*星空文庫

求めていた俺-sequel-

たいくん 作

sequel.3 敗北

夜の街。
息を切らして必死に走る少年がいた。馬場コウスケ。どういうわけか黒服の男の集団に追われているのだ。いつからつけられたのかは知らん。
「うわッ・・マジかよ」
少年が後ろを振り返ってみるとその片手には日本刀が握られていた。物騒極まり無い。
コウスケは細い裏路地に入り込む。運良く
撒いたようだ。だがモタモタしてる猶予はない。再び通りに出て歩くと。途中、彼の目にあるものが映った。桐生の自宅だ。

「しめた!」

黒服の男達との距離はある程度離した。
コウスケは塀をよじ登り、桐生の家の敷地内に潜り込む。ポケットの携帯電話を取り出して桐生の電話番号を親指一本で素早く打ち込む。

「誰だ?」

少し枯れた桐生の声が聞こえて来た。

「もしもし?俺だよオレオレ!」
「もしやテメーオレオレ詐偽だな!?」
「違う違う!オレだよ、馬場コウスケ!」

こんな阿呆な会話をしてる余裕はない。

「何の用だよ?」
「いや実はさ、昼間のことお前に謝らないといけないなって思って・・」
「昼間?」
「あれだよ。えーっとなんだっけ、白石って子と敷島って子がどーたらこーたらって。
俺が彼等の事を知らないのは本当なんだ。
お前の気持ちを考えずに軽率な言動を取ってしまった事に少し後悔しているんだ」

こんな一言で果たして許してくれるのだろうか?

「ああいいんだそんな事。お前らは本当に2人のことを知らないんだろ?なら何も悪くないって。」

しかし桐生は思いの外あっさり許してくれた。

「本当に?本当に許してくれるのか?」
「最初から怒ってた訳じゃねえしな」
「すまなかった。」

(なんだそれだけか?)桐生の声が直感で聞こえて来たような気がした。そしてあいつは
通話を切ろうとしている。これも直感だ。
まだ本題にすら入っていないのに会話を終わらせられたら困る。

「ま、待ってくれ!まだ切らないでくれ!!
もう1つだけお前に伝えなくっちゃいけないことがあるんだ!」
「・・いいニュースか?悪いニュースか?」

桐生の声に焦りが混じり始めた。

「どっちかって言うと・・悪いニュースかな」

「俺は今お前の家の前にいる!日本刀を持った黒服のスーツの男達に追われているんだ。
頼む匿ってくれッッ!!」

展開が早すぎて桐生にはイマイチ状況が飲み込めない。

「わ、わかった!今鍵開けるから落ち着け!」
今日はよく運に助けられる。コウスケは思った。

ガチャンコ。

桐生が玄関のドアを開けたと同時にコウスケが飛び込んで来た。

「・・はぁ、はぁ、すまねぇ」

汗がコウスケの頬を伝って落ちる。

「とりあえず詳しい話を聞かせてもらうぜ。ここにいれば暫くは敵に見つからない筈だ。」

桐生は家の鍵を閉めるとコウスケをリビングのテーブルに誘導した。

「で、事の原因はなんなんだ?」
「分からん。気がついたら追われてた」
「・・そうか。そりゃあお疲れだったな。」

桐生はコウスケの胸ポケットの近くに付いている粒のような何かに視線を向けた。

「どうしたんだ?」
「いや、その胸についているちっちゃい粒みたいなのは何なんだろうなーって。」

コウスケは桐生が指を指す方向を見てみる。
そこに付着していたのは極小のICチップだ。
クレジットカードなどに付いているものと類似している。

「なんだこりゃあ!?」

チップはコウスケが指で摘んで引っ張っただけで簡単に剥がれた。
今気づいたが、チップは先程から赤く点滅し続けている。

「お前それ・・まさか・・」
顔面蒼白の桐生を差し置いてコウスケは嫌な予感を感じ取った。
「G・・P・・Sじゃ・・!?」

桐生の目が丸くなる。
その時だった!玄関の方から喧騒が聞こえてくる。

桐生とコウスケの2人は玄関の所まで駆け寄る。

ドンドンドン!!

