多年草は目を覚ました




多年草は目を覚ました

暖かな指先が宙を舞って

頬を撫でる 髪を遊んで

ねぇ お寝坊さん

いつもの君のささやき


多年草は目をひらいた

まばゆい光がいたずらして

鼻をつまむ 唇を食んで

ねえ 愛しい君

いつもの甘えた声を



多年草は見渡した

仲間たちが微笑んで見つめる

おはよう 春だよ

ねえ おしえて

僕の愛しい君は どこ?




多年草は恋をした

一年草に恋をした

春になったのに

一年草はいない


僕らは誓い合ったんだ

春にまた会おうねって

そして目を閉じた晩秋



仲間が言う

「一年草は冬を越せない」


それなら

それなら


それならっ!



花なんていらない!
種なんて残さない!

目なんて 覚まさない!




覚ましたくなかった…よ



誰か教えて

僕が多年草である意味を


愛しい君

いつもの甘えた声を

きかせて

多年草は目を覚ました

多年草は目を覚ました

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-13

Copyrighted
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