*星空文庫

求めていた「俺」

たいくん 作

最終章 「摩天楼の決戦編」 No.13 準決勝

『さあて皇楼祭もいよいよ準決勝に突入です! ここまで応援しに来てくださった会場の皆さん、有難うございます!!
それでは!早速桐生選手と戦う対戦相手を紹介いたしましょう! 今回の桐生選手の対戦相手は少し "意外な人物"です!』


準決勝となると、相当の強敵が現れる事は何と無く予測はしていた。 だが、

桐生の目の前にいる、対戦相手の男が口を開いた。


「久しぶりだな、 桐生。」



「兄貴・・・。」


そう、準決勝で桐生が戦う相手とは。

桐生にとって『実の兄』であり、
桐生にとって『憧れ』であり、
桐生にとって『目標』でもある人物であった。

その青年の名は・・・ 『瓜生』 。

桐生に負けず劣らじの整った顔立ちの19歳である。 何故この大会に出る事になったのか。彼は皇楼祭を監修している機関である『国際戦王育成連盟』 の幹部である"左大臣"として芭部流の塔に送り込まれて来た。ちなみに準々決勝で現れた遊馬雷奈もこの組織の"右大臣"である。 皇楼祭では毎年この組織から2名の重役が直々に送り込まれ、大会に参加することになっている。
・・ここまでの情報は桐生も知っていた。
皇楼祭で優勝する過程で最大の鬼門である。


(武器は持っていない。 丸腰か。)
桐生は瓜生をよく観察する。



『試合はじめッ!!』

ビーーーーーーーッ!!

桐生vs瓜生。
多くの観客に見守られながらここ、芭部流の塔九階層にて、本気の『兄弟ゲンカ』が始まった。


「どんな手を使ってもいい。かかって来い、
桐生 (おとうと) !」

瓜生は両手を広げる。


「うおぉぉぉおーっ!!」

先に飛びかかったのは桐生だ。

『桐生選手!!開幕速攻仕掛けて来たぁああ!』


「そうきたか・・。」

ガッ!!

パンチをかまして来た桐生の腕を瓜生は片手で掴みとる。

「なッ?」
瓜生の反射神経と動体視力に驚く桐生。

「 遅いぞ、桐生。 お前の能力については事前に聞いている。掌が体に触れなければその力は無効だ。」

ガッッ

そして瓜生は片手で桐生の腕を掴みながら、空いている片方の手で桐生の顎にアッパーを一発ぶち当てた。

「グフッ!!」

瓜生のアッパーをまともに喰らい、桐生は高く空中に打ち上げられ、地面に叩きつけられる。
今の攻撃で歯が一本抜けた。


「ならばこれならどうだッ!」
桐生はポケットから取り出したけん玉、
"鋼鉄の紅玉"を瓜生めがけて放った。

ガシッ!

しかし、瓜生はまたもや片手で鋼鉄の玉を掴み取った。

「クッ」

瓜生は余裕の表情を見せた。 しかし、かと言って油断はしていなかった。桐生の手の動き、
息遣いなど、桐生の僅かな動作をも注意して観察していた。

「こんなオモチャ如きで俺を倒せると思ったのか?」


瓜生はけん玉の玉を強く握ったまま思い切り振り回す。 桐生もそれにつられて空中に飛ばされる。

「うわぁッ!」

だが桐生は何とか無事地面に着地することができた。


「なかなかやるな。やはり俺がここに来た甲斐があったか。」

瓜生が言う。

「兄貴こそ、腕が鈍ってるんじゃねーか?」
(く、武器は奪われてしまったからもう使えん。どうする!?何か打開策は・・)

