never give,up? down?

 銀行強盗に遭遇とは、いわゆる最悪の場面なのだろう。
 しかし、生き残るために、最後まで諦めない。けれど、どう意地を見せるか?

「両手を上げろぉぉぉ。は、早く」

 間髪いれず『パンッ』と乾いた音が響く。ただよってきた嗅ぎなれない匂いが、いわゆる硝煙の匂いなのだと、震えだす身体にこれが訓練でない、と現実を突きつけてくる。

「そこぉぉぉ、不審な動きするなぁぁぁ」

 天井を向いていた銃口が警備員に向けられた。
 にっくき犯人の悪意はとなりに立つ私にも向けられる。

「お、お前も早く手を上げろぉぉぉ」

 興奮と焦りだろうか、銃口が震えている。くれぐれも、誤射はやめてもらいたい。かといって、ここでたやすく手を上げれば、犯人に屈することになる。
 しかし、生き残るためには抵抗の意志がない、と示さないといけない。・・・・・・くだけたように手のひらを返してみるか。
 ううん、いかん、それではお手上げの姿勢だ。なら、ここは、

「ニャン」

 両こぶしを握ってみた、思わず。

「て、てめぇぇぇ。ふ、ふざけてるのかッ」

 犯人のカン高い声に反応するように、店内の人質から悲鳴が上がる。や、やばい、どうしてふざけてしまったのか。こうなったら、こちらも威嚇して強気に出なくては。

「ガオー」

 今度は爪を立ててみた。

「う、撃たれてぇのかぁぁぁ。・・・・・・も、もういい、手を下ろせ。じっとしていろ」

 やった。犯人に諦めさせた、私は勝ったのだ。脅しに屈せず、上げた手を下ろさせたのだ。
 立てた爪を引っ込めるように握った両こぶしが、胸のあたりでくっつく。自然と声がこぼれた。

「ワン」

 幸い私に振るしっぽは生えてない。

never give,up? down?

never give,up? down?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-03-13

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