メルトオーガン

溶けていくビルたちを見つめていた

塩酸のまじった雨たちは

空をはなれ 僕らのもとへ

いま



終わらない喧騒に 惑わされたくなくて

耳を塞いでいたのだけど

ゆっくりと正しく終わっていく世界は

僕を取り残していくみたい


青くて青くて

痺れるほどの青

僕らの星は 宇宙の中の美しい星

生命の星


美しいと思っていたものは

皮を剥げば ただのごみのかたまりで

ただ 逃げることのできないこの場所を

綺麗だと思わなければ どうにかなってしまいそうで

自制心を保つための 自分への嘘


僕らは まるで宇宙を自分のものにしたかのように名前をつけた

僕らは 感情や意思の表示ができないものたちを支配した

僕らは都合のいいものだけを残した

それ以外は食料にした

資源にした


悲しき彼らは 自ら名前を捨てた


何もできないんだ僕らも彼らも

同等ではないことに間違いはない

けれど なんとも複雑で

どうやら塩酸の雨たちは

僕の心をも溶かしていくようだ


皮肉の籠った 僕の言葉

醜い 醜い できそこない

僕は きっと できそこない

死んでしまえば そこで全て終わりの

できそこないの作品たち

そんな作品たちは今日も世界を支配する


溶けるように

溶けるように


溶けるように

メルトオーガン

メルトオーガン

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-05

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