実を言うと桐生は焦っていた。瓜生の強さはいまだ健在である。

「不要だ、こんなものは。」
瓜生は奪ったけん玉を放り捨てた。



「俺はこんなところで退くわけには行かない! いつか兄貴を超えるような男になると誓ったんだッ!」

そして桐生は再び瓜生に襲いかかる。今度は正面からではなく背後に回る事にした。

「やっぱり変わってないなお前は。」

瓜生は背後を見向きもせずに後ろ蹴りを放った。 桐生は空手の心得があると言えども、瓜生の予想外の攻撃を回避することはできず腹で受け止めた。

「グフッ・・」

だが、そのまま蹴られた勢いに任せて倒れる事はなかった。

しかし現実は甘くない。反撃のパンチを当てようと思った桐生は拳を振り上げるが、その時には既に瓜生の第2撃が鼻と目の間に直撃していた。 肘打ちだ。

「うがぁあああ!」

桐生はあまりの痛みに顔を手でおさえながら、駄々をこねる子供みたいに地面をのたうち回った。

苦しむ弟の様子を上から見下ろすようにして兄は問いかけた。


「なあ、戦いにおける"強さ"って何だと思う?」

「強・・さ?」

桐生は鼻血を出し、涙を少々流しながら瓜生の顔を見る。

「そうだ。 厳密に言うとその答えは1つしかない。 考えてみろ。 きっとその答えが分かった時、お前は俺を超えられるだろう。」

「・・強さっつったらそりゃあ、技量、腕力、瞬発力、観察力、・・後は"諦めない事"・・・とかだろ?」


「違うね。」

瓜生は首を横に振った。

「確かに俺は昔、お前に喧嘩のやり方などをある程度教え込んだ。 だが今思えばそれすらも必要の無い事だったのかもしれん。」

「何が言いたいんだよ?」

「ヒントを言うとだな。 最初からその"強さ"は戦う本人が一番よく知っているべき物なんだよ。」

「なっ・・」

「桐生。 お前なら分かるはずだ。ここまで勝ち上がって来れたのは何のおかげだ?」


「・・俺には使命がある。この大会で優勝しなければならない理由がある。守りたいものがある。俺を支えてくれている人々がいる。そいつらの期待に応えるために俺は、」

桐生は応える。



「違うんだよ。」

瓜生はここで口を挟んで来た。

「戦場に於いて最も活きるのは力でも運でも気持ちでも無い。
あくまでそれらは付加価値(オマケ)に過ぎん。」



" ここまで勝ち上がって来れたのは何のおかげだ? "
桐生は先程兄に言われたことを頭の中で反芻した。

そして、自分のこれまでの戦い方や勝ち方と言うものを思い返して見る。

・・するとどうだろう。

(今の今までどれだけ不利な状況に追い込まれたことだろう。時には生死を彷徨う事すらあった。 でも最終的には自分はここにいる。
なら桐生という人間を勝利に導いたのは果たして何だったんだろうか。)


「!」


「お、気付いたな。」

「ああ・・。分かったぜ。勝利の秘訣が・・な。」


桐生はこんな簡単な事に気付かなかったのか、と自らを反省する。

「ありがとう兄貴。アンタのおかげで"カツ"が入ったぜ!!」

「フフ。そうか。ならもう一度かかって来い。"兄弟ゲンカ"はこれからだッッ!!」


「ああ、見せてやるぜ。
これが俺の答えだァ!!」


桐生がとった行動。それは無策の特攻だった。

・・・少なくとも瓜生にはそう見えていた。

「なんだ?さっきと同じじゃないか。」
瓜生は無闇に突っ込んでくる桐生に迎撃するため、後ろ手に何かを取り出した。


実は瓜生は戦いが始まる前から腰にとある武器を隠し持っていた。
それは金属でできた『トンファー』だった。
ただし一般的なものとは違って、彼が操るのは片手用だ。 両手用だと使い方が限られてしまうが、 片手型にすると、鎌・十手・槌などあらゆる用途に使い分けることが可能となる。 桐生は恐らくこの武器の存在に気付いてないだろう。

「うおおおおおおッ!!」
何も知らない桐生はただ地面を駆けるのみ。



「これを交わすことができるか!」

桐生が瓜生の懐に潜り込んだその瞬間。

ブンッッ

瓜生は片手に装着したトンファーを桐生の顔面の高さ目掛けて力の限り奮う。 当てれば一溜まりもない。

しかしトンファーは桐生の顔面にヒットする事はなかった。ただ髪の毛一本かすった程度に終わった。

「!?」
予想外の行動に瓜生は困惑する。


桐生は相手が攻撃を繰り出す寸前に"わざと前に転倒した"。 転ぶフリをしたのだ。


・・そして瓜生の攻撃が終われば、残るは桐生のターンである。

ガシッ

桐生は転んだ拍子に瓜生の右脚を片手で掴んだ。

瓜生の体はまるで氷細工のようにカチーーンっと硬直した。


桐生の能力は相手に触れるだけで一切の動きを封じることができる。 しかも、
『能力を行使した本人の任意で力を解除するまでは手を触れられた相手に自由は戻らない。』


つまり。

「俺の勝ちってこった。」

ピンッ

棒と化した瓜生は、桐生が軽くデコピンをしただけでゴロンと倒れた。


ビーーーーーーーッ!!

『試合終了!
準決勝は"左大臣"瓜生を抑えて桐生選手の勝利となりました! これで遂に決勝進出です! おめでとう!!!』


ワァァァァァァッッ

観客席のあちこちから拍手喝采が沸き起こる。



「・・なあ、そろそろ能力を解除してくれよ。」

地面を棒のように倒れたままの瓜生が言う。

「ああ、スマンスマン。」

ポン。

桐生は再び手を瓜生の肩に軽く当てただけで
能力は解除された。

「・・良くやったな。弟よ。流石といっておこうか。 それでどうだ、お前の中で答えは導き出せたか?」

瓜生は立ち上がって桐生に問いかける。

「ああ。戦いにおいて最も重要なこと。それは " どんな不利な状況でもひっくり返すことができる迅速な判断力" だ。」


「フッ、そうかそうか。お前には完敗だよ、桐生。 まさかこんな日が来るとはな。」

「兄貴・・」


「ホラ行って来い!とっととチャンピオンになっちまえ!!」

バシッ

兄、瓜生は桐生の背中を強く叩いて言った。


「ああ、そんなこと言われなくても分かってるぜ!待ってろよ、兄貴!!
(背中いてえ・・。) 」


『それでは!見事準決勝を勝ち抜いた桐生選手にはいよいよ決勝戦です! さあ、芭部流の塔最上階に続くエレベーターに乗ってください!!』


すると突然、桐生の目の前に異空間から長方形の箱が現れた。

「これは・・」

『そうです!そのボックスは芭部流の塔の最上階に直結しています!乗った瞬間に目的地まで一瞬でワープ出来ます!!』



このエレベーターに乗った先には、決勝戦が待ち受けている。 遂に時はやって来たのだ。


「いくぞ!」

ウィーン・・

エレベーターの扉が開く。


桐生は一度深く深呼吸をしてエレベーターに足を踏み入れた。


『それでは桐生選手、いってらっしゃーーい!!』



瞬間。

パッと音を出して長方形のボックスはその場から姿を消した。




一方その頃・・

"芭部流の塔"最上階付近の上空で。

羽を生やした無数の鷲型の野人が塔の周囲を取り囲むように空中を漂っていた。

その中央には野人の大軍を率いる統領らしき
一際目立つ『黒い影』がいた。
鷲型の野人達とは違い、全身が漆黒のシルエットに覆われており容姿は確認できず、背中からは天使にも悪魔にも見える巨大な翼をはためかせている。

そして一体の野人が『黒い影』の元に近づいて言った。


「予定より若干早いデスが宜しいですか?
冥王サマ。」


「ああ。」

『黒い影』は答える。

「早速、我々があの少年をお迎えに・・」

「いや。」

『黒い影』は動こうとした一体の野人を片手で制止する。


「焦るでない。まだ余興が残っているだろう。」


「そうデシタね・・」


そして『黒い影』は大きく両手を広げ、不気味な笑みを浮かべた。

「いよいよ私の出番が来たようだ。楽しみだ ね、桐生。」


ー最終決戦の足音は着々と近づいていたー


To be continued..

『求めていた「俺」』

『求めていた「俺」』 たいくん 作

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-01-12
Copyrighted

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