東方魔妖録

これは東方で俺Tueeee!をやってみたくて書きました。オリキャラわ自己解釈、他のアニメのネタが入る予定です。それがきつい方はご遠慮下さい。

一、 訪れる非日常

妙なことは連続でやって来る。何故自分はここに居るのか。何故建物ばかりがあった場所が森だらけの場所になっているのか。

自分でしていて変な疑問だと思う。しかし実際に体験したらそんなことは言えなくなってしまった。ここは知らない場所。知っている奴は一人転がっている。

日頃の行いに悪いことでもあったか?今日は悪い運勢だったのだろうか?

そんなことを考えながら過ぎた過去を俺は思い出していた…

……………
俺は前原朗人(まえばらあきと)。ごく一般の大学生である。今日は半日で終わったので何処かに食べに行こうとしていた

「おーい、あきとー。久しぶりじゃん!」

いきなり大声で話しかけてきた小、中学高校の同級生中山静香(なかやましずか)。こいつはなんとIQ180の天才というのだから驚きだ。そのくせに東大などに行かず「近いから」といって中堅高校に行っている変わり者だ。

「静香か、久しぶりだな」

軽く笑いかけながら答える。久しぶりといっても帰り道でたまに会うのでそこまで久しぶりじゃないんだがな…

「ねえねえ、どっか食べに行かない?奢ってよ!」

そしていつも通りのやり取りだ。少しは撚れよ。

「奢らねえよ、毎回言ってくるな」

「むー、ケチ。ところで朗人はこれからどこ行くの?」

「飯食って来る」

「へー、じゃあ奢…」

「奢らねえぞ」

「むー、じゃあ割り勘でいいから一緒に行ってもいい?」

「それならいい」

まあ結局飯食いたいだけなんだよな、こいつ

「そうだ!ねえ、こっちこっち。美味しい店があるんだよ!」

静香が裏道へ手招きしてきた。そんな方に店が、しかも美味いのがあるというのは初耳だ。そんな興味本位で行ったのがいけなかった。もしここで面倒臭いといっていたらどうなったのだろうか?こんな目に会わなかっただろうか?

「ちょっと待ってくれ」

そのまま真っ直ぐ進んだところにラーメン屋があった。

「ここ、ここ!私の秘密の店!」

「古そうだな。大丈夫なのか?」

「味の保証はするよ!さ、早く早く」

俺は手を引っ張られ店に入って行った

…………

食べた結果想像以上に美味かった

「なるほど、確かに美味かった。しかも一杯200円という懐への優しさ…いい店だ」

「でしょ?私も初めて見つけた時は興奮しちゃったよ!」

ハアッハアッ

静香の奴鼻息荒過ぎね?

「おい、興奮すんなよ」

「え?今の私じゃないよ?」

「は?じゃあ他に誰……が…」

信じられない物が後ろにいた。

大蛇だ。何メートルあるかは分からないが巨大な蛇だった。

「あ…」

声を上げる暇さえなく大蛇に喰われた。

いつもと変わらない日常だった。普段と変わらない帰り道だった。帰って漫画を読んで寝る予定だった。

「う…うわぁぁぁ」

ビシャン!

「うげっ!?」

なんかなまぬるい水たまりに落ちたようだった

「ちょっとなにしてるのよ!?そんなとこに入ってると溶けて亡くなるよ」

「あれ?静香?なんでこんなとこに?蛇に喰われたんじゃ…」

「喰われてるわよ?ここは蛇の腹の中。ちょっと手伝って」

「何やってるんだ?さっきから」

「蛇は肋骨が無くて腹を裂けば出られる。常識よ、覚えときなさい」

よく見てみると、手にナイフが握られていた。蛇の腹を切っているらしい。

「分かった。すぐ手伝う」

静香はIQ180だからという意味不明な理由でスタンガンやサバイバルナイフ、防犯ブザーなどをいつも携帯している

「はいこれ」

包丁だ。なんのためにあるんだこれ?つかこれ完全に銃刀法違反だろ…

「ボーッとしてないで!早くしないと溶けて亡くなるかもしれないんだよ!」

「分かったって」

取り敢えず脱出が先か…俺と静香は必死に腹を裂き続けた。

ギャァァァ!

「うるさいわね…」

「流石に苦しそうだな。脱出出来そうか?」

「してみせるわ。IQ180に不可能はないのよ!」

ザクッ!

「あっ!」

「どうしたの?」

「見ろ!明かりだ!」

「よーし、あと一踏ん張り!」

希望が見え始め必死に腹を裂いた。

ギャァァァァ!

「よし、飛び降りるわよ」

「大丈夫なのか!?」

「ここよりは、ね!」

そうこうしている間に静香が飛び降りた。

「よし、俺も!ってうわっ!?」

流れて来た液体に体を押され無理矢理落とされる

「うわぁぁぁ!!」

グシャ!

あ、頭から落ちた…そこまでだな。高くなかったけどこれは死ねる…

「ギャァァァ!!」

いきなり大声が聞こえた。他にも巻き込まれた人がいたのか!?

慌てて声がした方を向くと…幼女がいた。黒髪ロングでブカブカの服、静香が幼くなって髪を伸ばしたらこんな感じだろうか…

「ちょ、ちょっと朗人!?朗人よね!?」

何慌ててるんだ?

「そうだけどどうしたんだ?てか、お前誰だ?俺幼女に知り合いいた記憶無いんだけど…」

「私は中山静香よ!出られたと思ったら幼女になってたの!というかあんただって女になってるじゃない!!」

………は?何をおっしゃりやがってるんですかこの幼女は…そんなことあるわけ…あるわけ…

「なんじゃこりゃぁぁぁ!!??」

非日常は大変な物を盗んで行きました。私の性別です。

「私の美貌もよ!」

「たいしてなかっただろ!」

二、 人間な妖怪

さて、状況を整理しよう。俺、前原朗人と中山静香は帰り道大蛇に喰われた。そこからまずおかしいがこの際スルーする。そしてその後腹を掻っ捌いて大蛇の外に出た。大蛇は腹から緑の液体出してぐったりしてる。しかも都会に居たはずが森だらけ建造物0のところにいる。よし、ここまではいいだろう。良くはないがまあいいだろう。だがここからが問題だ。俺と静香が俺は女に、静香は幼女になってしまった。静香曰く俺は白い髪を肩甲骨まで伸ばし高校二年生くらいの身長らしい。異常もここまでくるともうついていけない。

「さっきからなにブツブツ言ってんのよ?」

なんでこんなに順応してんの?もっと騒がない?性別変換ですよ?若返りですよ?あ、静香は若返ったから別に問題ないのか

「今の状況に悲しくなってるんだよ」

「そうね、さっき大蛇から助かったのに…」

「なんでだろうな?」

「なんででしょうね?」

「なんで…」

「「なんで今度は狼に襲われてんのー!!??」」

腹から出られたラッキーって思ってたら茂みから狼の群れに襲われたのだ。結果全力疾走。

「なあ!違和感があるんだけど?」

「ええ、私たちってこんなに足速かったかしら?」

「人間の限界越えてね?これ車レベルの速さだぞ?」

そうなのだ。さっきから全力で走っているのに疲れないうえ、速度が半端じゃない。

「結果オーライ!火事場の馬鹿力だと思いなさい!」

だが、まずいことになった。目の前に崖がそびえ立っている。

「どっちに行く!?」

「何言ってるの?この角度なら狼は登ってこれないわ!登るわよ!」

まじかよ?理屈は正しいが大丈夫なのか?

「返事!」

「あーもう!了解!!」

15メートルはあるなー、腹を括るか

「「オォォォォ!!」」

ドドドッ!

「「は?」」

登れた、垂直に、15メートルを。

「IQ180の静香さん、この状況の説明を…」

「返答不可能。意味不明。」

まあそりゃそうだ。壁登りて何処の忍者だよって話だ

「村…」

「なんか言ったか?」

「村がある!ほらあそこ!」

「まじだ…良し行こう!」

地獄に仏、大海の木片、渡りに船。有難い!

「って、ちょーっと待ちなさい」

静香が襟首をつかんできた

「なんでだよ?村があったならそこ行きゃ安心だろ?」

なんか言葉を重ねる度に静香が呆れ顔になっていく

「ちょっと気になることがあるのよ。あそこに村がよく見えそうな丘があるからそこ行くわよ」

「ん~、分かった」

こいつが言うことの大概考えがあってのことだ。大人しく従おう。

……………
「なるほど、ここなら見つからずに情報収集出来そうだな」

「ええ、静かにしなさい」

静香が村人の会話に耳を傾けていたので俺も真似してみた。

『最近は妖怪が少なくなって助かるよ』

『本当にな。蒼鬼組も飽きたんだろうか」

『なんでも大蛇が現れて総出で狩にいってるらしい。能力持ちも手こずっているってさ』

心当たりあるなー、きっとあの大蛇だよなー。つかあの大蛇瀕死だったな。ってことは村への攻撃がまた始まるって事か。

「妖怪…能力」

また静香がぼやいてる。しかし能力か、俺何か持ってないのかな?
能力………アレ?持ってるわ。なんでわかったか知らないけど完全に分かる。俺の能力は『空間を操る程度の能力』だ。程度の能力ってフレーズは聞いたことあるが…まさかな。っとそれより

「なあ静香」

「ええ、状況は大概理解したわ」

おおう、流石に天才。速いな

「先生説明をよろしく」

「はいはい、まずは私達の性別、年齢の変換は蛇に飲まれ中の瘴気か体液による変化。私達が壁を垂直に登ったのは恐らく私達が妖怪になったから。それにより体力が減らなかったこと、異常な速度が証明出来る。ついでに私の能力は『見たことのある物を発現させ操る程度の能力』」

ふむふむ、流石に俺でも理解出来たし反論が全くできん。それより…

「見たことのある物を発現させ操る程度の能力ってチートじゃん!!俺の空間を操る程度の能力って意味不明!」

静香ズルすぎる。そんな楽しげな能力を…あれ?なんでそんなかわいそうな物を見る目で俺を見るの?

「あんたバカ?空間を操るってどんだけチートか分かってんの?空間の固定、空間の転移、空間の消滅。色々使えるのよ」

なんでこんなに頭回るんだこいつ…そうか、かなり使えるな…
まあ実際に使わないと分からないけど……

「まあ私も能力の勝手がまだ理解出来てないから当分様子見ね」

三、 山の主との激闘

1000年が過ぎた…

「変わらないな~、1000年たてば結構成長すると思んだけどな~」

あの後取り敢えず能力を知る、能力を使えるようにする、新しい発想を加えるなどなどでこんなにかかった。最近では結構使えるようになっている。僕達まじチートじゃん!まあ妖怪化っていうのはあっていたようで1000年たっても容姿が全然変わらない。
静香も相変わらず幼女のままだ。

「おーい朗人ー!帰ったわよー」

悔やむべきは新しいことや未知のことに興味津々の静香が戦闘大好きっ子になってしまった程度か。

「今日は三匹狩ってきた」

あれから分かったこともある。ここは本当に昔らしい文明が全然ない。物々交換とかいつの時代だよ!あと空も飛べるようになったし弾幕も使えるようになった。静香が「自分がかんがえたかったのに!」と怒っていた。静香の能力のおかげで飢え死にはならなかった。どころか毎日いいもん食ってる僕勝ち組!

「随分能力も使えるようになったよなー」

「私もある程度なら一度に複数出せるようになったわ」

「僕は3メートル四方を三つで効果の付与は2つづつ」

ここで余談だが妖怪には妖力、人間には霊力がある。だから妖力隠して霊力出して時々人里に行っていた。老けていないのを隠すためにたまに変装して。なんか異様に人間達の技術の進歩が早い気がするが気にしないことにする。あと静香に女で俺ってきもいって言われて泣く泣く僕に変えた。僕っ子属性ねえよ!

夕飯の時静香が話しかけてきた

「そうそう、ほら蒼鬼組っていたじゃない、あのよく村人襲ってるとこ。その親玉が神楽山に居るから来いってさ。勝ったらここ一帯の妖怪の頭領、負けたら傘下に入ってもらう。だってさ。だからあんたも行くのよ」

「は?なんで僕まで?静香一人で十分でしょ?」

静香は妖力の扱いがうまいし、頭がいいので能力をフルに使って相手を圧倒している。

「それに1000年間会ったら一応攻撃程度だったのになんで今更」

「なんでも私達が知らない美味しそうな物を喰ってるから食べたくなったらしいわよ」

「喰わせればいいのに。それに僕を連れてく理由になってない」

「敵に塩を送るつもりはないわ。で、朗人貴方を連れていく理由は相手のボスとの相性よ。私は少し分が悪いのよ」

「はぁ~」

面倒な事になりそうだ

……………

「よくきた」

いきなり偉そうな女が出てきた。かなりナイスバディだ。東方でも思ったけど鬼ってどっちかに極端だな。まあ今はそれよりも静香が相手の首領は鬼だって言ってた。長い角が一本。こいつだな…

「最後に聞くが…私の傘下に入るつもりはないか?お前はあの小娘よりは話が通じそうな娘だが…」

「……断る」

んな面倒臭いのやってられっか

「ならば仕方がない!倒して無理矢理配下にいれてやろう!」

「ところで静香が山狩り始めたのはいいのか?」

まあ説得自体意味ないだろうが…ったくこんな面倒な事押し付けやがって

「後であの小娘も倒してやる!まずはお前からだ!」

まあいい、一丁やりますか!

「……後悔するなよ」

蒼鬼が凄い勢いで殴りかかってきた。鬼の名に奢らぬスピードだ。怖っ…

「まあ僕には意味ないんだがな…」

ガキンッ!

蒼鬼の拳は朗人の顔30センチ前で急停止した

「ッ!」

驚いた蒼鬼は一旦距離をとった。まあ賢明な判断、否懸命な判断が正しいか

「何をした?」

ドスが入った声で聞いてきた。防げると分かった時点で怖くも何ともない。僕も呆れるチート野郎だな

「別に僕の前の空間が周りからの干渉を拒絶しただけ。まあ報復として威力倍増のおまけ付きでね」

まあ要するに僕が操った空間が相手の攻撃を止めて威力を倍にして返しただけ。鬼の威力の倍なんて寒気がするけどね。実際。
相手見た感じ右腕の骨折れてるっぽいし

「あっはっはっは!」

なんか笑い出した!?怖っ!何あの人。いや鬼か。痛みで正気を失ったのか?

「やっぱり戦いは相手が強い方が楽しい!」

「鬼の性か…しかしお前能力持ってないのか?いきなり殴ってきてびっくりしたぞ?」

「私の能力は悪意を操る程度の能力で、いつもは悪意を私に向けさせてかかって来るよう誘導するのだがお前にはきいてないようだな…それもお前の能力のせいか?」

「ああ。能力の影響を受けない空間を作っている。まあ能力によって作られた攻撃は防げないが体に直接干渉する能力はカットできる。」

ついでに説明しとくと僕の操る空間は移動型と固定型がある。それに形も様々だ。だから普段は自分の形をした空間を配置している。移動型なので僕が動けば動く。止まれば止まる。便利だ。

「ふむ…」

攻略法を考えてるっぽいな。まあ気楽に行こう。

お?蒼鬼が石を拾って…全力投球

ガキャン!

石が粉々だ、これはひどい

「これでもダメか…」

この様子じゃ駄目だな

「そろそろ僕も攻撃していいか?」

「当たり前だ。何を言ってる」

馬鹿にされた…よーし、練習したネタ技!行くぜ!

「バルス!!」

掛け声と同時に蒼鬼の目の前の小さい空間が大発光した。

「ぐあ!目が…」

二回言わないのか…まあいいや!もういっちょう!

「エクスプロージョン!!」

ドッガガガン!!

瞬間蒼鬼の周りが大爆発を起こした。スカッとするなこの技

「くっ、効くな~これは」

ボロボロの蒼鬼が立っていた。流石鬼。硬いな~

「まあ攻撃を休めるほどお人好しじゃないんでね」

静香に負けず劣らず俺も他の妖怪達を相手にしてきたんだ。そこまで甘い事もしてやれなくなってる

「ウォーターロック」

今度は蒼鬼の周りを水が球の形で取り囲む。当然息は出来ない

「ガボッガボッ!」

蒼鬼が出ようと必死に足掻いている。まあこれで勝負も決着か…

ズパーン!ズパーン!

激しい音と共に蒼鬼が水球の中から出てきた。あっれ~?初めてやったけど脱出出来ないように作ったんだけどな…

「お前強いな…1500年生きてきたがこんなに強い奴は初めてだ。さあもっと楽しもう!」

あーもー!しつこいな!僕そういう趣味無いから!…少ししか

「悪いけどそこまで付き合い良くないのでそろそろ終わらせるよ」

「それは困るね。頑張って抵抗するよ」

「はぁ」

疲れる、戦闘狂って面倒臭い。そういや萃香や勇儀もそうだっな。あ、いいもん思いついた!

「新技思いついた!これで勝つる!スピア・ザ・ロンギヌス!!」

空間の槍の先を螺旋にし風を発生させ、放つ!!

「!!??」

蒼鬼は驚愕の色を浮かべつつも迎撃の構えに入っていた。回避じゃなく迎撃の姿勢を見せたのはいいけどそんなんで潰せたら世話がない。

グシャア!

案の定蒼鬼の拳と腹を貫きロンギヌスは止まっていた

「くっ、ここまでか…」

ドサッ

「ふう、一件落着だね」

さて後は…

「おーい、朗人ー!」

はい山狩り野郎来ましたよ。女(しかも幼女)に野郎はどうかと思うが

「やっとか、人に面倒事押し付けといて」

「私だってここの配下片っ端から倒してたのよ!?能力持ちもいて面倒だったんだから」

「静香の行動はやらなくてもいいもんだろ?こっちは強制なんだぞ」

「まあまあ。で?こいつどうする?」

静香は倒れた蒼鬼を指差して言った。まあ殺す気はないし治すか

「一応治すよ。一回治してまだ襲って来るならそん時に殺そう」

「あんたそんな事言えるようになったのね…」

妖怪がいたにつくのも困ったもんだ。さて、治すか

四、 右手の争い

朗人と静香の住処の洞穴

「こ、ここは?」

「よう、目が覚めたか?」

やっと蒼鬼が起きた。空間回帰を使えば回復なんて楽勝だぜ!

「私は……負けたのか?」

「ええ、そうよ。約束…覚えてるわね?」

こっから先は僕は用済みか…帰っていいかな?

「分かっている。今日から貴方がこの山の主です」

蒼鬼がいきなり俺に頭を下げてきた。あれ?もしかしなくても頭領になるのって…僕?

「そんで私はその右腕ってところね!」

「はあ!?俺がやるの!?静香がやると思ってたのに!」

「俺口調キモイ。私はトップよりも補佐のほうが向いてんの」

確かに頭脳戦だったら勝てる気しないけどさ~

「何を言っている小娘。右腕は前頭領の私がやるに決まっているだろう」

突き出された胸を張りながら蒼鬼が言った。自分のを見てみたら悲しくなってきた。いや別にいいんだけどね?気になんかしてないもんね!

「私が何年こいつと一緒だったと思ってんの!?1000年よ1000年!こんな短いあんたなんかに任せられないわ」

「殺し合いを通じれば時間などたいしたことない!」

ギャーギャー!

疲れるな~、こんな奴らを纏めるのか。ま、手っ取り早く…

「そんなに言うなら闘って勝った方でいいじゃん」


「「!!」」

気づいてなかったのか。まあこれで手っ取り早く済むかな?

…………
ところ変わってさっき僕と蒼鬼が闘った場所

「ルールは相手が動けなくなるか参ったといった場合勝利!それ以外は何してもいい!いいわね!?」

「分かった!いざ…」

「尋常に…」

「「勝負!!!」」

「「はぁぁぁぁ!」」

掛け声と同時に蒼鬼は走り出し静香は手に二種類の液体を呼び出し混ぜ始めた

「裂空破!」「王水手裏剣!」

技名を名乗り互いに攻撃した。蒼鬼の裂空破(何それ?)は静香の肩を掠め傷を作り、静香の王水手裏剣は蒼鬼が突き出した拳を掠め火傷を作った。

「痛いわね。傷が残ったらどうしてくれるの!?」

「その時は小娘諸共消し去ってくれよう」

あっさりすげーこと言いやがるな。まあその場合は僕が治せば良いのだが…というか今日の静香キレやすいな…蒼鬼の能力の影響でも受けたか?

「殺す…絶対殺す…」

うん、受けてるね。まあ気にしてもしょうがないね。今の静香は王水も大量精製出来ないし、蒼鬼も静香を倒せるほどのレベルじゃないしね。引き分け当たりで終わりそうだな

……………
三時間後

予報通り引き分け。両方右腕ってことになった。右腕は二本もないけど妖怪ならあるかもしれないしいいんじゃね?って感じで

「お疲れ、お疲れ。取り敢えず妖怪達を仕切るのは今まで通り蒼鬼がやって。その方が不満が溜まりにくいと思うから。静香は何か行動を起こす時に動いて貰うからよろしくね~」

「了解した」

「いきなり仕切りだしたわね…まあいいけど」

さて、仕事全部放り出したところで、

「今日は寝るかな」

「そうね、疲れたわ」

「何を言っている?」

あれ?なんか反対意見がでた気がするんだが…

「こんな良い日にすぐ寝るなどもったいない!さあ、今日は飲むぞ!」

酒の入った樽を持ち蒼鬼が誘ってきた。つかその樽どっから取り出した?

「あ、いいわね!飲もう飲もう!」

僕寝たいのに…まあ今日くらいはいいか…

「よし、じゃあ飲もう!」

その晩僕達は飲み明かした。次の日頭の痛みがMAXになった…もう酒なんて飲まない!

五、 魔法使いの実力

右腕争いから500年がたった。

村はもう既に平安時代の様になっている。重火器が発明され妖精や弱い妖怪が殺されるようになってしまった。人間の人口も増え、森林伐採も始まっている。前に調子に乗って朗人組の山も取ろうとして全部で500人くらいが消滅した。
まあウチの山を取ろうなんて3000年早いね。ついでにその日の夜は朗人組は宴会だった。

ドガガガガ!!

私の能力も結構成長した。空間は12m四方を三つ、空間に付けられる効果は7個に増えた。
それと蒼鬼組は朗人組に改名された。恥ずかしい……
ついでに配下の妖怪も増えてきた。ウチのモットーは来る者拒まず、去るもの追わずだしね。結構気楽に入ってくる妖怪が多い。

ドンドン!ズキューン!

山の頭領になったけど行動の発案、指揮は静香が取って、行動自体は蒼鬼がやるので仕事が全くない。
いやーらくでいいね。動いたりするの面倒臭いもんね。
そういえばこの山に結界が貼られてるのに気がついた。かなりの腕前らしく空間把握をしないと気づかないくらい精巧だった。多分静香でも気づかないと思う。

ザンッ!ズバッ!キュイン!

そうそう静香の能力も進化したらしく見たことのあるものなら漫画の技まで使ってきやがるんですよ。ずるくない?完全チートもいいけど○○様の技だぜ!みたいなのやってみたい!

「あーもー!なんで壊れないの!?」

さっきからうるさい効果音だな…今の状況を説明すると、能力が進化した静香が「今なら朗人に勝てる気がするのよね!」といってきたので相手にすることになったのだが、面倒臭くなって空間に篭ったら、この通り全く攻撃が通らなくてイライラしている状態だ。

「そろそろ片付けるか」

「あーもー!さっさと破られなさい!そして負けなさい!」

ついでに観客は部下がいる。ボロボロに負けたら恥だし、勝ったら賞賛の嵐。まあどっちでもいいけど。

「スリープアウト」

静香の周りに眠りの空間を配置して終了。静香爆睡。あとは適当に空間で剣でも造って喉元にやり、空間の効果を消せばそれで終わり。

「なっ!?」

「はい、私の勝ち」

「あーもー!卑怯よ!不意打ちなんて!汚いわ!」

「まあまあ結局結果は変わらないし、卑怯汚いは敗者の戯言。って言うじゃん!」

「~~~!!」

さて、一段落ついたところで結界の主を探しに行くか。

「静香、私これから行くところがあるから。夕飯までには帰るから」

不貞腐れてんな~、まあいっか。自業自得

「テレポートフィールド」

………
空間転移を使って結界の前まで移動。この能力便利でいいね、使い勝手が良い訳ではないけど。

「拒絶」

結界に2mづつくらいの穴が空いた。さてさて人様の庭に勝手に入った愚か者を粛清しなくちゃ。でも結構結界が広いんだよね。結界破ったし本人自ら来て欲しいんだけど。

「誰だ?」

おっと、お出ましか。どんな奴かな?

