短編集

虹の雨

タイル貼りの階段をのぼって地上へ出ると、外は雨だった。
 2月には珍しい、土砂降りの雨。
 雨音のせいか、それとも単なる酔いのせいか、上司たちが怒鳴らんばかりに2件めの店の相談をし合う声
を背に、美夏みかは傘を開いた。
 ――失礼します、今日はごちそうさまでした。えぇ、地下鉄で帰ります。
すみませーん、お先に……
 笑顔の同僚たちに愛想よく頭を下げて、美夏は雨の中に踏み出した。アスファルトの上で跳ね返る雨粒が、
エナメルのハイヒールを台無しにしてゆく。
 先月買ったばかりの靴だった。淡い桜色に薄墨を混ぜたような抑えた色合いが、26歳の自分にぴったり
だと思った。ショップの鏡の前で履き心地を確認しながら、美夏はここ数ヶ月、いつも自分の心の大部分
を占める彼女のことを考えていた。
7センチのヒールを履いて並んだら、あのひとを見おろすことになりはしないかと。
美夏がひそかに想う西村綾奈にしむらあやなは少年のようなすらりとした外見だが、身長はさほど高くない。
初めて綾奈と会ったのは、3か月前に派遣されたいまの職場――フォトスタジオの事務所でだった。
狭い事務室の片隅でPC画面と首っ引きだった美夏は、ふらりと事務室に入って来た綾奈を見て、
ファッション誌の撮影に呼ばれたモデルの1人だろうと思い込んだ。
モデルの容姿はピンからキリまでバラエティに富んでいるが、どういう訳か、彼女(彼)らは
コミュニケーション能力に長けたフレンドリーなタイプが多い。そのときの綾奈
も美夏と視線が合うなり、満面の笑顔でこう話しかけてきたのだった。
すでに顔見知りのように。
 ――チョコレート好き? 良かった、一緒に食べようよ。でも4個しかないから、みんなには内緒……
事務用の椅子にあぐらをかいて座り、チョコをひと口齧っては「美味い!」だの
「あ、黒胡椒入りだった。そっちは?」だのと、ひっきりなしに話しかけてくる綾奈に
仕事の手を止めてコーヒーを淹れてやりながら、美夏はたちまち彼女に好意を抱いた。
けして恋愛感情ではなかったけれど。
モデルではなくカメラマンなのだと会話の中で知った。
もったいない、と美夏は内心思ったが、口には出さなかった。
美夏がより心惹かれたのは、整った造作よりも、めまぐるしく変わる表情と
少しかすれた耳に心地好い声のトーンだった。毛玉だらけのセーターとぼろぼろの
ジーンズも、だらしない印象ではなく、むしろ、綾奈の少年のような魅力を際立たせていた。
セーターの襟首から伸びた細いうなじに、美夏の懐かしい記憶が呼び覚まされた。
中学時代の初恋の相手。
隣のクラスの男子生徒だった。内気な美夏は告白することも出来ず、いつも
後ろ姿を目で追うだけだった。まだ線の細い肩とすらりと伸びたうなじ、
産毛の生えた子どもっぽい耳たぶ……
そこまで思い出して、美夏は現実に引き戻された。
綾奈の薄い耳たぶには、左右合わせてピアスが5つ、光っていた。
「ねぇ、開けるときって痛くないの?」
思わず距離感のない口調で問いかけてしまい、しまった、と美夏は慌てて口を
つぐんだけれど、綾奈は気を悪くするふうでもなく、えへへと笑った。
「痛いよ~。でも痛いのより、開けるときのぞわぞわする感じがたまんないんだよね。
 それ味わいたくて、10代んとき、やり過ぎた。いまはさすがにやんないけど」
もう大人だし、と笑う綾奈に笑みを返しながら、美夏はまったく別のことを考えていた。
いまより少しだけ幼い綾奈が、鏡を前に、恍惚こうこつとした表情で安全ピンを耳たぶに突き刺す光景だ。
貫通した穴の縁に血が滲にじんでいるのにも構わず、ピンをゆっくりと抜き差しする手を止められず
にいる少年のような少女の姿だ。
苦痛を伴う快感は、眩暈めまいがするほど気持いい。
そのことを、10代の綾奈はいつ、どのような経緯で知ったのか。
そこまで想像して、美夏は組んだ脚をきつく閉じた。興奮していた。
いままで同性はおろか、異性にすら感じたことのない衝動的な欲望だった。

