0時の子は眠る。




0時の子が眠る。
両の手はまだ冷たくて
温もりを知らない。
父さんと母さんが
生まれてきた話では
隙間風が埋まらない。







フクロウさん
今何時?
今宵は何処で
鳴き声捨てる?







枯葉を壊した季節の変わり目。
冬を見越すと寒くなった。
森の中を歩いてくる
泥棒さん。
泥棒さん。
リスは寝返った。
木々は震える。
月は遠い。
思うよりも。







優れた毛布は
抜かりない。
ただ
長さと幅が足りないだけで
優れた毛布は
抜かりない。
何ひとつ,
抜かりない。







フクロウさん
今何時?
今宵は何処で
鳴き声捨てる?







馬車は急いで真夜中を行く。
事情を知らないから不吉とできない。
向こう三軒の両隣,
花屋さんは閉まってる。
ブーゲンビリアは冬を越えられるか。
ヒイラギは身を整えているか。
聞く時間というものがあって
答えに適した頃合いがある。
花の質問者は懐に仕舞う。
繰り返して温める。







ブーゲンビリアは冬を越えられるか。
ヒイラギは身を整えているか。







花の質問者は懐に仕舞って,
馬車は急いで真夜中を行く。







フクロウさん
今何時?
今宵は何処で
声を鳴かせた?







埋められた木の実は数知れず
眠り始めたのが最後として
春の予定の運命辿る。
手折ることできる茎は幹になって
月と重なる葉を身につける。
抱っこしてとせがまれたら,
一緒になって背を伸ばす。
綺麗な影である。
もう想像つく。



綺麗な影である。
もう想像つく。







フクロウさん
今何時?
今宵は何処で
鳴いていた?







木霊する声は
ドアーを叩くよ。
開けたら智恵の
星が訪れる。







小説家と暇してる
犬と珈琲は無為に過ごす。
苦味に堪える万年筆は
眠れる子供のためを思う。
名作集はこうして生まれて







0時の子は瞼を動かす。
体を揺すって
むずがりゆく。
絹の寝間着が
ようやく擦れて







ぎしっとする寝床。
これは木。
ピュイっとなる。
これは口笛。
良い匂いがするね。
これらは何だろう。






母さんの髪。
これが癖毛で,
父さんのメガネ。
牛乳の 瓶のよう。
良い匂いがするね。
これらは。
何だろう。
何なんだろう。







芽を出したドングリは
お話が好きで,
暇してる小説家に
話をして暇を埋め,
犬は気付いて女の子と
これからの
はなしして







誕生日を祝う質問者は
向こう三軒両隣で花を買う。
あの子が好きなものだけで
作るのも
たまには良いと







隙間風に慄いた
父と母は落ち着いて,
綺麗な月を眺める。
梟の声を待つ。







瞼を閉じた0時の子。
両の手はまだ冷たい。
温もりは
知ったばかり。
寝間着は
落ち着いたばかり。






隙間風はまた吹き,
父さんと母さんは
何度でも
何度でも
生まれた話する。
宵に月も昇る。
春の予定に運命も乗る。
繰り返し。







0時の子はまた眠る。
0時の子はまた眠る。







ホーホーと。
ホーホーと。







フクロウさん。
今何時?
今宵も月は
綺麗ですか?







フクロウさん。
今何時?







今宵も遠くて
月は綺麗ですか?

0時の子は眠る。

0時の子は眠る。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-08

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