「ここは子供が居て良い場所ではない!早急に立ち去れ!」

…なんだただのジジイじゃん。期待して損した。まあここは山の頭領らしくするか。妖力を出しつつ…

「それはこちらのセリフだ。ここは私の山。場合によってはただでは済まんぞ」

おお、ビビってる様だけどまあ殺しは趣味じゃないし穏便にいくか。

「そうだね、まずは名前から聞こうか。」

「……シルク・レイ。魔法使いだ…お前こそ何者だ?」

「私は前原朗人。この山を仕切ってる朗人組の主。結界を何日か前に見つけたから来た」

「そうか、つまり主を倒せばこの山に住んでて良いのだな。ここは場所が良いのでな、引くわけにはいかん!」

おおやる気満々。しかし魔法使いか、どんな魔法を使って来るのやら。楽しみだ

「遊んであげる。おいで耄碌爺さん?」

「ほざけ!アグニシャイン!」

レイは魔道書らしきものを開き魔法を放って来た。

炎か、空間に篭ってもいいけど今回は回避優先でいくか。

「テレポートフィールド」

来る炎を避ける避ける。まあゲームで見たことあるしね。

「この程度?」

「舐めるな!ウォーターフォール!」

水が蛇の様に襲ってきた。どっから湧いたんだ?しかし大きさが初めて出会った大蛇みたいだな。まあ…

「拒絶の空間」

グシャァァァ!

簡単に潰せるんだけどね。やっぱり魔法使いっていってもこの程度なのか…

「駄目だね。もっと強い最強の技とかないの?」

「……いいだろう。見せてやる。後悔するなよ?この結界の中で逃げられる場所はない!」

「よしこい!その魔法突破してやる!」

「終わりだ…『始まりの世界』」

次の瞬間、レイがもった魔道書が光出した。そして、光がどんどん広がっていく。直感で分かった。あれはまずい。できる限り全力で防がないと死ぬ!周囲に空間を配置して拒絶、断絶、停止、逆流、回帰、消滅、そして無の効果を付与!耐えろよ!

「パーフェクトガーディアン!!」

最強の防護空間を展開。それでもあの魔法を弾き返せるか分からないから困ったもんだ。まあ死にはしないだろうけど。つかこの状況で余裕だね~私。

そうこうしている間に空間に光が辿り着いた。空間がギシギシいい始めた。こんな現象初めてだ。よっぽど強い魔法なんだと分かる。壊れかれてたのでさらに妖力を送って空間を強化する。また魔法が空間を壊そうとする。その繰り返し。

バァン!!

…そして決着……勝負は…………私の辛勝。空間が半分壊れて空間に幾つか歪みが出来てる。どんだけだよ…

「……主は強いな…今のが止められるならわしの負けじゃ」

「いや、かなり危なかった。絶対防壁をここまでぶっ壊した輩は人妖問わず初めてだ」

魔法の効果があと1分長かったら、空間の効果があと1つ足りなかったら多分負けてた。しかし魔法か…面白いな……

「それで?わしをどうする?妖怪達の餌にでもするのか?」

「いや、喰われなくていいよ。その代わり…」

「……その代わり?」

「私に魔法を教えてくれ。できる限り全部」

直感だが魔法は覚えて損はないと思うんだ。それにこの時代にこんなに強力な魔法使いはそういない。かなり適任だ。

「……あっはっはっは!分かった!わしの魔法を全て教えよう」

「え?良いのか?全部って…魔法使いって自分の研究成果を他者にあげるのって嫌ってるって(未来で)聞いたんだけど…」

「いいんじゃ、わしはもう永くない。だからわしの努力の結晶を誰かに受け継いで欲しいんじゃ。お主にそれを頼みたい」

…爺さんの言動からするとこの時代は捨食と捨虫の魔法は開発?されてないらしい。だから魔法使いは自分の研究成果を書物にして後世に残すらしい。

「分かった。爺さんの魔法、全部受け継いでやる!」

「自分で言ってなんだが全部習得するのに恐らく30年くらいかかるぞ?」

「妖怪にとって30年なんてあっという間だよ?」

「わしは生きていないがな」

…確かに爺さん死んだら技受け継げないな…まあそこは大丈夫だけど

「私の空間を操る程度の能力で結界の中の時を動かなくすればいいよ。時が動かなければ歳も取らない」

「……分かった。だが条件がある。わしの全てを受け継いだらわしと魔法だけで勝負せい。空間はなしじゃ。よいな?」

「分かった。圧勝してやる!」

「そうか…じゃあ今日はもう帰りなさい。明日から修行を始めるぞ」

「それでは、また明日。テレポートフィールド」

シュン

「わしの魔法が後世に残るのか。生きて来てこれほど嬉しいこともそうはあるまいな…」

六、魔法を通じて

さて私は爺さんにあって修行をつけてもらうことになったのだが、今日は帰って休むことになった。それなのに静香に約束破ったしあとなんかムカつくからと理不尽な理由で飯が食えなかった。まあ一日抜いても死にはしないだろうけど。それと静香達に魔法の修行のこと言ったらうるさそうなので黙って行くことした。

「今日は遅くなるか当分帰って来ないかも。留守番や人攫いとかの計画実行はよろしくね」

「え?いきなりなにを…」

「じゃっ!テレポートフィールド」

シュン

「はぁぁ!?ちょっと!?」

……………
結界内

「ではまずは魔力を練るところから始めるぞ」

「魔力ってどういうものなのか見せてくれない?その方がやりやすいし」

「これがそうだ」

爺さん…レイは右手にぼやぼやとした薄紫色の力を見せてきた。はーい、そこでスーパーチートターイム!魔力を空間操作で解析、認識、洞察、考察etc…により完全に理解した!それを発生させる器官を空間を弄って体内に構成。終了

「こんな感じか?」

体内から体外に軽く魔力を放出する。レイも驚いてるな。私もここまで上手くいくとは思わなかった。

その後はレイから魔力についての説明を受けた。魔法は使用する人の技量や血統はもちろん使用する道具、場所、時間などによって効果が左右する。中でも運が魔法に強く作用する。全てに宿る記憶に基づき、複雑な由来や永い歴史を持つほど強くなる。レイは人間なので生きてる時間が限られているので魔道書により強い魔法を使っているらしい。妖怪の上強力な力を持っている私は素で結構な魔法が使えるらしい。

「私にはその魔道書みたいなのないの?」

「あるにはあるが…」

「頂戴」

「図々しいのぅ。八卦炉じゃ」

あれ?なんかまた聞き覚えがある名前が…八卦炉って確か魔理沙が使ってたやつじゃなかったっけ?こんな時代からあったのか…あれ?形状が違う…10cmの正方形が白と黒に塗り分けられているだけのやつだった。やっぱり道具も進化していくのか…

「ありがとう」

それでもこれも使えそうだし有難く使わせてもらおう

「それを経由するだけで魔力の手助けをしてくれる」

基礎知識、道具、あとはなにするんだ?

「では早速魔法を覚えてもらう」

「はやっ!」

………………
10年後

「火水炎竜」「羅生門」

ブシャァァァァ!!!

互いの魔法がぶつかり合う。結局静香の元に帰らず10年たっちゃった。帰ったら怒られそう…まあそれはそうと私の魔法の腕はかなり上がった。レイの魔法はほとんど完全に覚えたし幾つか自分で作った魔法もある。基本は地水火風、五行の木・火・土・金・水を学んだ。この時代は陰陽術も魔法と呼ぶらしい。それから自分で原作知識を頼りに月、日、星の属性を使える様になった。練習してるけどどうも月と日は時間が限られてて面倒だ。

「朗人。来い」

「?なんだ?」

「修行は今日で終わりだ…その前にこれを渡したい…」

レイは古ぼけた紙を十数枚渡してきた

「なにこれ?」

「これは……わしが生み出してしまった世に出てはならない魔法だ。この術はこの世に必要ない技達なのじゃ」

「捨てられないのか?」

「捨てられんのだ。生み出した魔法は皆我が子の様な物。とても捨てられんのだ」

「そして全て引き継ぐといった私なら使えると?」

「正しく管理して欲しい。それがわしの願いじゃ…引き継いでくれるか?」

やばい、初めてこの人が格好良く見えた。でもそれなら私はしっかり受け継ぐべきだよな…

「分かった…慎んで引き受けます。……師匠…」

「ああ、頼んだぞ…我が弟子よ……」

「そういえば前に最期に勝負しろって言いませんでしたっけ?」

「あれはもうよい。戦うまでもなく今のお前はワシを超えている。新しい魔法もワシじゃ扱えぬくらいにな」

「ばれてましたか…」

「当然じゃろう…これで思い残すことは無い。やってくれ…」

「………はい」

パァァン!

結界が解けた…空間の効果が消え、師匠もまた死んだ…また魔法を学ばなくちゃね。

「さて、久しぶりに帰るか。私の家に」

師匠から受け継いだ紙を大切にしまい帰路へ歩き出した。私も沢山の魔法を生み出そう…大切な子を廃られないためにも、約束のためにも…

「安らかに……」

七、子供永琳登場

我が家……それは誰にでもあり、最も落ち着ける空間だろう。時に食べ、時に遊び、時に眠る。そんな安らぎの空間…なのに、なのに………いま私は一刻も早くここから去りたいです。


「さーて、まずは言い訳を聞こうかしら」

「じ、実はこれには深い事情が…」

「言い訳しない!」

…どうすりゃいいんだよ

「確かに私は当分帰らないかもしれないって聞いたわ。でもね、10年よ10年!常識がないの!?こっちがどれだけ騒ぎになったと思ってるの!?」

「うっ」

確かにそう言われると罪悪感が湧いて来る。そんなに大事になっていたのか。まあ師匠とのことは言うつもりも咎められる気も無いけどね

「たく、ほらご飯食べちゃいなさい」

やっぱり見たことのある物を出せるって羨ましいね。高級食材も真っ青な能力だ。そしてかなりうまい!師匠のとこだと修行の一環で滝壺に潜って魚取ったり、熊狩ったりもしたけどやっぱりしっかり作られた料理には勝てないしね。それにしても本当に何も聞いて来ないとは…言い訳を沢山考えてきたのに…

「そういえば私がいない間なにか変化はあった?」

「ええ、人間達が他の場所をどんどん侵略していってる。ただでさえ狭い土地なのに勘弁して欲しいわ」

そうなんだ、一回遠出しようと思ったら空間の終わりがあった。結界かとも思ったけどどうも本当に世界がそこまでしかなかったのだ。つまり限られた世界で生きなければならないのだ。それによって縄張り争いが起き始める。面倒なことだ。

「あ、あと私に新しい友達ができたの。今は居ないけどね。未来ちゃんっていう覚り妖怪の女の子。可愛いよ!」

「へー、今度会わせてよ」

「うん!」

元気がいいな。友達自慢でもしたいのだろうか。…あれ?

「そういえば蒼鬼は?」

久しぶりに帰って来たのにまだ会ってなかった。

「勢力拡大に行ってるわ。妖怪も団結しないと人間に負けそうだからね。未来ともそれで出会ったの」

皆頑張ってるんだな…やっぱりちゃんと連絡入れとくべきだった。

「朗人も必要になったら手伝いなさいよ!」

「了解~」

………………
500年後

時代がすすみ人と妖はどんどん対立していった。人間の装備がレーザー銃がデフォルトになり、どんどん発展していった。それは静香がまずいとうわ言で呟いてしまうくらいのものだ。それにより控えめだった対人工作の過激さが増していった。破壊工作、要人暗殺などがそれだ。私は基本隠密行動をしている。静香に「情報を制すものは戦いを制す」と豪語されたのでできる限りの情報を手に入れている。

「さて今日はどこ行けば良いんだ?」

「今日はトップ…天皇の所に乗り込んで頂戴。今日は天皇と貴族が集まっているから情報が取れるはずよ」

「何か指定はある?」

「貴族の一つ、医療を専門とする貴族の情報を重点的によろしく。回復措置があるかないかだけでかなり変わって来るからね」

「分かった、いって来る」

空間を操り姿、気配、妖力、魔力を隠す。今の私は誰にも気づかれんぞ!!

「とうちゃーく」

防音にしてあるから音をたてても大丈夫!まあここには何度も侵入してるんだけどね?っと、それより会議室は~っとあった。瞬間移動でなかに侵入。楽勝!

「最近は妖怪まで徒党を組んで厄介になって来たな。」

「直接相手にするには危険な輩もいるから強行はかけられんだろう。前は一気に何百という人が消し去られた…」

それ俺だ!それ俺だ!人間も学習するもんなんだね。

「それに今は次世代の子供達が大事な時期だ。あまり無理をしたくない。」

あんま面白くないな……

……………
会議終了後

やばい、なんとなしに屋敷をウロついてたら託児室みたいな部屋があったから子供達を眺めてたんだ。見覚えある様な顔つきが1人いるな~とか思ってたんだけどそしたら入ってきた使用人みたいな人が「永琳様」って言ったんだよ。ま・じ・か・よ!忘れかけてたけどここってやっぱり東方の世界だったのか。ついていったら八意家の集まりがあった。…よし、頻繁にここに来よう!

………
「ええ、当分はあそこが起点になるから隠密に長けてる朗人に行ってもらうわ。明日はこのリストの薬を取って来て。よろしくね」

ラッキー!仕事の合間に行こうと思ってたら仕事で行けるなんて!仕事が楽しいなんて一生分からないと思ってたけど今始めて分かったよ!

「ちょっと、聞いてる」

「聞いてる聞いてる。これ取ってくればいいんでしょ?余裕余裕」

……………

……どーしてこうなった…

「お姉さん…誰?」

いやね、油断したわけじゃないよ?空間を弄っての隠密行動は透明人間より上の自信があったんだ。

「聞いてる?」

それが目的の1人である永琳に見つかるとか…自信がぶっ壊れそうだ

「…聞いてないようね。確かあの薬は…」

永琳の能力はありとあらゆる薬を作る程度の能力だったよな?なんでばれた?静香を覗くときだってゲフンゲフン!とにかくばれたことないのに!

「新薬だからどんな効果になるのかしら?楽しみね。えいっ!」

ゴクッ

「グエッ!ゲホッゴホッ!!まっず!」

「どんな気分かしら?ほら空を飛びそうとか」

「いきなり液体をのどに入れられたらそんな気分も消えるよ!いきなりなに!?」

「不法侵入した妖を見つけたからつい…ところで暇なら私の部屋に来ない?ここで見られたら私が独り言を言ってる怪しい人にみえちゃうから」

「まあそれは良いんだけど、仕事も一応あるからな…」

サボったら今日の夕飯が無しになるんだ。まじで抜きにされるから仕事をサボるわけにはいかないのだ。

「そうそう、話もしたいから私の姿と声も消してくれる?私の部屋はあっちよ」

人の話を聞かない永琳だな。というか妖をみてこの態度ってどうよ?私なめられてる?

「人の話を…」

「話のお礼に仕事は手伝うわ。この屋敷に私の知らない場所はないもの。ついでに薬は貯蔵庫よ。そこの床下にもっと沢山あるわ」

「…隠し部屋は…」

「私の部屋、お父様とお母様のへや、会議室に食堂とかの計13箇所」

「………」

流石永琳未来の月の賢者の名はだてじゃない。言おうとしたことも先取りされ、私がやろうとしていることも見透かされてる。
能力を使ったならともかく隠し部屋まで見つけてるとか…まあよく考えなくても永琳と話せるなんて願ってもないチャンスなんだ。大人しく従おう。

「諦めたみたいね。こっちよ」

永琳に手を引かれながら一つの部屋に入っていく。さっぱりした部屋だな~。薬って部屋で作ってるんじゃないんだ。

「薬作りは他でやってるのよ」

……あれ?心の声聞かれた?まさかね~。まあ折角入ったんだし家捜しでも…

「妙なことしたら気体にして薬を流し込むわよ。効くか分からないけど」

「多分効かないね。まあ家捜しは辞めるよ。というかやっぱ心の声読んでるよね?」

「貴方はわかりやすいから。そんなことより貴方のこと教えてくれない?」

どうやら永琳は人間なのに妖怪の私に友好的だ。うんうん、可愛い子は嫌いじゃない。

「何が聞きたい?といっても答えられる範囲でよろしくね」

「貴方の能力は?」

「空間を操る程度の能力だよ。永琳は?」

知ってるけど一応確認

「ありとあらゆる薬を作る程度の能力よ。でも空間を操る程度の能力って強いの?あまりそうは思えないけど…」

「今居る妖怪の頂点に立てるくらいには強いよ。多分永琳がそれを皆に言っても意味ないと思うくらいに」

「そんなことどうでもいいわ。私は色々なことを知りたいの。じゃあ次は…」

永琳が聞き出して他の人に言うつもりだと思ってたのにどうやら違うらしい。この永琳は澄んだ目をしていて純粋な子供のようだ。永琳が質問して私がそれに答える。私が質問して永琳が答える。それの繰り返しだった。

「あ、もうこんな時間だ。そろそろ仕事して帰らないと…」

「帰っちゃうの?また来るわよね?」

可愛らしい仕草をして上目遣いで見上げて来る。とても7歳には見えない可愛らしさだ。

「大丈夫、明日も来るから。…そういえば永琳は何で私が見えたの?普通見えないはずなんだけど…」

「私が見えない物を感じる薬を作ったの。本当は話しかけた時貴方の顔は見えてなかったわ」

そういう事だったのか。でも私が危険な妖怪だったらどうするんだ。私だったから良かったものを…静香だったら……辞めよ。怖い想像してしまった。静香は思考が完全に妖怪になってるからな。頭良いのは変わらないけど

「たく、私じゃなかったらどうなっていたか…」

「感じた気配に邪気が無かったから安全だと思ったのよ。独り言も阿保丸出しだったし」

「…今永琳を攫ったらどうなるんだろ?」

「お父様とお母様が悲しむと思うわ」

「軽いな~、まあいいや。また明日」

「またね~」

うん、今日は楽しかった。子供永琳まじ最高!大人になったら腹黒くなっちゃうのかな…あーやだやだ。とっとと仕事して帰ろっと

……………
「あんなに楽しく喋ったのは久しぶりだったわね。明日もこんな風に楽しく過ごせるのかしら…」

八、 別れの時も笑顔のままで

私が永琳のところに通い始めて3年がたった。永琳は類い稀なる頭脳の持ち主で10歳でありながら有名人であった。流石永琳としか言えない。テレビに映るわ新聞に載るわの大スターっぷり。ああ妬ましい!…そうでもないか。永琳も面倒臭いって愚痴ってるし。

「貴方っていつも暇そうよね…」

いきなりなんて事を言うんだこの子は!これでも忙しいんだぞ!起きて飯食ったら早速出発して永琳と話して、永琳が薬作りしたりしてる間に仕事して、半日くらいで終わるからその後ゴロゴロしながら永琳を待ち、永琳が来たら話をして、永琳が会議に呼ばれたら着いて行って情報収集。その後また永琳と話して遅くなってきたら帰って飯食って趣味の魔法、魔法薬開発。んで就寝。あれ?普通……だよね?話が多いなんて事ないよね?時間の使い方がうまいだけだよね!うん!

「そんな事ないよ。永琳ほどじゃないけど忙しいよ」

「ところで折角私が作った薬を壊すの辞めてくれない?作り直すの面倒なのよ?」

「あれは水に空間操作で着色、着臭して本物と入れ替えてるだけだよ?壊すなんて勿体無い」

「じゃあ本物はどこにあるの?」

「私が魔法薬の実験に使ってる」

「さりげなく有効活用してるのね」

「感謝してるよ」

頭を撫でると不機嫌な顔しながらも少し嬉しそうだった。やべー、私普通にあの永琳撫でてるよ!まじ俺得!

「顔に煩悩浮き出てるわよ?」

「ソンナコトナイヨー」

「なんで片言?」

「気にしない気にしない。それより…」

私は永琳と私の間にあるものに目を向けた。

「私はあと何回やれば将棋で永琳に勝てるのかな?」

少し前に暇だからなにか新しい遊びが欲しいと言ってきたので将棋を持ってきたのだ。すごく喜んでくれて静香さまさまだ。まあそこまでは良いんだけど始めの何回かは勝ったけどそのあと数ヶ月一回も勝てないのはなんでだろう?

「そのセリフもう聞き飽きたわ。この数ヶ月で何十回言うのよ」

「いや、慣れてるゲームで負けるとプライドが…」

「そんなの捨てちゃいなさいよ」

「簡単に言わないで。もう一回!」

絶対に今日は一回勝ってやる!……このセリフは何回目だっけ?

……………
10年後

なんかさ私も子供の頃から見てたせいだろうけどさ、こんなにも感動するもんなんだね!この時代も成人式は二十歳でやるんだけど、色々育った永琳の姿に感動しちゃっよ!永琳に会って速13年、静香と蒼鬼に疑惑の目で見られても、見えない誰かにこのロリコンが!っていわれても全然気にならないくらいに楽しかった。そんな永琳も大人になったんだな。しみじみするのは好きじゃないけどこんな時くらいいいよね!

…………
「で?貴方はいつになったら私に勝てるのかしら?」

あれ?なんで?さっきまで永琳の成人式に感動してたのに…成人式終えた永琳が使用人に疲れたから寝るって言ったから私も気を利かせて出て行こうとしたら、呼び止められ、将棋の相手をさせられてる。どうしてこうなった?

「……ねえ、朗人…」

「なに?永琳」

「私、月に行く事になったの…」

「うん…知ってるよ」

「だから…ありがとね。貴方が居なかったらこの家を出て行っていたかもしれない。何となく作った薬だったけどあれのおかげで本当に楽しかったわ…お父様もお母様も忙しいし、使用人も相手になってくれなかった…貴方にとってなんでも無いことでも私にとっては本当に嬉しい物だった。だから…ありがとう」

……知らなかった。永琳がこんなことを考えていたなんて。気づかなかった。永琳がここまで自分を慕ってくれていたなんて。分からなかった。頭がいいからという理由で構われない永琳がどんなに淋しかったか。

「永琳……私も楽しかった。自由気ままに妖怪として生きてきて、永琳みたいに頭がよくて可愛らしい女の子と話して…毎日ここに来るのが楽しみだった。永琳が居なければ仕事を途中で投げ出して遊んでたかもしれない。それに今日の成人式でこんなに嬉しくはならなかったと思う。私の方こそありがとうね。永琳」

「朗人……今日でお別れよ。昨日、私の薬を誰かが飲んだらしくて私が貴方と遊んでいたのがばれたらしいの。頑張って説得したら是非会いたいですって。きっとそれに乗じて殺す気なのよ。だから朗人。早く逃げて。今の技術じゃきっと相手にするのはきついわ。今まで本当に楽しかったわ。だから…」

本当に、本当に永琳は良い奴だ。妖怪である自分をここまで…だったら、それを仇で返すなんて私にはできない。

「永琳…」

私はそっと永琳の頭に手を置いて撫でた

「…朗人?」

もう泣き出す寸前じゃないか。大人になっても泣いちゃうなんて永琳は可愛い奴だ。せめて最後は笑顔で別れたい。泣き顔の最後なんて絶対に認めない!

