ユーフィミア

声が聞こえる。
誰が怒っているような声が聞こえる。

「何よ。いちいち文句ばっかり言って、そういうあんたたちはどうなの?」

どこまでも響く声。
一体、何に怒ってるんだろうか。

「これじゃ時間の無駄よ」
荷物を持ち、彼女は部屋を去っていく。

ざわざわと響く声。
その声は、遠くには届かなくても”彼女”の心には聞こえていて……


「ンナー」
朝日が差し込むよりも先に、目覚ましのように鳴く声。
薄っすらと目を開けると、真っ黒い姿に緑色の瞳の毛玉。

「ナァァァァァ」

少し長めに訴えると、そのままどこかへと去ってしまった。

そよ風が部屋へ入り込む。
肩まで伸びた髪が風に押され、騒がしく動く。
暖かかったハズの風は最近、急に寒くなってきた。

「ふあぁぁぁぁ・・・」

ベッドの上で体を伸ばす。
寒くなっては来たが、特に出られなくなるほどではない。

「今日もいい朝だー。うん……少し太陽が上にあるような気がするケド……」

コンコン
玄関を叩く音が聞こえる。

「誰だろう」

「おーい、いるんだろう?アティ」

「あれ。センス?どうしたんだろう」

寝巻きを着たまま、玄関を少し開ける。
そこには、聖騎士の衣装に身を包んだインセンス=ナルハルトが立っていた。

「どうしたの?」

「どうしたの?って……もうお昼前なのにアティが来ないから心配で見に来たんだよ」

ん?んん?!

「えっと……ねぇ、センス。今何時?」

「えっと……ほら、もう12時前だ。……もしかして、家に時計……ないのか?」

「……ない。っていうのも、時計の音って、メトロノームみたいで気になっちゃうんだもん!!」

するとセンスは、大きくため息を吐き
「一体これまでどうやって起きてたんだ?君は……」

「は、ははは……」

「とにかく急ごう。ほら、早く着替えて」

「ご飯抜きなの?!ひどいよ~」

「寝坊したほうが悪い」

ユーフィミア

ユーフィミア

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-10

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