美化された記憶

あれから、3年がたった。3年。もう、3年がたつのか。彼女の傷は、まったく癒えてないと、共通の友達から聞いていた。そうすることによって、自分を守っているのかもしれない。なんとなく、その気持ちは、わかる気がした。

僕の罪は、そんなにも、許されないものであったのか。そんなはずない。と、考え直す。

「彼女の人生を終わらせたい。」

ふと、呟いた僕に、何言ってんのこいつ、とでも言いたげな声が聞こえてくる。

「もう終わらせれてようなものだと思うんだけどなぁ」

淡々と。まるで、何百回も練習したように、なんの、淀みもなく。言い放った。

はっ、として、僕は振り向く。それは、まぎれもなく、彼女だった。

「なに?殺してくれるの?」

そう。なんの曇もない目で、聞いてきた。あんな、澄んだ綺麗な目で、そんなことを言えるものなのか、と、人事のように思った。そして、すべての力が彼女に持っていかれたのではないかと思うほど、力が抜け、たちまち、立てなくなった。

ショックだった。いや、受け入れられなかっただけだ。

"彼女が生きている"という事実に。
彼女を記憶から、心から、消すことで、僕自身を守ってきたのかもしれない。


もう、彼女が生きていると証明された世界で生きてはいけない。

僕は、彼女に向かって走り出した。


彼女を刺すために。

美化された記憶

僕は、思った。

彼女が好きだと。
それでも愛していると。

美化された記憶の中で。

美化された記憶

終わった恋を彼女彼氏共に引きづっている物語です。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-05-23

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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