「永琳のお父様とお母様は私に会いたがってるんだよね?だったら私は会うよ。それとこれはお願い。別れる時は笑顔で別れたいんだ。だから…」

「………ええ、私も笑顔で別れたいわ。でも、本当に大丈夫なの?この屋敷は…」

「永琳。私がこの屋敷に何回入ってると思ってるのさ。そして、心配の言葉は相手を選ぶべきだよ。永琳がいうべきは大丈夫?じゃない」

「……そう、じゃあ……」

"頑張れ"

そう、その言葉が欲しかった。その笑顔が欲しかった。それをまた見るためならこの位なんでもない。

「頑張るよ。だから永琳も私を信じて」

「そんなことは言われるまでもないわ。何時でも何処でも私は貴方を信じてる」

「じゃあ永琳のお父様とお母様にご対面しに行きますか!」

「ええ」

…………
コンコン

「お父様、お母様、連れてまいりました」

「永琳か、入りなさい」

「失礼します」

「?例の妖怪は何処にいる?」

「ここにいますよ」

不可視の空間を解除する。二人とも驚いているようだ。

「始めまして、前原朗人です。このたびはどうも」

「……娘に初めて会ったのは何時だね?」

「13年前の時ですね」

「13年!?そんなに!?」

「はい」

話してて気づかないようにとしてるようだけど空間を把握している私には意味ないことだ。部屋の外に何十人も武器を持って待機している。

「こちらからもいいですか?」

「なにかね?」

「永琳は…頭が良くても普通の人間です。特別視はしないでください。それでも良い子に違いないのでしっかり育てて下さい。あと、最後に月に行くまでは動かさないつもりですけど妖怪達が戦争を仕掛けようとしています。永琳に危険が及ばないようにしてくださいね」

「…分かった。こちらも最後だ。君は妖怪の主かね?」

「正確には山の主ですけどね。まあ少なくともレーザー銃を100人がかりで襲われても無傷で済む自信はありますよ?今は狙われない限り攻撃は控えますけど、部屋の外にいる人達なら5秒で殺せます」

「!!??」

「気づかないとでも?」

「……くっ」

「試し打ちもいいですけど…敬語疲れた。試し打ちも別にいいけど1人が打ったら全員に被害がいくからね」

「お父様、今回は無理に攻撃は辞めた方がいいです。朗人は本当に強いわ。きっと皆殺しに…」

「永琳、人聞きが悪い。君ら三人は殺さない。傷もつけないし気も失わせないよ?永琳の家族なんだから。だからこそ戦争に巻き込まれないように二週間以内に月に行って」

「……なんと言われようと妖怪を安々侵入させ、逃がしたなど我が家の恥だ!突入!!」

「「「おおお!!!」」」

たく、忠告したのに。三、四十人なんて僕にしたら小妖怪くらいにしかならないのに

「あ、危ない」

永琳達も一応銃の斜線に入っていたので空間弄ってガードする。永琳親子が居ても気にせず撃って来るんだから危ないな。銃の使い方を学んでないよこいつらは。

「まあ、殺すのは忍びないから四肢の一つを取って行こう。永琳、目ふさいどいて。あと耳も」

永琳が目を伏せたのを確認してから時計周りでいいか。端から左腕、左足、右足、右手、また左腕とどんどん空間を一瞬外界から切り離して切断していく。拾ったダイヤですら切れたのだ。人間の手足が切れない訳がない。

「ギャァァァァ!!」「ウワァァァァ!!」「痛え!痛えよ!!」

……さて1人残らずやったし、帰るか。

空間に色を付けて現場の惨状を隠す。空間移動で部屋の外にテレポートさせて終了。

「永琳、また会うことがあったらまた会おう!」

「ええ、その時にはもっと強く美しくなってるわよ!」

泣きそうになりながらも力強く返事をした。

「「…またね」」

お互い今までで1番の笑顔を浮かべた。私は東方で永琳が不老不死になるのを知っているけど永琳は知らないからきっと不安だろう。だけど笑顔を浮かべてくれたんだ。

また会おう……我が最愛の友よ…

九、前夜の集いは覚悟の時

永琳が月に行ってから一週間がたった。別れた後永琳達は一週間後、月へと飛びたった。私も見送りくらい行きたかったけど会ったら泣きそうだったので辞めておいた。数千年後また会えるだろう…

だがそんなことを考えている暇も無かった。永琳が飛び立つまでなんとか抑えていた妖怪達に限界がきた。今まで何匹も妖怪が殺されて皆怒り早く復讐したいらしい。静香も流石にこれは仕方ないし近々でかい騒ぎを起こそうとしていたらしいからもう戦争しちゃえ!とのことだ。だが、そこまで言うなら今まで頑張ってきた静香が指揮を取ればいいと思うのに何故か私が総大将にされた。断る気はないけど少し不安がある。私統率力ないんだよね~。人間の頃、先生にバスケ、サッカー、テニスのどれかを選んでやらせろ。と、言われまとめようと頑張ったらバスケットボールとサッカーボールとテニスボールでドッチボールになってた。あの時の先生の呆れた顔は未だに忘れられない。まあ困ったらしずえもんに頼めばいいよね?

「ねえ、聞いてる?」

「すみません。聞いてませんでした」

「だから、この子が前話した覚り妖怪の未来よ!戦争にも協力してくれるって!」

「………どうも……」

目の前には髪の毛を水色にしたさとりのそっくりさんが立っている

「私は前原朗人っていうの。よろしくね」

「……はい……」

なんか、無口な子だな…少し話しづらい…

「………すみません……」

あれ?また心の声を聞かれたような…永琳といい、このこといい読みすぎ…つか、本当に読んでるのかな?

「……いえ、聞いてます……」

……未来ちゃんの能力は?

「……心を読む程度の能力と構造を操る程度の能力です……」

……スリーサイズは?

「……上から65.58.62です……」

答えちゃったよこの子!

「……すみません……」

いや、聞いたのこっちだから良いんだけどもうちょっと恥じらいを持とうよ

「……?……」

首を傾げて上目遣いしないで悶え死ぬから~、その顔可愛すぎ!ほっそり小さい体と水色の髪。少しさとりに似てるからなおさらやばい!

「……さとり?……」

「いや、こっちの話し。それはともかく、戦争に協力してくれるって本当?」

「……はい。静香にはお世話になっているので……」

「そうか、悪いね。こんなこと協力させて」

「……いえ、好きでやってることですから……」

「もういいかしら?話が進まないわ」

静香が割り込んできた。空気読め。

「……静香には無理かと……」

「だな」

「なんかイラつくけどまあいいわ。それよりも、戦争で重要な能力持ちの人数なんだけど」

「能力持ち?こっちは…4人か?」

「ええ、それで人間側は5人よ」

む、こっちの方が1人少ないのか。相手の能力にもよるけど少しきついのかな?

「まあ月に行った奴らが居なければ多分負けはないと思うわ。頭が良いのも強い能力を持ってるのも一緒に飛んで行ったから」

なるほど、確かに永琳の薬は魔法薬に使うこと以外に普通に飲んでみたら薬が効きすぎて困った。……Gになって一週間戻れないとか…なんのために作ったんだよ…
まあその後尻引っ叩いておいたけど……

「……ところでいつ仕掛けるの?……」

「急で悪いけど遅くて明後日。早くて明日。蒼鬼が他の妖怪達を抑えつつ、明日、明後日のモチベーションを強化してもらっているわ」

明日か明後日。急ではあるけど覚悟はできてる。増えすぎて調子に乗った人間を一旦つぶさなきゃ。

「で、今日の夜は作戦会議するわよ。結構重要だからね」

こういう時IQ180って便利だな。作戦を建てさせたら勝てる奴は居なかったな。サッカーやテニスとかにも妙に凝った作戦を練ってくる上、それが効果抜群だから困ったもんだよ。まあその分、味方になったら勝ちは確定してるようなもんだから信頼はできる。

………………

「集まったわね。これから明日の作戦を指示するわ」

こちらは沈黙で返す。少し軽い蒼鬼でさえ緊張していたのか真剣な顔をしていた。

「まずはこちらの戦力を四つに分ける。多分あっちは東西南北に1人づつ、中心に1人の陣形でくる確率が1番高いわ。だから能力持ちには1対1の陣形でぶつけるわ。誰が来るかもなんとなくは予想しているけど、そこは運しだいね。ここまでで質問は?」

「……あの……」

「なに?未来」

「……私、あまり戦いに自信がないのですが……」

「それなら大丈夫。未来が相手なら絶対に倒せない奴に当てるから」

「……そう、ですか……分かりました……」

「それで、能力持ちを各々倒した後一旦集合。そして中心の建物を破壊。そして能力持ちを倒した後はひたすら殲滅。他の妖怪は中心以外の人間を殺すように指示してあるから邪魔が入る事もない。以上よ。質問は?」

「「「………」」」

「ないわね。明日の午後7時。日没と共に攻めるわよ。じゃ解散」

しかしほんと用意周到だな。きっと、何年もかけて考えていたんだろうな。遊びっぱなしだった自分が少し恥ずかしくなってきた。まあそれを明日取り返せばいいか。

……………
蒼鬼「あれ?久しぶりの出番なのにこれだけ?」

十の一、居場所

「さあ妖怪達!始めるわよ!非力ながらも己が領分をわきまえず、私達の土地を踏み荒らし続けた人間達に復讐する時が来たのよ!」

「「「おおおおお!!!」」」

静香の激励に妖怪達が呼応する。昨日泣きついたかいがあった。私じゃ気の利いたことは言えないからね。

「今日午後7時。私が出陣の花火をあげる。その瞬間……遠慮はいらない!目に付く人間を片っ端からぶち殺せ!事前に打ち合わせた通り能力持ちの人間は私達の4人が引き受ける。死にたくなければ近寄らないことね。各々その時まで覚悟を整えなさい!」

「「「おおおおお!!!」」」

さて、静香から解散させられたし、準備は整っているし。やる事も特にない。その時まで存分にリラックスしてようかね。今は……午後6時か。一時間後なにが起こるかねぇ~

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この先はキャラで別れます
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side朗人

……7時まであと…3分。いよいよだ。初めてここに来た時はこんな事になるなんて信じられなかったな。蛇にくわれ、突然妖怪になり、鬼と戦い、妖怪の頭になり、魔法使いに弟子入りしたり、永琳の成人式にでたり。良い思いでばっかりだ。人間との争い…元は人間である前原朗人。だけど今は……そんなことをどうでもいいと思っている私が居る。私の居場所は…私の手で守る!!

バーン!

静香の花火が上がった。…開幕だ……

「お前ら!行くぞ!」

「「「おおおおお!!!」」」

この街には東西南北に一つづつ出入り口があるのでその扉をぶっ壊してはいる。

「はあっ!」

空間を扉ごとどっかに飛ばす。さあ、後は百鬼夜行の大行進だ!死にたい奴は前に出ろ!

ジリリリリリ!

街中に警報が鳴り響く。それと同時にレーザー銃を持った人間達が何十人もやって来た。

「さあ地獄絵図を作りましょう!」

永琳の屋敷でやったように1人1人の四肢を吹き飛ばす。レーザー銃を撃ってくるが自分の周りの空間を操作して身体能力を底上げしてあるので全く当たらない。

「龍火竜氷!」

火の竜と氷の竜を呼び出し人間を蹴散らしていく。さてそろそろ……居た…

魔法を解いてある方向に一直線に向かう。何人か轢いたが気にしない。どうせ死んでないだろう。…見えた!あいつが私の相手の能力持ちの人間だ

「…ようこそ妖怪。俺の前に来るとは運が悪い。俺の切り裂く程度の能力で蹴散らしてやる」

そういうと男は腰にある日本刀のような刀を取り出した。

「さあ、覚悟はいいな?」

「……なんだ、この程度か…もっと危険な奴がくるのかと思った。」

「ああ!?てめえ何つった!」

「なんて弱いんだ。本当に能力に任せただけの奴か…俺がお前の幻想を殺してやろう。…赤霧、青鮫、来い」

空中に魔法陣を作りそこから二本の刀を取り出す。

「な、なんだその刀は!?」

まあ気づくか。この刀はかなり妖気を放っている。しかも作ったのは刀作り歴5年の師匠から作り方を伝授して改良に改良を重ねて完成させた妖刀達だ。生半可どころか名刀でも斬れると自負している。まあ名刀は無理だろうけど…さて、ビビらせたところで…

「弾けろ赤霧!切り刻め青鮫!」

赤霧が赤色に、青鮫が青色に発光していく。先程言ったとおりこの刀は妖刀なので、リスクがある。赤霧は相手を切り刻みたくなり思考が短絡化するが攻撃力が格段にあがる。青鮫は相手がどうでもよくなるが斬られるのは嫌になり防御力が格段にあがる。この正反対の妖刀達を同時に使うことで妖刀のリスクをなくしメリットだけを呼び起こす。

「く、おらぁ!」

相手の男が刀を振り上げ向かってくる。やはり剣術は素人らしい。これは勝負が…まあはじめから見えていた。何故なら師匠は剣術にも精通している。どんだけ万能なんだよ!とその時はつっこんでしまった。

「…無心流…合わせ切り」

ズパッ!ザンッ!

私の剣が相手の心臓と肺を貫き、男の剣が虚空を斬る。合わせ斬りは素人の適当な剣のタイミングに合わせるので相手が何もしてこなければ何もできないが向かってくれば後は単純に相手の刀以外の場所を斬り抜く。剣技とも言えない技である

「が、はあっ!ゲホッゲホッ!て、テメェ!よくも妖怪如きが!ゲホッ」

「私はね、居場所を守るためなら何でもできるの。…さよなら」

「まっ……」

とどめは早めに。…初めて自ら人を殺した。大抵殺すのだけは他の妖怪に任せていたのに……気にしない方がいいな…

「さあ、皆が待ってるはずだ。行かないと」

さて、皆は大丈夫だろうか…

十の二、知らなかった世界

side静香

初めてここに来た時。未知への第一歩。他の人が知らないこと。それが満ち溢れるこの世界。初めは単純に好奇心だった。朗人と共に蛇に喰われ、私の知能を使いなんとか生き残れた。そして、気づいたら知らない世界。突然の妖怪化。胸が踊るようだった。私は今!ただの人類には到底辿り着けない場所にいる!しかも、普通では手に入らない能力まで持っていた!これが喜ばずにいられようか!外の世界は退屈だった。勉強なんて簡単に理解できる。ゲームはやり方を覚えるだけで圧勝。大概私のやることはうまくいっていた。…そんなのつまらない!世界は難しく大変なことがあるべきだ。誰も知らず誰にも分からない未知が欲しい!…そう思い続けてもう何年経ったか。魔法はないと分かっていた。…でもそれを見つけられた。……そしてその世界がとても楽しかった。朗人と一緒の時間も、蒼鬼と張り合っている時間も、未来と語らっている時間もみんな楽しかった。そんな世界をどうして捨てられようか!…私は人間を倒し絶対に最後まで笑って暮らすんだ!邪魔なんて絶対にさせない!

「時間ね……」.

こころは定まった。絶対に……倒す!

「上がれ!」

ヒューーー、ドーン!

「さあ!行くわよ!」

「「「おおおお!!!」」」

「レールガン!!」

出現させたゲームのコインを音速で弾く。

ドッガッシャーン!!ジリリリリリ!!

あっさり吹き飛ぶ扉。鳴り響く警報。さあ、私の全てをかけて戦おう。頭だけでは守れない者たちのために…

「妖怪だ!撃ち殺せ!」

…こんな奴らに私の世界を壊させはしない。バージョン一方通行。最強コマンド。

「反射」

一発残らず反射してやった。レーザー銃にレーザーがあたり弾け飛ぶ。

(雑魚の相手は他に回すべきね。探索が先だわ)

「多重影分身の術」

ボワン

一瞬で二十人になる。だが元々この世に存在しないものの発現は結構疲労するので使いどきは考えものだった。

「み~つけた~」

静香はニヤリと笑い、影分身を解いてその人間の元に駆け出した。

絶対に殺す。私の邪魔をするなら何人なりとも殺し尽くす。作戦立案者の自分が失敗とかいったら笑い事にもならないしね。……居た居た。…さあ殺して明日を手に入れよう…それが自分のためなのだから。

「やあ、こんばんわ。この街の守護人の者です。名は…」

「丁寧なとこ悪いけどこっちも急いでいるの。早く始めない?」

「…まあいいでしょう。私もあなたの様な可愛らしい幼女を相手にするのは心が痛いのですが…」

「妖怪に見た目は関係ないわよ?それと幼女って言うな」

「これは失礼…では…」

「行くわよ!」

ドン!

蒼鬼のような…否、蒼鬼と全く同じ動作で向かっていった。

「ふむ、貴方も能力持ちですよね?どんな能力でしょうか?」

「教えるとでも思ってるの?」

静香は拳を思い切り振るい相手の顔面を貫く。…が、相手が電気のような物になり、飛び散ったと思ったら後ろで再構成されていた。

「電気になる程度の能力?」

「いえ、違いますよ」

「じゃあなに?」

「教えるとでも?」

……こいつムカついた。しっかり殺そう

じっとりとした目で見ていたら

「分かりましたよ。そんな顔しないで下さい。私の能力は地震雷火事親父を操る程度の能力です」

「前の三つはともかく親父って何を操るの?」

「子供が怒った親に向けるような恐怖心を植え付けます」

「ふーん、…私の能力は見たことがある物を発現させる程度の能力。さあ続けましょう」

「…チート過ぎません?」

「私もそう思うわ。まあ使えるから良いんだけどね。Xバーナー」

手から強大な炎の光線を出した。相手もギリギリ避けたがかなりビビってる。ざまぁ。さてさて、連打連打っと。

「レッグナイフ!レッグフォーク!」

足を振るい相手を裂き、貫こうとする。これは雷になって避けたようだ。まあ気にしないけど…

「巨人に苦痛の贈り物を!」

3000度の炎を放つ。これも炎になって耐える…が少し熱そうだった。ほいほいまだまだ

「座標移動(ムーブポイント)」

からの~

「幻想殺し(イマジンブレイカー)」

とどめの!

「魔界777つ道具、/拷問楽器「妖謡・魔」/(イビルストリンガー)」

「ギャァァァァ!!」

えーと、確か痛覚神経を弦にして演奏する楽器だっけ?流石に私もあれはくらいたくない。ついでに幻想殺しで相手に触れているので雷や炎になって逃げられはしない。

バッ!

突然相手が手を振り払い地面を転がり始めた。幻想殺しを使うとこっちも通常まで力が落ちちゃうからめんどうだ。あ、雷になっちゃった。

「ハァハァ、くそ、もうゆるさん!」

ゴロゴロ!ボウッ!ビキビキ!

辺りの雰囲気が変わった。雷が鳴り響き、炎が燃え上がり、地面が揺れ亀裂が走る。結構威力がありそうな上地震で足元が不安定だ。避けづらいし視界が安定しない。少しめんどくさい。

「荒れろ荒れろ!こんな奴ぶっ殺しちまえ!」

ビキビキ!

地面が割れた。足場が消えるが飛行術で飛ぶ。ここで一つ誤算があった。普段は能力で飛ぶので普通に飛ぶとそれ以外が出来なくなる。…その結果…

「くらえ!」

ゴロゴロビッシャーン!

直撃。妖怪化しているので即死はしないが雷の威力を考えればダメージは結構くらっている。

「まだまだ!」

ボォォォォ!!

炎が一斉に静香に向かい、包み込む。その拍子に地震によって生じた地割れに落ちてしまった。

「と・ど・め!」

地震、地滑り。地を動かし地割れを閉じる。

「あっはっはっは!妖怪何かが人間様に勝てるかよ!!あっはっはっは!」

「高笑い辞めてくれない?うっさいわよ」

「あ?…何で生きてる…」

「あたしは妖怪だよ?あんなんじゃ私じゃなくても死なないよ。後は…」

「……?あとは?」

「大嘘憑き(オールフィクション)。私の傷を無かったことにした。私の好きな能力のひとつよ。さて、貴方にはもっと苦痛を味あわせたいわ。貴方なら…まあ50年くらいで解けるかこの戦いで殺されるかだからまあいいか。…脚本作り(ブックメーカー)」

「?…ネジが伸びて?」

静香のもつ巨大なネジ。それが1m以上伸びている。

「『ああ、そういえば僕って本気で攻撃する時は完全にそのキャラになるんだよ。だから姿形が変わっても怖がらないでね』」

何時の間にか学ランをきた少年が立っていた。……見るのもおぞましい嫌な雰囲気を醸し出しながら。

「『まあどうでも良いよね。始めに領地取りにきたのはきみたちだから…』」

「『僕は悪くない』」

「…う、う、うぉぉぉぉぁぁぁ!!」

ほとんど悲鳴のように叫んで向かってくる。

ズドッ

「『そんなに無防備だと狙って欲しいって言っているようじゃないか。僕は誰よりも弱いから誰よりも弱点を知っているんだぜ?僕と全く同じにする脚本作りの劣等感に耐えられるくらいになってからまた来なよ。ま、突っ込んできたのはキミなんだから、僕は悪くない』」

「か、はっ!」

何時の間にか相手に突き刺さっている大ネジ。

「た、助けてくれ!俺が悪かった!謝るから許し「『嫌だね』」

「『僕は悪くないしキミがいくら謝ろうと誤ろうと許さない』」

バタン

…さて、これでこいつは死んだも同然だ。…なんせ存在の比重のほとんどを精神においている妖怪に脚本作りをやったらその瞬間に消滅したくらいだ。それに一番マイナスだった頃の球磨○を発現させてるし変身切っても相手の強さそのままっていうチート設定まで私にはついてるくらいだ。

「…時間が掛かり過ぎたわ。行かないと」

こっちは問題なし。後は…皆頑張って

…………………

作者「勢いでやった。反省はしているが後悔はしていない」

十の三、信じられなかった過去

side未来

私知敷未来は覚り妖怪だ。相手の心を見る妖怪。妖怪に嫌われる。人間にも神にさえ嫌われる。それが私だった。だから誰にも近寄られず1人で生きてきた。だからそれを悲しいとか寂しいとは全く思わなかった。構造を操って色んな人を困らせて日々を過ごしていた。それに引っかかる妖怪を見るのは楽しかったし、その時何を思うのかも見れた。1人で困る事はない。1人で大変な事はない。1人が私の罠に引っかかるともう1人が助けようと罠に引っかかる。バカみたいだ。そんな光景を見続けていると私は1人だから幸せなのだと思い込んでいた。…あの子、中山静香が来るまでは。

私の家は竹林にある。竹林の構造を操って誰も家に来れないようにしてある。その上入ったら出られないような構造にしてあるので誰も竹林に近づかなかった。それなのに静香はあっさり辿り着いた。どうして辿り着いたか聞いたら、「こんなの因数分解より簡単よ」と言ってきた。因数分解が何かは分からないけどそんなことあるわけないと心を見た、が嘘を言っている気配がない。道の構造全てを理解し、自分の行き場所まで分かった妖怪を見るのは初めてだった。

「…な、何の用?…」

誰とも話さないのでコミュニケーション能力は私には皆無だ。私が罠にはめた妖怪が私に復讐に来たのだと思った。

「貴方が竹林の主なの?だったら話があるんだけど」

「……なに?…」

「私達の軍下に入って欲しいの。人間達に復讐するために。あと…」

「……?……」

「な、何でもないわ!で?お願い出来るかしら?」

「……私は強くないから戦えないよ?それに私は心を見れるからきっとそこでも嫌われる。……私が居る意味はないよ……」

「そんなことない!…あ、ごめん。でも少なくとも私は大丈夫。貴方の味方になれる」

「……18人目……」

「え?」

「……私にそのセリフを言ったのは18人目だよ。皆そうだった。そして皆私の側から消えたわ。そして、私は1人で生きてきた。その方が断然楽だった。誰かと居るなんて私には……理解出来ないよ……」

「そんな……そんな悲しいこと言わないで。友達は必要だよ。絶対に。…本心で言ってることは貴方なら分かるでしょう?」

さっきから心を見ていたが確かに嘘をついていない。…だけどどうせまた消える。今までの人達のように……

「……じゃあいいよ。軍下に入ってあげる。その代わり仕事以外は私に関わらないで……」

「え?なんでよ?軍下って言っても別に従えってわけじゃなくて協力して欲しいってだけよ?無理なら断ってくれれば何も言わないわ。それに……私は貴方の友達になりたい。なんとなくだけど貴方の友達なりたいの」

「……じゃあ、私の友達になっていいから軍に協力しないのと、私は軍に協力するけど貴方と友達にならない。どっちがいい?……」

大体こう言えば皆かかる。知らない奴と友達にならなくても協力して貰えるんだから。しかも協力するって言ったから面倒事を押し付けて来るに決まっている。まあその間に竹林の構造を再構成すればいいし、始めからそのつもりだ。

「分かった。じゃあ友達になろう!」

「……いいの?私は協力しないよ?…絶対に……」

「いいよ。うちにはチートが居るから多分負けないし。それにうちの軍は私情を優先していい決まりだし」

5人目か。こういう場合で頭が回る奴は。バカはあそこであっさり引っかかり損をするが、頭の良い奴は友達になって友達として協力して欲しい。…と頭の中で考えている。心をみれば一発なのに。さあこいつの化けの皮を剥ごうかな。

心の中で何を考えている?

(あの山女の子が少ないから増えると嬉しいな)
(心が分かるってことは嘘を絶対につけない。つまり本当の信頼関係を築けるってことよね)
(何でだろう?あの子の味方をしたい。きっとあの子も私みたいに1人だったんだ。だから信用が出来ないんだ。…私もそうだったからよく分かる)
(私はあのバカに助けてもらって凄く嬉しかった。その喜びは絶対にこの子にも必要なんだ)
(心が分かる。それは誰よりも優しく辛い存在だろう)

(私にできることは…)

「…貴方は相手の心が分かる」
(貴方は相手の心が分かる)

「貴方は相手の辛さが分かる」
(貴方は相手の辛さが分かる)

「喜びが分かる」
(喜びが分かる)

「だったら…」
(だったら…)

「私を…信じて…」
(私を…信じて…)

………心の中で思っていることをそのまま伝えて来た。なんで…なんでここまて初めて会った妖怪にここまでできるんだろう。私だったら絶対にしない。誰かと関わること自体が面倒な事だから。…なのに…なんで涙がでて来るんだろう。裏切られる事に慣れていた筈だった。嫌われる事を理解していた筈だった。…友達なんて出来ないと納得していた筈だった。…だけど…なのに…どうして私は今、こんなに嬉しいんだろう

「え?あれ?私傷つけるようなこと言ったかな!?傷つけたなら謝るから泣かないで!」

「……そうじゃないんだ。今まで本心で私の友達になろうとしてくれる人はいなかった。気持ち悪いけど使える妖怪。便利だけど一緒に居たくない妖怪。そんな風に扱われて来たから」

「…そんな奴ら私がぶっ潰してあげるよ。…ねえ、貴方はここに居て良いの。友達をもっていいの。幸せになっていいの。私は……絶対に貴方を裏切らない」

「……そういえば名前まだ言ってなかったね。私は知敷未来。よろしくね…」

「私は中山静香。よろしくね、未来ちゃん」

「……うん。静香、よろしく」

………………
7時まであと3分。ようやく恩返しをする時が来た。絶対に失敗はしない。覚悟も出来た。…それはいいのだけど…

(あいつそんなに強く思えねぇぞ?大丈夫か?)
(能力持ってても頼りなさそうだな)

心を見れるとこういうのも入ってくるから面倒臭い。確か静香が力を見せつけ、魅せつければ良いって言ってた。よし、体構造を操って妖力を放出。7時まであと1分。

未来の身体から妖力が溢れ出る。それと同時に心の中で文句を言ってた奴を黙らせる。

これで士気も上がった。…時間だ。

ヒューーー、ドーン!

「…さあ、行くよ……」

「「「おおおお!!!」」」

扉に手を翳す。それだけで自動ドアのように両側に開いて行く。ついでに警報を鳴らないように細工した。この間に妖怪が流れ込む。まあ警報を鳴らさないと敵が来ないのでそこら辺のビルと家を倒壊させ警報を鳴らす。そうするとレーザー銃を持った人間が現れ銃を向けて来たので銃口を塞いで暴発させる。だが今回の私の役割は人間狩りじゃない。能力持ちを倒せばいいのだ。それ以外は妖怪に任せよう。
…なんて考えていると向こうから巨大なロボットが現れた。捜す手間が省けたのでそのロボットの前まで歩いて行く。

「ヒャッハー!よう。妖怪娘ちゃん!機械を操る程度の能力を持つ俺の正面からきた事を褒めてやろう。だが、ここから先は一歩も通さないぜ!覚悟しろよ!」

「…ところで……ロボットの両手と頭がなくなっていますが良いんですか?……」

「はあ!?そんなことあるはずが……」

「……あと足も外れましたね」

グラッ、ドッガーン!

手と頭と足をそれぞれ分解してあげた。それにより手と頭は地面に落ち、胴体が足から滑り落ちた。さて、生きてるかな?

「いきなり攻撃とはやってくれるじゃねえか!ぶっ殺す!」

相手はロボットの部品を集め車を作った。さすが機械を操る程度の能力。機械ならお手の物だな。

「死に腐れ!」

ブロロロロロ!!

そのまま真っ直ぐ向かって来た。単細胞め。まず車のタイヤを外した。それと同時にガソリンタンクに穴を開けて中身が漏れるようにした。その結果は言わずもがな。タイヤが外れ、摩擦を起こして走る車から垂れるガソリンに引火して相手は吹っ飛んだ。バカなこと話してる間に速攻で殺すのが定石。

「……これで終わり。貴方は攻撃の意味を持たない。あまり殺りたくないから邪魔しないでね……」

相手がさらに何か作ろうとしたので、作るたびに役に経てば良いのだけど…と思っているが役に立つ前にガラクタに変えてやる。相手も悔しそうだ。…といってもこれは時間稼ぎじゃなくて邪魔者の排除。とっとと殺ろう。

「…体内操作(ボディタッチ)離れろ……」

ドサッ

…相手の男が何も言わずに倒れ伏した。未来が相手の身体の構造を操り臓器の繋がりをバラバラにしたのだった。

「……やっぱり人間ってもろいね。まあ簡単でいいけどさ……」

皆は……大丈夫だよね。私より全然強いのだから。さあ!恩返しはまだ始まったばっかりだ。まずは皆と集合しよう

十の四、思い込みを辞めた時

side蒼鬼

悪意を操る程度の能力。これが私は大っ嫌いだった。元々頭がいい訳でも技量があるわけでもない。統率力も別に無いというのに山の長になれたのは父上が元々の頭領だったからだ。父上も能力持ちで善意を操る程度の能力だった。…私と正反対の能力。父上は悪意や悪行を善意に変換していた。その上とても力もあり統率力もあったので配下に慕われ皆父上のために戦うことに躊躇いがなかった。…だが、ある日父上が殺された。…殺したのは人間だった。父上は強かったが戦う事があまり好きではなかったので、人間が来たら追い返すだけだった。だがその日きた人間は能力持ちであり妖怪を恨んでいた。だから父上はその人間の善意を操った。その結果……父上は殺された。その人間には妖怪を見逃すのは悪行、妖怪を殺すのは善行という考えだったので、追い返すどころか逆に襲ってきたのだ。妖怪以外に使ったことがなかったせいだ。…だがそんな事はどうでもいい。すぐに私は人間の住処に突撃しその人間を殺した。妖怪を攻撃すること自体が善行と考えているならそれを端から悪行に変えてやればいい。結果、その人間は抵抗すらせずに死んで行った。そして山に帰り皆に事情を説明すると私が次の頭領にさせられた。だが私に皆を纏めるには力を見せつけ、恐れさせる以外はなかった。…次第に妖怪達は慕ってではなく恐れて私について来るようになった。それをいちいち調整する気にもなれなかったのでそのままずっと過ごしてきた。…だが、あの2人のせいで今までが否定された気がした。今までにも私に挑もうとした輩は沢山いた。その度に返り討ちにしていたので今回もそうなると思ったていた。だが…私は負けた。悔しかったが今までの荷をやっと降ろせると安堵もしていた。その後の静香との戦いは何も考えずにやれたので久しぶりに楽しいと感じたのだ。そして長が代わり妖怪達も変わり始めた。積極的に行動する静香。優しく穏やかな朗人。この2人は全然似てないというのに妖怪達からとても慕われていた。自分より強く、自分より慕われる。自分への当て付けかなんかじゃないかと勘ぐっていた時もあった。丁度そんな時、夜中岩肌の上に乗り1人で酒を飲んでいた時、その2人が現れた。

「やあ、蒼鬼。一緒にいいかい?」

「朗人…うむ、構わない」

「私も居るけど」

「む、…まあ静香もよい」

「ありがと」

この2人は会いたくないときに来る。そして、酒が進んでいくと必ず

「静香、蒼鬼。やっぱり2人が居ないと僕は何もできないよ」

このセリフを言い出す朗人。確かに朗人は何も仕事らしい仕事をしていない。だが誰よりも強く慕われていた。そのセリフを何度聞いた時か忘れたが一度我を忘れて怒鳴っていた。

「私はお前達に不必要だろう!強さも足りない!部下にも怖がられる!畏れではなく、恐れられるのだ!なぜ私の様なやつをずっと側に置く!ただの同情ならやめてくれ!!」

「「…………」」

「ハアッハアッ!」

「…蒼鬼。そんな事を考えていたのか…始めに言うとこれは同情とかそういののじゃない。ただ本当に必要なんだ。僕は積極性がなく妖怪達をしっかり纏められない。それに妖怪達も蒼鬼を恐れているわけじゃないよ」

「途中からきたお前に何が分かる!?」

「親父さんのことを妖怪達から聞いた」

「!!」

「私達には貴方の心情は分からないわ。だけど…そんな事どうだっていいの」

「なっ!?」

「今私達が大切なのは今の貴方。私達は貴方を信頼しているし大切にしているわ。それに妖怪達から嫌われてるみたいな事言ってたけどそんな事は全然ないわ」

「そうそう、昔からいた妖怪達から蒼鬼が前より明るくなった。ありがとうって言われたもん」

「あいつら………」

「自分の勝手な思い込みは一番ダメなことよ。そのせいで貴方は苦しんで居たのでしょう?」

「蒼鬼…僕達は……「お前が」必要なんだ。僕達を助けてくれ」

朗人が差し伸べてきた手。ただの手。……なのに、何故こんなに救われた様な気分になるのだろうか。必要。慕われる。この言葉は自分以外に使われるための言葉だと思っていた。それが自分に使われている。たったそれだけなのに目頭が熱くなる。…自分は今までなにを考えていたのだろうか。…こんなバカバカしいことを…こんなことまで言わせるなんて…

「…ああ、この火焼蒼鬼。微力ながら尽力させてもらう」

「よろしく頼むよ。蒼鬼。僕はその言葉を聞けて本当に嬉しいよ」

「…ところで朗人は何故自分を僕と呼ぶのだ?…いや、聞くのはよそう。きっと何かきつい事情があるのだろう…」

「え?え?蒼鬼?違うよ?何勘違いしてるの?そんな事はないから」

「だが困ったら相談してくれ!私達は…な、仲間なのだから」

「照れながら言っても可愛くない…いや可愛いけどそんなきついことなんてなかったから!」

「なら何故私と言わないのだ?普通そうであろうに」

「そうね~、普通私よね~」

「静香~!」

「なんだ、私だけ仲間はずれか?少し寂しいな…」

「だから~!あーもう!わかったよ!これから僕じゃなくて私って言えばいいんでしょ!」

「大丈夫なのか?」

「wwwwwwww」

「いいの!そこ笑うな!蒼鬼!飲み勝負するよ!今夜は私が勝つからね!」

「むう、何故そこに飛んだか分からないが返り討ちにしてれる!かかってこい!」

「私もやる~」

「さあ!今日は戦争だ!!」

「「おー!」」

………………

「クスッ」

懐かしい思い出だ。何故今頃思い出したのか分からないがとても心が落ち着いた。それと同時に覚悟もさらに強く固まる。

「蒼鬼様!7時まであと3分です!」

「そうか…分かった」

さっきので思い出した。あれ以降慕われる慕われないについて考えるのを辞めていた。これは確認できる最後のチャンスかもしれないな…

「なあ、お前ら…」

「はい、なんでしょう?」

「お前ら私のことは嫌いか?」

「…何を急に?」

「私はお前らを雑に扱っていた。私には静香のような頭の良さも、朗人のような優しさもない。ただお前らを使って生きてきた。あいつらが入って改善されたと思うがあいつらが来る前私を恨んでいたか?」

「…少し無礼なことを言ってもよろしいですか?」

「…構わん。今日は無礼講だ」

「では……」

さて、何を言われるか?いきなり離反したいとか言い出すかもしれんな…

「あんたは俺たちを信じられねえのかよ」

「え?」

「藍鬼様が死んで一生懸命頑張ってきたあんたをどうして俺たちが嫌えるんだよ?自暴自棄になってたけど陰ながら皆で支えようって言い合ってきたんだ。だから俺たちがあんたを嫌うなんてありえねぇよ!」

「そうだ、そうだ!蒼鬼姉!俺達はあんたを尊敬してるぜ!」「あんたを悪く言う奴は俺がとっちめてやる!」「俺達は絶対にあんたの味方だぜ!」

……本当に…私は何も分かっていなかったな。こんなに良い奴らに慕われていたのに、それに気づかないなんて…

「……よし。お前ら!!私の背中は任せた!全身全霊をかけてこの戦争に勝つぞ!弱音を吐く奴、諦めてる奴はいるか!」

「居ないに決まってる!」「俺達の覚悟はとっくに決まってるぜ!」「人間なんて食い尽くしてやるよ!」

「ふん!よし、お前ら!」

ヒューーー、ドーン!

「出陣だ!!!」

「「「おおお!!!」」」

「オッラァァァ!!」

ドッゴーン!!ジリリリリ!

殴って扉をぶち壊す。さあ、宴の始まりだ!警報すら私達を応援しているように聞こえる。向かって来るレーザーはクラッカーの類だな。

「私を止められる奴はいるかーー!!」

レーザーを片っ端から叩き落として突き進む。さあ!能力持ちはどこだ!?

「ヒャハハハ!やっかましいのがきたぜ!テメェは能力持ちだな!俺とバトルしようぜ!!」

「む、都合が良いな。能力持ちを倒せばいいと聞いたからお前を倒せばそれで終わりなのか?まあいい。やろうか」

「ヒーッヒャッハッハー!!テメエが俺を!?アッヒャッヒャッ!無理無理!能力持ちが勝てる訳ね~だろ!バーカ!」

「軽くてうざい奴だ。とっとと、悪意に染めてやる」

「ヒャーハッハー!どーした!?かかってこいよ!」

バキン!

「!!??」

「ギャーハッハー!どーしたー!?能力でも使えなくなったか!?」

「…能力が……壊された?」

「ヒャーハッハ!そのとーり!俺の能力は能力を壊す程度の能力!俺が生きてる限りお前は能力を使えねえ!」

「能力が……使えない…」

「アッヒャー!絶望したかい!?後は特殊レーザー銃で終わりだ!普通のは防げてもこいつは防げねえぜ!」

「…お前に言いたいことがある」

「なんだい!?冥土の土産に聞いてやるぜ!」

「ありがとう」

バキッ!

「は?」

蒼鬼の手が銃を壊し腹に潜り込んだ

「私はこの能力が吐くほど嫌いなんだ。なくなってくれるならなくなってくれる方が良い」

「ゲホッ!だ、だが今までの能力が使えなくなったら誰でも混乱するもんだろ!?」

「…確かに驚いた。だが、私の大切な部下が戦ってくれているのに1人惚けるなどできるわけなかろう!!」

「くっ!ここまでか!」

「…いや、お前が死んだら私の能力も戻るのだろう?ならお前は生かしておく。言っただろう?私はこの能力が嫌いだってな」

「ゴホッ、後悔……する…なよ」

動けはしないが死ぬほどではないだろう。骨も折っていないし、出血は……まあ仕方が無い。

「さあ、こちらは上手くいった。お前らも上手くいくことを願おう」

街の中心に向けて歩き出す。共と部下を守るために…

十一、決着と始まり

「…私が一番乗りか。静香、未来、蒼鬼は大丈夫かな?…」

皆強いけど能力持ち同士だからどうなるか分からない…心配だ

「おーい、朗人ー!」

「遅いぞー静香!」

「ごめんごめん。未来と蒼鬼は?」

「まだらしい……いや、2人共来たみたいだ」

「……2人共無事だったんだ……」

「私達も無事だぞ。朗人、静香」

「皆無事で良かったよ。このまま行けば絶対に勝てるよ!」

「ええ、後は……」

4人が街の中心の巨大ビルを見上げる

「「なっ…!?」」

「きゃあ!」

「ぐあっ!」

それと同時に未来と蒼鬼の心臓をレーザー銃が貫いた

「未来!蒼鬼!」

「静香!また来るぞ!」

ビュン!ビュン!

また二つのレーザーが飛んで来ていた

「拒絶!」「反射!」

バキン!ヒュン!

レーザーが、一つは消え、一つは……街の中心のビルに突き刺さった

「あ、朗人!」

「どうした!?速く2人の手当を」

「効かないの!私の能力が!やるたび何かに邪魔されてる!」

「なんだって!?まあいい。私がやる!空間回帰!……え?発動…しない?いやそんなわけない!何が!?」

「………あ…きと……」

蒼鬼がある方向を指差している…そこには…

「アッヒャッヒャ。だからゲホッ!後悔……すると…言ったんだ。今の俺じゃ、丸々1人の能力は壊せないが……一定の範囲に能力を使わせないくらいガハッ!簡単だ」

「あいつがやったのか」

あいつが蒼鬼と未来を治す邪魔をしたのか。許さない…殺す…いや、もっとキツイ目に遭わせよう

「…人柱を立てよ。この世の害を良しとせんがために。我の前に差し出せ。その者以外に平安を与えんがため。我に貴殿の全てを捧げよ」

……師匠が残した禁術のひとつ…「無限回路の亡き落とし」…術をかけられた者は術をかけた者が死ぬまで、永遠に体を引き千切られる幻覚とそれに伴う苦痛を背負う。その間はいかなることをしても死にはしないが苦しみも永遠に続く。

「ギャァァァ!た、助けてくれ!ァァァァァ!」

「絶対にお前は許さない。永遠に苦しみつづけろ!」

あんな奴は今はどうでもいい!今は…

「朗人……すまんがここまでのようだ…実際受けてわかったがあのレーザーは能力では治せないようだ。……あのバカが邪魔しなくても結局は治せん」

「……みたい…ですね。静香、私もダメみたいだよ……」

「そんな!お前らそんな簡単に諦めるなよ!」

「……簡単には諦めてない。私は朗人と静香と未来。皆と生きるためにこの戦争に挑んだんだ。だが、それも無理らしい。……せめて…勝利の酒を……飲み…たかっ……た」

「蒼鬼!蒼鬼!」

こんなところで……蒼鬼が死んでしまった。未来ももうやばいだろう。私は、四人一緒に……

「……朗人、静香。私も蒼鬼と一緒。皆と楽しく一緒に生きていたかった。……そう考えるのは貴方達だけじゃないんだよ。……ねえ、静香」

「…………なに?」

「……私の死体…私の家の花壇に埋めてもらえない?私が……初めて皆と居たいって、思えた場所だから…」

「うん、……うん!分かった!絶対にそうするよ!」

「……年に一回でいいから……私のこと、忘れないで思い出してね」

「年に一回なわけないでしょう!?絶対に貴方のことは忘れないわ!」

「……ありがとう…静香…おやすみ…」

「あ、あああぁぁ!未来ぃぃぃ!」

…同時に2人の大切な仲間を亡くしてしまった。この気持ちをどうしたらいいんだ……

「……そうだ、人間にぶつけよう」

「あ……きと…?」

「…静香…まだ戦争は終わってない。蒼鬼と未来の仇を取らないと」

「……そうね、冷静さを失ったら勝てるもんも勝てないわ。朗人!2人、隠しときなさい!」

「了解!」

悲しむのは後じゃないとな。この戦争、勝つのは私たちだ!

「ん?」

静香からすごい……気?を感じる

「皆!私に力を分けてくれ!」

「ストーーープ!」

静香から元○玉を消す

「ちょっとー!なにすんのよ!」

「お前はここ消し飛ばすつもりか!?妖怪まで殺っちゃうだろうが!」

下手したらその元ネタなら地球ごと吹っ飛ぶぞ。あれ?ここ地球だっけ?まあいいや

「う~、でも人間を一気に殺りたいんだもん!」

もん、じゃねえよ!たく、頭いいのに餓鬼っぽさが抜けなくて困る

「たくっ、こうやるんだよ」

グッシャァァァン!!!

音と共に街の中心の建物が完全に崩壊した

「あー、私の獲物が!!つか、あんたなにしたの!?」

「支柱を何本か崩しただけだよ。こうすれば被害が少なくて済むだろ?」

「はぁ、まあ今ので能力持ちは多分死んだわね…」

さっきのレーザー反射で死んだ気がするが…

「そういえば、人間の能力持ちってどんな能力持ってるんだ?5人居るんだろ?」

「切り裂く能力、機械の能力、能力破壊の能力、雷炎地心の能力、急所をつく能力の5人。切るのは朗人。機械は未来。破壊は蒼鬼。雷とかのは私ってなるように場所を決めたわ。だから後は急所の能力だけだから防御力ないのよ」

「なるほど。…じゃあ、能力持ちは倒したんだから一旦自由行動にしよう。私、地下に篭ってる人間をやってくるから。地上はよろしく」

「オッケー、いって来なさい」

上空へと飛ぶ

さて、何処らへんかな?三回くらい静香達に気づかれないように核弾頭を消してるんだよね。だから核フィルターの中に大量に人間が居るはず………あ、四発目だ。消去して……一個目の核フィルター発見!覚悟!

………………
3時間後

……や・り・す・ぎ・た!完全に人間滅ぼしちゃったよ!どうしようこれ!つか、人間居ないと私達も生きられないじゃん!そして誰も居なくなった。…ネタじゃなく

「ねえ、朗人。………どうする?」

「どうする?ってそりゃあ…どうする?」

「未来と蒼鬼を殺されてちょっとタガが外れたのは分かるけど……滅ぼすのはさすがにまずかったわよねー」

「そういえば他の妖怪の生き残りは?」

「………0よ。施設内で最終決戦になったらしいけど、そこが核爆弾を置いてあるところでそれを人間が爆発させたんだって。結構上級の妖怪も核には耐えられなかったようね」

「ああ、一回一段とでかい爆発音がしたのはそれか。…あれ?放射能は?」

「私が消しといたわ」

「そう…じゃあ、帰るか」

「そうね、未来を竹林に埋めないと」

「蒼鬼の親父さんの墓が山の頂上にあるから蒼鬼もそこに埋めようか」

「「…………」」

「……結構冷静なのね…」

「思考が妖怪になったってことだろ。いろんな妖怪に聞いたら妖怪は人間ほど死に感傷しないらしい」

「……そこは喜ぶべきなのかしら…」

「さあね。まあ、明日も生きてくんだ。引き摺らないならその方がいいよ。忘れさえしなければ」

「………そうね」

「じゃあ、私は蒼鬼を埋めて来るよ。静香は未来をよろしく」

「いいけど…なんで分けるのよ?」

「込み入った話もあるだろうからさ」

「ふーん、…まあいいけどね。集合場所は?」

「……始めの洞穴で」

「……了解」

………………
洞穴

「朗人、竹林に住みましょう」

「いきなりなにを言い出すんだよ」

帰って来て早々口に出す言葉かそれが!

