黒歴史
〜〇side〜
2015年ライブツアーも終盤。
久々に立つことができた東京ドームという目標にしてきた舞台も、しみじみと思う間もなく最終公演まで来てしまった。
そんな感慨に浸りかけていたMCで突然わけのわからない遊びが始まってしまう。
所謂「キス顔披露」というものだ。
家でバンバンジーを作っている女の子に後ろからハグしてキスをする、というシチュエーションの話がいつの間にか進んでいく。
あ、これきた、まっすーワールド…
無論、俺はそんなキス顔披露なんて気恥ずかしいことはしたくない。が、、
▽「あ、じゃあシゲ、バンバンジーの女の子やってよ。小山がキス顔やるから」
〇「バンバンジーの女の子俺!!!???」
まてまてまてまて…それは尚更恥ずかしいじゃん…だって。
〇「だってそれチュー…チュ…」
小山にチューされるってことだ…
□▽「「ふはははははははwwwww」」
何を喜んでいるんだ…ハイタッチなんかしやがって…!!
気恥ずかしさを治めるために歩き回ってみるが、一向に治まりはしない…そりゃそうだ。
▽「あ、じゃあ俺やるよ〜?」
□「俺がやる!!」
♡「俺やる俺やる俺やる!」
〇「じゃあ…おれが…」
▽□♡「どーぞどーぞ」
あぁ!!みんなしてシゲをいじめて!!!
○「バンバンジーの女の子ってなんだよ!!!!バンバンジーの女の子って!!!!!!!」
声を荒らげてみるがこれも無効。心臓は自分の耳に届くまでその音を激しくしている。
▽「あ、じゃあそんなこというなら俺バンバンジーやりまぁす」
何を呑気に…え、あ、バンバンジーやるの??
▽「ぐるっとまとめて、バンバンジー。」
あ、あぁそう…あれ、手越は?
♡「おれBGM。 プツカッ プツカッ」
もう逃げ場がない…
□「俺さぁ、ゴールはどこにチューしたらいいの?」
よくぞ聞いてくれました!!聖母コヤマ様!!
♡「それは考えてさ、、」
ニヤニヤする手越。
□「あ、そうなの??」
一緒になってニヤニヤし始める小山。
唯一の助け舟が…
まあいいや、どうせ小山が5万人の前で俺にキスしてくる筈はない。俺はこの場を凌ぐことだけ考えていよう。感情は、捨てる。
一応女の子らしく??は、しとくか
〇「けえちゃん♡け〜ちゃん♡」
キャァァァ!!!!!
ファンが湧いているのが聞こえる…はずい///
〇「けぇちゃん♡今日はぁ、やっぱり疲れてると思うからぁ、、」
首をこてん、とかやってみてる。俺まじいくつ?
〇「バンバンジー作ったよほらヘルシーだし。きゅうりも一生懸命千切りにしたの。けえちゃんどこ行くの?」
ここで手越がライ〇ップのボイパを始めた。
あーあーまたこいつはふざけて…って、え?
後ろから腰のあたりに何か硬いものが当たってる気が…
マイクを置いて俺の首に腕を回した小山の唇が耳朶に触れる。
シゲちゃん…タッチャッタ、、、
は…?はぁぁぁぁ?
なに盛ってんだよ!?
そう言おうとしたが、小山がわざとなのか後ろにバランスを崩して俺は小山の股の間に挟まれる形となってしまった。
そのまま頭はズルズルと小山の左胸までずり下がっていき、、何事かと小山を仰ぎみると
『なに?煽ってるの?ちゅーして欲しいんだ、そんな目して。』
マイクを通すことなく言い放った小山は完全に雄の目をしていた。
〇「いや、違くて、ねえっこやま?」
欲情した瞳に俺の言葉は届かない。俺の顎を上に持ち上げ顔を近づけた。
ねえ、だめだって…やめようこやま、
そんな言葉は既に小山の唇で抑えられ、発することはできなかった。
啄むような優しいキス。クチュ…と名残惜しむように離れていった10cm先の唇を、小山の襟足に右手を滑り込ませて今度は自分から奪いに行く。
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ファン5万人分の悲鳴に近い叫び声が聞こえる。ああ、今日は円盤のためのカメラが入ってるんだった。取材のカメラも。今この瞬間に確立してしまった。俺らの黒歴史。
あれから4年が経とうとする今でさえ、語り継がれる伝説にも似たMCだったのである。
黒歴史