人間の本質




押入れを開けると
腹を一文字に切り裂いた男が
血だるまになって倒れていた

見たこともない男だ

押入れの床が真っ赤に染まって
時間と共にそれは黒くなっていった

苦しそうに悶える男の姿を
僕は痛々しく眺めた


ああ、そうだった。

僕は救急箱を探していたんだ。
さっき、指先を紙で切ってしまったんだ。
ほら、血が滲んでいるだろう。

ああ、痛い痛い

早く手当しなくちゃ。

人間の本質

人間の本質

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-05-08

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