*星空文庫

いちごあめ

木犀スイ 作

放課後。
「担任に呼び出されているから少し待っていて欲しい」とのことなので教室で本読んで待つことにした。
時間にして二十分くらいだろうか。
体感的にはそこまで時間を長く感じなかったので苦ではなかった。
「待たせてるから急いで来た」と少し息の荒い先輩。
ハッと何かを思い出したようにゴソゴソとズボンのポケットを漁りだす。
すると、何かを見つけたようでパッと花が咲いたように笑い、何かを握った手をわたしに向ける。

「はいこれ」
「なんですか、これ」
「苺の飴だよ」
「いえあの…それは見てわかるんですけど…」
「この飴すきなの」
「はぁ…」
「美味しいよ」

これは暗に食べろと言ってるのだろうか。
しかし今は飴を食べる気分ではない。
何方かと言えば肉まんとかピザまんとか、そういう温かくて胃にたまるものが食べたい気分。

「えっと…後で頂きますね」

カーディガンのポケットに入れると少し悲しそうな先輩。
いつも笑ってる先輩にそんな顔をされたら少し居心地が悪い。
そんなに食べて欲しいのだろうか。
なにか深い意味でもあったのだろうか。

「苺、嫌い? 」
「いえ、そういう訳ではないですけど…」

そんな悲しそうな顔をされると何だか意地悪をしてる気分になってくる。
食べたらいつもみたいな先輩に戻るのなら食べるという選択肢を選択する他ない。
ぽわぽわした笑顔を浮かべる先輩の顔がわたしは好きだから。
ポケットを漁って貰った飴を出す。
ペリペリっと包装紙を外すと赤くて綺麗な飴があった。

「…いただきます」

カランと口の中に飴を放り込むと優しい甘さが広がった。
甘酸っぱくて美味しい。

「美味し?」
「はい。甘酸っぱくて美味しいです」
「ふふ。良かった」

ふにゃりとした笑みを浮かべる先輩。
いつもの先輩の顔に戻って一安心した。
この笑みで何人の女の子が恋をしたのだろうか。
正直この笑顔にはそれだけの効果はあると思う。

「帰ろ」
「はい」

カランコロンと口のなかで飴が踊る。
嬉しそうに口をもごもごさせている先輩は可愛い。
前に小動物みたいだと言われていたのを思い出してふふっと笑ってしまった。

「なあに?」
「何でもないですよ」
「ほんとに?」
「本当です」

じっと疑いの目を向けてくる先輩の視線をかわしながら今日も先輩と帰路につく。

『いちごあめ』

確かに恋だった様からお題をお借りした「キャンディ」でした。
ふわふわ笑うちょっと不思議ちゃんなわんこ先輩を意識してみたけれど難しい。
いつかリベンジする。

『いちごあめ』 木犀スイ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-04-16
Copyrighted

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。