*星空文庫

【連載】吾輩は猫ではない(第四幕)

万田 竜人(まんだ りゅうじん) 作

プロローグ(第四幕)


迷い犬は落し物扱い

土曜日の朝はみんな早起きだった。

今日こそは、シェリーに会えると云う期待感から、自然に、みんな早目に目が覚めた。
朝食を済ませてすぐにでも、修理工場に車で出掛けられる準備は出来ていたものの手
土産が必要と云うことになり、近所の和菓子店が空く十時頃まで待つことにした。

自動車の修理工場に着くと、昨日は暗がりのため気が付かなかったが修理工場の手前
に簡易事務所があり、受付の窓口の奥を覗くと、我が家のシェリーが、事務所の女性
からジャーキーをもらって食べていた。

私(グランパ)としては、シェリーの姿を確認できたものの、複雑な心境であった。

我が家では、かかりつけの獣医さんのアドバイスもあって、ジャーキーは与えない様
にしていたのである。シェリーが、一時、皮膚病にかかったことがあり、獣医さんの
診断の結果、原因として、シェリーの大好物であったジャーキーが特定され、以来、
皮膚病は直り、それからというものはジャーキーを与えていない。

獣医さんの説明によれば、ジャーキーがすべて駄目という訳ではないが、ジャーキー
は種類も多く、品質も多様で、中にはお薦めでないものも散見される。この品質判定
を一般家庭で行うことは難しく、シェリーが皮膚病にかかった以上は与えないことが
安全であると云うことになった。

シェリーを救ってくれた恩人に向かって「ジャーキーは与えないで下さい」など、と
大人げないことも云えないので・・・

「この度は、お世話になりました、飼い主の佐久間です」と挨拶すると・・・

「修理工場の〇〇です。主人共々、犬好きですので、良く手入れされたワンちゃんを
見て、二人で、すぐに飼い主の方から連絡があると思っていました」と、笑顔で奥様
からの挨拶が返ってきた。

「私たちは、これから狭山警察署に出向いて飼い犬引き取りの手続きを済ませて再度
お伺いします」と挨拶して、お礼かたがた手土産をお渡しして警察署に向かった。

狭山警察署に出向くと、落しもの係の窓口に案内されて、事情を説明・・・

「それでは、この書類にサインしていただいて、ワンちゃんの食事代を一緒に納めて
いただければ手続きは完了ですので、後は修理工場の現地でワンちゃんを受け取って
いただいてすべて完了となります。修理工場には、こちらから連絡しておきます」

ということで、シェリーは、土曜日の昼頃に、無事に我が家に帰還となった。

夕食時に全員が揃って、シェリーを出迎え・・・

「確かに、シェルティ犬としては、大き過ぎるわね~」
「それに、太めなことも、確か!」
と云うことになり、減量作戦が、開始されることになる。

担当は、私(グランパ)とカズさん、ということになり・・・

「ただの減量では、空腹感があって、駄目!」
「とりあえず、食事外の間食は取りやめ!」

それではと云うことで・・・

「食事の量は減らさずに、主食はドッグフードで、嗜好の楽しみには鳥の胸肉を
電子レンジでチンしてローストチキン風にして細かく刻んだものにする、量感を
保つためにはキャベツを刻んで電子レンジで蒸したものを加える」

(ただし、ワンちゃんは、どんなにたくさん食べても満腹感はないのだと云う)

このような経過を経て後輩の「もも」にもつながるシェリーフーズが完成した。


(続 く)

『【連載】吾輩は猫ではない(第四幕)』

『【連載】吾輩は猫ではない(第四幕)』 万田 竜人(まんだ りゅうじん) 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-07-12
Copyrighted

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