*星空文庫

求めていた俺

メズタッキン 作

第二部 「四色の聖者編」

十二話


エメラルダスとトパズーリ。前者は『幻影』を操るクノー。後者は触れただけで『金』に変えてしまう光線を放つ杖を所有する老人。

激戦はエメラルダスが生み出した山の頂上で繰り広げられた。山とは言っても標高三百メートルの超小規模な人口の山(イメージしにくいだろうが)なのだが。

二人の聖者に囲まれ絶体絶命の桐生。その様子をサファイ、敷島、マナトは影から見守っている。

「いくぞ、エメラルダス!俺のパンチを食らえええ!」

エメラルダスに向かって拳を放つ桐生。しかし、目の前にいたのは『エメラルダスではなかった』。

バキィッ

気づいた時にはもう遅く、桐生の拳は『敷島の腹』に直撃していた。
そう、いまのはエメラルダスの術で作り出された『錯覚』だった。彼女は幻影や幻術だけでなく、錯覚すらも引き起こすことが出来るのだ。

「な、ななななにするんだもー!」

敷島の図体は大きめだったので、拳を受けても軽くよろめき、数歩たたらを踏むまでに留まった。

「す、すまん!敷島!!いまのは奴の策略で・・」

「いくら桐生でも許さないもー!せめて一度は殴らせるもー!」

敷島はその巨体を動かし、拳を振りかざしてこちらに突進してくる。

そんな中、桐生は一瞬、違和感を覚えた。

(敷島はそんなことを言う人間じゃない)

すると遠くから「もう一人の」敷島の声が聞こえてくる。

「そいつは偽物だ!避けるんだもー!!」

桐生は声を聞くと反射的に右に大きくジャンプする。 今まで自分が立っていた足場を見ると、そこは完全なる金と化していた。あと一秒飛び遅れてたら自身の体が金になり、物語が終了する所だった。 こちらに襲いかかってきた敷島の正体は、トパズーリだった。恐ろしいコンビネーションだ。

(くそ、誰が誰なんだ?誰を信じればいい!?)


大体読めてきた。エメラルダスは、人間の信頼関係を内部からじわじわ破壊する魂胆なのだ。

(ひょっとしたら、いや・・ひょっとしなくても今までで一番厄介な敵だぞ!)

「何か攻略法は・・」

敵は呑気に考える隙も与えず、今度は「10人のマナト」が桐生を包囲した。

「今度はマナトか・・」

まるで精巧なコピー機で生み出されたような、頭の天辺から爪先まで全く同じ容姿の量産型マナトが全員じっとこちらを睨んでいる。 もはやどこから何が飛んでくるのか予測できない。 このまま何もしないで突っ立てれば敵の方は攻撃し放題だし、かと言って下手にこちらが動けば、本物のマナトを傷つけかねない。

「万事休す・・か」

このまま明日の朝まで地獄の心理戦が続くのだろうか。 そう思っていた桐生だったが、

今度こそ本当の意味で予想外の出来事が起きた。

なんと、桐生を取り囲んでいた十人のマナト全員が一瞬にして焼失した。
近くの木で十一人目(モノホン)のマナトが隠れていたことから、それら全てが幻影だとわかった。本物は無事だったのでひとまず安心した。 しかし、一体何が起こったのか?

その答えを桐生はしっかりと目で捉えていた。

十人のマナトの足元から突然巨大な火柱が上がったのが見えた。この火柱は決して偽物ではないと確信できる。なぜなら火柱が発生した地面はブスブスと大きな焦げ跡がまだ残っているからだ。 しかもさっきまで圧倒的有利に戦っていたエメラルダスとトパズーリが丸焦げ状態で焼死している。火柱に巻き込まれたのだ。
「じゃあ今のは一体誰が!?」


「あーあー、俺って長期戦とか大嫌いだからさあ、醜いモンを長々と見せないでくれるかね」


その火柱を起こした犯人とみられる男が桐生の真正面で堂々と、呆れたような様相で喋っていた。 寝癖みたいなボサボサの赤髪で、ロックミュージシャンが着ているようなパンクファッションの、調度桐生と同い年ぐらいの少年だった。

桐生は思わず叫ぶ。

「誰だテメエ・・?助けてくれなんて頼んだ覚えはねえぞ!」

「ああ知ってるさ。俺はお前を助けに来たんじゃない。殺しに来たんだ。」

「てことはつまり、お前もエメラルダスとトパズーリの仲間か!?」

「まあ半分正解だな。俺は確かにエメラルダスやトパズーリと同じ『四刹団』の一人でリーダーでもある。だが、仲間だとは思ったことは一度もない。こいつらはただの利害関係が一致する同業者(どうぐ)にすぎん。」

さっきエメラルダスとトパズーリを燃やし尽くした火柱から察するに炎属性と見られる。

「お前、名前は?」

「ああ、俺か?俺の名前は、」

「ルビアあああああああああああああああッ!!」

「あん?」

鋭い咆哮を放ち、「ルビア」と名乗るらしい赤髪の男の顔面めがけて真っ先に水鉄砲を放ったのはサファイだった。サファイは、自分がルビア個人によって道具同然に利用されていたことに気付き、純粋に憤っていたのだ。

当たればクビが飛ぶほどのチートクラスの水圧を誇るサファイの渾身の一撃「邪水刃」を、ルビアは右掌を前に突き出すや否や、まるで火山の噴火を圧縮したような炎のシャワーで相殺した。

「やっぱり水と火の相性はバツグンだな。」
余裕の表情を見せるルビア。

「よくも僕を利用したな!!」
未だに怒りを抑えられないサファイ。
彼は「四刹団」でも最年少で下っ端だったため、今まで自分は何のために働いていたのか分からなかった。知らされていなかった。

「何故だ!?僕を、僕を利用してまで何をしたかったんだ!」

「何をだと?決まってるじゃねーか。この世界の「諸悪の根源」、つまり「桐生」という少年を殺すことが我々の目的だ。今更何言ってる。」

さも当たり前のように語るルビアに対しサファイは反論の言葉を必死に掘り起こす。

「桐生がどんな存在なのかは知らない!でもアイツだって必死に生きている、一人の人間なんだよ!」

サファイは怒りに任せ、邪水刃を繰り出す。

それに対して今度は炎剣を生み出し、攻撃の悉くを草を刈るように薙ぎ払うルビア。

それでもサファイは諦めない。ルビアが自分よりはるかに格上だってことがわかっていてもなお。

「あーうるせえ虫だな!虫なら虫らしくとっとと潰れてろ!!」

ルビアが振るった巨大な炎剣がサファイの腰のあたりに直撃し、そのまま二十メートルくらい体が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

「へっ、張り合いのねえ。」

くだらない、とそこらに唾を吐き捨て呆れるルビア。 だが、

「ん?」

一瞬背中にゾワっと悪寒を感じ取った。振り返ってみるとそこには「仲間」を傷つけられて激昂した「諸悪の根源」が自分を獲物を狙う猛獣のように睨みつけていた。


「この野郎ッ・・・!!」

To be continued..

『求めていた俺』

『求めていた俺』 メズタッキン 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-01-12
Copyrighted

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