恨喰~ウラミグイ~

夜の路地裏で化物が男を襲っていた。
「うぐっ…は、離せ!」
化物は相手の言葉を無視して尾に付いた毒針を腹部に刺して男を離す。
「この化物!俺を離した事を後悔しろ!」
男はナイフを出して化物に向かって刺そうとした。しかし、男の顔色が変化していった。
「う…うぁぁぁぁ―」
男はナイフをカランと音を立てて落とした。男は倒れて体を痙攣けいれんさせた。
「もう虫の息か…。味はどうかな…?」
頭を丸ごと食べた。味はまぁ…今までのよりちょっと硬いな…。
脳はちょっと腐ってるな…苦いな…。
「腹を開くか…」
腹を鋭利な爪で開き臓器を覗いた。
「程よく腐敗したな…。この人間はちょうどいいものを持ってるな…」
化物が口を開けると無数に生えた牙が見え、月の光に反射してギラリと輝いている。
「味はどれほどかな…」
臓器を取り出して食べると口の中で血が吹き出して口から血が溢あふれていき
化物の足元に血溜まりが出来始めた。
「想像通り腐敗していた…。ここまで美味い人間がいるとは…」
化物が小さく唸うなりながら死んだ人の肉を貪むさぼっていった。

ー朝ー

目覚ましが鳴り手探りで止め、時間を見た。
「今日もまた苦痛が始まるのか…」
夜西奏よるにしかなではため息をつき渋々着替え学校に行く支度をした。
『2-C』と書いてある教室の扉をガラガラと壊れかけの音を立てながら開けた。
教室の扉を開けると男が1人近づいて来て僕の髪を引っ張り上げて
「よく不登校にならないな~スゲェ精神力だな」
この男は林堂俊りんどうしゅん学校一のモテ男であり僕を虐いじめている人だ。
「相変わらず眼鏡とマスクは付けてるんだな。」
林堂の近くのメガネをかけた男が寄ってきて
「眼鏡君また来たんだね。全く君の精神力の強さには驚いたよ。早く不登校になってそのまま自殺してくれないかな?」
この男は武田秋彦たけだあきひこ学校一の秀才であり林堂と小学校からの幼なじみらしい。
この2人が僕を虐めている。
私物には手は出さないものの肉体的かつ精神的に虐めている。
「こんなに言われてるのに何も言わねぇのか?」
「HRだぞーさっさと座れー」
先生が入ってきたと同時に林堂と武田が何食わぬ顔で自席に戻った。
HRが終わるとまたあの二人が戻ってきた。
「君達は僕以外に友達はいないの?」
「放課後体育館裏に来い…。それだけを言いに来た」
「僕も同じ内容なので…」
二人はそういうと他のクラスの女子たちのところに向かった。
「夜西君大丈夫?困った事があるなら何でも言ってよ」
今僕に話しかけているのは三日月結夏みかづきゆうかで学級委員長だ。
正直言うとこの女も僕を陰で虐めてる一人だ。優しくしているのは生徒からの信頼を
得る為だけであって放課後は林堂と同じように僕に暴力を振るってる。
「ちょっと!無視しないでよ!せっかく心配してるんだから…」
…どの口が言ってるのだか…ため息をつき移動教室の準備をした。

「移動教室って言う言い訳を使って保健室に来ないでくれるかな?」
白衣を来た女医務が煙草たばこを吸いながら言った。
「貴方が煙草を吸いながら言っても説得力0ですよ」
「煩い!授業はサボるな!」
保健医の立花流音たちばなりおんは紫煙を吹かしながら怒鳴る。
「カナくんはよく耐えられるよね?辛く無いの?」
「辛くないですよそれよりテレビ見て下さいよ、また高校生が惨殺死体ざんさつしたいで発見ですよ」
「また、?しかも内臓が全てなくなっていて鋭利な歯が落ちてるって」
僕も思うがこの事件は人ならざる者が関わっていると思う。
てか、僕が犯人だけどね。『バリズ』と呼ばれる怪物に変身できるなんて誰も思わないだろうね。
僕の一族は不思議な力を持っている例えば電気を起こしたり、火を発生させたり
はっきり言って怪物だ。僕の妹は殺人鬼の魂を操って他人に殺害をさせる。
お母さんは翼の生えた一つ目鬼になって人の首を切っていくし
お父さんはビジョンという精霊のようなものを使い度々通り魔をやっているし
僕の家族は罪人と呼ばれる種類で火を使う一族は炎人と呼ばれたりする。
僕は怨みを込めると家族の中で一番気色悪い怪物に変身する。
僕は怨みが力の源になるから常に怨みたくなるような状況にする。
「気持ち悪いのが住む町になっちゃったねー」
「そうですねーでは僕は寝ますので授業終了の鐘が鳴ったら起こして下さい」
キーンコーンカーンコーン
「はい、鐘が鳴ったから教室に戻ろうねー」
ホントに寝てても文句言わなかったな…。この先生だけは信頼してるよ。

