繻子の一線

雪の降る街を眺める。
こうしていると、幻想の中で境界を失った物質になれたような気がする。

例えばの話、私が今居る場所が崩れて無くなった時のことを想う。
例えばの話、私が今居る場所に全ての草花が栄える時のことを想う。

そうしていると、自分というものがただ一筋の雨だれの、透明な、糸のような物に思えてくる。

鈴の音の甘やかさに似た、一筋の。

繻子の一線

繻子の一線

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-01-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted