竜と神と人間と#6

スカイスクーターという名前ではあるが、見た目はドゥカティ・モンスターという随分と昔に見たバイクに似た見た目をしているのとNinjaRRという昔に見たバイクに似た見た目をしている。つまりデザインは2パターンある。デザインは考えるうえで困ったのだが、オリジナルのデザインを考えるのは面倒なので昔見たバイクを真似てデザインしているが、今の時代の人間は知らないのでパクリという問題も起きていない。しかし、機能は最新技術を駆使してある。空を飛ぶ時はタイヤ部分が90度に傾きジェットエンジンになるのだ。ここを作るだけでかなりの期間を要した。他にはスカイスクーターを購入時に配布されるデータカードだ。スカイスクーターに付属しているカードリーダーにセットして移動時間、走行距離、平均時速、購入者情報が記録される優れものだ。基本的に空を飛ぶことを想定してるためバードストライクやグリフォンとの接触事故を防ぐためにエンジン音には鳥除けの効果のある音を混ぜている。それに加えて制作に協力した者にしか使えないモードも存在している。他にも―
「いつまでその長い説明をするの?」
標的(ターゲット)が来るまでかなりの時間があるし暇なんだし聞いていろよ」
スカイスクーターの良さをアピールする時間じゃないのか…?
「その話はまた今度にしてちょうだい御門君。作戦はあるの?私は貴方たちと違ってそこまで頑丈じゃないのよ?特攻だけは勘弁してね」
「ん?作戦か?あるぞ。最初に標的の集合地点を俺以外の3人が包囲するように待機してくれ。そして、次に標的を追いつつこの銃で無力化する。最後に捕縛したら終了だ。質問はあるか?」
「はい。質問です」
西園寺が挙手をする。
「なんだ?敵前逃亡は罰金だぞ」
「逃げないよ!でさ、この銃は殺傷能力はあるの?」
この銃と言うのはミカドラボ製のライトニングシューター。通称電撃銃の事だ。ハンドガンサイズだが、弾丸には高圧の電流が流れており、どんな機械でも回路を焼き切ることができる。スカイスクーターは全て電気で動いているから丁度いいのだ。
「黙ってないで答えろよ。自社の宣伝を脳内でするな」
全く、読心術(テレパシー)を持っている奴がいるとステマもできないじゃないか。
「はぁ…。今は出ないように制御してあるから安心しろ」
「制御しないとどうなる?」
「弾がスカイスクーターに当たると爆発四散して人に当たれば頭が破裂する」
「素材は何で出来てるの?」
「企業秘密だ。話を戻して、さっき言った作戦通り動いてくれ。」

「そろそろ時間だな」
時計を見るとそろそろスカイウイングが来る時間だ。
「隠密行動が第一だ。逃げられたら面倒なことになる」
皆が頷くとそれぞれの配置についた。

「空賊がいなくなってからは自由に走れるようになっていいなー」
「俺らのスピードに付いて来れないやつは破壊されるだけだ!」
頭の悪そうな会話をしている奴が来た。
「そこの人間。ちょっと止まれ。規定速度を超えた運転には罰を与える」
「なんだ?お前。この時間は俺らの遊び場になってるんだ。事故が起きてもどうなって―」
恐らくボスと思われる人物がフルスロットルにして逃げようとした瞬間に何かが弾ける音が鳴った。
「どうなるんだ?モーター異常を起こしてるぞ」
「おい待て。御門と私たちのスカイスクーターは同じなのか?」
星が言うのも分かる。スカイスクーターから追尾型(ホーミング)ミサイルが発射したからな。これはスカイスクーターの開発陣というか、俺しか知らない戦闘形態だ。兵器になる物は厳しい今の世の中ではこうやって隠すしかないんだ。
「な、なんだ!逃げるぞ!」
「逃がさないぞ。試運転させてもらうぞ」
「試運転の試が死になってそうだね」
「まさに、死運転だな」
「流石に危険よ!止めなさい」
石田の声も虚しく俺は逃げ始めたスカイスクーターのエンジン部分を片方だけ破壊して逃げられないようにした。

スカイウイングのメンバーは怯えた表情でこちらを見ていた
「た、頼むから命だけは―」
「俺らのことを何だと思っているんだ?そんな酷い奴じゃないぞ」
「俺『ら』って何!御門くんの単独でこんなことして…。っていうかあの配置ってミサイルの爆破範囲から離れるためだけだったの⁉」
「ミサイルを飛ばしてエンジン停止をしたら殺されるって思うだろ」
「全く…。竜はどうしてこうも常識が欠落してるのかしら…」
「お前らうるさいぞ。スカイウイングと俺だけで話すから帰ってくれ。報酬金だけは振り込んでおかないと理事長室を爆破するって伝えておけ」
「もう、ツッコミに疲れた。帰ろ」
三人は呆れた表情をして帰った。

「さ、お前らのデータカードをよこせ。新しいデータカードを渡すから。後は解散」
スカイウイングの面々は呆気にとられた表情でカードを渡した。このデータを開発材料にできるから暇つぶしの遊び道具に丁度いい。今回は随分と面白かったな。
またこんな事が起きればいいな。いや、起きなくていい。

