手記

手記

陰鬱な表現が含まれています。

私は朝と夕方に精神を安定させる薬を飲む。
病院から処方された薬である。
私が薬を飲み始めたのは、大学在学中の事だ。
元々人の顔色を伺う癖があり、その中で沢山の葛藤と戦っているうちに自我が保てなくなり、自分の行動すら抑制する事が出来なくなった。
その頃から逃げ場のない事柄が真正面から自分に刺さり、衝動的に自分を傷つけるようになった。
何度も死のうとした。
その度に周囲に迷惑ばかり掛けて困らせた。
もう生きているという実感は無くなった。
薬のせいか、物事をすぐに忘れる。
買い物を頼まれ、一分も経たないうちに何かを忘れてるのだ。
何故すぐに忘れるのかと言われても、私は忘れた事さえも忘れてしまう。
こうして文字に表す時に漢字を使うが、漢字すらもまともに書けてはいない。
この文章さえも、まともに書けているのか分からない。
文章を書くにあたってのネタは幾つも思いつくが、思考はウサギが跳ねるようにぽんぽん飛んでいって纏まらない。
何だか思い通りに進まず、むしゃくしゃして煙草の本数が増えていく。
毎日何もしていない癖に愚痴は絶えず言って、変に人間味だけはあって、気持ち悪がられる。
気分転換に外に出てみようと思って外へ出るが、最近は物騒なニュースばかりでまさかだが、自分もふらふらしている間に刺されるのではないか、という恐怖まで過ぎる。
沢山の人が行き交う中で、幸せそうにしている人を見て、申し訳ない気持ちになる。
私の様な人間の性で、皆様が暗くなってしまう。
外にいるとそんな疎外感でいっぱいになり、世間から外れてしまっている事が目に見えてしまう。
私の側にベルリンの壁が立ったのかと思うくらいに、隔てられている。
自分が駄目な事は分かっているが、全てを認めることも出来ない。
まだ少し自分でも溶け込めるのではないか、という期待が少なからず有る。
全てを認めてしまったら、私はどうなるのかすら分からない。
私が私を止める以外にはもう方法が無い。
皆そんな私からどんどん離れて行くのだから、私がどうにかするしかないのだ。
離れていって当然だ。
本当に廃人になる前に、どうにかするしかないのだ。

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私は朝と夕方に精神を安定させる薬を飲む。 病院から処方された薬である。

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-06-29

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