教室

「HR始めるぞー、てか言うことは無いので以上。じゃあ掃除は各自やっとけー」
適当過ぎるだろ、この先生はよく先生になれたな。
まぁ、松田(まつだ)(ひろし)は僕の一族の仲間だけどね。働人(ワークマン)っていう変身すると筋骨が隆起した怪物になってバリズ以上に気色悪くなる。
さて、今日こそあの3人を仕留めて今日の夜ご飯にするか

体育館裏

「来るの遅いよ…ってま、またあの怪物が来た…」
林堂が驚き他の二人も気付く。
バリズが素早く3人の逃げ道に回り込むと
「く、来るな!俺がなにしたって言うんだよ!」
「怪物…。お前は何がしたいんだ!」
「そ、そうよ私達を食べたって美味しくないよ!」
僕に恨まれるようなことをした。お前らを我が家の夜ご飯にする。
確実に美味い。
僕は3人の問い掛けに心の中で答える。
ザクッ!
バリズの尻尾が三股に分かれ3人の頭に刺す。
「………」
3人は死んだ。調達完了。

仮面

僕は本性を隠してるどんな人にも…
この仮面を壊す人はどこにもいない
壊すような人がいるなら排除すれば良いとただ思い
仮面を壊さずに外す人を探してる
でもみんな僕の『嘘』を信じている…それを『本当』の事かのように
いつかこの四角い箱から飛び出て嘘を破る人を探す旅に出たい

幸せそうにしているが実は嘘を吐いて生きてる人だって僕以外にも沢山いるはず
そんな人間の仮面を仮面を被ったまま外していきたい
そんな人間になりたい……
そして僕は永久に嘘を吐く…

だって仮面は外れずにもう同化しているから

血の味蜜の味

人の幸福を恨み妬む人は今血を飲んでいるに違いない
人の不幸に笑い喜ぶ人は蜜を舐めているだろう
弄れて生きてる人間は世界に沢山いるだろうでもその気持ちに正直になる事も大事だと言うことも覚えて欲しい
僕の様な欺いて世に反する様な人にはなってはいけない
もしなったなら他になってしまった人を治せばいい
そうすればいずれ自分に正直になれる人になれるだろう
そんな人間を見るのと「血」が美味しくなってたまらなくなるのだから

