君にとっての幸せが私が幸せになる事なら、君なんか不幸になってしまえばいいって思うんだよ。

「女の幸せは結婚して子供を産んで幸せな家庭を作る事らしい。」
ゆらりと揺れる長い前髪の隙間から見つめられる。
またその話かと読み途中だった雑誌を閉じ彼女の方を向いた。
目が合うと満足したように笑って話を続ける。
「はやく君を幸せにしてくれる男の子が現れてくれないかなぁ。さっさと君を手放したいんだ。」
そう言って緩くなった珈琲を啜る。
「もうその話聞き飽きたよ。」
閉じた雑誌を開いて興味もない占いを眺める。
すると彼女は私の頬に手を伸ばす。
ゆっくりと頬を撫でた後キスをする。
苦い珈琲の味がした。

「君に幸せになってもらいたいんだよ。」

よれたTシャツを着続ける彼女が嫌いだった。
初めてプレゼントしたTシャツ。
いつも同じカップを使う彼女が嫌いだった。
2人で悩んで決めたお揃いのカップ。
私に触れる手が優しくて嫌いだった。
キスをする時目を閉じない所が嫌いだった。
幸せになって欲しいなんて言って私を手放そうとするくせにそうやって私のことが好きでたまらない所が憎らしかった。

「私が幸せになる事が君の幸せなら、私は君には一生不幸で居て欲しい。」

君のワガママで買ったのにペアリングを指にはめさせてくれない。
指にはめてくれない。
指輪はちゃんとした物をつけないとダメだよなんて。

彼女は泣きそうな顔をしながらそっと私を押し倒す。
「どうせならこのまま一緒に死んでくれって言ってくれた方がよっぽど楽なのになあ。」
笑いながら彼女の頬をつねる。
「手放せなくなっちゃう。」
ぼろぼろ涙をこぼす彼女の頭を引き寄せてキスをする。
「手放して欲しくないんだよ。」

部屋の外はいつのまにか雨が降っていて雨の音と2人の呼吸しか聞こえない。
まるで世界に2人しかいないような気がして、このままずっとこの瞬間が続けばいいと願っていた。

僕の考えた最強の百合

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-11

CC BY-NC-ND
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