すき焼き

涙がこぼれないように見上げながら歩けるのは夢のなかだけの話で、
一粒でも大袈裟な涙が溢れるよう
悲しみの練習を繰り返す罪悪感。


しあわせは星の影にも雲の中にもなくて
あたしの目に止まるところで大手を振って主張しては消えていく。

豆腐の角にアタマをぶつけていられるほどヒマじゃないけど
煮込み過ぎて固くなる牛肉には懲り懲りで。

生卵のキミの滑りけですら
拭いきれない宿命のような気がして辟易。


上を向いて歩こう、涙がこぼれないように。
ひとりぼっちの夜に寄せて。

すき焼き

すき焼き

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-06

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