しろくまさんが恋人

 レアチーズケーキを、つくってくれた、となりの部屋の、しろくまさんが、わたしの部屋に、あたりまえみたいに、いて、丸くて、白くて、冷たい、レアチーズケーキを、ていねいに、きれいに、切り分けてくれました。しろくまさんは、わたしを、どろどろに、甘やかしてくれるひとで、わたしも、しろくまさんのことを、とても、たいせつに思っていて、両親には、まだ、言ってないけれど、いつか、しろくまさんと、結婚したい。しろくまさんの、からだをおおう、毛は、ほんとうは、透明なんですよ。顔を寄せて、間近で、しろくまさんの毛を見ると、照明を浴びて、きらきらしています。しろくまさんの得意料理は、キーマカレーと、レアチーズケーキで、わたしの好きな、食べ物でもあって、しろくまさんが、夕食に、キーマカレーと、レアチーズケーキを、つくってくれた日は、そのときは、世界でいちばん、幸せな気持ちになれます。ときどき、乱暴に、大きな手と、爪で、自由をうばわれたり、腕が、もげそうになるくらいの力で、おさえつけられた瞬間の、痛いのと、興奮するのとで、あたまがおかしくなりそうな感じが、好きです。でも、しろくまさんの、わたしに対する、とろけそうなほどの、溺愛(と、自分で言うのも、なんですが)っぷりには、もっと、あたまが、おかしくなりそう。しろくまさんからは、ふしぎなにおいがするので、もしかしたら、それって、北極のにおいかもしれません。あの、おおきなからだに、のしかかられたら、さいご、わたしはもう、しろくまさんなしでは、生きていけないのです。

しろくまさんが恋人

しろくまさんが恋人

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-05

CC BY-NC-ND
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