もう一人の自分

「もう一人自分がいればなぁ…」
この言葉を聞いた地蔵は青年に力を授けた。

「また知らない間に喧嘩しないでよ」
「うるせぇ人の勝手だろ!」
「この体自体は僕の体なんだから好き勝手に使わないでよ!」
僕は怒っていた。この男…いや実体は持っていないが何故か僕の体に取り憑いてる
もう一つの人格。名前は「モミジ」というらしい。1年前に路地裏で喧嘩してる最中に腹を刺されて死んだという事だけを聞いた。
この話が本当ならこれは幽霊なのか…。
「つーか俺を呼んだのはお前だろ!文句言うな!」
「君以外の人格なら文句言わないけどね…」
この人格がこの世にきた理由は今や代表的な都市伝説「こっくりさん」を使って
霊界に穴を開けたのが原因で未練がある霊を成仏するために来たとか…。
正直言って嘘くさくて廚二っぽい事を言われた所で「他の人に憑けば?」としか思わない。
しかもこっくりさん自体をした時には何も憑いていなかった。
では、何故憑いたのか。それは通学路にある摩訶不思議な地蔵にこっくりさんの時に使った
十円玉を供えて「もう一人の自分が居ればなぁ」と呟いてしまったせいで憑いたのだ。
「でさぁ君が言っていた未練の残った霊を成仏って無理ゲーに近い気がするんだけど…」
僕には霊感が欠片も無い。だからこっくりさんを試したのだ。
しかも何も起こらなかったという…。
「実体がお前に見えなくても俺が見えるから大丈夫だ!」
「部屋に誰かいるのー?」
部屋の外から母の声が聞こえた。
「今電話してるー」
と言うと
「声小さめにしてねー」
と返って来た。親にもこの人格の話をしたいのだが言った所で無視されるだけだししていない。
「で、話戻るけど実体が見えたとしてその霊をどうやったら成仏できるの?」
「掃除機で吸って回収すればいいんじゃないの?」
「それは別のゲームの話…」
「―ってのは冗談で霊自体は『物体』または『人体』にしか憑かないから異常があったらすぐ分かるんだ」
「物体に憑いたら『からかさオバケ』のようなものになるのは分かるけど人体に憑いた場合はそうすれば分かるの?例えば超能力が使えたりするとか?」
そう聞くとコノハは首を横に振り
「見た目じゃなく内側だけ…心が変化するって事だけだから…一目じゃ分からないからお前に憑いたんだ」
「つまり僕が人と交流すれば何か分かると?」
「話が分かる奴だなー」とテディベア(モミジ)が腕を組んで頷いている。
「見つけても不用意に刺激すると攻撃してくるから気をつけろよ?」
「分かった」と言い。学校に行く支度をした。
まさかあんな事で僕は成仏戦線の一員になる事という事はこの時の自分は知らなかった…。

ヤンデレ彼女

ガチャリと家のドアを開けた
「ただいまー」
「…」
部屋に入ると理沙が何も言わずに睨んでいた。
「どうした?」
ドンと壁に押し付けられた。
「痛っ!」
「理沙どうしたんだ?」
「今日、女の子と話してたでしょ?」
理沙が睨みながら聞いてきた。
「あぁ…。結夏の事か?」
「うん…」
「生徒会の事で話してたんだ」
「嘘…。だって仲良く話してたじゃない!しかも手まで繋いで帰ってたじゃない!」
「そ、そんな事無いよ。アイツに取られたケータイを取り返してただけだ」
「とりあえず上書きね…」
腕を押さえられてそのままキスをした。
「んっ!あぁ…離せ…やめ、んっ…ろよ」
舌を入れられて5分くらいキスをしていた。
「プハッ。ハァハァハァ…」
「空がいけないんだよ。嘘はついちゃいけないって言ったじゃない」
「すまん…」
「でも…いきなりは止めろ!死ぬ所だったぞ!」
「ゴメン…」と理沙が呟き抱きついて来た。
「えっ!?」
いきなりの事で驚いた。
「空…これから『外出禁止』」
その言葉と同時にカチャリと手錠を()められた。そのまま部屋の柱に留められた。
「えっ?どういう事?」
「学校にも行っちゃ駄目」
「そ、それじゃ学校の皆が心配するよ!?」
「大丈夫『休学届け』を出しておくから」
「で、でも――」
バンッと棒で殴られた。怖くなってきて震えてきた。手錠がカタカタ揺れてる。
「震えてるの?私の事が怖くなったの?」
「………」
「喋ってよ空の声が聞きたいよ」
「……」
「ねぇ…喋りなさいよ!」
腹を蹴られた。
「うっ!」
「喋らないからこうなるんだよ?」
「今日からずっと死ぬまで空は私の物よ。絶対に離さないよ」
そう言うと体が痺れてそのまま視界が暗くなった。

夢幻~あれはなんだったのか~

教師の話を聞いてると不意に深淵に落ちた
暗くて何もない世界を歩いてると
光が見えた
そこにむかって走るとその先には花畑が見えた
不意に頭に衝撃がはしり
目を開けると見慣れた教室が見える
あれは一体何だったんだろう…

悪夢

俺はひたすら逃げていた。暗く月の光くらいしか明かりが無い真夜中の森でひたすら逃げていた。

「あはは、奏が悪いんでしょ?私の事だけを見てないからこうなるんだよ」
雪奈はそう言うと首を絞め始めてきた。
「ぐっ、は、離せ!」
「暴れるともっと強くするよ?いいの?ねぇ!いいの!?」
「うっ!や、やめろ!」
俺はそう言うと雪奈の腕を振り解き近くの木に向かって突き飛ばした。
「きゃっ!」
雪奈は木に当たり気を失っている。今のうちに逃げないと。

