一段飛ばしの弊害

歩道橋の上で一段飛ばしのまじないをかける少年がいた。それは大人になるための手段なのだと彼は思っていた。3段目から始めて一段とばしてみる、失敗。カラスが日向に影をつくった。おまけにポケットからビー玉がとびだしてころころと階段をりていった。最低な日だ。おりてビー玉を回収再び同じ位置に戻る、その間に彼は兄の言葉を思い出した。
「お前も今日から一人で学校へ行けるだろ」
確かにそうだ、そもそもいつも兄と比べられるのが釈にさわる、兄は自分に甘えているというがそれは嘘だ、自分のほうが先に銀河鉄道の夜の正しい解釈を父と母に話してきかせた、雨降りのあと、水たまり、泥だらけになったビー玉を右ポケットの水玉模様のハンカチでふいて、ハンカチは元の場所へビー玉を左側のポケットへ戻した。コンクリートのにおいがしみついていた、カラスはまだ鳴いている。朝7時にしてはやけに騒がしい。
二回目の一段とばし、転がりそうになる。そういえばこのあたりで交通事故の話があったっけ、もしここからおちたら大変だ、と歩道橋の横を見渡す、小学2年生の足ではそれほどに困難な一段とばし、ジャンプの途中で通りかかった人がいた、自転車をひいたお兄さんだった、おはよう、と声をかけられたが、日向が隠されてしまった、向い側の歩道橋の階段に日向があるとは限らない。それにこれは登りだからこそ意味があることなのだ、日向をこえる、そのことにも意味隠されている。いらいらしながら3段目に戻り最後の一段飛ばしと試しにかかる。そこで思い出した。
「なあ、あれ返してよ」
最近不機嫌だと思った友人、僕がほかの友達と仲良くしているのが嫌なのかとおもっていたら、借りたままの漫画を返していなかった、さっきビー玉がコロコロと転がっていったことと重ねて、自分がまだ子供だと感じる、雨はときたまパラパラ降って、傘をさすのを我慢している頭を容赦なく濡らす、階段を下りる途中で、スーツのおじさんに腕をぶつけてしまった。チッという舌打ちが聞こえる、それはそうだ、すべては僕の責任だ。と、人見知りの僕はおどおどしながら、ビー玉の位置を確認し、前後左右を確認して、友達に謝ることも決めて、最後のジャンプをした。

一段飛ばしの弊害

一段飛ばしの弊害

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-07

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