「ほら、未来が寂しがると思ってね」

「蒼鬼は?」

「あいつは親父さんと話があるわよ」

「私が行く理由は?」

「空間を操る能力なら私達の力が減るのを少しくらいおさえられるでしょ」

「……………はぁ」

なんでこいつは頭が良いんだろう。反論が全く出来やしない。というか、なにか反論しても100%私が納得する説明を出してくるんだろうな…

「んじゃ決定!早速行こう!」

「住む場所はどうすんだよ」

「未来の家に決まってんじゃん!」

……それいいのかよ…

……………
竹林前

「ここが竹林よ!」

「見れば分かる」

しかし…随分と中が入り組んでるな。空間認識があるからいいけど他なら妖怪でも迷いそうだ

「さあ、朗人にここの迷路が解けるかしら!?」

さて、空間転移で先行くか

「テレポートフィールド」

「あ!飛ぶな!」

「構造だけ弄っても空間弄らなきゃ意味ないんだよ。んじゃ、おっさきー」

「せめて私も連れて来なさい!」

「自分で飛べよ」

ヒュン

……………
未来の家

「……普通…だな…」

小さな木造建築。二階建てで二階に二部屋、一回に三部屋。台所にバスルーム。畳の部屋とカーペットの部屋があった。それ以外は…

「……物が無いな」

家具も机と椅子だけ。しかも、寝室には毛布が一枚あっただけだった

「これでも増えたのよ。前よりは、だけど…」

「始めはなにがあったんだ?」

「……なにも…毛布すらなかった。話すための机と椅子。寝る時の毛布。これ以外は別に要らないって」

「へぇ、そんなに物を要らないって性格だったんだ…」

軽く顔に笑顔を浮かべた

「静香は?」

あっちも薄ら笑いを浮かべた

「とーぜん」

「じゃ、よろしく」

「任せなさい!」

「時間は?」

「5分!」

「じゃ、また後で」

「びっくりさせてあげるわ!」

バタン

…まあやり取りでわかって欲しいが天才でも、物は揃っていた方がいいっていうあいつの小さな女心。それで一斉リフォーム。もし、未来が帰ってきたら唖然とするんだろうなー

あり得ない想像をしながら竹林の中腹辺りに辿り着く。

「立地条件的にこの辺りがいいな。ここも、普通の奴なら絶対たどり着けない。魔法の研究のためと将来永琳が使うんだから……あれ?地上滅ぼしちゃったから永琳も来ないのか?……まあ趣味のためだけでもいいか」

今私は何のことを言っているのか。…そう、永遠亭を作る計画だ。さて、いい場所も見つけたしそろそろ5分だ。戻ろう

…………
再び未来の家

「言い訳を聞こうか」

「やり過ぎました、反省してます」

現在の状況。私が静香を叱るという普段とは逆の状態。だがこれは叱ってもいい。5分目を話した隙に、五階だて、完全に洋風化、面積倍化。

「常識をわきまえろってお前がよく言ってたよな。俺もそれが正しかったからそれに従ってたよ。だけど今は言わせてもらう。……お前常識をわきまえろ!!なんで木造建築が洋館になるんだよ!俺は家具が増えるなら別にいいかなって思ったから任せたのに!元の家の影もねえじゃねえか!」

「朗人、口調戻ってるよ。…まあ、妖怪なんだから失敗の一つもするって。それより竹林に私達の力が減らないようにするための空間にして。何年かかるか知らないけどそのうち生命が生まれるかもしれないからね」

「……分かった」

「じゃあ終わったらご飯にするからね」

「うん、楽しみにしてる」

………………
竹林上空

なるべく竹林全体を覆うようにしないと。後は…未来が寂しがらないように動物は入れるようにしとこっかな。多すぎると墓荒らしがでそうだから一種類でいいな。何にしよう……まあ兎に決まってるよね。ウドンゲやてゐが来た時のためにもね。……あれ?そういえばなんか雰囲気に流されたけど説教するの辞めちゃったじゃん。なんで私は頭が悪いんだ!!

…………
未来の家

「終わったよ~」

「お疲れ~、ご飯できてるよー」

「……なあ、さっき説教から逃げただろ」

「貴方が勝手に辞めただけじゃない」

「はぁ~」

……しかし、さっき静香はまた生命が生まれるかもと言った。…それは何年後になるのだろうか…

「まあなんにせよ、当分はこの生活が続くんだから楽しまないとな」

「そーそー、辛気臭さなんていらないよ」

「だな。今日は飲むぞー」

「おー!」

……………
安らかに眠れ。蒼鬼、未来。
私達も精一杯生きるから

十二、腹ペコ神様!?

1000年後

……この状況はなんだろう。
普段の習慣で家を出て、50年かけて作り上げた永遠亭に向かう途中に、子供が竹林に倒れていたんだよ。薄緑の髪をポニーテールにした小学5年生くらいの。私は兎以外はこの竹林に入れないようにしたから普通の子供じゃないんだろうけどさ。この状況ってどう行動すればいいの?

「うむ~、は、腹が……」

お、なんか呻いた。腹が……?減ったのかね。

「そこの行き倒れ少女。大丈夫か?」

「だ、誰じゃ無礼者~、妾は、天上界の神、戦場なるぞ~」

ほう、神か。妖怪が居るから神くらい居ると思ったがしっかり居たか

「ぶっ倒れて言っても全く怖くないぞ。つか、神なのか。ってことは地上を作ってくれるのか?」

「そ、その前に何か食べ物を供えよ~、妾は腹ペコなのじゃ~」

「物を頼む態度じゃないから見捨てよっかな」

「ぶ、無礼者~。貴様末まで祟るぞ~」

「まあまあ、ここはお願いします。ご飯を下さい。って言えば飯を食える所まで連れてってやるぞ」

「くっ、神にこのようなこと…」

グギュルルルル!

「おお、盛大な音だ。たく、頼めば食わせてやるのに」

ま、意地悪はここまでにして家に連れて行くか

「ほら、おんぶするから掴まれ」

「むー、きゅー」

もう声も出せないらしい。神がこんなになるって何日間ここにいたんだか……まあ取り敢えず家に帰ろう

……………
迷宮館(静香がつけた)

私と静香は1000年間ここで暮らしてきた。始めの違和感は完全になくなり、快適に過ごしている。当然未来と蒼鬼の墓参りは毎年行っている。墓場だけ空間を弄って私達以外誰も行けないようにして、空間内の能力低下を抑える仕様にもした。静香が竹林と館にも名前をつけようと言い出したので竹林は私が、館は静香が着けることにした。私は当然迷いの竹林と名付け、静香が迷宮館と名付けた。迷いの竹林には兎が大量に住み着くようになった。妖怪と人間が滅びただけで兎は滅びていないらしい。この1000年間は私は魔法の開発。静香はテレビゲームに熱中していた。私に至っては東方キャラの魔法全てとそれの強化版、有効的な日常魔法、禁術も少々開発した。
使い魔なんて、何匹いるか分からないくらいだ。それに、空間のおかげで能力は減らず時が過ぎるごとに増える一方だ。たまに静香と(魔法だけで)私が勝負するも高いレベルの魔法を出さなくても勝ってしまう。…そんな微妙で有意義な生活を送っていた

家に帰ると案の定静香がゲームをしていた。何百年か前にゲームを作り始めたり、私に作らせたりしていつまでもやっている。

「静香ー!腹ペコ神様連れてきたんだけどー!」

空間認識で見たら三階に居たので呼びかける。

ドタドタ!ドドドド!

「本当!?でかしたわ!」

「尋問の前になんか飯を食わせてやってくれ」

「くきゅー」

「こんな状態だから」

「…こいつ本当に神様?怪しいわね」

まあ怪しいのは分かるけどね。取り敢えず飯を食わせれば分かるっぽいしここは食わせとこう

「まあ、取り敢えずよろしく」

「はぁ、りょーかい」

…………

ガツガツ!ガツガツ!

「おかわり!」

……腹ペコ神様が食い過ぎ神様にレベルアップした。つか、本当にどんだけ喰うんだこいつ…静香の能力で出してるから食材が尽きることはないがレストランの冷蔵庫も空になるくらい食べてるぞ…

「ぷはー、ご馳走様。半年ぶりに食った」

一つ目の疑問が解けた。こいつ半年もあの竹林を迷っていたらしい

「さて、じゃあ質問タイムよ。なんで貴方は竹林を彷徨っていたの?」

「ふんっ!お主らには何一つ教えん!妾をあんな所に閉じ込めおって!」

お前が勝手に入って迷っただけだろうに…

「それ以前にどうやって入ったんだ?兎以外は入れないようにしたんだが…」

「む?普通に入って来れたぞ?」

「……あ、あれって対動物用だったっけ」

「間抜けじゃのう…」

「半年も迷ってた奴に言われたくねえよ」

「貴様!妾を怒らすということがどういうことか分かっているのか!?上からは見つけ出せと言われただけで危害を加えるなとは言われておらんのだぞ!?」

私の一言で怒り出した食い過ぎ神様。神力を体から出して威嚇してくる。威嚇されたからという理由で、こっちも妖力と魔力を混ぜて放出してあげた

「え?な、なんじゃその力は!?お、大き過ぎるぞ!?」

「私と戦う?」

ブンブン!

思いっきり首を横に振り、否定する……こういう行動は可愛らしいのに…そういえば名前を聞いてなかった

「そういえばお前名前なんていうの?」

「む?妾は戦場奈々(いくさばなな)じゃ。良き名じゃろう?」

「奈々ね。よろしく、私は前原朗人。妖怪よ」

「ついでに私は中山静香よろしくね」

「うむ。所でお主らはかの大戦の生き残りの妖怪でよいのか?」

「そうだけど…なんでそんなこと聞くの?」

「妾の目的は天上界の神から仰せつかった、大戦の生き残りの妖怪二匹に接触を試みよ…というものであった。だから…だからここに居ると噂になっていたから入ってみれば…」

「半年も迷ったと…」

なんか……可哀想に思えてきた。仕事を真面目にやってたら見知らぬ土地で半年絶食とか……私だったらブチ切れる。半年絶食か……竹林食べるもの無いもんね。兎くらいか?

「兎は食べなかったの?」

………空気読まない天才がいた。この子どうにかして…

「な、何を言うか!兎みたいな可愛ら……ケダモノなど食えるわけなかろう!」

「私は食べそうだけど…」

「朗人、朗人。あいつは兎を遠慮なく食べる奴なのか?」

奈々が震えながら裾をつかんできた。ついでに静香の発言のせいで家に入っていた兎達が一斉に逃げたしたぞ……

「…静香なら腹減ったらやりかねないな…マジで」

「こ、此奴は鬼か…そんな酷い事を…」

「…………」

奈々は怒って静香は無視。間違いなく静香が勝ってるな

くいくい

(なあ、朗人。妾とあの娘が戦ったらどちらが強いと思うかの?)

奈々がコソコソ言ってきて可愛らしいがここは奈々のために真実を教えるべきか?

「3分もったら奈々を褒められるくらいだな」

ビクッ!

おお、震えてる、震えてる。まあ奈々のために長めにしたけど本当なら1分もてばたいしたもんだ。……冗談じゃないから恐ろしい。ま、私の場合本気なら10秒もったら拍手ものだしね

「ていうか、あんた仕事を半年も放ったらかしにしてていいの?上司の命令なんでしょ?」

「あ……」

今気づいたって顔してるとこからみると、完全に考えていなかったらしい…救えねぇ

「どどどどうしよう…朗人!どうしたらいいかの!?」

「正直に話せば良いんじゃないか?今回奈々に過失は無いわけだし」

「ううう、どんな罰を受けるのじゃろうか……」

「まあまあ、怖くなったらまた来ていいから」

「本当か!?朗人!」

「ああ、拒む理由は無いしな。…ところで外はどうなってるんだ?今不用意に外でたら力が減って消滅するかもしれないから怖いんだ」

「それならあと数千年すれば天上界の神様が地上を作ってくださる。前回の地上は狭いし人妖の対立が強過ぎたようじゃからのう。あ、もちろんここは消滅されないから安心すると良いぞ」

…なんか結構軽く教えてくれたな。とにかくまた生き物を作ってくれるなら文句はない。

「ふむ、とにかく生き残りを確認出来たし妾は帰るぞい」

「そうか……あ、奈々!案内役の兎を呼ぶから待て!また半年迷うつもりか!」

たく、あのアホ神め

バタン

騒がしい2人が居なくなり静香だけが残された。

「ふう、やっと静かになったわ。だけど…新しい地上か…同じことが起こらないといいけど」

十三、新天地開放

3000年がたった。

奈々が帰ってから色々あった。私の空間は低下は抑えるが年齢を重ねるごとに増える妖力は抑えないので、さらに高度な魔法が使えるようになっていた。地上も着々と作られていて、1500年が過ぎた頃一回空間の中に入って外に出てみた。……神様達に文句を言いたい。竹林から出て少ししたところに人間達がいたから見ていたら、気づかれたのだが、いきなり四つん這いになって、向かってくるのは辞めて欲しい。あの時はマジで絶叫したぞ!無表情で四つん這いって……それからも何度か出てくるたびに普通にはなっていくけど、所々異常がある。もう早く普通の世界にしてくれ!

………で、今に至ると。結局異変は収まって、木の実がいきなり食いついて来たり、川の水がたまに石化したりはしなくなった。

「静香ー!新天地が出来たぞー!空間外すから手伝えー!」

今までは力の低下の停止する空間を貼っていたがその空間をただ解くだけだと一瞬で能力が無くなるので、それが起こらないように、空間内の状況を固定しなければいけないのだ。それにはかなり妖力が必要で私だけでは出来ないから静香にも協力してもらう

「分かったー、すぐ行くー」

間延びしたぐうたら姫が出てきた。結局この数千年間ゲームばっかしてたじゃねえか!

「能力強化の魔法陣は用意してあるから。こっち」

「はいはい~っと」

…………
竹林の中心辺りにやって来た。

「しっかり描いてあるわね。二つか…こっちは…太極図?しかし魔法陣なんて当てになるの?」

「自称大魔法使いの私が言うのだから間違いない」

「ふーん、で?どのくらいで終わるの?」

「3分あればよゆー」

「そ。早くやっちゃつて」

「…伝達を強化。同化の黙認。中からの放出。流れの安定。魔力、妖力の保持。時間軸の乱れの修正。……よし、安定した。さらに二重詠唱か…陰を極め、陽とせよ。陽を極め、陰とせよ。永遠の一部をここに収束。僅かな力を我の元に」

シュウウウウ!!

「……終了!」

「ああ!これで自由の身なのね!」

「自由奔放としてきた奴が何言ってる」

さて、一段落ついたんだから休むか…

「これは休んでなんていられないわね!外の世界がどうなってるか見にいくわよ!」

「…って私も!!??」

「当然でしょ!何年引き篭もってたと思ってんの!?もう我慢出来ないわ!」

「私を巻き込むな~」

引き摺られながらこれからを考えていた。やっと閉鎖された場所から出たんだ。こう言っちゃ未来に悪い気がするけど外もやっぱり見たいからな…こういうときは……

旅しか無いよな!突然だがこれしかない!他の人妖がどれほどか知らないけど多分負けないしね!よっしゃ!拘束解かれたらすぐ行こう!研究の成果を見せる時が来たぞ~!

……………

静香が飛び回っている間私は空間内で眠っていたから詳しい事は知らないが静香は上機嫌だ。聞くと何匹かと戦って圧勝したとか。ご満足のようで何よりだ。私も静香が寝静まったら旅に出かける予定だ。さあ!これから何がまっているのか!

「朗人、顔が気持ち悪いわよ」

「酷くない?」

「酷くない」

……書き置きするのやめて旅に出よう…

……………
午前3時くらい

さあ、出発だ!弁当持った。ハンカチ持った。ティッシュも持った。準備は万端!さあ出発だ!

……………
とある神社

「……………」

「……………」

旅、私の中では未知の物を見つけるための物。だけど…何故か知ってる子を見つけちゃったわけですよ。

「なんで奈々がここに居るの?」

「妾だって好きで居るのではないわい…」

……訳を聞くと半年も留守にしていた罰として、面倒臭い奴等がいる近くで神社の祭神として祀られてろ!と、言われあれ以降この神社に居るらしい。だが高慢な奈々はあまり信仰されていなくて困っていたらしい。それで私に信仰を取り戻す手伝いをして欲しいらしい。

「……はぁ」

「溜息をつきたいのは妾も同じなのじゃぞ…だが信仰がない神は消滅してしまう。…だから朗人!妾の信仰を取り戻す手助けを…」

………まあ、今まで竹林で周りが分からなかった時状況を教えてくれたのは奈々だからな…

「…よし、ここは親切心を出して…」

「あ、朗人!」

「お願いします、手伝って下さい!って言えたら手伝ってやるぞ」

優しい奈々に低いハードルで勘弁してやろう。いやー、私ってやっさしー!

「わ、妾に頭を下げろと申すか!?妾を愚弄するのか!?」

「頭は下げなくていいよ。愚弄する気も無いし。ただ…」

「ただ?」

「このまま進めたらなんかつまらない」

「この外道が!」

「手伝うの辞めていい?」

「ううう、お、お願い、します。て、手伝って…くだ、さい」

…やばい可愛すぎる。上目遣い!涙目!照れ顔!三つ揃ってこのお値段!…まあ値段なんてついてないけど

「こ、これで良いのか?妾は言ったぞ」

「よしよし、よく出来ました。じゃあ信仰集め、頑張ろっか」

「うむ!」

私に撫でられなから元気に返事をする奈々。…可愛いは正義だな…ジュルリ

十四、新しい?物語

「第一回!チキチキ信仰復活大作戦!」

「イエー!…って何をやらすんじゃ!」

さりげないノリの良さを見せた奈々は顔を赤らめ俯いてしまった。思いつきでやっても反応する可愛いお子様だ

「いや、勝手にやったんだろ」

「ぬぅ~、まあよい。だが信仰復活と言ってもどうするのじゃ?それ以前に何処から信仰を集めるのじゃ?」

「そっからかよ。取り敢えず1番の候補は人里だ。神を信仰するなんて妖怪はしないだろうからな」

来るまでの途中で人里を見つけたので元々そこから集める予定だ

「そういえば奈々は神としてどんな力があるんだ?」

とにもかくにもそこからだ。奈々の力に応じて信仰集めの方法も変わってくる。場合によっては私が手助けもするけど…

「基本は農作系の神じゃ。とは言っても雨を降りやすくしたりする程度じゃから人里を安泰させるほどは無いのじゃ…」

ふむふむ、まああまり期待はしていなかった。そこまで神力が高くはないし、多分人里に行った事すらなさそうだ

「よし、何はともあれ人里に行くぞ。そこでなんとかしよう」

………………
人里

奈々と人里にやってきて奈々に神力を出させながら歩かせてみた。そうすると近くの人が拝んでくるので奈々はびっくりしていた。聞いてみるとたまに食糧の買い出しに人里に来るがその時は神力を隠して居ると言う。

「なあ朗人。あまり道の真ん中に居たく無いのだが…」

「少し我慢。信仰集めなんだ、我慢しろ」

「いや、そうではなくて…」

「?」

「あ、居たぞ!皆!奈々ちゃんが来たぞ!」
「久しぶりだね奈々ちゃん!」
「こら、ちゃんと奈々様と呼びなさい」

数人の子供と大人が近くにやって来た。名前を知っているところを見ると…友達かな?

「奈々様、いつも息子達がお世話になりまして、ありがとうございます」

「いや、構わぬぞ。妾も皆が笑う姿を見るのがとても嬉しいからの」

「なぁなぁ、奈々ちゃん!遊ぼうぜ!」
「多分皆また中央に集まってるだろうからさ!」

「…朗人…良いかの?」

しっかり信仰集めやってるじゃん。…いや、本人が信仰集めだと思わずにやっているからか…

「ああ、楽しんで来い」

「よし、お主ら!今日も負けぬぞ!」

「返り討ちにしてやるぜ!」
「ねえ、早く行こうよ~」

ダッダッダ

…さて、こっちも仕事しないとな……この時代の人間は大概奇想天外のことが起きると神様がやったと考える。だからいい方向に奇跡を起こしてやれば上手くいく…予定だ。奈々の力が弱いのは信仰が足りないせいだろうから信仰を増やせば力も上がって雨を降らすくらい出来るだろう…まずは……畑を廻るか

……………

畑を廻ったところ今年は雨が少ないらしい。……奈々も頑張ろうぜ…まあそれはともかく雨だな…降らすのは魔法を使えば簡単だけど今奈々は子供達と遊んでいるから奈々がやったと考えてくれないかもしれない…だから雨は夜にしよう。神様が降りて来たその日に雨が降れば少しは何かを感じる人間もいるだろう。……暇だ、私もどっかに買い物でも行こう

『妖怪だー!』

………暇ってなんだっけ?

……………

人里の入口付近に人と妖怪が固まっていた。片方は当然人里の人間で、妖怪の方は…狼か…また脇役っぽい奴等が出た。数は1…2…50匹くらいか。しょうがない助けてやるか

「人里には入れるな!早く皆を避難させろ!」

「オオォォォォン!」

指示を出していた人里の1人に妖怪狼が飛びかかった。男も死を覚悟したように目を瞑った…

「はいそこまで」

「ギャン!?」

出会い頭男を襲った狼をぶっ飛ばす。狼には始めてこっち来た時の恨みがあるんだ!覚悟しろよ!

「あ、あんたは誰だ!?我々の仲間なのか?」

「奈々様の使いの者です。戦闘を生業としています。あなた方は下がっていてください。こんなに近くだと巻き込まない自信がないです」

久しぶりの敬語だ。疲れるなーこれ

「す、すまない。恩にきる。撤退だー!」

里の人々が遠くに行くまで妖力を放って牽制しておく。

「さて、被害はもう出なそうだからやりますか」

「グゥゥゥ、ガウッ!」

1匹、また1匹と向かってくる。まあそんなの今の私には軽いもんだ

「日火灰塵(フレイムサン)!」

説明しよう!日火灰塵とは太陽の光を集めて、一定の範囲内を太陽の光で焼き焦がす技なのだ!

「グォ!?」

当然日の光を密集させたのだ。妖怪だろうと耐えられる訳がない!はっはっは!まだ私は奥の手どころか強の魔法も出していないのだぞ!

「赤霧!青鮫!無双状態にしてやろうぜ!」

近くにいる狼を斬る、斬る、斬る!斬って斬って斬りまくるぜ!

38…39…40か。あと十匹は……ラッキー!一直線上にいるこれはアレをやってくれって言ってるんだよな!?やってあげよう、仕方が無い!

「恋符「パーフェクトスパーク」!!(マスパの改良版)

ゴォォォォォォ!!

「絶・好・調!」

狼は十匹全部消え去っていた。私を追いかけなければ半殺しで済んだのに…まあ終わったからいいか…奈々の所に戻ろう…

……………
「奈々様、狼退治終わりました」

「!?…ああ、ご苦労。怪我は……なさそうじゃな」

「私を誰だとお思いで?」

「…そうだな。お疲れじゃ」

「はい」

……なんか、ノリでやってるけどやっぱり敬語って疲れる。帰ったらマッサージさせようっと。もちろん奈々に

「あ、あのー」

「何でしょう?」

「妖怪狼を退治してくださったんですよね……ありがとうございます!里を総じて感謝致します」

「いえ、喜んでもらえたなら博麗神社の者としてありがたいです」

「……博麗神社とは?」

「あの山に見える神社の名です。私達はそこに住んで居りますので」

(おい、朗人!何で勝手に名前をつける!妾の神社じゃぞ!)

(私に信仰集めどころか妖怪退治までさせた罰だ)

今回奈々は遊ぶ以外していないじゃないか。私は本来なら今ごろ色んな物を見て楽しんでいる筈だったのに…

「あの神社に……あそこは奈々様の神社でしたか…」

「はい、今度ぜひ来て見てくださいね」

………………
「ああ~気持ち良い」

現在は寝っ転がって奈々にマッサージをしてもらっている。渋るかと思ったけど感謝しているらしく大人しく聞いてくれた。あの後は色んな人に感謝され、供え物として色々貰いながら帰った来た。神社に帰ったら、鳥居に博麗神社と大きく書いて、式に境内の掃除をさせておいた。雨も「雨乞いの約束(レインプロミス)」で作物が腐らない程度に降らせておいた。きっと喜ぶだろう

「のう、朗人…」

「何?」

「今日は…すまなかったな。朗人が信仰集めに一生懸命になっているというのに妾は子供と遊んでおった。妾から頼んだというのに……妾のために無理をせずとも良いのだぞ?朗人も忙しかろう。妾は……」

「はい、ストップ。そのしみじみした空気どっかやってくれない?」

「な、なんじゃその言い方は!妾は悩んでおったというのに…」

たくこのガキンチョは…くだらないことに頭をやっちゃって……

「あのな、奈々。私は頼まれたとはいえ、自分の意思で手伝ってるんだよ?それなのに申し訳ないとか、その方が私は嫌なの。そんなくだらないこと考えてる暇があったら信仰のことを気にしな」

「く、くだらないこととはなんじゃ!妾は真剣に……」

「真剣に考えることが違うよ。奈々も神なら妖怪になめられないように強くなくちゃダメだ。だから明日から私と修行してもらうよ。拒否権はなしだ」

「な、何故妾がそのようなことを…」

「今日みたいなことになって、私が居なかったらその時はどうするの?人間が喰われるのを黙って見てるだけ?それじゃあだめでしょ。まずは自分だけでも皆を守れるようにしとかないと」

「………分かった…じゃがどうするのじゃ?妾はそこまで神力は高くないぞ?」

「攻撃の前に回避だ。当たらなければどんな勝負にも負けない。だから明日から奈々には私の攻撃をひたすら避ける練習をしてもらう。」

「…妾は明日死ぬのか…」

「はいそこ、アホなこと言ってない。今日は早く寝ないと明日死ぬよ」

「う……お、おやすみ」

「うん、おやすみ」

パタパタ バタン

ふう、やっと寝たな。明日からはまた忙しくなるな。ここら辺を守るためには強い神、妖、人のどれかが必要だ。だから奈々を育て上げるか巫女を住まわせて育て上げるかのどっちかだ。私的には巫女がいいので人里に見えるようになるべく鮮やかな弾幕で注意を向けさせる計画だ。それに神が強くて損はないしね
さて、私も寝るかな。………明日からまた忙しくなりそうだ

十五、無茶と修行と海の神

奈々を手伝い始めて一ヶ月。たった一ヶ月。されど一ヶ月。博麗神社はまあまあ信仰が得られて来た。奈々も毎朝私の弾幕を避けているうちに回避だけは上手くなっていた。奈々に修行の一環で巨熊と戦わせたら丸呑みにされて爆笑してたらキレられたっけ。ああ、懐かしい。さあ、今日も今日とて奈々の修行を始めて信仰集めをしましょうか

「今日は湖で修行しするか」

「湖か…分かった。仕度してくるから待っててくれ」

奈々も変わったな。始めはどっか行って修行って言ったら絶対文句を言ってたのに…一蹴してやったけど……さて、今日は湖で何しよっかな?妖精100匹切りとか面白そうだ。他にも大蛙に勝負を挑ませるとか…うーむ、悩むな……

「朗人様、何か考え事ですか?」

考え事を中断して前を見た。没頭していてこんなに近くに来られるまで気づかなかったのか……不覚…

「美羽か。奈々…様を鍛えるのに湖に行こうと思ったんだけどそこで何しようかと思ってね」

「へぇー、奈々様も大変ですね……あの……私も連れてってくださいませんか?」

「ほえ?何で急に?」

「興味があるのです。ダンマクを撃ったり、空飛んだり。どうすれば出来るか知りたいのです」

なるほど。分からなくも無い。こんなまか不思議が目の前に放り出されてたら気にもなるだろう

「ふむ…あれ?確か子供だけで湖に行っちゃダメってことになってなかったかっけ?」

「なってますけど朗人様と奈々様がいらっしゃればきっと許しをもらえます!」

「…よし、じゃあ許可が取れたら連れてってあげるよ」

「本当ですか!?ありがとうございます!早速聞いて来ますね!」

そういうと美羽は喜びながらダッシュで去って行った。まあ美羽1人なら別に問題無いよな…

「朗人ー!仕度が終わったぞ。出発せぬか?」

「ちょっと待ってね。美羽が…来た来た。どうだったー?」

「はい!オッケー貰いました!帰りに家に寄ってくださいと言伝も預かってます」

美羽の家は家族共々博麗神社を慕ってくれている。奈々に1番懐いているのも美羽だ。そのうえ美羽の容姿は人里随一と言われるほど美人で、結婚の年が早い人里で結婚していないのがおかしいくらいだ。勿体無い……

「よし、美羽、奈々…様。行こうか」

「はい」「うむ」

……………
さて、奈々の修行は着いてからが修行では無い。着くまでに襲ってくる妖精、妖怪も修行対象だ。始めの頃は妖精にも泣かされてたっけ……まあ、修行の成果で下級妖怪なら余裕で倒せるようになっている。中の下に互角、中の中に苦戦、中の上にあっさりといったところだ。まあ一ヶ月という期間の中ではたいしたもんだ。信仰を集めると神力も上がるので少しづつ強くなれる。だからとっとと私が面倒見なくても良いようになってくれよ…

今は私が妖力抑えてるから普通に妖精、妖怪がやってくる。倒しては現れ、倒しては現れの繰り返し。今、奈々はナマケモノの妖怪と戦っている。普段と同じ光景なので私は少し眠くなって来た。だけど美羽にとっては貴重な経験なので奈々がぶっ飛ばす妖精、妖怪達を輝いた目で見ていた

………暇だな~

「朗人!聞いておるのか!?」

「うおっ!何だ?何かあったか?」

「何よそ見をしておる。妾の攻撃が全然効かない妖怪が沢山きたのじゃ!」

神力が効かない妖怪?おかしいな。探査魔法は使っていたから中級妖怪以上がくれば分かるのに……まあとにかくここは手伝ってやるか。…暇だし

「んで?どい……つ…」

"メタルスラ○ムの大群が現れた"

……なにこの経験値がっぽがっぽな奴等…しかも十匹以上いるぞ……どうするか…まあ、頼まれたし適当に相手をしておこう

「まずは……この聖水をくらえ!」

高速調合の魔法で普通の数百倍の速度で聖水を完成させ、それをメタルスライ○全員に満遍なくぶっかける。そして…

「「「ピギャァァァァ!!!」」」

………あれ?聖水ってかけただけでメタル系って死ぬんだっけ?なんかドロッドロに溶けてるけど…まあそこは良いんだけど近場にいた鳥まで溶けてるのは何でなんだ?鳥に聖水は効かな…………これ……王水?…………れれれ冷静になれ!おおお落ちつくんだ!こ、これは何かの間違いだ!………飽きた。美羽が羨望の眼差しを向けてるし、奈々が決意の瞳をしてるし、結果オーライでしょ

「ほら、奈々様、美羽、湖行くよ」

「あ、はい!」

「わ、分かっておる」

その後はさっきのを見てたのか襲ってくる妖怪が減った。……妖精は変わらず襲ってくるが…

……………
「はーい、湖とうちゃーく!」

「…ここってこんなに綺麗だったんですね…」

「美羽は来たことなかったんだね。じゃあ少しここで遊ぼうか。奈々は訓練で」

「言われなくとも分かっておるわい!」

「え、でも私だけ遊んで奈々様が遊ばれないのは…」

「いいのいいの。美羽は観客なんだから。…それより、今回の修行だけどちょっとハードルが高いからその覚悟をしときなよ」

「げっ、朗人がそう言うということは……」

そう、私は自分が言ったことにある程度は責任をもつ。だからこういう場合嘘はつかない。それを奈々は今までの経験則で知っているのだ

「今日は私の使い魔の一匹と戦ってもらうよ」

「使い魔……ですか?ですがそれってきついのですか?奈々様だって強いのでしょう?」

「何言ってるの?奈々……様は弱い方だよ。だから普通の奴でも苦戦するんだから」

「余計なお世話じゃ」

「で!今回は湖だし水繋がりということで海の神、ポセイドンと戦ってもらうよ」

「………は?」

驚くのも無理はない。海の神ポセイドンはかなりの知名度と力を有している。今の奈々がやっても瞬殺されるだろう。もちろん手加減はさせる。死んだら意味ないし。その代わり速さと規模はそのままにしてやる。威力だけ落とすのは私の仕事だ。空間内の威力のみを低下させればいいだけ。簡単ではないがまあ大丈夫だろう。

「大丈夫、大丈夫。威力は落とさせるから。速さと規模は同じだからね。それを避ける練習。たかだか中級妖怪に負けてる程度じゃあ私が鍛えた神らしくないからね」

「あ、朗人?流石にレベルが違いすぎるぞ!」

「召喚!」

いつも通りスルーして、ポセイドンを湖に呼び出した。

バッシャーーーン!!!

豪快な音と共に……人型で青い髪を逆立て三俣の槍を持つ男が現れた。力が強い神は基本人型なのか?と疑問に思いもしたがあまり考えないようにした

『…なんだ、呼ばれたと思ったら朗人か。ちっ、この無礼者め。神を使い魔にするなど前代未聞だぞ…』

「前例がないなら作れば良いのさ。さて、じゃあさっき召喚の時に伝えたようによろしく」

『分かったよ。今に見てろ…』

「あ、うちの神殺したらあんたらの近辺の神を皆殺しにするからよろしく」

『…お前は遠慮なく実行するのだろうな…』

「可能だしね。まあ痛めつけるのは認めるよ。じゃあ後よろしく」

「…お主と戦うのか…しかし、ポセイドンほどの神がなぜ?」

『………』

「………?」

そりゃ言えないよね~。呼び出して私が負けたら従えって条件を出して高笑いしながら戦いに挑んだ結果……あっさり敗北。神としての威厳が全然無くなってしまったし、契約なので断ることも出来ない。……惨めだ

「美羽ー!こっちおいで!観戦&遊びタイムだよー!」

「はい!分かりました!」

「さて、隔離の空間」

美羽が来たところで被害を受けないように空間を隔離する。よく見れるように空中に設置した。美羽が喜んでて微笑ましいね~。まあともかくたったこれだけで危険地帯が何が起きても大丈夫な場所になった。…じゃあ、始めるか

「じゃあ始めるぞー。準備はいいな?」

『当然』

「う、うむ」

「よし!試合開始!」

『よっしゃ!先手必勝だ!荒れまくるぜ!』

ザッパーーーン

まあ、実力は結構高いよね。いきなり25mくらいの高波を喰らわそうとするなんて……しかも速いな…こりゃ今の奈々じゃ避けられない……さあ、奈々どうする?

「奈々様頑張れー!」

ふむ、まずは……飛んで…波に飲まれると。うわー、あっさりすぎ…しかもさりげなくポセイドンがこっちに攻撃して来てるよ。たく、恨むなら自分の慢心を恨めよ……さっきの高波の上に乗る癖まだ治ってないし……だから私に瞬殺されるんだ

『いつまでも海の神の前で水に浸かっているとは余裕だな』

おおー、今度は渦潮か。奈々が回ってる回ってる。

「う、うーん」

何故か目を回してる美羽はほっとくとしてそろそろ反撃or回避をしろよ。特訓にならないじゃん。

「ぷはぁ!溺れるかと思ったぞ!」

『お前本当に朗人が世話してる神か?弱すぎるぞ』

「くっ!」

「まだ一ヶ月しかたってないんだ。仕方ないだろう」

『だがそんな状態で俺と戦うなんてやる気を挫くようなもんだぞ?分かってんだろ?』

「そりゃな。だが力の保有と信仰の安定なんてどの神でもやってる。実際信仰は着々と安定してきている。それに戦闘に慣れるには間違いなく実践が大事になってくる。出来れば格上の相手がね。きつくても効率が良いのは確かなんだ。だからそれに従うよ」

『こいつがそれについて来れた場合の話だろ。今のままじゃ無理なんじゃないか?』

「ついて来れないならそのまでだよ。奈々がもうやりたくない。そう言えば私は諦める。それは奈々が望むことだからね」

『……いい根性してるぜ』

「あ、それと余所見は辞めた方がいいよ」

さりげなくポセイドンの視線から外れながら、接近していく奈々を見ていたから一応教えておいた。だがこの距離なら避けられないだろう…

「喰らえ!妾は…妾はお前程度の奴のせいで修行を辞めたりなどはせぬ!」

おお、クリティカルヒット。顔面直撃か……慢心って怖いな~

『ちっ、面倒くせえ。水鉄砲!喰らえ!』

出た出た。貫通性のある水鉄砲。だけど……あれより私の朝の特訓の方が多いし速いから……

「なんじゃ、いきなりランクダウンしたのう。これなら普通に避けられるわい」

予想通りひょいひょい避ける奈々。これでも細かい回避はかなりのレベルなんだ。この程度は出来てくれないと困る

『ならこれはどうだ?』

ポセイドンは三俣の槍を構えその先に水を集め始めた。あの槍は水の行き先の指針で、一箇所に集中的に攻撃できるやつだった気がする。水圧は舐めてかかるとえらい目に遭うからね~。奈々も結構いい勝負してるじゃないか。終始劣勢は仕方ないとして回避をできる限りやろうとしているのは良いことだ

「奈々様凄いです!」

美羽が何時の間に復活していた。観戦に夢中らしいし遊びを教えるのは今度でいいか

……………
「はあっはあっ、つ、疲れたぞ~」

『お疲れ~、大分頑張ったじゃねえか。火力不足は否めねえが』

「そうだね。そろそろそっちもなんとかしようかな」

「奈々様、お疲れ様でした」

「ポセイドンもお疲れ。また用になったら呼ぶよ」

『二度と呼ばれないことを祈ってるよ』

そう言ってポセイドンは消えていった。しかし火力不足か……せめて中級妖怪くらいには勝てるようになってもらわないとな。新しい訓練追加するか

「じゃ、そろそろ帰るか」

「疲れた~美羽~おぶってくれ~」

「はいはい、お任せ下さい」

「まあ今日くらいはいいか…」

十六、変わりゆく日々

さらに一ヶ月が経った。あれから完全に人里からの信仰は安定した。奈々も中級妖怪なら倒せるようになり、雨を呼ぶ力も手に入れた。本人曰く力が元に戻ったということらしいが…まあそこは置いておくとして、あれから美羽が博麗神社の巫女になってくれた。美羽は元々(人里の中では)霊力が高かったから、もう少し霊力が高ければ弾幕も打てそうだな…と呟いたら食いついて来たので博麗神社の巫女…神職に付けば1番手っ取り速いよ。と、唆したら当初の思惑通りになってくれた。思惑通りにね。大事な事なので二回言いました

「朗人様、ご飯できますよ?さっきからブツブツ言って居られましたけど大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。単なる考え事というか端折りの説明と言うか…」

「端折り?」

「何でもないよ。奈々は?」

「もう先に行ってますよ」

「そ、じゃあ行こうか」

美羽は本当にできる子だった。可愛く気が利き料理もうまい。巫女させてるのが惜しいくらいだ。まあ美羽も満更じゃなさそうだし良しとするか。

さて、話は変わるが奈々はこれ以上は信仰を上げて神力を増やすしかないので、戦闘のセンスを上げるしか無いのだが、それはもう殆ど信仰集めの時にやってしまったのでこれ以上はやりづらい。ということで今は美羽の霊力を上げるのに苦心している。滝に打たれたりは美羽は毎日自分でやっているから良いのだが、妖怪を倒すというのは別だ。妖怪である私も妖怪が殺されるのはあまり見たくは無い。理由がある時はしょうがないがそれ以外はあまり殺したく無いのだ。だから安易に妖怪退治に行くぞ!とは言えない。今やっているだけでも霊力は上がるのだが、もっと何かしてやりたい!という母性本能のようなものが出てきて困るのだ

…………
「朗人様!奈々様!見てください!飛べました!」

美羽が巫女になってから弾幕はすぐに出せるようになったが、空が飛べなかった。実際飛んでいるというより浮いているが正しいような感じだ。

「おお、美羽、頑張ったのう!飛べておるぞ!」

「うん、頑張ったな。このまま続ければもっと飛べるようになるよ」

「はい!頑張ります!」

……こういう小さな変化はありがたい。本人のやる気にも繋がるし日々は常に変化すべきなのだ……そろそろ、『あの日』だな。新天地になって始めてだけど、道中はどうなるんだろうか……

………………
「奈々~、美羽~、今日はちょっと出かけてくるよ。昼飯はいらないからねー」

「どこに行かれるんですか?」

「……妖怪の山。………墓参りにね…」

「…そう、ですか。分かりました。ごゆっくり」

「ありがと」

こういう時小さい気遣いが本当に助かる。聞かれりゃ答えるけどあまり聞かれたく無い話だしね………先に竹林だな

………………
未来の家

この数千年間、一回も欠かさない毎年恒例。あの戦争から…何年経ったっけ?まあいいや、いつも通り報告会を始めるか……
「えーと、今年は……」

……………
未来の墓参りを終え次は蒼鬼の番だ。妖怪の山って頂上しか行けなかったから他がどうなってるか知らないんだよね。何か変わったのか楽しみだ

今回は空間転移を使わずに飛んでいく。さて、鬼がでるか天狗が出るか河童が出るか。………こんな昔にもう統治されてたのかな?

妖怪の山に着いてからはゆっくり歩いて行くことにする。……で、周りを見回して見ると妖怪、妖怪、妖怪。流石は妖怪の山と呼ばれるだけある。妖怪だらけだ。師匠に聞いた話だがこの山は龍脈が流れていて魔法の研究がやりやすいと言っていた。どういう訳かは知らないがその龍脈の発信源である山頂に妖怪でも上級の鬼が二匹も埋まっているからさらに強くなったようだ。

「あーもー!鬱陶しい!」

向かって来る妖怪が多すぎる!しかも下級ばかりで中級が一匹もいない。力の差が分からない妖怪はこれだから……そういえば私最近霊力出して妖力抑えてるから人間に見えるのかな?たー!うっかりしてた!人里の人を怖がらせないようにずっと抑えてたんだ。久しぶりに妖力出すか

ボウッ!バサバサ!ピギャー!ドドドド!

………あれ?妖力出しただけなのに近辺の妖怪の殆どが逃げちゃったんだけど……リラックス状態なんだよこれ。それで妖怪を逃げ出させるなんて……あれ?一匹逃げてないのが居る。行って見よ

少しいくと川が流れていた。河童フラグか?実際帽子被ってリュック背負ってる奴が居るし

「こんにちは、良い天気だね」

「誰だ?妖怪の山では見かけないな。急ぎの用事じゃないなら後にしてくれ。今忙しい」

「何やってるの?」

「見てわからないか?これを発掘しようとしている」

指を刺された方をみて見ると………これ戦闘機じゃねえか!なんでこんなもん……そういえば前は今の月人が作った科学の結晶ともいえるものが山に攻めてきたこともあったな。静香があっさり撃墜させたけど。それがこいつか……回収に行かなかったもんな~、まあ別にいいか

「なあ、これ掘り起こすの手伝ってくれないか?お礼くらいはするからよ」

「…別にいいよ。ほいっ」

空間転移で戦闘機を一瞬で地上に出して地面に置いてやる

「……すげーな、あんた…助かったよ。お礼に胡瓜でも胡瓜酒でも胡瓜揚げでもなんでも持ってってくれ」

「胡瓜酒には興味出た。それくれ。胡瓜も少し貰っていいか?」

「ああ!いやーほんと助かった。俺の能力じゃあ発掘に向かないから何日掛かったことやら…」

「あんた能力使えるの?」

「ああ。そういや名乗ってなかったな。俺は静川流(しずかわながれ)河童の妖怪だ。よろしく」

「私は前原朗人。………何の妖怪だろう……まあいっか。よろしく」

「あんた妖怪なのは分かるが何の妖怪か自分で分からないのか?」

「全然分からない。考えた事もなかった」

「変わってるね~」

確かに。私って何の妖怪なんだろう。実際考えた事もなかったし、考えたって意味なさそうだから別にいいが…うーむ…

「おっと、話が逸れたな。俺の能力は水を操る程度の能力と5秒先を見る程度の能力だ。かなり強いぜ?」

「ほう、私は空間を操る程度の能力を持ってる。結構強いぜ?」

「口調を真似るな。…よし、じゃあ一丁戦ってみるか!最近骨のある奴が少なくて退屈だったんだ。朗人。だったか?お前なら良い相手になりそうだ!」

「返り討ちって言葉の意味を教えてあげるよ。あと、井の中の蛙って言葉もね!」

いきなり戦闘になってしまったがまあいいだろう。妖怪って好戦的な奴が多いからね。私含めて

「水を操る程度の能力もバカにするなよ!河童の恐ろしさを思い知れ!」

川の水が一塊りになって襲って来る。

「ポセイドンの水を見た事あるからあまり迫力があるように思えないな」

自信満々な方を倒すには……これかな?

「不可触の陰(ノータッチ)」

魔法を使った瞬間川の水が朗人を貫いた。……ように見えた。

「なん…だと…」

あの軌道は当たっていた。5秒先を見る程度の能力でも当たったシーンが見えた。それなのに怪我どころか水滴一つ着いていないとはどういう事だ?

「ほらほら、頑張って当ててみなよ。見えるのでしょう?」

「くっ、何度でもやってやる!」

ズッパーン!ドッパーン!ザバーン!

何度やっても相手に攻撃があたらない。気配はある。声も聞こえる。姿は見える。だが当たらない。それが我が不可触の陰の能力

「ハァハァ。くそっ」

「そろそろ攻撃するよ~」

さすがにこれだけだとつまらないからね。さて、何にしようか。技が多すぎるのも考えものだな…

「土地の食べ残し(ホールランド)」

ボコボコ!

「!?まずい!」

バクン!スカッ

さっきまで流がいた場所を地面の色をした地面が材質の口がかぶりついていた。

『グゥゥゥ』

口は唸り声を上げながら土に入って行く。…その後にはポッカリと空いた穴と穴の周りに散らかる土が取り残されている

ボコボコ!

「こっちか」

バク、サッ

口は一瞬噛み付いたと思うと直ぐに土に入って行く。

「またかよ!」

バク、サッ、バク、サッ

噛み付いては潜り、噛み付いては潜りの繰り返し。口が食べた跡がどんどん増えていくだけだった。

「そろそろ決着つけましょうか」

「俺が5秒先を見てる間は俺の負けはありえねえぞ?今もこんな感じだし」

「国畑田の丸呑み(ホールランドカーニバル)」

「は!?これはちょっ!待った!参った!俺の負けでいいから!」

流は見たようだが、さっきのは土地の食べ残しの強化版でさっきの12倍の大きさをしている。だから流は5秒先に避けられない物が来るのを理解し、降参した。……賢明な判断だ、といってもあれ、捕獲用だから痛みは有るけど死にはしないんだけどね

………
「朗人は強いな…ここに住み着いてからあそこまで一方的にやられたのは初めてだ。今日は俺の住処で飲んで行かないか?ご馳走するぜ?」

「お、いいね。神社への連絡と墓参りを終わらせたらまたここに来るよ」

「そうかい。じゃあコレ解体しながら待ってるよ」

さて、じゃあとっとと山頂に行きますか。蒼鬼と親父さんに挨拶しなくちゃ。…その間に通信符で美羽に連絡をとっておこう。

「もしも~し、美羽~?」

「あ、はい!何でしょう、朗人様」

「今日は妖怪の山でちょっと飲み明かすから晩御飯いらない。だから奈々と食べて」

「泊まり…ですか…分かりました。奈々様にも伝えておきます」

「ん、よろしく」

これでよし。…お、山頂が見えてきた

この山ってかなり高いから景色が良いんだよね。木に乗るだけでここら辺が一望できる。人里や神社も普通に見えた。いやー、絶景かな、絶景かな。

「さて、久しぶり。蒼鬼、親父さん。報告にきたよ。まずは……」

………
これで墓参りは終わった。流の所に戻るか。……胡瓜酒ってどんな味がするんだろう……

そんな疑問に答えるべくやって来ました、河童の住処。といってもまだ流しか住んでないな…

「ほら朗人。こいつが胡瓜酒だ。うまいぞ」

堂々自信満々でコップをこっちに渡して来た。だけどせめて浮かべてある胡瓜は何とかしようぜ!