森を抜けると今は誰も住んでいないアパートに入り最上階の部屋に入り鍵を閉めた。
朝になっても帰ってこなければ親は心配して探しに来るだろうし朝まで耐えよう。
明らかに幽霊が出そうなところだが今は幽霊よりも怖い者に追いかけられてるから朝まで待とう。
――カン―――カン
嘘だろっ!あの森とこのアパートまで500mは離れてるぞ。
アパートの階段を登る音が近づいて来てる。やめろっ!来るなっ!
万が一の為に持ってきたサバイバルナイフで戦おう。
ドンッ!
な、何でこの部屋だと分かったんだっ!跡は残してないし何でここまで短時間で辿り着けたんだっ!
「奏の匂いがするなー。奏ー開けてよ。ねぇ!開けてよっ!」
に、匂い?森を出る途中で木の枝で腕を切った時の血か?そんなのであいつは分かるのか?頼む!来るな!
やめろっ!お前の言葉なんて信じるかっ!俺は襖に隠れて息を潜めた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドアを叩く音が強くなってきたドアを破壊するんじゃないかというほどの力で叩いてるようだ。
急にドアを叩く音が止まった。不安になって襖を開けたら
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「見いつけた!」
雪奈は襖の目の前に居た。
「今すぐ奏助けるよ逃げないでね」
「やめろっ!何が助けるだっ!この人殺しっ!美穂を返せっ!」
「あの女は奏を殺そうとしたから殺したのよっ!何度も言ってるでしょっ!」
「嘘だ!信じない!」
「そんなに信じてくれないならあの女のところに行けばいいじゃない!」
ザクッ!
腹を刺された。それもかなり深く。
「…。死んだの?ようやく奏も悪魔から助か…。え?」
ザクッ!
「はぁ、ようやく取り憑けたよ。余計な事をするんじゃねぇよクソアマっ!」
雪奈と言う奴はそのまま涙を流しながら気を失っていった。当然だ首を切られたんだからな。
「前のご主人は弱かったからこれくらいの男じゃなきゃな」
そう言うと悪魔が取り憑いた奏はアパートを出た。

経った1時間で起きた悲しい出来事であった。

漫画研究部の日常

僕こと縫塚は漫画研究部に所属している。
漫画研究部と長いので漫研部と他の部員も呼んでいる。漫画研究という名前ではあるが研究している人はいない。
では、何をしているかというと教室では言えないクラスメイトの愚痴や教師の愚痴を話していたり、スマホゲームで遊んでいたりと研究とはかけ離れている。
「何1人でブツブツ言ってんだよ」
こいつは漫研部の部員の成宮ことメガネだ。僕がそう呼んでいるだけだが。
「どうせまた下らない独り言でしょ?気にする必要ないじゃん?」
この女は仁科こと毒舌だ。軽音部の部員らしいが最近は漫研部に入り浸ってる。
この部活は幽霊部員が多くいつも来ているのはこの2人と
「バイトで疲れてるんだから寝かせてよー」
このように机で突っ伏せてるバイト戦士こと根本が部長だ。
僕を含めて4人しかいない。そのうち1人は部員ではないが…。
しかし、こんな部活だが僕はこの部活が好きだ。無為な時間を過ごしているが授業の疲れが吹っ飛ぶくらい楽しかったりする。そして、今日は新入部員が来ると顧問から話を聞いた。
「ここが、漫画研究部ですか?」
「そうだよ。君が新入部員?」
「はい。そうです。野中です。よろしくお願いします」
新入部員が来た。楽しくなりそうだ。僕の放課後が一層に楽しみだ。

黄昏の森~豹変の花~

ある所にキリヤという街一番の働き者がいたそうだ。キリヤは街一番のお金持ちのアイリととても仲が良く恋人の関係になった。そして、キリヤは結婚を認めてもらうためにアイリの家に行きました。

アイリのお父さんは街でも有名な偏屈者でした。当然アイリのお父さんは激怒。でもキリヤは何度も何度も許しを乞うするとアイリのお父さんは言った
「すぐそこの森、黄昏の森にしか咲かないパンサーフラワーを持ってこれたら許す」
とキリヤは承諾した。
しかしアイリのお父さんは花を持ってくるだけでは足りないと思い条件を足した。
「日没までに戻ってこれたら認める」
とと言ったのだ。

