*星空文庫

お手伝い

音澤 煙管 作

お手伝い

雨の日と幼少期の回想。

いつの時代も、雨の日に気づく事。

お手伝い


日曜日に雨が降ると、
幼稚園に上がる前の
物心がつき始めた頃を思い出す。

少し冷たい感じと、
季節の地面に浸みた雨の匂いは
時間を経た今も昔も変わらない。

今の様に便利な物はあまり無くて、
デジタルと呼ばれる物は
時計と電卓くらいだった頃、
必要最低限の生活をして居た時代に
それ以上は求めず、欲は二の次にその日その日を何事も無く過ごすだけで良く、それなりの笑顔が平和でテレビが娯楽の暮らしをして居たから、現代の様な共働きもしなくても良かったのでいつも側には母親が居た頃の雨の日を思い出す。

当時は平家の借家住まいで、
そこそこな大きさの庭も有り、
其処には使われては居ないが井戸まであった。
トイレも軒が繋がった離れにあって、
無論のくみ取り便所。
雨の前日になるととても臭ったので、現在の気泡予報士よりも的中する。

月に何度か衛生車と呼ばれるタンクの車がくみ取りに来た、物珍しいのかその作業を食い入る様に近くで見ていた覚えがある。
その匂いは、自分たちが排泄した物で自然の形で現れたものなのだから、作業している大人には臭いと言う言葉は出さなかったし、其れを教えられたことも無いが、あちこちの畑には肥溜めと言うのがあったから、肥やしとして役に立ち、また自分たちが口にする物の栄養になると後から教えてもらうくらいだったな。

朝起きると、一番最初に歯磨きと洗顔を洗面所で済ませるが、当時から歯磨き粉のチューブに色々な味が出揃っていて、歯を磨かない時でも駄菓子感覚で食べてしまう事もした、害は無いがお腹の調子は少し悪かった気がする。

かと言って、子供用の歯ブラシは好きでは無くてちょっと背伸びをして小学高学年生向けを母親に頼んで使っていた、そのお陰か洋菓子を食べるほどの甘党では無かったかは知らないが、歯医者へは30歳を過ぎた時の親不知を抜きに行くまで行った事がなかったな。

着替えも歯磨きも終えると朝食に。

この頃は未だよく分かっては居ない、
幼児向けの番組を観ながらの朝ご飯、頭の中は今日は何して過ごそうか?とか、楽しいことだけを真剣に考えて番組の内容など内心どうでも良かった。

この時間を自分のために、
わざわざチャンネルを合わせてくれている親に悪いと思いながら任せていた。

子供なりの遊び道具は一通りあったが何時も散らかって居て、片付けるように言われる。
言われるままに片付けるが、その最中に遊びだす。

片付け半分、遊び半分をして居ても母親は怒らなかった。

今思えば、子育てが下手だったのか?
面倒だからか?それが子育ての一つだったかはわからないが、
母親自身の家事もあったから、
その方が良かったのだろう。

やがて遊びにも飽きて、真面目に片付けを済ませて半日が経過している、
気が付けばもうお昼前。

今度は大人のテレビの時間で
ワイドショーを観ながらの食事をする
母親の嫌いな芸能人が出ると、
国営放送のニュース番組に替える。

幼いながらも、ニュースで国会でのやり取りを抜粋、討論して居るのを観ながら、何が問題で何を言いたくて、何をしたいのか気になった。
朝の幼児向け番組よりは、子供騙しではないらしい事は気が付いた。

当時は、今の様に汚職と不祥事の時代とも思われる事例が多くて、ワイドショーより面白かったのをよく覚えて居る、不祥事を起こした議員の真似をしてふざけて遊んで居た事もあった。

聞いても分からなかったけど、
気になった人が出てくると母親に質問をする。
はっきりとは覚えて居ないが、
どうでもいい返事だったと思う。
折角答えてくれたのだからと気遣い、
それなりの相槌をして居た。

お昼も終わり片付けた後、母親は買い物へ出掛ける。

雨の日だから、
一人でお留守番の役目を頂いたが
半日かかって片付けたそれなりの遊び道具がまた散らかるが、
今度は片付けやすい様に遊ぶ事にした、性格上同じ事はしたくない。
同じ遊び道具に飽きるのも性分、
違う部屋を物色しに向かう。

