再びの世界

朽木 裕

‪ ある晴れた日のことだった。乳白色の世界は淡く揺れる。樹々の緑は眩いばかりのひかりを浴びてきらきらと輝いてみえる。わたくしの網膜がそういう世界の像を結んでいく。ゆっくりゆっくりと白い蛇のような、わたくしのよすが、であった包帯を解いていく。身体中に巻かれた包帯を解いてしまっても、わたくしの輪郭は此の世にきちんと存在するかしら。きゅ、と知らず下唇を噛んで足元を見詰める。随分と長い間、ひかりを失っていた世界の照準器は、正確に機能するまで多少なりとも時間を要したのだけれど。足。わたくしの足はきちんと二本、揃えられていた。裸足で細かな傷が沢山ついている、わたくしが地面に立つ為のそれ。薄汚れた木綿のワンピースが次いで視界に入る。くしゃりと裾を握った、その手の包帯も全て解いていく。しゃらん、と絹糸が鳴るようにびゅう、と風が吹いて。長い白蛇は空へと舞い上がる。目が追いかけて、ひかりの眩しさに息切れしてしまう。もう一度、強く目を瞑る。そうして10数えてからわたくしはもう一度乳白色の世界に向き合う。綺麗なばかりではないと骨身にしみて感じたけれど、あの人はわたくしに呪いをかけたのではなかった。あの人なりの愛情だったのだと、今では分かる。信じてもいいですか。再びの世界。信じてもいいですか。

再びの世界

再びの世界

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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