雪上に霜を加う

思いがけず、あの人に会えた。
およそ三ヶ月ぶりやったかな。

なるべく会わんようにしとったのに、どんどん降り積もる今日の雪みたいに、知らず知らず好きの気持ちは積もっとったみたい。

顔をまともに見るのに時間がかかった。

あの人の髪は少し伸びとった。切りに行く時間がないほど忙しくしとったんかな。

笑顔は変わらず優しかった。

年末年始のことを少し話した。
こっちの予定を聞かれて話したけど、向こうの予定は聞けへんかった。
聞いた方が自然やったかもしれん。でも、聞きたくなかった。奥さんや子供との話題になったらややなーと、心の隅で思ってまって。

起きたらやけに外は静かで、景色が白っぽかった。
雪のせい。今季初の積雪。
積もるはずのなかった雪。

窓の外は静かで、冷ややかで、寂しげで、空虚。
見つめたくもなかったこの心そのものを見せつけられとるかのよう。

想うだけで満たされたらいいのに。
関わる時間がもっとほしい。
同じ気持ちになりたい。
触れたい、触れられたい、そう思ってまう。
叶いっこないのに。

このまま、時間、止まらんかな。
あの人と会う度、願ってまう。

雪解けと共に、この気持ちも穏やかに溶けてまえばいいのに。
粉雪みたいに綺麗すぎて、あの人そのものが、とても眩しい。

雪上に霜を加う

雪上に霜を加う

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-29

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