第9病棟

綺麗なものを壊したい

君の知らない言葉が僕の脳裏に焼き付いて

君の知らない部屋で一夜の寝言が聞こえた

囁いた 叫んだ 醜いほどに










薄汚れた僕の清廉さは置いてきた

今までの世界に背を向けて

終着点は廃屋に成り果てたあの家だ

故郷と呼ぶには忌々しい言葉の羅列

人は既に林檎を口にしているのだから
















       昨日何をしていたっけ?

     引き出しの糸 吊られたベルト

   半透明に煌めくおぞましい床は語らない

     玩具のレジスター 人形 絵本

       僕は何をしたんだろう?

















          薄汚れた虚構は置いていこう

            暖かい家庭を目前にして

       生まれる場所は燦然と輝くこの家だ

      故郷と呼ぶために費やした言葉の羅列

         僕は既に、口を縫い合わせた。
















            個人になる前に戻りたい

      僕の知らない言葉が水の奥から響いて

      僕の知らない部屋で二百八十夜の幸せ

        暗くて 暖かい 愛おしいほどに

第9病棟

第9病棟

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-02

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