昨日は夜遅くまでデータ解析してたから眠いな。授業も面倒だし、今日は屋上で寝るか。
「御門くんに朗報でーす」
「今日は寝るからまた来週辺りに教えてくれ。じゃ」
「じゃ。じゃないよ!君にはある任務を任せたい。もちろん報酬は弾む」
「なんだ?俺に任務とは珍しいな。早く教えろ」
「……。切り替え早いね」
「金が貰えるならやるに決まってるだろ」
「修練場で戦闘訓練の教官をやって欲しいんだけど。いいかな?」
「戦闘訓練か。下らない授業を聞くよりは価値があるな。報酬貰えるし」
「お金目当てなのは分かってるけど、手のひらの返し方が異常だよ」
「戦闘訓練って何すればいいんだ?訓練生をボコボコにすればいいのか?簡単だな」
「いい訳あるか!戦闘技術を学ばせて欲しいの。ここの学校って肉弾戦ってほとんどしないでしょ?」
確かに、この学校は魔法に関しては右に出る学校はいないが、肉弾戦が如何せん弱い。受け身すらできてない。そんな奴に高度な魔法を覚えさせるなと思うが、防御魔法があれば必要ないからな。
「ん?そういえば教官って杉原(すぎはら)直輝(なおき)って奴がやっているんじゃないのか?」
「杉原君なら今日から支部の仕事で2週間ほど戻れないから代わりにやってくれって頼まれたの」
探偵支部は国から仕事を依頼される。その仕事内容は主に保護区外で暴れている魔物に憑りつかれた人間の救助と魔物の駆除だ。距離も大規模になるので期間もかなり長くなる。しかし…。
「みなまで言わないで。分かってる。僕たちがいれば一時間で終わるけど」
「面倒だからやりたくないね」
背後から声がした。
「星。仕事をしてこい」
「でも、教官業って面白いよ。色んな人間の動きや癖が見えるから楽しい」
星は気分良くスキップしながら修練場に向かった。
「話を聞け」

結局のところ、話を無視され修練場に着いた。
修練場は模擬魔法訓練というこの学校の実技科目に使用される。魔法の使い方を学ぶ授業にも使われるが戦闘訓練や遠征訓練の事前指導にも使われる。実際の戦闘をイメージして地面が少し乾いてるせいで少し埃っぽい。
「着いて早速だが、しばらくここで教官代理をする御門だ。そんなことより修練場で練習する意味は分かるか?」
修練場には訓練に参加した人は約30人ほどだ。俺は質問を投げかけたが皆顔を見合わせていた。実際の話になるが攻撃されたら防御魔法で防げばいいとは思っている。
「相手の攻撃を瞬時に見極めて攻撃を避けるためです!」
誰かがはっきりとした声で答えた。そんな目的なのか?武器や魔法を使えれば何でもいいとは思っていたが…。
とりあえず訓練用の武器と防具を倉庫から引っ張り出して基本的な受け身くらい学ばせるか。
「武器は木の剣で防具は革素材だ。危険は少ないが―」
剣の切っ先が目の前をかすめた。不意打ちにしては優秀だが…
「脇の締めが甘い。防具も着てないし危険だぞ」
脇腹に蹴りを入れてやったらそのまま転がって壁にぶつかった。
「あ!生徒に攻撃しちゃいけないって言ったでしょ?飯田ちゃん大丈夫?」
本来は修練場で現在教官をしている杉原直輝は化神(けしん)という死神を召還したり自分自身に憑依させる能力で本来は悪魔がよく使う能力だ。しかし人間が使うものだから珍しいしクラスXではかなり異質だ。
それはそれとしてそこで頭をさすっている飯田という女は怪我はしていないな
「うん。受け身は取れてるから問題はないな」
「つまらない。ただ、魔法能力が他より高いからって見下してるの?私達には一切手を触れることなく負ける。所詮は人間だからだ。飯田もっと修行しろ」
「ストーップ!何してるの?圧力で洗脳しようとしない」
星を制止している西園寺を横目で見ていると
「教官代理。そこの人は後で補習でもして今日も実技演習をお願いします」
どこか毒のある言い方をする生徒もいる。人間って他の動物とは違って本当に感情豊かだな。
「そこの人間は素行不良で悪い人に殺されそうになったところを杉原さんに救ってもらったんですよ。そこまでしないと素行を改めないクズ―」
「下川ちゃん。星くんの味方をしない。悪い手本は真似しない」
報酬の取得条件が教官代理を7日間やることだから終わらないと金が手に入らない…。
「黙ってお前らやるぞ。教官代理が厳しく指導するからな」
武器と防具を参加者全員に渡すと下川とやらはやる気に満ちた顔で剣を構えた。
「装備を装着した者からここに集合しろ」
近接攻撃は俺の専売特許だ。容赦はしない。
「いや、死人出るからやめてね」

「皆装備を装着したな?では、いつも教えている方法とは違う方法だが文句は言うな」
下川だけが明らかに嫌そうな顔をしたが、気にせずに始める。
「剣は近接武器の中でも一番使いやすい。それに魔法や遠距離武器を使う奴でも近接武器に対する知識や技術がないと対抗手段が分からないだろう」
下川が手を挙げた。
「教官代理。能書きはいいので早く実践で教えてください」
「下川。自己流でこちらに攻撃しろ。手加減はするな」

「そ、そんな…。攻撃が一切当たらない…」
5分ほど下川は攻撃をしていたが全ての攻撃を交わし続けて分かったことがある。
「下川。お前の動きは基本的な動作の積み重ねばかりだ。もう少し動きを悟られないようにするべきだ。それと」
「まだ何かあるんですか?」
「とりあえずお前が教えろ。今日はこれで終わりだ」
木刀を倉庫に戻そうとしていると背後から気配がした。
「遅い。2日後に実践訓練に行くからそれまでに鍛えておけ。ちゃんとやらないと死ぬぞ?」
腹に蹴りを入れるとその場に倒れた下川を鼻で笑いながらその場を後にした。
さて。俺はこれで2日はのんびりできるな。

竜と神と人間と#6

竜と神と人間と#6

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青年向け
更新日
登録日
2018-04-22

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