「あれ?うまい…」

「だろー!」

「随分すっきりしてる…だけどアルコールが強いな。直ぐに飲み過ぎになりそうだ」

「飲めば忘れるって。さあ、飲もう飲もう」

…………
頭が割れる…調子に乗って飲みすぎた…本当に飲みやすいからずっと飲んでたらとんでもない量を飲んでたよ…というかなんで流は私の倍は飲んでたのにそんな余裕そうな顔してるの?ずるい…

「いやー昨日は楽しかった。また寄ってくれよ」

「あー分かった」

「大丈夫か?」

「ニヤニヤしながら言っても心配してるように見えない…」

「墜落しないようにな」

「あーい。あじゅじゅしたー」

あー、頭痛い。速く帰って美羽に介抱してもらおーっと

十七、自分勝手な剣と主

美羽は初めの巫女にとしては、とても良い人材だった。空もある程度の距離は飛べたし、中級妖怪は無理でも低級妖怪はある程度勝てるようになっていた。…だが妖怪にとって人間の生はあまりにも短い。美羽が死んでしまった時奈々は泣いて悲しみ、私は立ち尽くしていた。美羽が死ぬ少し前に連れて来た新しい巫女も泣いてしまっていた。…だが妖怪だからか私はその次の日には立ち直り普通に過ごしていた。奈々を諭し火葬し埋める。その後は新しい巫女に修行をつける。前と同じ日々を過ごす。二代目、三代目も同じような感じだった。このまま何も変わらないのだろうか………

………………
世の中のゲームには起きたら目の前に女の子が!!…というシチュエーションがある。だがそれは二次元の話で三次元には起きやしない夢物語だ。……だが…起きた私の前に美少女が居る!しかも2人も!これが落ち着いていらいでか!…つか、これどんな状況?私、寝てる間に誰か攫っちゃった?何処ぞのスキマ妖怪かよ…

『えーと、大丈夫ですか?ご主人様』

はい、ご主人様いただいちゃいましたー。私は使用人を雇った記憶なんぞないでー!茶髪に…この子は中2くらいか。赤いジャージ?のように簡素な服を着ていて行動的な雰囲気がする。

《しっかりしてください。起こすの面倒なんですから》

軽い毒舌……悪くない…こっちは薄紫色の髪を腰まで伸ばし、白のワンピースを着て髪に花の髪留めまでしているお嬢様みたいな子だ。なんか正反対って感じだ

「対応遅れたけど君たちだれ?見たこと無いけど…」

《…そういえばこの姿は初めてだったわね。私は青鮫。名は藍(あい)です。よろしくお願いします。ご主人様》

『私は赤霧!名を灰(かい)って言うんだ!よろしくお願いします!ご主人様!』

「そうなんだ。私は…」

《前原朗人様。知っているのでいいですよ》

「…あれ?赤霧に青鮫?私の剣の名前じゃん」

『うん!私達は付喪神化して人格と姿を持てるようになったんだ!勿論剣の形にも戻れるから安心してよ!』

《灰、うるさい。…そして私達には霊魂が宿り、貴方も神になられているようですね。流石ご主人様です》

「付喪神か……あれ?なんか聞き逃した重要単語があったぞ?私が…神になってる?」

何そのとんでも展開。私妖怪だよ?あと魔法使いか。それなのに神とか…どんだけ~

「いやいやないない」

妖怪が神になるとか…夜神君でもびっくりの現象だよ。確かにね、奈々が倒せなかった妖怪を私が倒したり、空き巣を見つけて懲らしめたり、台風並みの天気を皆の前で抑えちゃったりとかしたけと流石にね~

《そろそろ現実逃避をやめてくれないですか?鬱陶しいです》

『ゲンジツトーヒってなに?』

《貴方には無縁な物よ》

『そーなのかー』

なんか好き勝手言われてるな……しかし私が神になったのか…空間の効果を解けば…

ボウッ

妖力と神力と魔力か………あれ?なんか増えてる?奈々から出てる力に似てる気が…ここは……

「よし!私は新世界の神になる!」

《もう神になってますよ?》

『頑張れご主人様!』

冷静なツッコミと理解してない同調。本当に正反対だな

《といっても別に困る物では無いでしょう。逆に新しい材料が増えたと思えば良いじゃないですか。魔法使いらしく》

「確かにね~。そっか、奈々を助けてる間に私も信仰されてたのか。……そういえば私は旅に出ようと思って何故かずっとここに留まってるよな…そろそろ良い気がしてきた」

『旅に出るの!?』

「そうしよっかな~。最近は退魔符の作り方や霊力を上げる修行法。実践練習だって奈々が出来るようになったし……問題無いな…」

《私達は貴方に従うので決断はご自由に。短絡思考でも問題無いですよ》

「酷くない…?」

《酷くないです》

「はあ~」

バン!

「朗人!さっきから煩いぞ!何を騒いでおる!」

「丁度いい。奈々、実はかくかくしかじかなんだけど」

「?何じゃそれは?」

「だからこれからはここの祭神の奈々が巫女に修行をつけてって言ったの」

「一言もいっとらんぞ!」

「あと、私も神になった」

「それは先に言うべきことじゃろ!?」

「刀も付喪神化した」

『ども!』

《はぁ》

「さっきから意味が分からん!」

「つまり、巫女に死期が近づいたら新しい巫女を探して来ること。この紙に書いた修行法をしっかり巫女にやらせること。この辺を幻想郷と呼ぶこと。分かった!?」

「言ったことは分かったが言いたいことが分からん!」

「旅に出る!さらばだ!」

「は!?ちょ、待て!朗人!」

シュン!

「あ、あの馬鹿者が~~!!」

「奈々様!?ど、どうなさいました!?」

「早矢!修行じゃ!あの馬鹿朗人を見返してやるぞ!」

「え?え?」

「ボーッとするな!妾について来い!」

「は、はぃぃぃ!?」
…………
《よろしかったのですか?あんな別れ方で》

「いーの、いーの。奈々のことだからキレて修行の効率が上がったりしたことあったから」

現在適当に歩いて旅行中。赤霧と青鮫は刀に戻して腰に下げている。はたからみると独り言を3種類の声色で言ってる危ない人になってる。まあ、なにはともあれ奈々とこれからの巫女さんが何とかしてくれるだろう。しかし、何処行こうかな…まだ永琳しか東方のキャラに会ってないから積極的に会いたいんだよね……あるとすれば…紫、幽々子、諏訪子、神奈子、聖、ぬえ、輝夜、妹紅、慧音、幽香くらいか?記憶が曖昧なとこがあるから本当にこの時代か分からないけど……まあなるようになるさ。紫は…無理だな。会えるわけない。神出鬼没だし。平安京はまだ先っぽいし、諏訪子辺りが適任かな?場所を特定できるし…

「洩矢神社に行こう!」

『わ、びっくりした~。ご主人様、いきなりどうしたの?』

「ん?行く所を何となく定めただけ」

『ふーん、まあいいや。おやすみ~』

《すぅすぅ》

こいつらリラックスしてんな~。人に運ばせといて自分達は楽するとか…本当に私の剣か!まあどうでもいいや。行き先決めたら行きましょう。楽しい楽しい夢の旅。何が待つのか楽しみだ。旅をするのに必要なのは……まず飯だな……

十八、夏に彩る花の妖怪

宿を求めて三里行き、途中で絡まれた山賊を芋虫にして転がしておく。
新しい里を求めて三十里行き、少女を襲うグロテスクな妖怪を燃やしてそのまま放置する。
神社を求めて三百里行き、途中でミシャグジの噂を聞き、そこに行くぞとさらに歩く。
東方求めて三千里行き、途中で花を世話する妖怪に絡まれる……

さてさて、この状況はどうしよう?旅に出てからまる一年。里を見つけては入って行って観光しながら、クマを狩り、トラを狩り、蜂の巣を襲い、ナマケモノを虐めて、酒を飲んだり、よって来る妖怪と話したり、退魔師をからかったりと色々寄り道してたら目的地の洩矢神社に全然つけなかった。正確な場所も分かってないし…まあそれが旅の醍醐味だから良いのだけど………まさかここに迷い込むとはね………

「聞いているかしら?貴方はここで何をやっているの?」

そう、彼女こそアルティメットサディスティッククリーチャーこと風見幽香ちゃんなのである!緑の髪に上下赤のチェック柄の服に白い傘!間違いない!そして私が迷い込んだのは向日葵畑!……やばい!

「私に無視を決め込んだ奴は貴方が初めてね。どうすれば反応してくれるかしら?まずは足の骨を砕けばいいのかしら?」

「普通に物騒なこと言わないでよ…」

《というか貴方なんかに折れるわけないでしょう》

『そんなことできるのは……誰かいたっけ?』

「あら、独り言かしら。いくら寂しいからってそこまでになるなんて気味が悪いわ。貴方かなり可哀想なやつね」

『どーでもいいからとっととやろうよ!』

《同感ね。さっきからあの女、癪に触るわ》

「まああっちは始めからそのつもりだろうけど……」

ゆうかりんランドに迷い込んだのはこっちだからね~、ここでボコボコにするのは辞めたほうがいいかな?

「私にそういう口をきくってことは……」

幽香が不適に笑う

「殺されても文句は言えないわよね」

おおう、ゆうかりんすげー殺気。流石は大妖怪。そこら辺の木っ端妖怪とらわけが違う。まあ多分幽香にも負けないと思うけどね。逆に幽香を殺さないか心配だ……

『早く斬りたい!』

《あの顔が後悔に染まったらどんな顔になるのかしら》

……こいつらが。まあ扱うのは私だけど勝手に動く時があるからな~

「ごちゃごちゃうるさいわ」

一気に距離を詰めて傘を振るってくる幽香。それを紙一重でよける。…と同時に地面に亀裂が入った。さすが身体能力だけで未来の幻想郷の一角にたった方ですね

「赤霧、青鮫。行くよ」

『おうっ!』《ええ》

赤霧と青鮫が発光する。戦闘準備完了!どっからでもかかってこい!

「ふんっ!」

再び幽香が傘を振るう。それを避ける私。振るう、避ける、振るう、避ける。その繰り返しだった

「…なんで反撃してこないのかしら?余裕のつもり?」

『本当だよ!早く攻撃してよ!』

《余裕ぶっこいてる暇があるなら攻撃なさい》

「持ち物にまで言われちゃったよ…ほら、あれだよ。様子見ってやつ。勝つには相手を知らなきゃ」

「ムカつくわね。それを余裕って言うのでしょう。…なら、これを喰らってみなさい」

傘をこちらに突き出し、その先端に力が溜まっていく。そういえば魔理沙のマスパって幽香のをパクったんだっけ?…とにかくここは迎え撃とう!

「はあ!」

幽香のマスタースパーク!でかいなー。さて、こっちは…

「消滅砲(ホワイトボム)」

パッ!

「…え?」

一瞬で幽香のマスタースパークが消え去った。消滅砲…当たった物を消滅させる弾丸くらいの大きさの魔法

「……何をしたの?」

「マスタースパークが邪魔だったから消滅させただけだよ」

「…マスタースパーク?」

「技に名前も付けないの?だめだね。技は名を付け固有の物となって初めて技になる。…そんなんじゃ威力は出ないよ……赤霧、青鮫」

『はい!』 《ええ》

「………歌いまくれ!」

『よっしゃ!』《分かったわ》

纏う雰囲気が変わる……相対した幽香もそれに伴い完全な臨戦体制に入る……

「じゃあ行くよ!動かぬ金と動く屍」

『だ~るまさんが~こ~ろんだ♪』

《動いた瞬間今宵の別れ♩》

陽気に呑気に歌い出す2本の刀。だが幽香は直感的に…それでも確実な死の気配を感じていた

(まずい……動いたら……死ぬ)

ズバババババ!!

音と共に幽香の周り1m弱以外の場所が大量の斬撃に切り刻まれた。少しはみ出ていた傘の先が、切れて…落ちた

「な、なんなのよ貴方!」

「普通の妖怪だよ。……まだ続ける?」

これで引いてくれたら儲けもんだ。幽香は微妙に強いから威力の調整が難しい。

「当然でしょう。久しぶりに強い獲物だもの。簡単には終わらせないわ」

《獲物は貴方でしょう》

『もう一回やろう!』

「ほいほい、手中の天下(ハンド・イン)」

『支配の始めは手元から♪』

《攻める時には容赦なく♩》

ヒュンヒュン!

幽香に向けて何かが放たれたわけでは無い。ただ朗人の周りにカマイタチが舞い出した。

「今度は何の見世物かしら?微風が貴方の周りを舞っているだけじゃない」

強がり……そうでもしないと倒れそうな自分に幽香はイラついていた。あの刀達の歌から考えて……

「へいっ!」

ゴォォォォ!スパッ!スパッ!

予想通り、纏っていた風が大砲のように速く、ギロチンのように鋭く向かって来た。

「これは……まずいわね…」

呟き、避けながら傘を突き出す。

「マスタースパークって言ったかしら……マスタースパーク!!」

ゴォォォォ!!ガキィン!

幽香のマスタースパークが向かって来る突風に当たり弾けた……だが軌道は剃らせた。良い評価では無いが、その結果に安堵している……そんな自分に幽香は嫌気がさしていた


さてさて、これもダメか……まあさっきからしっかり避けないと死ぬ魔法ばっかりやってる奴のセリフじゃないけど…最後はやっぱりマスパで決めるのがいいよね!幽香もあれをマスタースパークってしっかりつけたし……よし、飛び切りでっかいのお見舞いしてやろう。死なない……よね?

「じゃあ、とどめ!検討を祈る!マスタースパーク!」

『地から飛び出る流れ星♪』

《一つの光は無慈悲な光線♩》

ビビビビビバァァァァン!

幽香のマスタースパークの三倍はあろうマスタースパークが幽香に襲いかかる。

「これは……避けられない……くっ、アアアア!!マスタースパーク!!!」

ビビビビバァァァァン!

幽香も自分の力の全てを出し切り全力のマスタースパークを放つ。

ドッガガガガガン!!

二つのマスタースパークが激突する。辺りを巻き込み力と力がぶつかり合い………飛び散った

ドッガーーーーン!!!

「………最後のあれは予想外だったよ……」

向こうで倒れている幽香に言った。さっき放ったマスタースパークの倍以上の力が出ていた。あれはマジでびびった

「ハアッハアッ!……私が負けるなんて……」

「いや、強かったよ。私が遭った中でベスト5に入るかもしれないくらいに…」

静香、師匠、蒼鬼、未来、剣の奴。入ってるな……

「慰めのつもり?それよりトドメをさしたいなら早くさしたら?」

「私のトドメは殺すことじゃ無いから…」

というかゆうかりんを殺すとか……絶対怨霊になって出て来るぞ…まあ個人的にも嫌いな妖怪じゃないしね

「そうなの…なら、名前を教えてもらえないかしら?」

ほう、幽香が他人の名前を聞くとな。意外だ…

「そんぐらいならいいよ。私は前原朗人。よろしくね。貴方は?」

「……風見幽香…」

「幽香、今度幻想郷に行ってみてよ」

「幻想郷?」

「そ。結構強い奴が沢山いると思うよ。強そうな妖怪や退魔師に片っ端から声かけてまわってるから。まあ、幻想郷の中心の人里は原則的に襲えないけど」

「随分無節操じゃない」

「まあね。妖怪だろうと幽霊だろうと幻想郷はなんでも受け入れる。…が、スローガンかな」

確かこんなフレーズだったと思うけど合ってるよね?まあこう言っとけば幽香も来るだろう。…でも確かに考えなしに招待してるけど大丈夫かな……

「……まあ、気が向いたらね」

「そう。じゃあ私は行くね。まだ旅の途中だから」

「………」

「じゃね」

シュン!

「幻想郷……か。そこに行けば強い奴が居るのね…」

ニヤリ。そんな効果音が素でつきそうな笑みを浮かべる

「いいわ!そこでもどこでも貴方を倒すために戦ってやるわ!絶対に私が殺す!!前原朗人!!!」

怒号と笑い声が、一部焼け落ちた向日葵畑に響き渡った

十九、攫う鬼と攫われる不死人

幽香と戦ってまた旅を続ける私。さてさて、私には不幸体質でもあるのかね……

「居たぞ!あそこだ!」
「囲め!最近噂になってる妖怪だ!」
「謝礼金は俺達の物だー!!」

今私が何を相手にしているかというと、一ヶ月くらい前に人身売買をやってたバカ貴族を、暇潰し程度に懲らしめたら私の首にかなりの懸賞金をかけたらしい。以来退魔師に会うと執拗に追いかけられる。殺すのは遠慮したいし、逃げるのに力を使うのも面倒。と、いうわけで道中退屈という意味も込めて相手している

「結界を張れ!捕獲しろ!」
「退魔符を同時に投げろ!」
「止まってる今がチャンスだ!」

騒がしく符を投げて来たり結界張ったりしてる退魔師達を笑いながら眺め、木の実を食べている私。対極的過ぎて笑えてくる。退魔符は当たっても痛くないし、結界はデコピンすればぶっ壊れる。もろっ!

「何故効かない!もっともっと投げろ!」

しかし……勇ましいもんだね~。バカ貴族の城の惨劇を見たと思うのだけど…それを見てなお向かってくるか……未来の鬼達もこんな人間達なら地底に潜る事も無かったんだろうに……まあ私にゃ関係無いか!飽きて来たし…

「毒海月(ポイズンニードル)」

私を中心に針が無数に飛んで行く。その先……退魔師達が声をあげる暇もなく倒れていく。

「毒といっても麻痺毒だから痺れるだけだよ。んじゃね」

次は……町が見えるしあそこに行こうかな…結構でかいな

『幽香…だっけ?そいつ以来強い奴に会わないな…』

《確かに……ご主人様は退屈しのぎばかりしていて、旅も円滑に進まないし…》

「旅は楽しまなきゃ損でしょ。楽してる刀は文句言わない」

『はぁ~、なんか面白い事無いかな~』

ドォォン!

「……どーする?」

『とーぜん…』

《行くに決まってるわ》

「よしきた!」

騒がしい事この上ないが旅はこうでなくちゃね。…しかし、村人が慌ててるけど……

「すみません、何があったんですか?」

「!!なんだ脅かすなよ…実は今鬼が人攫いに来たんだ。いつも唐突に村に来て子供を1人攫っていくんだ……まあ今回は不幸中の幸いだったがね…」

「攫われなかったんですか?」

「そうじゃない。攫われたのが化け物だったんだよ。前から気持ち悪かったから清々したよ」

「化け物?町の人を襲ったとか?」

「いや、歳を取らないんだ。白い髪の女の子なんだが何十年経っても容姿が変わらないんだよ。だが町の人を襲った訳では無いから無闇に追い出すわけにもいかないからな…だから今回は鬼に感謝だよ」

「…へぇ、それでその子の名前は?」

「えーと、確か……藤原も…も…そこから先は忘れちまった。何でそんな事聞くんだい?」

「あ、いえ、なんとなくです。しかし鬼ですか…どっちに行ったのですか?旅の途中なのでそちらには行きたくないですので」

「旅の途中か。お嬢さんも大変だね。ほら、あの山に小さい小屋が見えるだろう?あそこに鬼が住んでるんだ。嬢ちゃんもあそこには近寄らないようにね」

「はい。ありがとうございました。それでは私はこれで」

「おう。頑張りな」

……攫われたのは間違いなく藤原妹紅だな。……という事はかぐや姫のくだりはもう終わったのか!?ってことは永琳もこっちに……やべ、楽しみが増えてきた。とにかくまずは妹紅だ。町は……何回か雷落としとこ。妹紅を気味悪がった罰だ!

『あの小屋だったよね?』

《速く行きましょう。鬼退治なんて楽しそうじゃない》

「私の目的は妹紅なんだがね……まあ、行き先同じだし別にいいか」

妹紅が喰われたら……まあ、死なないだろうけど妹紅はまだそういうのは辞めさせたい。トラウマで戦えなくなったとか笑えないしね。………ここか。殆ど考え事しながら来たのに速く感じたな……まずは一声

「たのもーー!」

道場破りならぬ小屋破り………規模ちっちゃー

アホな事考えてたら小屋の戸が開いた。鬼……角が一本短く額に生えている。赤い着物を着ていて大人しげに見えるが所々土汚れがあり、活動的な感じがする。身長は私くらい。胸は中の中………巨でも貧でもない……レアだ…

「……誰だ?」

「あら、随分暗い。鬼のくせに活気が無いなあ」

「余計な…お世話…で、何の…用?」

「町から人攫ったでしょ?返して」

「…譲らないよ?」

「いや、餌が欲しい訳じゃないから」

「あ……じゃあ…私に……勝ったらいい…よ」

『あは!こいつは好条件!』

《身の程知らずねぇ》

「…腹話術?」

「違う。しかし、何で私は会うたび会うたび、バトルしてるんだろう…」

『運命』《宿命》

「せめてハモらせてよ……まあいい、やろうか」

「じゃあ……行くよ?」

「よしこい!」

「うふふ……あはは」

「?どうした?」

「あっはっはっは!!馬鹿な獲物だ!食い殺してやる!」

「『《キャラ変わった!?》』」

「オラァ!!」

ドッカァァァン!

「やばい、強いかも…」

『というか強いね』

《幽香より強そうじゃない。これは当たりね》

「ペチャクチャ話してて良いのか!もういっちょ!!」

ドッガォォォン!!

「隙だらけだよ」

拳を避け、赤霧と青鮫を相手に斬りつける

ガキィィィィン!

「『《は?》』」

ボンッ!

「うわっ!危な!……何?今の…」

「わはははは!その程度か!私の敵じゃ無いねぇ!」

「今のはびっくりしたよ。まさか赤霧と青鮫を受け止めるなんて……」

「はっ!私の身体を硬化させる程度の能力と周辺の空気を爆発させる程度の能力のコラボは無敵さ!」

うーん、硬化と爆発か…人間ならいざ知らず、ただでさえ鋼鉄の身体に硬化の能力。しかも爆発の能力まであると攻撃や移動にも使える……しかも身体を硬化させてるから自分にダメージはない…成る程…並大抵の奴どころかかなり上級の妖怪でも無理かもしれないね…

「どうした!?怖気付いたか!?」

「いや…確かに強い……けど……」

「けど?」

「私をそこら辺の雑魚と一緒にするなよ!」

「よく言った!さあ、今宵の鬼退治!勝はどちらかな!?」

「そんな事……戦れば分かる!」

「では続きを再開させるぞ!」

「土竜躱し!」

『穴の中からお誘いです♪』

《遠慮はせずに何度でも♩》

鬼の真下に穴が空く。中から土竜みたいな妖怪が一体ではなく五、六体同時に出てきて、鬼に噛み付こうとする。

「ヌルい!」

鬼は土竜に噛みつかれたが傷は全く付かない…

「はあっ!」

ボン!!ボン!!

「ミギュ!」

土竜達が奇声を上げて鬼から落ちていく。身体の周辺を爆発させたのだろう

「さあ、これはどうだ?」

声に気がつくと鬼は身体を捻り大きく振りかぶっていた。野球?

「オラァ!」

ビュン!

風を切る音がして咄嗟に顔を右に傾かせる。

ズドン!

