死にたい男と昼寝したい女 (1:1)

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①男女 2人芝居 

女「ふわーあっと、ここでいいか」

男「……あの……」

女「……」

男「あの、すみません……?」

女「……何、今から昼寝するから忙しいんだけど?」

男「いや、あの、屋上でですか?」

女「そうだけど、文句ある? あんたこそ何してんの?」

男「いや、その……空気で察して欲しいというか」

女「あー! あれね、うん、わかった、どうぞ」

男「いや、ちょっと待って下さいよ! 寝ないでください」

女「なんで、気にしないでやっていいよ? どうぞ」

男「いや、そのやりにくいというか……」

女「なに、もしかして止めて欲しかった?」

男「いや、そういうわけじゃない、ですけど、その、なんというか……」

女「あ、そうか! しかたないなー、やれやれ、じゃあいくよ? 3 2 1 はい!」

男「っていけるわけないでしょ!」

女「そうだ忘れてた! 死ぬ前に一つだけいい?」

男「な、なんでしょうか?」

女「臓器提供の意思表示ちゃんとやった?? あの免許証の裏とかに○つける奴! まだならちゃんと付けようよ!」

男「い、いやですよ、そんな……」

女「なんで? 死ぬんだから臓器いらないでしょ? あげちゃえばいいじゃん」

男「いやいや、いやですよ! その死んでいるとはいえ、その……だいたいあなたに関係ないでしょう? なんで僕の臓器を提供させたがるんですか!」

女「いやだって、なんかもったいなくない? あ、まだ使えるのに!みたいな。まだ残ってる歯磨き粉捨てちゃった的な?」

男「いやいや、歯磨き粉と僕の体を一緒にしないでください!」

女「その体捨てようとしてなかった?」

男「えっと、それは……」

女「つうわけで、○つけよう! 免許証は財布の中?」

男「ちょちょ、勝手に取らないでください! つけませんてば!」

女「なんだ、じゃあ臓器も提供せずに死ぬわけ? まあいいや、じゃ私違うところで寝るから、私が居なくなってからやってくれる?」

男「いや、ちょっと待ってください!」

女「なんで」

男「いや、なんでって……」

女「……もしかして、死ぬ理由を聞いて欲しいとか?」

男「いや、そういうわけじゃ……」

女「聞いて欲しくないのね?」

男「いや、そういわけじゃ……」

女「ああもうイライラする! どっちなの!?」

男「すみませーーーん!! 聞いてください!!!」

女「……はあ、もう、しょうがないな……ものすごく興味ないから、しぶしぶ聞くけど『なんで死にたいの?』」

男「……そ、それは」

女「まさか振られたから、とか」

男「う……」

女「うわー図星かー、死ぬ理由、あさーい、うすーい……」

男「そんなことありません、僕は、僕は本気で好きだったんです! 結婚だって考えていたんです! なのに、なのに……」

女「ふーん、彼女?」

男「はい、高校生のときから付き合った始めての彼女で、すごく可愛くて。大事にしてたつもりでした。何でも話して、どんなことも一緒に乗り越えてきたのに、イケメンの同期に紹介したらあっさりと、運命を感じた、とかなんとか……今までなんだったんだろうって思ったら……なんだかすべてがばかばかしくなって」

女「そっか……」

男「……はい」

女「何を信じていいかわからなくなった的な」

男「そうそうなんです!」

女「じゃ、しょうがないね。やれば?」

男「ちょっと待ってください止めないんですか」

女「だってあんた死ぬ気ないじゃん」

男「う……」

女「しょうがないじゃん。それでも生きていくしかないんだよ。あんただってわかってるでしょ?」

男「それは……」

女「それでもどうしても死にたいなら、どうぞ。ものすごく嫌だけどここで見ててあげるわよ。ほら早く」

男「や、それは……」

女「行くの? 行かないの?」

男「行きません……」

女「ふうん、そう。いいんじゃないそれで」

男「あの、ありがとうございます。あなたは命の恩人です」

女「いいよ別に、じゃあ私昼寝するからまたね」

男「あの、あの……もしよければ、僕と付き合ってくれませんか! 僕はあなたに運命を感じてしまいました! お願いします!」

女「ごめんね、私彼氏いるんだ」

男「そう、そう、ですか、そうですよね……はは」

女「じゃ、またね」

男「はい、それじゃまた」



END

死にたい男と昼寝したい女 (1:1)

死にたい男と昼寝したい女 (1:1)

上演時間 約10分

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-01

CC BY-NC-ND
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