「しまった!奴らに居場所を突き止められたか!」

「おそらくお前の胸についていたGPSのせいだ!!」

今さらGPS機能付きチップを壊しても手遅れだ。何故なら既に敵達は玄関のドアを強行突破していたからだ。

「て、てめーら!あとで弁償して貰うからな!!」

「んなこと言ってる場合かっ!!」

玄関のドアがぶち壊されたのも元はと言えば
コウスケが勝手に上がり込んで来たからなのだが、そんなこと言ってられない。家の中にいる上に集団相手だ。

「くそ、俺の能力は一対多数向きじゃねーんだよッ!」

ただでさえ退っ引きならない最悪な状況なのに、泣きっ面に蜂だ。

「取り囲めぇ!!」

黒服の男達は円を描くように桐生とコウスケを包囲するように陣形を取り、日本刀を構える。

「万策尽きたか・・」

桐生はほぼ諦めかけていた。桐生の能力は相手に直接触れない以上効力を発揮しない。
読まれていたんだ。 いや、

「(敵は俺の弱点を知っている・・?)」

その時、一瞬にして予想外な出来事が起きた。

「コウスケ?おい、どこだコウスケ!!どこに・・」

つい10秒前ぐらいまでは背後にいたはずのコウスケの姿が見えなかった。先にどこかに逃げたのか?

直後、黒服の男の1人が桐生のふくらはぎに斬撃を繰り出して来た。

「ぐぅッ!!」

桐生は避けきれずバランスを崩し、前のめりに倒れた。傷口からは多量の血が吹き出している。

「いまだ!捕らえろ!!」

抵抗できないまま桐生は黒服の男達に手足を縄で縛られ黒塗りの高級車の後部座席に乗せられる。

「放しやがれ!!」

「静かにしてもらおうか。」

助手席の男に麻酔針を打たれる。

「うぅ・・」

桐生の意識はここで途切れた。

あれからどれくらい経ったのだろうか。
桐生が目を覚ましたのは「尾根所田公園」だった。以前サファイと初めて戦った場所だ。

「いってぇ・・」

ふくらはぎの傷がまだ痛む。だが先程よりかは血は出ていない。

周囲を見渡してみると例の黒服の男達が日本刀を片手にこちらを取り囲んでいる。

「テメエら・・なんのつもりだ?」



「・・知りたいか?」

黒服の男達の間を割り込んで1人の成人男性が姿を現した。
白髪でデニムシャツを着用し、片耳だけイヤリングをつけて口には棒付きキャンデーという奇抜な格好の男。

「テメェは・・・、」

桐生はこの男の顔を知っていた。
その昔、桐生の命を救った男。
桐生がピンチの時はいつでも駆けつけてきてくれた男。
そして。

ーーー桐生の人生の何もかもを踏みにじった
不倶戴天の仇敵。


「祠堂オォォォォォォォォッッッッ!!!」

桐生は突然人が変わったように激昂し、男に牙を剥く。

黒服の男達の5人が桐生を牽制しようと日本刀を振り下ろすも既に空中高くに跳躍していた桐生には無意味だった。
桐生は男達の頭を踏み台にして目の前の祠堂と呼ばれる男に握り拳を振り上げ襲いかかる。

「おいおい、折角感動の再会だってのにそんな怖い顔されちゃ悲しいじゃねぇかよ。」

盲滅法に拳を振り回す桐生。それをヒラリとかわす白髪の男。

「テメェの顔を忘れたコトは1秒たりともねぇ、”祠堂流星”!!」

「そうか、そうだ、やっぱりな!やっぱりお前はまだ俺の事が憎いかフハハハハ!!」

怒り狂う桐生をさらに挑発する祠堂。

祠堂は桐生のパンチを潜り抜け、そのまま桐生の耳元で一言囁いた。

「・・・あん時ほどじゃねぇな。」

刹那、まるで鎌鼬(カマイタチ)のような攻撃が四方八方から襲った。
高速に繰り出された祠堂の手刀だった。
漫画で言ったら一コマ足りないのではないかと思ってしまう程目にも留まらぬ速さだった。風を斬るような斬撃。否、風そのもののようだった。

この間たったの1秒。祠堂が耳元で囁いた1秒後には既に桐生は満身創痍になっていた。

「あ、相変わらず強ぇ・・。この化け物が・・。」

一ノ瀬、遊馬、これまで戦ってきた敵とは比べ物にならないほど強い。

桐生はボロボロになった体を辛うじて起こす。服についた土を払いおとす。

「オイ、まだくたばんのは早いぞ。お前の今回のお相手はコッチだ。」

祠堂が親指で指した方向にはついさっきはぐれた馬場コウスケが立っていた。だがその目には色がなく、操り人形のようだった。

「コウスケ!お前が何故ここに!?」

「ああ、ソイツは既に俺の手駒だ。残念だったなぁ。友達は選ぶべきだぜ」

コウスケは無言で桐生に向かって走り出す。
「目ぇ覚しやがれコウスケ!」

2人が激突する直前、遠くから眺めていた祠堂が言った。

「コードナンバー09!桐生には後々俺様の計画に役立ってもらうから、殺さない程度に頼むぜ」

『求めていた俺-sequel-』

『求めていた俺-sequel-』 たいくん 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-07-11
Copyrighted

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