夜を閉じ込めたガラスコップ

女王様がおっしゃいます。
犬よ。我が犬よ。
私の背中に座りながらおっしゃいます。
夜をこのガラスコップに閉じ込めなさい。
夜は私のもの。
ああ。なんて罪深い方なのでしょう。
過ぎた欲は身を滅ぼすでしょうに。
ああ。なんて罪深い私なのでしょう。
私の星は丸くなってしまいました。
女王様によって牙を奪われてしまいました。
尽くす喜びを与えられたのです。

「おお。なんと!美しいものか!」
そう感嘆の吐息を洩らすと、さっそくにガラスコップに閉じ込められた夜を眺めては、うっとりとため息を吐き、また眺めてを繰り返します。

世界から夜が失われた。
人々は眠りを忘れた。
世界は静寂を忘れた。

世界は少しずつ壊れていく。
女王様。女王様。
過ぎた欲は身を滅ぼします。
身の回りにすら破滅をもたらすのでございます。

夜を閉じ込めたガラスコップ

夜を閉じ込めたガラスコップ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-17

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