キリヤは翌日の早朝、勢いよく森に走って行った森に入ってからどれくらい経ったかは分からない。
けれどキリヤは花を見つけた。
「やっと見つけた。後は帰るだけ、まだまだ日は沈まないだろう」
キリヤはゆっくりと歩いて帰った。
「お兄さん。その花を勝手に取ってきてはいけないぞ!」
突然現れた老父はキリヤが持ってる花を見るなり怒鳴りつけた。
「何だ?あんたは?俺はこの花を持っていかないと結婚を許してくれないんだ!黙ってどこかに行ってくれないか!?」
キリヤは老父を突き飛ばすとそのまま森の入り口に向かった。
「その花は…人を壊す危険なもの…」
虚しくも老父の声はキリヤには届かなかった。

そして森を出たら何故か周りは真っ暗「なぜだ!?森の中はあんなに明るかっ・・・」
「まさかこれを知っていてあの条件を出したのか・・・」
「おい!!まさかあんた知っててあの条件を出したのか!?」
キリヤはアイリの家に行き家の扉の前で叫ぶとアイリのお父さんは声を聞き、嘲笑うような顔で出てきた。
「わしは日没までにとしか言っとらんが?そなたが間に合わんかっただけじゃないか。わしのせいにするだなんてふてぶてしい餓鬼じゃ」
「これで結婚は破談じゃな。ほれ、とっとと帰れ。」
キリヤは許せなかった。許せなかったからキリヤは腰に提げていた金づちでアイリのお父さんを殴った何回も何回もアイリのお父さんが息をしなくなってからも殴った。
音が聞こえたのかアイリが出てきた
「なにやってるの!?お父さん!!聞こえてる!?お父さん!」
「そいつは俺達の邪魔をするやつなんだよ?死んで当然なんだ」
「もう邪魔者はいない、ほら俺と一緒になろう?」
「や、やだ、こないで!」
「なんで?邪魔者は消えたんだよ?これで結婚できるさぁ結婚式の準備をしないと・・・」
「結婚なんかしないわよ!あんたがこんな人だって知ってたら恋なんてしなかったわ!!帰って!帰ってぇぇぇぇぇ!」
「アイリは俺を拒むの?そんなアイリは俺の知ってるアイリじゃない偽物?ああそうか、偽物なんだね。じゃあ消さないと・・・」
「な、何をいってるのよ!近寄らないで!た、助け…誰か助けてぇ!!!」
「俺を拒むから悪いんだよ?バイバイ」
キリヤはそういうとアイリの頭を金づちで思いっ切り殴った。

血の海となった部屋でキリヤがふと呟いた。
「あぁ、また愛する人を失っちゃった。
なぜ俺は・・・」
こうしてキリヤは別の街に行った。
そしてまた恋に落ち、また愛する人を失う、それを繰り返しているらしい。
もしかしたらキリヤは今、あなたの住む街にいるかも・・・。

キリヤを狂わせたパンサーフラワーこと豹変の花の花粉を吸うと負の感情が膨れ上がり感情を崩壊させてしまう危険な花。日光を浴び続けて根を常に張り続けることで危険な花粉が飛ぶことを抑制していたが、それが無くなると突然危険な花粉が花が枯れ続けるまで飛び続ける。黄昏の森の開けたところにポツンと生えている花は危険な花。パンサーフラワーよりも危険な花はまだある。そして、アイリの家には血を吸い続け未だに枯れることのないパンサーフラワーがある。パンサーフラワーが枯れる頃にはキリヤも命が尽きる。

「なるほど、だから黄昏の森の開けたところは魔法の力で入れないようになってるのか」
「その話で出てきた老父の孫がお前なのか」
「そういうことだ。どうだ?いい暇つぶしにはなっただろ?」
「あぁ、ありがとな」
「ところでお兄さん。その花はどこで手に入れたのだ?」
「黄昏の森だ」

また始まるのだ悲劇という名のループが。

短編集

短編集

様々なジャンルの短編達の盛り合わせ。お腹一杯になるまで堪能してください。 ※一部、流血暴力描写あり。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 虹の雨
  2. 恨喰~ウラミグイ~
  3. 仮面
  4. 血の味蜜の味
  5. もう一人の自分
  6. ヤンデレ彼女
  7. 夢幻~あれはなんだったのか~
  8. 悪夢
  9. 漫画研究部の日常
  10. 黄昏の森~豹変の花~