転校生はアイドル!?15話

オレ、美香、吉田、音原、上里の5人で原田の家へと向かった。原田家が経営している図書館とさっきまでいたカフェは近いが、カフェ経由で原田の家に行くとなるととても遠い。美香が関係してるから行くことにしたが…。

「で、わざわざ相談しに大勢できたと」
1つ突っ込ませろ。何で、クッキー作ってんだ。
「原田先輩何でクッキー作ってるんですか?」
「親に頼まれたから」
前もパフェ作ってたし、ほんとなんなんだよ、このスイーツ男子は…。
原田はクッキーをオーブンに入れた後にこちらを振り返り
「クッキー焼きあがるまで時間あるから話聞くよ」

美香の部屋に6人全員集まった。
「気配りだけは世界一だな」
6人分の飲み物とお菓子が置かれたのを見てオレがそういった。
「一言余計だ。で、何を聞きに来たんだ?」
「美香さんが何で翔さんと喧嘩別れしたのか知ってますか?」
上里が可愛く首を傾げながらそう言った。
「知ってるよ。桐生翔自身から事情を聴いてるからね」
即答だった。なるほど…は?どういうことだ?
「おかしな事言うなよ。何で知ってるなら、美香に伝えないんだよ」
「その時が来るまで話すなって桐生に言われたから。でも、その時が来たことだし教えるよ」
オレ達は固唾を飲んで原田の次の言葉を待った。しかし、
「ね、ねぇ、私はいいよ。分かったから。張本人だから」
「いいのか?美香」
原田がそう聞くと
「私から話すよ」

ここから美香の昔話
「私はね、前の学校でいじめられたんだよ。3人は私とクラスが違うから知らないだろうけどね。アイドルになる前はいじめはなかったの。アイドルのスカウトをされて興味本位でアイドルを始めて、初めてトークショーに出た時にすごいウケちゃって、そこから人気が出てね。そのくらいの時期からクラスで私に対してのいじめが始まってね。それでも私はめげずに頑張ったんだ。その時に翔に会って「俺が守るから!今からお前の彼女兼マネージャーになる!」って告白されて、そこからは翔がいじめから私を守ってくれたんだよ。机の落書きや、物が無くなることも減ってきたんだよ。でも、今度は先輩達からのいじめがきて、翔は限界だと思い私を先に家に帰した後に学校によったらしいんだよ。翌日に学校に行くと先生達が大慌てで職員室に向かってたんだよ。私は気にしながらも教室に入ったら皆神妙な表情をしてたんだよ。翔に聞いたら他クラスにも私がアイドルやってるって事を言って学校中に広まって色んなところから人がやってきたんだよ。私はその時に思ったね。翔も裏切ったんだなと、全てが嫌になり学校を飛び出して笹木さんに言ってマネージャーを変えてもらうことにしたの。そのまま転校をすることを学校に伝えて、ここに至るの」

昔話終了。すごいな。あのチャラい男がそんなに良い奴だとはね…。
3人は少し涙ぐんでた。
「でも、美香。まだ話は終わってない。何で翔があんなことをしたか分かるか?」
原田が少し哲学者的なことを言うと
「知ってるわけないじゃん。あんな男のことなんて興味ないもん」
と美香が半ギレ気味で返した。まぁ、そりゃそうだな。性格悪いな原田は…。
「美香がいじめを耐えようとしてる姿が見ていて辛くて転校させようと思ったんだって。ついでに嫌な記憶になっているいじめられていたことを忘れさせるためにあんなことをしたんだよ」
いいことを言うな。
「嘘だっ!そんなの信じない」
美香は怒鳴った。オレを含め皆驚いた。
「どうせ、他の人達と同じなんだよ。裏切って弱いものを見て笑うんだよ」
美香は涙を流しながら言うが、言葉はとても弱々しかった。
「美香、本心じゃないだろ。今度会ったら、謝ろうオレも一緒にいるから」
オレがそういうと大泣きし始めた。オレは美香が泣き止むまで抱きしめていた。

「普段バカ従兄とか言ってるけどありがと、なんか元気になったよ」
「いつも元気だろ、明日も学校あるんだから頑張れよ」
何のラブコメだ。百合系のラブコメになるのか?ありえん。まぁ、そんなことは置いておいてとても充実した一日になったな。
皆と別れ、オレは家路についた。

転校生はアイドル!?15話

転校生はアイドル!?15話

平凡な毎日を過ごしていた少女は、徐々に非凡に巻き込まれる。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-04-21

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