父親の趣味だったカメラや、
現像の道具にも手を出すが怒られる事を前提に元に戻しやすい様に弄る。
現像液が沁み付いた匂いが不快に思って途中で弄るのを止める、自分も大人になったらこの匂いで遊ぶのか?と思ったかは忘れたが、現代では便利にデジタル化されて居るから不快ではないかな。

色々ある遊び道具の中から、今お気に入りの一つに絞って遊び始める事にして居ると、母親が帰ってくる。

「ただいまー」
「お帰り、母ちゃん!」

買ってきた物を、冷蔵庫やら台所やらへあちこちに仕分けして置くのを手伝い始める。
未だ小さいので、昔の冷蔵庫の上段へ仕舞うのは無理とわかっているが、冒険心と親切心、暇だから挑戦してみる。

開き扉に付いている棚へ、ソースを入れようと手を伸ばす。
かなりのつま先立ちで無理矢理にも上手く仕舞えたがその瞬間、
隣の細長い筒に当たり斜めになり、倒れて中身が頭上から降ってくると悪臭と冷たさで頭が真っ白に成る。

「うっ‥臭い!何これー?!」

細長い筒の正体は、開けた後のアスパラガスの缶詰だった、しかも賞味期限をだいぶ越えていて腐っていた物。
これを機に、暫くアスパラガスが苦手になった事は言わずもがなだろう。

汚れと悪臭まみれで、少し早いお風呂の時間と成った。
勿論この時代は湯沸かし器など無いから水風呂だ。
寒い、冷たいより臭いが先行して早くこの悪臭から逃れたかったから、何度も何度も頭と身体を洗う。
そのうち、悪臭がなかなか取れなくて面倒になったから全身シャンプー、石鹸を繰り返す、泡まみれのお風呂場。

母親も洗うのを手伝うが臭い顔と半笑い、酷い親である。

入念な除臭も終わり、雨の日としては乾いた風に恵まれて軒先きで干していた洗濯物も渇き、洗いたてを直ぐに着られる事になった。
これが、
災い転じて、、と言う事だったのか?
洗い立て、干したてを着られる
とても心地良い。

着替えもそそくさと済ませ、洗濯物の取り込みと畳む事を手伝う。
姉と母親の下着は手の届く所には置かず暗黙のサインとしてか、
女性へのデリカシーをこの時に知る。
ほぼ、自分のものと小物の他楽に畳める物を担当して居た。

この日の家事も終盤、母親が夕飯の支度を始める。
この時間帯は、アニメ好きの自分はテレビと暫くの時間は睨めっこに成る。
当然の事に料理など出来ない身分、
たいらげるくらいの役目しか無い。

幼児厨房へ入られず‥と言うのか?

今とは別人‥ではなく、
だいぶ成長して余り物で和洋中、何でもをこなすほどに成っているが、
アスパラガスの料理は数少ない。

夕飯の支度も終わった様で、
それと同時に父親も仕事から帰宅。

「ただいま、お土産あるぞ!」
「お菓子じゃん!
パチンコ勝ったんだなー父ちゃん」

お土産に喜ぶも、
趣味の道具を弄ったのを思い出す、
多少の罪悪感はあるが悟られる事もなく食事の時間、アニメの時間はまだまだ続いているのでこの時はテレビの主導権は自分のもの、
ニュースの時間だけ取られる。

後片付けは、善を下げる事だけやったが洗い場は以前に手伝った際にコップを割って、破片が母親に刺さって大ごとになったのでやらされない、
お手伝いをしてけが人が出てしまう。

昼間の除臭騒ぎで、入りたく無い水風呂に入ったのでそのまま就寝出来る格好に着替える。

下着も取り敢えずは変える事にしようと、取りに行くと窓の外は雨も止み星が光って居た。
お月さんを探したが、
今夜は新月なのでお休みだった
短くも長く感じた、お手伝いと雨の日の1日が終わる。


今現在母親は側に居らず、
隣町で離れて暮らしているので
週末は様子見と地元の特産物を、取りに行ったり買い物を手伝ったり。

話し出すと長く成る。
質問と返答、背丈は逆に成った気がするがこれからは親の介護がお手伝いとなるだろう。

今日は土曜日、少しの手土産を持って隣町へ行く日、予報では、明日は1日中雨になりそうだ。

今のトイレからも予報の匂いがしている。
ちょっと匂った話になったかな?

『お手伝い』

親子の繋がり。

『お手伝い』 音澤 煙管 作

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-04-16
Copyrighted

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