踊り

踊り

少女は私を神と近しき人間と想っているのではないか。
私を神と近しき人間と想うだけの理由があるというの。でも私にはそんな資格はないのです。そう特別なものは何も無いのです。
それから、地球の青い大地の上で私とあなたは踊っている。辺りは真っ白で生きている存在を忘れさすような何か微妙な揺らめいた感情で、淡くおぼろげにマリアの抽象絵を描いていく、何者にも変えがたい至福がそこだけにはあった。
でも、そうなのです、私は踊り方を全く知らなかった。
なのに少女は不慣れな私を大いに迎えて微笑んでエスコートしている。
私を見て強く懇願するような瞳で救いを求める巫女の御姿が生まれる魂のみそらのそわか。
真摯に救いを求めるぎりぎりの愛撫。体にすり寄せてくるその手はやわらしく存在していない。
か細く長い手が私の体へ意思を確かめようと弱いメッセージを送るその薄らいで溶けていく微熱。一体、私をどうしたいのですか。
でも私には巫女を助ける資格と自信があった。その恋の予感を如実に感じて、私を信頼してくれているのが嬉しかった。心は大いなる暖かい故郷の懐かしい幻想へと帰っていく、そうぽっと憧れのときめきを感じた。
巫女は私との踊りへの意志を強めるのが、きらめく色目の可愛らしい表情で躍動する肉体の俊敏さを通してわかり、舞姿の可憐さ、舞心の純粋さに、私もときめかされていく。
なんて万物流転するメロドラマの世界。
そして夜空を可憐に流れていく星々が雄大なドラマの誕生をさせた、気の遠くなるような不思議な万象の宇宙に行ってしまった。まさに今までの人生で経験してこなかった青春の若気のいたりを感じます。
さあ、今私はその青春の真っ只中にいた。
巫女の創り出す踊りの舞い作法は、千差万別の無限の創造性に満ちている。次々と生み出される体のしなやかで柔軟性のある発想性が溢れ出す天性の革新性。
ときめきが溢れ出し、桜が舞い散る日本舞踊の大いなる舞台へと次元がパノラマ化して満ちていく。
若い巫女の踊りに必死にくらいつこうとするが、神通力を宿す天性は想像をとっくに超越しており、私の肉体の限界を力技で超えなくてはならない。
少女の様々に繰りだす踊りのおかげで、知らなかった宇宙の超新星爆発を起こし、極限の真っ白な輝きが立ち現れて、ついに宇宙の果てを突破していく。
少女の流線美のどこまでも宇宙の果てまで流れていく美しきゼロ。
それは神の創造した長さであった。
少女の生命の飛翔は天性のみが成せる、天空の媒体を宿す神のみぞ知るラインだった。まさに神に愛されているとしか形容できなかった。
その時あなたと私の周り一体には、木々や植物が新芽をだして元気良くぐんぐん芽生えていった。何という無から新しい生命の生成が誘導された。
そして、海が青の潮の中に世界の深遠なる無尽蔵の分子を形成していく、太古の地球史の幻影の儚い水が揺らめいた。
山脈は男らしい立派な包容力を備え、頼りがいのある自信に溢れた雄姿を堂々と現した。
それは私と少女の踊りがまさに天と地を創造していく。全宇宙が私達の飛び抜けた才能を賞賛している。
まさに宇宙が蘇生し鼓動を始めたのです。何という宇宙の創造性は凄まじい大爆発を起こす、これは超新星。
私達は宇宙から無限のエネルギーを受け取り、さらなる凄絶なパワーに生命の果てしない超越世界を迎えている。
無限大の肉体と精神の神掛かった力が満ち満ちとして、こんなにも高くふわーっと浮いて行かせた。
不可能という概念がない計算上の理論値を超越してどこまででも突き抜けていく。そして伝説化していく、心は母なる地球の青さへと一新し統一されていく。世界は新しく満ちたりた平安に包まれた。
それがこの日常を天国での全く新しい朝に生まれ変わらせた。
さあ、世界が再び創造されている。光り輝く素粒子がこの世界に初めて誕生しているのです。
そして地球が誕生し、太陽の明るい存在に大いに優しく甘えていた。
こんなにも偉大な世紀の太陽系の誕生が起こりました。
ああ、自然はとても偉大です。

そして私達はなんて偉大な存在なのでしょう。私達の存在は天へと高らかに昇っていく。どこまでもどこまでも、少女は私を見つめてふふっとか細く微笑した。
あどけない純情さで安らかに天空へお休みしていく、薄らいでいく微笑。
全宇宙の創造の現場に立ち会う私達の存在は大心を抱いた。

あなたは私に人生で大事な事を教えてくれた。
さあ、私達は昇天いたします。そして神の住み給う所へと安らかに昇っていく。
ああ、この母なる故郷へと還れる生命の不思議な移動。自然のエネルギーを超越した人間はパッションを抱いた。
私の存在は無くなっていく。私の存在は広大深遠な全宇宙そのものになり、再び訪れる生命誕生の時に備えて還ります神の御姿に。
地上の私達は神の伝説となりました。私達はこれから再臨する神の子の存在に期待したのです。
そう、やっと人生を完成させたのです。
自然にこんなにも全てが解決していく。そう全てが安心していく。心にはもう何もありません。
あなたは私達の生命の祖となりました。生命の祖となり、これからのあなたの子供を救っていきます。
私達は完成したのです。

踊り

踊り

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-18

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