冷たい記憶 - エアリス -
- 冷たい記憶 -
- エアリス -
初めて好きになった人は、いつも自信たっぷりで、明るく笑っている人。
笑うって、こんなに素敵なんだ、って教えてくれた。
見ているだけで、元気になれたの。
私の知らない、いろんなことを教えてくれた。
人と上手に話すこと、人に元気を与えること。
お花を売るのだって、きっと誰かに元気をあげたかったから。
でも、その人は、星に還っていったの……。
もう一度、会いたかった……。
それでも私は、あなたと会った場所に居る。
空が怖くて、自分の存在意味が怖くて、いつも祈ってたの。
枯れた土地なのに、ここだけ花、咲いてたから、
私の祈りが届くような気がしたの。
どうか、このまま……普通でいられますように。
私の大切な誰かを傷つけることが起きませんように……。
あなた以外の人なんて、考えられないと思ってた。
だけど、出会ってしまった。
あなたと同じ服を着て、大きな剣を背負ってた。
でも、髪の色も、顔も、声も違った。
似てたのは、目の輝きだけ。
それは、あなたに抱いていた気持ちと、少しだけ違った。
あなたを失ってからの私は、少し変わったんだと思う。
理由なんて分からない。
ただ、この人と居ると、素直になれた。
そして、救ってあげたいと思った。
時々、悲しそうな、でもどこか儚げな目をするの。
消えてしまいそう、って思ったこともあった。
だから、彼の手を決して離せないと思った。
そう思ったのに……。
私は彼から離れてしまった。
守りたかったの。
私の大切な人。
失いたくなかったから。
彼のもとに帰るはずだったの。
もう、大丈夫……。
その言葉さえ、伝わらなかった。
大切な誰かを傷つけることが起きませんように……。
そう祈ってたのに……。
私、同じ悲しみを彼に与えてしまった。
笑顔で帰るはずだったのに……。
どうか、お願い。
彼に刻み付けてしまった悲しい記憶を私に還して……。
この星の命の対流と共に、暖かかった日々の笑顔を……彼へ還していくから。
冷たい記憶 - エアリス -