*星空文庫

フィジカルネット

よつえだ 作

“フィジカルネット”は
神経や、五感と直接接続できるネット。まるで、自分自身がインターネットそのものになったような感覚を味わえる事からその名がついた。
まるで自分の肉体そのものがネット空間に入り込んだような直接的な感覚を、脳に直接“錯覚”させることができる。
今世紀になって普及した。もちろん、安全面の対策はばっちりだ、この国にできない事はない。
安全性と治安、この国の一番の魅力だ、人口はちょっと不安だが。

22世紀最後の年。
フィジカルネットのある“仮想ワールド”には、さまざまなデザイナーや、カリスマアイドル、カリスマゲーマーなど、
現実とは距離を置いた形で、“人気者”が点在していた。

“彼”もその一人だった。
今日もぐだぐだの宇宙服を着て、人の少ない“月”空間から地球をみていた、宇宙服はところどころやぶけている。
やぶけた中から、まただぼだぼの衣服がはだけてみえている、ドロがついているので、きっと転げまわったのだろう。
穴のあいた宇宙服に意味はあるか……?
月面基地には、彼のアトリエがあった、月の土は、命が何かをしっている、それは意思をもっている。
意思をもつなら、形を作れば、それは命だ。
彼は、奇抜な怪物をつくる、その怪物は、哲学で、その怪物は、彼の本心で、その怪物は、時々喋る、
醜い言葉をしゃべる。
「助けて」
「つかれた」
「面倒くさい」
“彼”の人格は、ふたつあった、フィジカルネットの中と、現実世界。
フィジカルネットの中では、彼は、人気ものだった、
といっても、たった10数人に、それもあるいは、彼の幻想かもしれなかったのだが、
しかし、それこそが、彼のささえ。

現実の彼といえば、ただのアルバイターで、体と心は疲弊したままで、“フィジカルネット”に一日3時間潜り込むただの人間。
趣味で絵本を書いている。
どんなにがんばっても、うまくいかない事だらけ、
そうだ、本当の彼の居場所は、ふたつだけ。本当の意味で表現できる“彼”が現れるのは、そのときだけなのだから。

『フィジカルネット』

『フィジカルネット』 よつえだ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-07-12
Copyrighted

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