不毛な戦争

わたしの領土にかの尖兵が置かれた。それは桃色の鼻毛鋏であった。わたしは羽箒でこれを食い止め敵の前方を塞いだ。敵は手鏡をそこに添え置いた。そしてすぐにも小さな薬瓶を机の端から転がした。わたしの陣営は俄かに動揺し、あろうことかペン立てが薬瓶の奇襲に負傷し、もはや恐慌とさえ言える惨状を呈する。わたしは闇雲にピンセットを机の真ん中に置いた。まさに悪手だ。敵は攻撃の手を緩めず、消しゴムの付いていない鉛筆で、中立を保って戦地を遠くから窺っていた鉛筆削りを素早く陣営に組み入れ、速やかに桃色の鼻毛鋏の応援に差し向ける。もはや為す術がなかった。完敗である。

不毛な戦争

不毛な戦争

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-10

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