冷たい記憶 - クラウド -
- 冷たい記憶 -
- クラウド -
あの時の俺の手は、とても冷たかった。
水なのか、ぬくもりを失ってしまった君なのか分からなくなって、
その冷たさに、手の感覚が麻痺していった。
覚えているのは、それだけだった。
頭が真っ白で、言葉も感情も全部、胸の中に押し込んだ。
息が出来ないくらい胸が痛くて、声にならない言葉は涙になった。
あふれて落ちた熱は、すぐに冷たくなって、
君と一緒に、水の中へ消えて行った……。
あれから時が経つにつれ、君の居ない世界を幾度と無く巡るたびに、
俺の罪は決してあがなうことが出来ないと思い知った。
目の前の危機を乗り越え、失っていた自分を取り戻しても、
君を取り戻すことは出来なかった。
君の名を呼べないのは、俺の罪の深さだ。
だから胸が苦しくて、君の名を呼べない。
でも、どうしてかな。
その手に触れたいと願うのは。
叶わない願いだと分かっているのに。
どうしてかな。
君のぬくもりを感じていたい。
せめて、俺に願うことが許されるなら、
どうか……君が、この星のどこかで笑って……居て欲しい。
冷たい記憶は、俺の中にずっと閉じ込めておくから……。
冷たい記憶 - クラウド -