『僕の人生が変わった日』

『僕の人生が変わった日』

今からちょうど10年前。僕の人生が変わった日だ。
いつものように今日も僕はみんなからいじめられる。「汚い、近づかないで」「うわ〜笑笑まじでキモイ笑笑」「なんでアイツあんなにキモイの笑笑」「みんなに嫌われてるよな笑笑「まじでアイツ同じ人間だとか思えない笑笑」そんな罵声が聞こえてくる。自分は自分。他人は他人。そう自分に言い聞かせているけれど、やっぱりものすごく胸が締め付けられる。悲しい。寂しい。怒り。この3つの感情が心を支配する。もう誰も信じられない。信じたくない。信じたって意味がない。裏切られるだけ。傷つくだけ。いじめられるだけ。僕の心にもう光などなかった。まるで深い闇の底。海の奥深くのように。そんなある時。僕の目の前に現れた出来事があった。
「ねぇ!友達になってくれない?!」そんな言葉を言ったのは同じクラスの中心的人物の女の子だった。
少し恥ずかしそうに。はにかみながらも、その目は真剣で僕をとらえて離さなかった。ひとつも嘘を感じられなかった。どうしてだろう?僕は人を信じられないのに。信じたくないのに。その子の言葉を受け入れてしまっていた。
「うん。僕で……いい…なら…。」
そう言うとその子はとても嬉しそうに「ありがとう!」と、太陽のような、ひまわりのような笑顔で言った。
僕は彼女とならすごく楽しい日々を送れるかも。と思う反面、いや。あの言葉は嘘だ。僕と友達になんてなりたいわけないじゃないか。と思っていた。彼女のことを分かりもしないで。分かっていれば僕は今も彼女と楽しい日々を送れていただろう。
「ねぇ、どうしてあのキモ男と友達になったの?」「やめときなよあんなやつ」「うわぁー!なんで話しかけたの?!」
先程も言ったが、彼女はクラスの中心的人物。だから周りが僕と彼女が友達になるのを許さないみたいだった。それでも彼女は「いいから〜!笑笑私が友達になりたいの!笑笑」そう言った。僕にはなぜ彼女が僕と友達になりたいのか。理解ができなかった。それから1週間。僕と彼女はものすごい勢いで仲良くなった。共通の趣味を発見したり。2人で遊びに行ったり。ある時僕は聞いたことがある。「なんで僕と友達になったの?」と。彼女は「友達になりたかったから!」とだけ言って、それ以上はなにも言わなかった。
そして、ある時事件が起こる。
彼女が自殺で亡くなったと言うのだ。
僕は泣かなかった。いや。泣けなかった。現実が受け止められなかった。信じられなかったんだ。今まで近くにいたのに。どうしていきなり。もしかして僕と関わったから?僕のせいかもしれない。いや、かもじゃない。僕のせいだ!!僕が彼女と友達になったから!!僕が彼女と楽しい時間を過ごしたから!!……もう……僕も死んでしまおう。そう、本気で思った。でも、できなかったんだ……。死んだら彼女と過ごした日々を忘れてしまう。そんなの嫌だ!!
彼女が亡くなった日。僕は彼女から手紙が来ていた。けれど読まずにもう10年。僕はいつまで彼女を引きずっているんだろうか。もういい加減に区切りを付けないといけない。僕のせいで彼女が死んだというのなら僕は一生をかけて償おう。そして、手紙を開くとそこには予想外の言葉が書かれていた。「これを君が読んでいると言うことは私はもうこの世にいないと言うことだね。私が今から言うことを受け止めて。そして君は前を向いてこれからの人生を楽しく歩んで欲しい。まず、君のことだから私が死んだのは僕のせいだとか思ってるだろうね。けど違うよ。私、実はいじめられてた。クラスの中心的人物みたいにみられるけどそれは表。裏ではみんなして私をいじめて楽しんでたの。でもそれももう限界だったんだ。私は死のうと思ったの。確実に決意は固まって無かったけど。でね、最後くらいは楽しみたいなって。そこで、いじめられてしまっている君とならよき友達として。私を分かってくれて一緒に楽しく遊べるんじゃないかと思って君に声をかけた。君に、私がいじめられていることを告げようとしたんだけど無理だった。君といるのが予想以上に楽しくて。暗い話をするよりも楽しい時間を過ごしたいと思ったから。でもね、日に日に私に対してのいじめはひどくなっていった。ついに私は耐えられなくなって本気で死ぬ決意をしたの。だからこの手紙を書いたんだよ。私が言いたいことはね、私が死んだのは君のせいじゃないって事。それから、生きるって素晴らしいって事。これは私が言っても説得力ないね笑笑あと、人を信じるってとても簡単なようで難しい。けどね、少しずつでいいから私に心を開いてくれたみたいに。私を信じてくれたように。周りの人の事も信じてみて。最後に、短い間だったけどものすごく楽しかった!君と出会えてよかったよ!!ありがとう!君はこれからも、楽しい人生を。辛いことも悲しいこともたくさんあるけどそれを乗り越えたらきっといい事があるよ。だから前を向いて。後悔しない選択をして。私は君を見守ってるよ!応援してるよ!!だから頑張れ!!」僕は涙が止まらなかった。なぜ彼女をもっと分かってあげられなかったのだろう。早く気づいていればよかった。そんなことを思ってももう遅い。僕に彼女のために出来ることは「今」を後悔しないように前を向いて、人を信じ、楽しく生き、命を精一杯に感じること。僕は君の事を忘れないよ。僕に、人間として最も大切な感情をくれた君を。これからもずっと。

みなさんは持っていますか?
「悲しい」「辛い」「寂しい」「怒り」「恨み」「嫉妬」「喜び」「楽しい」「嬉しい」「信じる」「大切」そんな感情たちを。
感情を見捨てないで。しっかりと感情を理解して。そして身の回りで助けを必要としている人がいたら迷わず手を差し伸べて。僕らはみんな1人じゃ生きていけない。誰もが誰かの力を借りて生きてる。忘れないで。誰もが正解ばかりを選択できるわけじゃない。時には不正解な選択をしてしまうかもしれない。でも正解も不正解もどちらも本当は存在しないのかもしれない。前を向いて自分らしく。命の大切さを知って楽しく生きられればそれでいい。今日も命があることにありがとう。

『僕の人生が変わった日』

『僕の人生が変わった日』

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-18

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