【掌編小説】星に願いを

六井 象

 仕事でヘマをやらかし、彼氏には浮気され、挙げ句帰りの電車で痴漢に遭った。
 へとへとに疲れた体でワンルームマンションのドアを開け、玄関にへたりこむ。
 何だかとても悲しくなってきて、思い切り声を上げて泣こうとした。
 しかし、涙が出てこない。
 はっと思い出す。
 利用料金を滞納しているせいで、涙腺が閉じたままなのだ。
 ああ、もう、情けない。
 バッグの中の目薬をさし、立ち上がる気力もなく、玄関に座りこんだままキッチンの窓から夜空を見上げる。
 今夜も冬空一面に、役所がレンタルしている星々が瞬いている。
 ああ、もう……金がほしい。

【掌編小説】星に願いを

【掌編小説】星に願いを

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted