母のカレーは嫌いだった

沙山 雪 作

カレーの匂いが漂う前から確かに予感がし

胃がきりきりと音を立て痛み子供の私は

敏感に過剰に母を嫌悪し哀しくて

鉛筆は芯が平らになるまでぐるぐると

意味もなく歪な円を書き殴り

持ち手にいくつもの歯型をつけた

子供の私は意味は知らずとも

母のカレーライス不機嫌の象徴だった

愛しい母の微妙な隙間を見てしまったようで

母は母ではなく一体何者なのだろうと

戸惑いと苛立ちの狭間で揺れていた


私の作るカレーに少女は上機嫌になる

母のとは全く違う味のカレーを作る度に

あの日の不可解で不機嫌な母を思い出す

母のカレーは嫌いだった

母のカレーは嫌いだった

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-01-02

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