないよ、と助言をしておいた。実際、そうだからね。電話一本で、すぐに現場に急行することになるんだから。
それでも彼女は覚悟が出来ていた。あの時、2人で話をしたように。」
哲哉「なぁ、秀太。」
秀太「ん?何??」
哲哉「そう言えばだけど、お前は、結婚願望とかあるの?彼女がいないってことで、お前は有名だけど。」
秀太「変なことで俺を有名にしてほしくはないな。
確かに、香織は人妻(ひとづま)になったし、お前も、奥さんに子供と、家庭をもっている。家に帰れば、安らぎの空間がある。
その一方で、俺は、1人暮らしで何とか遣り繰り(やりくり)しているさ。チーフマネージャーとしての仕事を、エリア店長ながらやっているし、さらに、その上の仕事も目指している。休みも、ほぼない。俺の目指しているのは人事部でね。今のままでもいいけど、ちょっとだけ、変えたいところがあるからね。それをしたいがために、徐々に、上の方のランクの仕事をしているってわけだ。」
哲哉「お前は、真面目だけが取り柄(とりえ)みたいなもんだからな。
休日も、ほぼ100%返上して仕事をしているんだろ?
俺、知っているぜ?お前の有給取得率は、0%。どころか、マイナスになっているそうだな。一体、どんなことをしたら、有給取得率をマイナス表示にできるんだよ?逆に知りたいくらいだわ。
実際、どれくらあるの?使用可能な休日数って。
秀太「取得可能な俺の休日数?
そうだな…。ざっと見積もって、“4カ月分”くらいはあるな。通常の休日を、この方、一度も使ったことがなく、タダ働きばっかりしているからね。」
真弓「それで、ついに、人事部から警告を喰らったんでしょ?
『いい加減、休暇をとれ』って。」
秀太「真弓。その通りだ。」
真弓「あんた、馬鹿じゃないの?
私だって、アンタみたいな馬鹿が、今日までの5年間、一度も休まずに、ぶっ続けで働くことが出来るわけを知りたいくらいだわ。」
秀太「あ、アハハ…。」
哲哉「(…オイ、秀太。ここは、笑ってごまかすシーンじゃねえぞ。)」
真弓「そろそろ、休暇を使用しないと、上から、ペナルティーが科(か)されるわよ?
例えば、“減給処分”とか。」
秀太「はぁ?!なんでそれだけで減給されなきゃならねぇんだよ?!おかしいだろ!!」
哲哉「じゃあさ、秀太。お前に1つ質問な。」
秀太「あぁ、いいとも。」
真弓「アンタ、今日までで使用できた休暇日数って、どれくらいなの?」
秀太「累計で、いいのかな?」
真弓「そうね。それで答えて。」
秀太「ざっと、“1年以上”かな?400日くらいはあると思うよ。」
哲哉「www」
真弓「でしょうね。
アンタ、やっぱり自覚があるじゃない。」
秀太「言われなくても、先輩や通達で、それくらいのことは把握しますから。」
哲哉「だからだよ。」
秀太「哲哉。一体、何の話だ?」
哲哉「お前が、ずっと独身でいる理由。」
真弓「アンタ、やっぱり、鈍感なのね。」
秀太「???」
哲哉「お前は、“真面目すぎて、女性が近づきにくいんだ”よ。
何て言えばいいかなぁ?『俺には、近づかないでくれ。何がなんでもな!』って感じのオーラが出まくり。そりゃ近づきたくもないわな。男としても、流石に、避けたくなるね。」
真弓「仕事のことに熱心すぎて、周りのことが疎か(おろそか)になっているのよ。
そりゃ、一週間以上の連泊(れんぱく)でもしていたら、おかしくはなるわよ。」
哲哉「マジで、一度休め。冗談抜きで。」
秀太「一体、何のはn…」
(※バタリっ)
真弓「あ…」
哲哉「ほら、言わんこっちゃない。」
(※哲哉が119番通報。真弓が、介抱に当たる。)
秀太「…ん?こ、ここは??」
孝一「ようやく、目が覚めたか。」
秀太「…ん?あ、貴方は?」
孝一「お前、よっぽど疲れていたんだな。
私だ。伊藤孝一(いとうこういち)だ。」
秀太「…あ、孝一さん。お、お疲れ様です…。」
孝一「これでわかっただろ?休みもなくひっきりなしに働き続けるとどうなるのか。
お前、1年くらいだっけか?連続で24時間勤務をしていたな。入浴の時間くらいは用意してはいたが、あまり意味はなかったもんな。
『先輩。本当に湯船につかった、という実感が湧(わ)きません。』なんて口にしていたもんな。これでわかったろ?」
秀太「…あ、早く職場に戻らないと…。私がいないと、店が回らない…。」
孝一「秀太よ。病院の抜け駆け(ぬけがけ)は許さないぞ。
安心しろ。店は、他店からの応援で何とか出来ている。それに、来週には、シェイクアップが行われる。そこで、お前は、“人事部”に異動することとなる。念願のところに行けるようになるからな。それに、きっちりと休めるようになるから。な?」
秀太「主任…!」
孝一「とりあえず、休め。いいな?」
秀太「はい。」
(※秀太は、無事に退院。そして、人事課へと配属。あの時の反省を踏まえ、きちんと休暇を消費することと、定時出勤・定時退勤を心がけるようになった。)
孝一「秀太。お前、やればできるじゃないか。」
秀太「あの時まで、狂ったように働いていたことで、多少のことは学べました。」
孝一「“命”に関しては。だろ?」
秀太「アハハ」
(※2人が話をしていると、1人の女性社員が。)
陽子「秀太さん、孝一さん。コーヒーをどうぞ。」
秀太「おう、ありがとう。」
陽子「うふふ。」
孝一「いつもすまないね。」
陽子「ここ最近、秀太さんがこの課に慣れてきたようで、ニコニコとしている姿を見て、なんだか、嬉しいのです。」
秀太「ありがとうございます、陽子さん。
慣れたことで、安心感が出来てきたのかもしれません。」
陽子「なんだか、秀太さんが笑顔でいると、『私、もっと頑張らないと!』って思えるんです。
そして、逆に、秀太さんのご機嫌が斜め(ななめ)だったり、体調がおかしかったりすると、心配してしますのです。」
秀太「陽子さん…。」
陽子「あの、秀太さん。今日の勤務後、時間、ありますか?
あれば、一緒に食事に行きたいなと。」
秀太「えぇ、喜んで。丁度、誰かと一緒に食事に行きたいなと思っていたところだったので。私でよろしければ。」
陽子「はい!ありがとうございます!」
孝一「良かったな、秀太。
“将来のお嫁さん”との食事だ、ってねぇ。」
秀太「主任。変な茶々(ちゃちゃ)を入れないでください!」
陽子「うふふw」
(※そして、秀太と陽子は、勤務後、近くの居酒屋へ。)
秀太「陽子さん、乾杯♪」
陽子「乾杯♪」
秀太「陽子さんと一緒に食事が出来て、幸せです。」
陽子「私も、秀太さんと2人でいられて幸せです。」
秀太「私、時々思うことがあるのです。」
陽子「何ですか?」
秀太「陽子さんの手作りお弁当を見ていると、私も、それを食べたいなぁ、って思うんです。
もし、口に出来たら、どれだけ幸せになれて、午後も頑張れるんだろうか、って。」
陽子「そういう秀太さんも、料理上手じゃないですか!お部屋もキレイ
ですし。」
秀太「いやいや、そんなことはないですよ。」
陽子「そんなことないですよ!私なんて、料理が上手くても、家事が下手で…。」
秀太「そんなことないですよ!いい奥さんになれますって!
私と付き合ってください!!」
陽子「こんな私でよろしければ、是非。」
秀太「よしっ!」
陽子「可愛いお方(かた)♡」
(※その後、秀太と陽子がゴールイン。)
陽子「あなた。今日も、お疲れ様でした。」
秀太「あぁ、ありがとう。」
陽子「最近、本を書いているようね。何を書いているのかしら?」
秀太「キミとの、出会いのお話さ。ほら、これを読んでほしい。書きかけだけどね。」
(※陽子が、渡された本を読む。)
陽子「うふふ♡
確かに、私たちのなれそめをまとめてありますね。」
秀太「だろ?
高校生ぐらいのときに、一時(いっとき)、こういったお話を、無性に(むしょうに)作りたくなった時があってね。あくまで、趣味の1つさ。」
陽子「改めて思い返すと、素敵な物語ね。」
秀太「そうだな。」
秀太「そんなこんなで、ふと思い付いて、ごく自然に筆を執った。」
END
The LOVE Legacy
訂正情報
・7月19日(金) 権利情報を変更。