イキリョウネット

「病院に命を引き裂かれる!!!」

近頃、若者たち間で、
インターネットの人気動画サイトを利用しているとき、
わけのわからないバナー広告が表示されるという噂がある。

しかしそれは、長らくほかの年齢層、噂を調査した、動画サイトの運営者まで、実態のつかめないもので、
皮肉をこめて、若者の生霊と呼ばれていた。

18歳の少女サキ(仮名)が
ある日、友達とふざけて、あつまり、
ゲームをしながら、少しだけ飲酒をしてみようという、
よっぱらった赤い顔で、風呂場からでたばかりの、ぬれた髪を洗濯したばかりのタオルでかわかしながら、
彼女は家族共用のリビングルームに設置してある、デスクトップ型パソコンの画面をのぞいた。
フリーズ状態から立ち上がる、彼女は一瞬おばけのような少女の顔をみたきがした。
「ひっ……まさかね……」

「どうしたのー」

数人の友人たちはリビングでおかしやジュースを飲んでくつろいでいる、酒に手を付けたのは実のところ彼女だけだ。
画面に表示されたのは、タ、ス、ケ、テの文字、
そして、友人たちは、今度こそ彼女がとてつもない驚きと、絶叫の声をきいた。

「出てきたんだよ、たしかに」

出てきたのは、血だらけの手だ。

「救急車、呼んで!!!」

友人たちは驚いていた。

「何が!!何が!!」

次に表示されたのは、電話番号だ、それはどこからどう考えても、この幽霊の電話番号だと思う。
昔、こんな映画が流行ったことがある、それは若い世代だってしっていることだ。
だが友人たちは、ホラー映画で耐性がつきすぎていて、
なにも気にせず、スマホでその番号へ直接かけた。

「助けて……助けて」

それは、自殺に失敗した少女の声、
彼女はその意識を直にネットに接続しながら、その浮遊感と麻痺した現実感をもって
自分の生涯をおわらせようとした、
しかし無理だった。

なぜなら、彼女はインターネットの中で、自分の中の大切な過去を見つけたのだ。
それは、写真、それは動画、それは、手紙。
一度アップロードされれば用意に消える事はない、ネットワークは、陰湿だ。

今よりはるかにネットリテラシーが求められる未来の世界、
ネットワークは神経や感性や感情、はては脳内の信号とさえかかわっていく。
人々は、眼鏡のレンズのように、顔に固定する形でインターネットを装着する。

そうすると人は、自分の意識が“溶けた”ような感覚にふれる事があり、
また実際に、“それは確かに起こったことだ”と錯覚するようになる。

その感覚の先をいくと、インターネット上の意識のマヒした感覚のままで、
自分の体をどうこうすることも可能なのだ。

いうなれば、現実より現実的な意識がインターネット上に停滞することもありえる。
どっちが現実かどうかは、装着者の良心と感覚に委ねられる。
そこから逃げ出す事が難しいということではない。
むしろそこへの依存が、“今ではなく過去に自我が確かに存在すること”への自覚と依存だったから、
彼女はそこから抜け出せなくなっていたのだ。
そして現実に戻るのだろう。

イキリョウネット

イキリョウネット

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-07-07

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