Netscape

いつかの夏─の日、二人で涼んだ木陰で
秋の風に吹かれてツクツクボウシが鳴く

残酷なまでに美しい─季節の中で
空気がキラキラと輝いて─いた
目の前の現実を掻き消すように──

黎明するまだつたないけれど若い感性

新しい時代─に自分の人生を託して
目一杯生きていこうと思ってたあの頃

それでも何かが崩れ去っていく予感を
どうすることもできないまま
ただ立ちつくしていた

ジュースの入ったコップを横に
ボーッと画面をスクロールしながら
夜じゅう情報の海─の中を波─乗り《サーフィン》していた
ページをめくれもしないまま

そして呪文のようなコードを組んで
そこから未来を始めようとさえ─思った
止めどない不安に蝕まれながらも
それでも新しい世界に羽ばたこうとしていた

使い始めたばかりのメール
君からの返事をドキドキしながら待っていた
つながるって楽しいとそのとき素直に思った

──だけど、もうさよならだったんだね
なぜかずっと気付かなかったんだ
別れの挨拶さえ交わさないまま手を離して

画面の液晶の中に失った潤いを感じてた
透明─よりももっと透明な─思い出

ネチケットという幻想─の中で
ネットの中にたくさんの人格─が漂っていた
みな─幼いココロをした夢見人
ガラス玉のような色合い─に憧れていた

あの頃は卑しさなんて知りもしなかったから
ただスクリーンの奥に
夢が潜んでいる気が─していた

窓の奥、闇─の彼方、残光のトワイ─ライト
夜の奥遠くを吹く風に心が吹かれているよ

いずれあの場所は目指すべき場所になる
永遠─に届かぬ場所だともまだ知らずに……

誰もが幼すぎたと言う小さな世界
そこからしか視えないものが、きっとある──

Netscape

Netscape

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-01

Copyrighted
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