王道ラブコメなんて信じない16

恋の成就妨害、学校の怪談の秘密事件、ストーカー被害解決と探偵部創設から2週間ほどで3つの依頼を解決した翌日。
「依頼を3つ解決したしそろそろ生徒会が介入してきたりしないのか?」
大体新設した部活で依頼を解決するとなれば定番の事だろう…。
「そういうこと言わないで下さい。ここの生徒会は奇人変人が組織しているからそういうのはアニメの世界だけにして欲しいです」
委員長はしれっと毒を混ぜた返答してきた。この部活に入ってからというもの委員長の聖人君子というレッテルがそろそろ剥がれそうだ。
「部活やってるかー?依頼持ってきたぞー」
A4サイズの紙をヒラヒラとさせながら西宮先生が入ってきた。
「今日はどんな依頼仕入れてきたんですか?」
おい金髪。完全に依頼を鮮魚と同じような扱いをしたな。
「生徒の貴重な依頼を鮮魚と同じ扱いをするな」
まさかの同じ事思ってたのか…。何か死にたい…。
「えっと…。生徒会からの依頼?」
「ついでに言うと星宮お前に指名が入ってる…ってもういない!?」
生徒会の依頼だけは受けたくない。てか、本当に介入してくるのかよ。フラグ回収が早すぎる。そういうのはもっと先でいいんだよ。

「生徒会辺りで鞄持って窓から逃げましたよ」
「アイツ…。逃げやがったな」

「部室が1階だから何とかなったな。てか、生徒会の依頼とか絶対岸本の差し金だろ」
靴も履き替えたし今日は本屋にでも寄っていくか…。
「あら、海斗じゃない」
甘ったるい声に悪魔のようなオーラ。この女…。
「うわっ!どこにいやがった!離せ!」
逃げようとしたら後ろからホールドされた。
「人を化け物みたいな扱いをして年上の幼なじみにはもっと優しくしてよぉ」
この女は芹澤美穂。この学校の生徒会の副会長だ。俺の幼馴染で岸本とも仲が良い。ついでにその見た目からは想像出来ないほどのドSだ。
「美穂っ!会長がサボってお前までサボると生徒会の仕事止まるから早く来い。ついでにサボり魔の星宮も来い」
更に面倒なのが来た。富樫琴音は生徒会の会長補佐で生徒会の仕事はこの女が殆どやっている。
「両手に花だねー。海斗は幸せ者だよー」
その花が棘だらけの薔薇じゃなければ幸せなんだけどな…。

「離せ!今日は帰るんだ!」
拘束している腕を振り解こうとしたら、更に拘束が強くなり
「私が柔道部なのは分かってるよな?死にたくないなら暴れるな」
「海斗?私が合気道やってるの知ってるよね?少し眠ってもらうけどいい?」
「分かった…。大人しくするからやめてくれ」
女2人すら振り解けない自分が情けない…。

女2人に拘束されながら生徒会室に入り1時間ほど経過した頃。
「この資料をひたすら封筒に詰める作業をしろと?」
囚人みたいなことをするのが生徒会なのか…。
「資料のチェックは済ませてるから早くやれ」
隣で死んだ目をしながら作業をしている生徒会長の井上駿は偉そうに指示をした。
「それが人に頼む態度かよ」
舌打ちしながら文句を言うと
「海斗?逆らうと花梨呼ぶよ?」
芹澤さん目が笑ってないのでやめてください。
「はぁ…恐怖政治ってのは怖いな」
昔のドイツとかもこんな感じだったのか。死にたくなるな。
「その資料を香坂総合高校に持っていって欲しいっていう用件を依頼したんだがお前には香坂総合高校の魔法科の生徒会にこの資料を美穂と一緒に行ってもらう」
香坂総合高校はこの学校の姉妹校で世界で初めての魔法使いを育成する全寮制の学校だ。正直嘘くさい。まぁ、陰陽術を使ってる自分が言えたことではないが…。というか、芹澤と行くの嫌なんだけど…。
「ついでに言うとお茶菓子も貰ってきて欲しいな」
「そんなの生徒会の経費で買えばいいんじゃないのか?」
「それは無理だ。経費を抑えてるからそういうものは自費で負担してもらってる」
この鉄仮面はケチくさいな。生徒会は金を結構使えるのに勿体無いな。
「普段は飯田さんにクッキー作ってもらってるの。今日もクッキー作ってきてるのよね?」
飯田和葉は生徒会の会計らしい。低予算でお菓子を作るのが得意という噂は本当だったのか…。
「何で分かるのよ…」
ぶっきらぼうに答えると
「そりゃ凛が鼻をひくつかせてるんだから分かるよ」
井上が生徒会書記の甲斐田凛を指差しながら言うと
「犬っ!鼻へし折るよ?」
ギラりと甲斐田を睨む飯田。
「ひぃ!だって、美味しい匂いがいつもするからしょうがないよ…」
そして、睨む飯田を怯える甲斐田。この2人は対になっていて見ていて面白い。
「作業が終わったら皆で食べるか?」
パソコンから視線を外した富樫がそう提案した。今は腹減ってないし終わったら帰るか…。
「海斗もだよ?」
あ、俺の事忘れてないのか。早く帰りたいのに…。
「という事だから井上くんも一緒に行くよ」
どういう事だよ。まぁ、被害者が増えるなら別にいいが。
「は?いや、俺は関係無いじゃん」
「秘密…」
「分かったよやればいいんだろ」
この男も何か弱点を握られてるのか…。可哀想に…。

作業も終わりお菓子を食べながらふと思い出した。
「そういや依頼料が欲しい」
「あの高校で何かしら魔法関係の道具貰えるからそれが依頼料だ」
井上がスマホをいじりながら答えると
「てか、結局その会長も来るんですか?近くにいるだけでアリが寄って来そうな人が付いてくるのは勘弁して欲しいんだけど」
「俺を何だと思ってるんだよ。そこまで甘い物の匂いしない」
噂の甘い物同盟とかいうのに入ってるんだから有り得そうだけど
「はぁ…。とりあえずお前ら明日、香坂駅前集合な不安だから私と美穂も付き添いで行く。いいよな?」
逃げられない布陣かよ。てか、明日は土曜だぞ。休日出勤とか嫌なんだけど…。
「二人共、生徒会の仕事はないから明日はフリーだよ。ん?仕事?いいよ。私達がやっておくよ」
また、面倒な仕事をやらなきゃいけないのか…。探偵部なんて訳の分からない部活に入らなきゃよかった…。

王道ラブコメなんて信じない16

王道ラブコメなんて信じない16

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-21

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