真夜中にメロンソーダを飲む会

あおい はる 作

 真夜中にメロンソーダを飲む会は、きょうもきみを中心に動いているが、会員はふたり、ぼくときみのふたりで深夜二時のファミリーレストラン、ドリンクバーのメロンソーダをひたすら飲んでいる、という現実に感じるちょっとした虚しさ。フライドポテトくらい、おかわりしてもよろしいか。
 深夜のファミレスの店員が、みんなテンション高かったらおもしろいよね。
 もうすでに何杯目か、把握できないほどメロンソーダを飲んでいる、真夜中にメロンソーダを飲む会を設立した会長であるきみが、おもしろそうに言う。深夜のファミレスの店員というのは、深夜、という時間帯を考慮しての、あのようなローテンションなのだろうと思うが、いや、単に眠いだけ、ということもあるよなと考えながら、もはやメロンソーダの透明なグラスのなかで透明な氷と揺れるメロンソーダの色に視覚を侵されて、きみすらもメロンソーダに見えてくる。
 ときどき、眠気が襲ってくるのだけれど、どうしたものか。
 コーヒーでも飲めば目が冴えるか、とも思うが、なんせきょうは、真夜中にメロンソーダを飲む会、の名のもとに集まっているので、ここでぼくがメロンソーダではない飲み物を飲んだら、きみに酷く怒られそうだ。ドリンクバーのメロンソーダは、あとどのくらいで尽きるだろう。そろそろ肌がメロンソーダの色に染まってもおかしくはない。けれども、メロンソーダを一杯一杯、実に楽しそうに飲んでいるきみを眺めているこの時間も、嫌いではないのだ。
(メロンソーダで、ゲシュタルト崩壊)
 店員も、いい加減こう思っているかもしれない。あの客、メロンソーダばっかり飲んでんな。空いている皿をおさげしますとフライドポテトの皿を回収に来たあと、誰一人としてやってこない店員。
 テーブルをふたつ挟んで、一組のカップルがパンケーキを食べている。高級レストランにいるような洋装の、うつくしいカップルである。女の人の方が大きく切り分けたパンケーキを、大きく開けた口のなかに次々とつめこんでゆく。白いティーカップの似合う男の人の方が、彼女を見つめながら微笑んでいる。
「しあわせそうだね」
と、しみじみと言ってきみが、残り少ないグラスのなかのメロンソーダを、ストローでずずずと啜った。
 ぼくもパンケーキ頼んでいい?
 そうたずねたら、きみは、もちろん、と笑った。
 そんな夜だ。

真夜中にメロンソーダを飲む会

真夜中にメロンソーダを飲む会

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-02-06

CC BY-NC-ND
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