破壊
少女がひたすら吐露する、独白小説です。
私は友情を壊しすぎた。自分が好かれていないのではないかという不信感とか私よりも仲のいい友達がいるという嫉妬とかもっとかまってほしいという気持ちの悪い願望からわざと冷たい態度をとったり避けたり嫌なことを言ったりして。本当に、思い返すたびにどうしてあんなにひどい行いができたのだろうかと赤い顔を手で覆ってそれを伏せてどこか近くの穴へもぐり込みたくなる。それを後悔して後悔して、でも心の底では後悔なんてしてなくて、でもふと気づけば深く深く後悔して海に沈んでいくように心が重たくなって病気みたいで気持ち悪くてどうにもしようがないからまた思考を切り替えられる時分がくるのを待つしかない。それは唐突にきて唐突に去って、上昇と下降を絶えず繰り返して、心身どうにかなっている。思考して思考して思考して思考して、思考したって結局いつも同じゴールにしかたどり着かないのに、馬鹿みたいにまたふとしたら同じことを考えていたりする。意味なんてないのに。全然ないのに。何回同じことを考えて、同じ答えを出して、気分を晴らして、気分が失せたか分からない。また今もこうやって同じ同じまったく同じ問題をうじうじうじうじ。していることが私はもう駄目だと思う。結局壊れた友情は回復しないと思う。向けられる笑顔が違うと思う。私とその人はつながっている。現在もある他愛もないことでかろうじて、危うい線で結ばれている。その共通というか課せられたことというか、それについて話し合うにしても以前はもっと気がよかった。あんなにもぎこちなくなんてなかった。もっと自然だった。相談も受けた。私は上手く答えられていたのか分からないけれども、きっと少しも力になんてなれていなかっただろうけれども、私は打ち明けられていることが嬉しかったというか。それでも決して私は真摯な態度なんかではなくて、歪んだ優越感じみたものを感じていたような気がする。自分でも確かか分からない。でもそうではないかと疑っている自分がいるので、まったく一切きれいにそうじゃないとは言えない心理だったに違いない。それはおそらく相手に伝わっていなかったものだろうが。その自信だけはある。そうでなければもっと早い段階から、私は今感じている対話の違和感を突きつけられていたと思うから。当時はよかった。よく笑った。とてもよく笑った。今もよく笑う。少しの変化もないくらいとてもよく笑う。だけれど少し違う。私は思う。根拠もなにもなくてただ感じるというだけのことなのだけど、本当にそう思う。ぎこちなく思う。こちらの様子を随時窺われているように思う。そしてこちらを見る目に憎悪とか怒りとか渦巻いているように思う。表向きだけはなにも変わらない。だから私の心がそう見せているだけなのかもしれない。だけど私は疑わない。私がそうされてもなんの不思議も覚えないほど彼女にひどいことをしてきたことを自覚しているから。
結局戻らないとも思う。これは、もう、本当に悲しいことなのだけれど、永遠に──そこまでのつき合いをするつもりなんてさらさらないが──埋まらない溝なのだと思う。そしてそれを掘って掘って掘ってここまで掘り下げたのは私なのだと思う。本当に悲しいことといったけれども、真に悲しいことは関係が戻ってしまうことであるとも思う。私は自分のことを、自分という人間のことを大まかには理解しているからそれがあってはならないことだと分かる。時間が戻れば私は必ずまた同じことを繰り返すだろうと予見している。予見というか確信している。絶対そうなのだ。絶対にそうなのだ。場合が変わったって──つまりこれから先成長していく過程で人との関係において同じ状況に立たされた時──私はまた同じ思慮を患って、繰り返しくだらない思考を巡らせて、こねくり回して、偽善者面して、自分で自分を不幸にするだろう。そしてそれ以上に他人を不快にさせるだろう。反吐が出るけれども仕方がないのではないか。やめられるならそうしているのではないか。だが希望はある。それも薄いけれども。私はこんな私を軽蔑している。なんて薄汚れてうっとうしくて価値のない曲がり腐った偽善者だろうと、クズだろうと思っている。一方で誇り高い人間であると考えている。だからその切って捨ててしまいたい中身をあえて自分の意思で一般的な目で見たところの『いい方向』へ持っていけない。はなはだしいまでの矛盾を抱えてなんとかいろいろなものを保っている。けれどきっとこのバランスもいつかは崩れて、正常になって──なってほしいと願っている。切望している。自分に不必要な自負心をもって無価値な我を貫いて他人と己とを不幸にすることのないように変わってほしい。今のところこれといった光はない。希望はあるといったがそれは実際目の前に存在するものではなくて。平たく言えば、ないといってしまったら本当になくなってしまうとの理屈からである。
今も私は救いようのない自業自得から、とてもとても悲しい。
破壊