知能コレクタ

 老いた刑事が、若い刑事に今朝起きたアンドロイド殺人事件のニュースをテレビで見ながら、昔話をしていた。
「昔なあ、アンドロイドの知能や、人間の知能ばかり集める犯罪者がいてなあ、それはそれは10人、何十人もの人の人工知能や、機械に移植された人間の脳ばかり集めていた」

 彼の収集癖は、小動物の頭脳までもあつめていて、彼は“偏執シリアルキラー”とよばれていたが、最後に見つかったものが恐ろしいものだった。
「何を集めていたんですか?」
「魂だよ」
 老いた刑事がいうには、彼は自分で自分そっくりの複製を幾人もつくっていた、それを自宅ですまわせていたのだ、それとはっても、体は機械、アンドロイドのものだ、アンドロイドで作ったコレクト品。彼曰くそれは“代用”、ということは、若い刑事は考えた、彼がいくつかの犯罪で集めて来た“知能”の結末なのだろうか。
「だが、真相は少し違ったんだ」
 彼は、彼曰く“もしものため”に、凡庸アンドロイドに彼の頭脳だけをコピーしていたが、莫大な電力が必要で、持主であった彼もときたま充電はしていたが、仕事を変えてばかりでその日ぐらしの彼が住まわせていたアンドロイドの数は、10体。彼の収入はそれは彼等をつねに起動しておけるレベルではなく、アンドロイドは時々いうことをきかなかった。アンドロイド所有者にはときたまおこることらしいが、複製品は持主と違い、自分を常に稼働していたい願望をもっていたらしい、“電源を切られる”という事に恐怖が芽生えるアンドロイドがいるのだ、そのために持主の命令をきかず自立して動き、電力を集めるためいくつもの犯罪をした。
 実際犯罪をおこなっていたのは彼の複製ばかりだった。そして元の一人は、複製を無断でつくった罪に問われただけ、やがて複製と元の一人は別々に暮らすことになってすべては解決した、その後も経過はみられているが、特に目立った問題はおきていないという。
 老刑事はいった、まるで諭すように。
「本人の犯した犯罪は無断で自分のコピーをつくったことだけ、だが彼の深い心の奥の欲求は、彼を複製した多くのアンドロイドたち、それによって体現されてしまったのだ」

知能コレクタ

知能コレクタ

sfです、人工知能や機械化された頭脳をコレクトする犯罪者のお話。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-15

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