日曜日

電線に降りるカラスが寸前で宙にとどまり描く結界

夢の中最上階の部屋に住み間に合わないと駆け降りている

眠りとは取り残されることでありタイムラインをさかのぼる朝

生卵ひらけばどろりすべり落ち素手でさわれぬわずかな嫌悪

紅い実を取ったらすぐに飛んでゆくつがいの鳥は曇天の色

サイレンが曇った空に似合うので誰かがずっと鳴らし続ける

酸欠の金魚の真似をしてないで早く金魚を助けておくれ

たびたびの不在があって引き取りは中央郵便局の窓口

日曜の賛美歌のあと清らかでありたい人は離れて座る

今日もまたランチタイムの彩りは見るだけにしてカレーを選ぶ

買い替えて忘れようにも五月から一年経てばやっぱり五月

家庭用雑貨は素敵これほどのリーズナブルないらない物よ

ハツナツとそろそろ言っていいですか茄子のムラサキ中のスカスカ

ゆっくりと空を横切れ飛行船街の時間を骨抜きにして

連想で足がすくんで動けない永久脱毛は皆殺し

救われた気持ちになんてなれません背中の羽は寄生生物

矢印が示す順路に従って何かの前を素通りした日

海沿いに並ぶ風車が止まったら墜ちてしまうよからくりのとり

この場所に現れてから消えるまで誰かが座る形のベンチ

汚されて洗濯されて干されての繰り返しだよ風に揺れつつ

ユートピアのディナーの皿のレモンにも輪切りにされて削られた種

充血が治らぬ方の眼球を見ようとしたらじっと見つめる

目薬を落とした先にあるはずの隙間に沁みて届いてほしい

掻きすぎてにじんだ血より気になったこの爪の色ゾンビの色だ

空も地も月も地球も太陽も同じ速さで落ちるその果て

年ですしいただけるなら命にも関わるほどの高い純度で

いちにちがだんだん速くなってゆきある日プツンと終わってしまう

レフェリーの死角の凶器攻撃を上手に見せてくれたあの頃

木の靴は痛そうだけど憧れる痛そうだから履かずに飾る

青白い月の光に溺れたらからだを捨てて沈むことだね

日曜日

日曜日

「第61回短歌研究新人賞」に応募した短歌30首です。

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-24

Copyrighted
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