「ズドン?ってうわ…」

見た方向には岩に拳一個分くらいの穴を開けた岩があった。砕くのではなく貫くタイプの攻撃らしい。直接喰らったらまずいかも…

「って、は?」

目の前。振り返ったら鬼の笑顔が目の前にあった。しかも右手を思い切り引いて……殴る気満々…

「さあ!これで!どうだ!」

バキッボキッグキッポッキー

これでもかというくらい殴る鬼。容赦ねー

「そろそろ辞めといたら?私こっちだし…」

「む、何時の間に…」

「影人形(ブラックドール)本体を分身とし影を本体とする。凄いっしょ」

「うむ、全く気づかなかった」

「あとこれトドメね。通常戦闘の奥の手。……四龍一体」

『妖、霊、神、魔。四つの龍は今日も行く♪』

《みんな一緒に喰らいつこう♩》

妖力と魔力を外側に配置し、霊力と神力で中を補強する。大きさ、威力は龍にも負けない。私の魔法でも上級にあたる術。

「喰・ら・え!!」

グキャァァァァァ!!

放たれる四色の龍…それが鬼を飲み込んだ……

「グァァァァ!」

「勝利っと……さて、もう出てきて大丈夫だよ」

鬼との勝負が始まったあたりからずっと見ていた白髪の女の子。藤原妹紅を助けるために来たんだ。目的は忘れませんよ、私は。

「お姉さん……誰?」

む、思ってた以上に可愛らしい声だ。鬼が攫いたくなるのも分かる気がする

「お嬢ちゃんを助けに来た正義の味方かな?」

「……って」

「?」

「帰って。私はあの町には居たく無い。あんな人達の中で生きるなら死んだほうがまし……」

「…………」

「だけど私は死ねないの。私があんな物飲んだから……お父様の仇を討つためにって不老不死になっちゃったから……」

「不老不死……か。妖怪ならいざ知らず、人間なら畏怖の対象になる……」

「そう、だから私は鬼に攫われたの。否、攫ってもらったの。あそこから抜け出したい。でも門番達が外に出させてくれない。なら攫われてここにくればいい。そう考えたの。私は喰われようが裂かれようが死なないから出られればこっちのもんだしね」

「…なら話は簡単だ。私と一緒に来ないか?今、当ての無い…訳じゃないけど放浪の旅に出ているから。貴女1人くらい構わないんだけど?」

洩矢神社に行く道中なのに、退魔師や強い妖怪達を幻想郷に誘ってるだけ。行動指針は思い付き。自由満遍な旅だからね

「……いいの?」

「誘ったこっちが文句言うわけ無いでしょう。旅の話し相手。それだけでも連れてく価値はあるからね」

「……私、藤原妹紅」

「え?」

「名前。貴女は?」

「……前原朗人。よろしくね、妹紅…」

「はい、よろしくお願いします。朗人さん…」

こうして私と妹紅の旅は始まる事になった。この後は……原作みたいに炎の妖術でも教えようかな……霊力の扱いも長年の経験で分かるしね

「……ううう、折角攫って来たのに……」

「あれ?居たの?」

「……首吊ってくる…」

「ちょ、冗談だって。ところで鬼さんの名前なんてゆーの?呼ぶのが面倒臭い」

「菊理悠(くくりゆう)。ゆうって呼んで…」

「じゃあゆう。私が勝ったんだから今日の宿の提供と妹紅の受け渡しの承諾をよろしくね」

「……分かった…頼まれたから攫ったのに…」

ボソッと聞こえたが気にしない。そんな事まで気にしてたら生きていけないよ

「酒はあるよね?」

「……かなり…」

「よっしゃ、今日は飲むぞ!妹紅は飲めるのか?」

「私も百歳越えてるから飲めるよ」

「しゃー!今日は宴じゃー」

「お、おー?」

二十、死の頂点と土地の頂点

鬼の酒はうまい。鬼はすべからず酒豪で、その分酒に拘りを持つ者や満遍なく酒を愛する者もいる。だが鬼達は自分のために作る時は物凄く上等な酒を作る。……そしてその副作用なのかとてもアルコールが高い。……その結果……

「だ~か~ら~、あの輝夜とかいう~、偉ぶった女が~わひゃひのおとー様に~恥をかかせたの~。う~、そ~れで~…」

うー、この話何回目だっけ?妹紅は正史どおり輝夜が私た蓬莱の薬を岩笠とかいう奴から奪って飲んだらしい。そのまま町で暮らして居たが気味悪がられ、一刻も早くあそこから逃げたがっていたらしい。……しかし…この酒乱娘どうにかならんかね!?うおっ酒臭っ!

「そ~れ~で~、あの輝夜とかいう~…」

またリピートしやがった!?壊れたラジオかなんかか!酒飲んだ事無いのかよ……まあ、こんな風に誰かと接するなんて久しぶりなんだろうから我慢するけどさ……しかし…1人で思い悩んでる奴見ると昔の静香を思い出すのは病気なのか?あいつも昔は可愛げがあったのに…

「スースー」

「あれ?騒ぐだけ騒いで寝ちゃったのか。全くしょうがない。悠~毛布~」

「……分かった」

「んっ………スースー」

「いい寝顔だね~」

「……そうだね…」

「ところでさ…」

妹紅は寝かしつけた。今が一番聞きやすい時。悠の二重人格のようなもの……あれは…

「満月は見ても大丈夫なの?」

「っ!……分かったの?」

やっぱりだ。今の悠は鬼といっても強い力を感じない。それを私にも分からないほど精巧に隠しているなら、称賛ものだ

「うん。貴女は狼人間……いや、狼鬼が正しいのか。普通の狼人間は満月を見て人間から狼に変身する。そして変身して狼になると身体能力が格段に上がる……だけど狼人間の変身条件は満月だけじゃない……例えば…破壊衝動とか……ね」

「……そう、私の父が鬼。母が狼だった。それで生まれた私は半狼、半鬼の妖怪になった。…町の人攫いも一月に一回、私じゃ抑えられない破壊衝動がくるの。……これでも最近は制御できてきた方。小さい頃、これのせいで私は両親を殺してこの小屋に引き篭もった。……この破壊衝動を抑えられるまでは誰にも会わないつもりだったんだけどね……」

悠は無理矢理声を出して言った。きっと両親を殺したこと、自分の破壊衝動が抑えられないこと。それ以外にもあるかもしれないが、きっと悠にとってそれは尋常じゃない重みなのだろう……

「悠…破壊衝動っていうのは抑えるもんじゃない。放つものだ。多分悠がその衝動を溜め込むから一定期間後それが積もり積もって爆発するんだ。話の流れから町に行くのは攫うのが目的じゃなく壊すことが目的なんだろう?だったら何処かで発散すればいい」

「……でも…」

「まあ、今まで通りでも止めないけどね。食人や人間に恐れられるのは妖怪の務めだし性でもあるんだから」

「……うん、そうだね」

「そうだ、悠。幻想郷においでよ。あそこなら強い妖怪が沢山いるし、途中でも岩とか殴れば破壊衝動も収まるかもしれないしね。悠も旅でもして心を落ち着けなよ。できる限り力になるからさ」

「……分かった。…気が向いたら行くよ…」

なんとか話をそらせたかな?いきなりヘビーな話が出てきてびっくりした……しかし悠って強いよな……あそこまで強い鬼も珍しい。もしかしたら将来鬼神とか鬼の四天王とかなってそうだ

「……そろそろ寝るね。……おやすみ…」

「うん、おやすみ」

………………
「うーん、いい朝だ!」

「あ~、頭痛が~、頭で鐘が鳴ってるよ~、朗人~助けて~」

「調子に乗って飲み過ぎだ。たく…」

「……妹紅…大丈夫?」

「あ~大丈夫じゃないかも…」

「……はい、薬」

「ありがとう!!~~~!頭が~!」

「何やってんだか……あ、そうだ。悠、これあげる」

懐から粒の入った小瓶を悠に渡す

「……なに?これ…」

「破壊衝動を軽減する薬。出発する前に作っといた。あげるよ」

「……え?え?いい…の?」

「うん、いいよ。妹紅の薬のお礼とでも思っといて」

「……あ、ありがとう」ニコッ

「ぐはぁ!」

「…ど、とうしたの?」

む、無理だ。私にはあの笑顔は耐えられない……凄い可愛い上純粋な笑顔!ストレートにぶっ放されて私はどんな行動をとれば……

「ねえ、朗人どうしたの?」

「……さ、さあ?」

いかんいかん。取り乱してしまったな……前世?の影響か美少女に私は弱いみたいだ…

「ま、まあその薬は破壊衝動が限界になる前に飲んでね。さすがにMAXだと抑えられない気がするから。……さて!妹紅、旅を始めようか!」

「うん!何があるか楽しみ!」

「……お気をつけて……」

「じゃあね、悠。幻想郷に来てね~」

「……ええ、必ず…」

「まったね~悠。元気でね~」

「……ええ、妹紅さんもお元気で」

少女達移動中……

妹紅が仲間に入って、話し相手も出来たし、順調だな~。次は……

「ねえ朗人。お願いがあるんだけど…」

「お願い……なに?」

何だろう……町から出たからもうお前は用済みだ!とか、流石に隣歩かれるのはキモい!とか言われるんだろうか……

「私を……私を強くして欲しいの!!」

「………強く?」

「うん、だって旅の途中でも妖怪とか出るんでしょう?だったら足でまといになりたくないし……」

「私は気にしないけどなー。うーん……」

唸って考え込む。いや、正直別に問題はない。今改めて霊力を測ったけど結構多い。だけど教える内容が問題だ。正史通り不死鳥をモチーフに炎の妖術を教え込むか、もっと豊富な技を教え込むか。さてどっちにしよう……

「……ダメ?」

「ん?いや別にいいよ。じゃあ早速始めようか……」

「うん!」

「まずは霊力の動きを操る練習。自分の体の中に流れる力を感じとる。やってみて」

「え!?いきなり!?やり方とか教えてくれないの!?」

「習うより慣れよが私の方針だからね。まあ、手から力が見えるくらいに出せるようにする事が課題かな」

「うう、頑張る…」

「頑張れ。私は食糧調達と人払いと妖払いの陣を描いてくるから」

私みたいに見て直ぐ出来たら天才だしね。私は能力で操って力を制御してるし。妹紅も静かに練習したいだろうから邪魔させないようにしないと……

少女行動中………

「終わった終わった。あの規模を十分でやれちゃったよ。並の魔法使いなら二時間は掛かるのに。さてさて妹紅の調子は………!?」

「集中、集中……」

あれ!?もう出来てる!?普通なら三日くらい掛かってやっとって感じがせいぜいなのに……思ってた以上に妹紅は大物なのかもしれない……やっぱり妹紅は一点特化が合ってるな。正史通り炎を教えよう

「妹紅」

「なに?今集中してるんだけど?」

「思ってた以上に見込みがあったよ。明日から歩きながらそれをやるから少し練習しておきなよ」

「……分かった」

明日も忙しくなりそうだ……だけど…悪くないな…

………………
妹紅を鍛え始めて大分経った。今私達は道中出会った妖怪達と酒を飲んでいる。妹紅は本当に優秀で教えた事を直ぐに呑み込んでくれる。勿論霊力を妖術に変換する時は多少時間が掛かったがそれでも一般人と比べると尋常じゃない早さで成長している。……だがいきなり強い力を手に入れた者が必ずと言っていいほど犯す過ち……

「城を丸焼きって……加減って言葉を知らないのか妹紅は……」

「ごめんって、いつもひたすら全力で放ってばっかだったからあんな事になると思わなかったんだよ」

「あははは!姉ちゃん人間なのに威勢がいいな!気に入ったよ!」
「本当本当。嬢ちゃんの燃やした城の主はつえー退魔師雇っててよ。前からうざかったんだ」

「ああ、あのおっさんか……あれも妹紅が……」

「ちょっと燃やしただけだろ……」

「私が治さなかったら死んでたけどね……」

「ふんっ!」

「その自分勝手なとこも共感できるぜ!」
「退魔師って偉ぶってる奴多いから嫌いだ…」
「それにしても旅をしてるんだって?どこ行く途中なんだい?」

「洩矢神社に行こうと思って旅してたけど……始めてから行ってないな……」

「洩矢神社?それってこの先の町にある神社じゃないか?」
「そうだよな、あのミシャなんとかって祟り神を操ってる神様の…」
「あのでっかい神社か……」

おお、なんというラッキー。適当に旅してて、なんとなくあった妖怪達と飲んでたらいきなりいい情報が入った。妹紅も強くなってるし、旅も順調じょないか!ケロちゃん求めて三千里。……諏訪大戦もう終わってないよな……

「よし、妹紅。明日朝一番で洩矢神社に行くよ」

「それはいいけど……どうしたんだ?急にさ」

「私には……行くべき場所があるんだ!」

「ずっと適当に旅してた奴が言っても説得力ないぞ」

「だまらっしゃい。まあそういうわけでよろしく」

「へいへい」

少女達睡眠中……

「よし妹紅、準備はいいな」キリッ

「まだ4時だぞ!?朝一番とは言ったが早すぎるだろ!」

「そんな言葉遣いする娘に育てた覚えはありません」

「この方が強そうじゃね?って言ったのあんただろ!?」

「そうだっけ?まあいいや。とにかく出発!!」

「人の話を聞けーーー!!!」

あー、気の迷いでそんなこと言うもんじゃないな。前はリスみたいに可愛かったのに……今も可愛いけどなんか男らしさが出て来たというか……はあ、今更そんな事言ってもしょうがない。妹紅には妹紅の良いところがあるさ!それより今は洩矢神社!諏訪子ちゃーーん待っててね〜

少女達移動中……

「……でか」

でかい。なまじ神社に居た経験があるせいで格差が……いや、今頃奈々だって頑張って神社の改築を……するわけないか……

「はー、こりゃ凄いな。祀られてる神様も相当なもんなんだろうな」

「とりあえず境内に行こう…なっ!?」

「どうした?変な声あげて」

「いやいやあれあれ」

慌てて鳥居の上を指差す

「ああ、鳥居もでっかいよな〜」

「そうじゃなくて……」

いやいやおかしいでしょ。現在時刻は四時半。町の人達はまだ起きて来てないらしい……ってそんなことはどうでもいい!今問題なのは……鳥居の上で蛙座りしてる幼女だよ!!目玉付きの奇妙な帽子をかぶってるの諏訪子だよ?ケロちゃんだよ?だけどさこんな朝早くから鳥居の上でケロケロやってるってどういうこと!?あと妹紅の視線が痛い!別に気が触れた訳でも頭が狂ったとかでもないからね!?

「……とにかく鳥居の上まで飛ぼう」

「……よくわからないけど分かったよ」

妹紅と一緒に諏訪子の隣に立つ

「よく気づいたね。ここから参拝客を眺めるのが日課だから座ってたんだけど」

「神力で姿を隠してるのか……どおりで妹紅が気付かない筈だ」

「なあ、朗人。お前さっきから誰と話してるんだ?」

「ここの神様。ねえ、この子にも見える様にしてくれない?私が怪しい目で見られる」

「あっはっは、悪かったね。…ほら、これでみえるでしょ?」

「……この蛙が……神様?」

「疑わないでよ。これでもここら一帯のミシャグジ達を統括してるんだから。結構強いよ、私は」

無い胸を精一杯張って自慢する諏訪子。まあ確かに疑うのも無理は無いけどね。私も原作知識が無くて、神力を感じられなければ信じられなかったかもしれない……

「辞めときなよ妹紅。無駄な喧嘩をする必要は無いし、多分妹紅じゃ負けるよ」

この一言がいけなかった。妹紅の負けず嫌いに火をつけたらしい

「……なあ、えっと……なんて呼べばいいんだ?」

「洩矢諏訪子。諏訪子でいいよ」

「そう、私は藤原妹紅。妹紅でいい」

「私は前原朗人。朗人でいいよ」

「ところで諏訪子。こんなとこで座ってるってことは暇ってことだよな。ちょいと私と勝負しないか?」

「おい妹紅。辞めときなって。神力の量的にきついよ……それに妹紅が戦うと……」

「いいよ。最近暇だったからね〜。前はよく妖怪が挑んで来たけど最近めっきり無くなってね〜」

諏訪子まで二つ返事で応えちゃったよ。どうして私の行くとこ行くとこ勝負になるんだ。強い奴ってーのはどーしてこうも喧嘩っ早いのかね……

「どうせなら二人まとめて掛かって来なよ。そっちの子も神だから戦えるでしょ?」

「朗人!お前は手を出さなくていい!私がやる!」

血気盛んなことで…。もう私が止めても止まらなそうだな……ならせめて手伝いだけしてやるか

「なら妹紅、ほれ」

妹紅に手を向けて空間操作を行う。最近魔法ばっかりでこっちの能力を疎かにしてたからちょうどいい

「?何したの?」

「たいしたことはしてないよ。本殿は守っててあげるから諏訪子も本気でやっていいよ。妹紅は殺しても死なないしね。妹紅は加減はしなくていいけど少し考えて行動するように。前みたいに城全焼とか洒落にならないからね」

「わかってるよ」

「私じゃなくその子に注意を促すとはね。私も舐められたもんだ」

諏訪子が強いのは分かりきってるからいいけど……妹紅は力は強いけど制御がしっかり出来ないんだよね

「じゃあ尋常に勝負だ!空に舞う不死鳥が如く、私はお前に勝つ!」

「上等だね〜。土地神の頂点たる私を相手に……少し強いだけの小娘に負けてやるほど落ちぶれてないよ私は」

「ノリノリの二人はほっといて本殿に防護結界。神社周辺に人払い、妖払いの術式張ってこよ」

まあ妹紅が格上相手にどこまでできるか……あと諏訪子の本気もできれば見たいし

「はぁっ!!」

妹紅が炎を展開する。炎の翼を広げ鳥居から飛び立つ

「へえ、かっこいいね〜。じゃあ私も……」

諏訪子も神力を解放する。さすが土地神の頂点。それに相応しい量の神力だ。……本気はまだ出してなさそうだけど……

「火の鳥 -鳳翼天翔-」

先行は妹紅。炎を纏い諏訪子に襲いかかる。その間にも弾幕を放つことも忘れない

「ただ真っ直ぐ来るだけじゃ私は倒せないよ」

対して諏訪子は色鮮やかな弾幕と鉄の輪を繰り出す。妹紅に比べ量も威力も全然多い

「くっ」

「ほらほら始めの威勢はどうしたの?」

妹紅は避けきれず何度も被弾していた。何回か手を吹き飛ばす程の威力があった。死にはしないが痛みは感じる。死にはしないが気絶はする。その事実を知っているので妹紅は苛立ちを隠せずにいた……というより

「あーー!!!もう限界だ!!!ぶっ殺す!!!」

普通にブチまけていた。てーか限界早っ!まだ始まって2分経ってないのに……しかもあのキレかたはまずい……私はこの数十年間正史通り炎を教えて来た。だが、私が妹紅の実力に調子に乗ってさらに強力な妖術を教え込んできた。……その結果…

「奥義・地底火山」

地震……その揺れのように地が騒ぎ、太陽の熱のように空気が燃え上がる。あれが私が教えたことを後悔する技の一つ。炎を霊力により発生させるのではなく、炎そのものを操る技。つまり……地底深くのマグマを操り使用する。まだ未熟な妹紅は大量には操れないが、それでも下手すれば町一つを葬り去ることができる

「不死鳥の裁き!」

妹紅が空へ舞い上がりマグマと炎を合わせた翼を羽ばたかせる。それにより諏訪子に向けてそのマグマと炎の一部分が雨のように降り注ぐ

「そんなの全部撃ち落とせば……!?」

余裕な顔を一変、諏訪子は今まで立っていた位置を離れる……その数瞬後さっきまでいた位置を下からマグマが飛び出してきた

「こりゃ凄い!間欠泉よりたちが悪い……けどやっぱりその程度だね!私には勝てないよ!集まれミシャグジ達!あの小娘を祟ってやれ!」

諏訪子の掛け声と共に神社の周りからミシャグジ達が諏訪子の元に集まる。諏訪子は祟り神の大元。それが統率する祟り神に一斉に祟られればひとたまりもない……通常なら

「?何やってるか知らないけど、著しい変化は無いな……」

「そんな馬鹿な!?結構本気で祟ってるんだよ!?なんでそんな平気で居られるの!?」

「私にも分からないけど……私は不利にならないんだな……なら問題はない」

……種明かしするとさっき妹紅の空間操作をしたときに、祟りにたいして強い抵抗力を付与したから妹紅は平気で居られた。普段の妹紅だったら動けなかったかもね……

「ほら!余所見してていいのか!?私の攻撃はまだ続いてるよ!」

再び妹紅の猛攻、諏訪子の迎撃の態勢になる……だが一時期攻めていた妹紅がまた押され始める……地の力が違いすぎるから長びけば妹紅が不利。これで予想通りかな……

「これで…トドメだ!!」

ガンッ!

鉄の輪で妹紅をぶん殴る諏訪子。それにより試合終了。妹紅はまだそんなに何度もリザレクションは出来ない。まあこんなもんか……

「はぁ〜、疲れた。あ、朗人もやる?」

「面倒だからいいよ。それより酒飲もう。神同士仲良くしようよ」

「そうだね〜、それもいいか。久しぶりに運動したし、いい酒が飲めそうだ」

少女達飲酒中……

暫くして妹紅が目を覚まし、参加した。妹紅も別に諏訪子に恨みがあるわけでもないので、一緒に飲んでいた

「しかし妹紅は強いね〜、びっくりしたよ。ほんとに」

「そりゃどうも。……つーか朗人!なんで諏訪子との勝負断ったんだよ!朗人なら簡単だろ!?」

そりゃ確かに出来るけど、別に私は戦いたいわけじゃなく将来楽しい幻想郷にするために頑張っているのに……

「別に私は喧嘩をしたい訳じゃないからね」

「あっはっは、朗人はしけてるね。もっと活発的に行動しなきゃ」

「ちっ、朗人ならやってくれると思ったのに……」

「まあまあ、確かに私は妹紅の100倍強いけど、ただ力を振るうだけじゃだめなんだって」

「さらっと凄い数字を出したね〜。ホラ吹きも結構面白いじゃん」

「いや、ホラじゃなく朗人は私より100倍強いけど?」

「そんなまさか〜」

うーん、まあ普通そうだよね……私も、かなり強いのに自分に善戦したやつ……それのさらに100倍強い奴がいると知ったら発狂するかもしれない……まあ、実際に見せた方が早いか

そう思い妖力.、魔力を6割くらい出してみる

「!?」

それに驚き飛び退く諏訪子

「朗人、出しすぎだ。初めての奴は大体こんな反応だよな」

「ほら諏訪子、取って食ったりしないから戻っておいで〜」

妖力、魔力を、抑え諏訪子に声をかける

「…………」

「神社を奪うとかいう策略があるなら貴女に会おうとは思わなかったわよ。さっき話したとおり私は幻想郷を楽しくするためと、自分が楽しむために旅をやってるんだから」

「……あーうー、そうだね。やるなら始めからやってただろうし、朗人も妹紅も良い奴だからね。……さあ、飲み直そうか。朗人、妹紅。さっきのお詫びとして可能な限り泊まっていっていいからね。朗人や妹紅からこれまでの旅の話も聞きたいしね」

「おお、ありがたい。じゃ、改めて………」

「「「カンパーーイ」」」

二十一、諏訪大戦!神奈子進行

諏訪子の神社で世話になり始めて数年経った。私達はかなりいいタイミングで洩矢神社に来たらしい。何が言いたいのかというと……神奈子が攻めて来た。つまりは諏訪大戦だ。実際に対峙してみると神奈子も諏訪子に負けず劣らずの神力を持っていた

「この社を受け渡してもらおうか」

第一声からこれか……神奈子って結構傲慢なとこあるよな〜、それに諏訪子がどう応じるか……

「私から社を奪おうなんていい度胸だね。あんたのことは知ってるよ、八坂神奈子」

まあ想定内。もう2人とも臨戦体制に突入しちゃってるね。神奈子は御柱、諏訪子は鉄の輪の神具を構える。神奈子の注連縄って、確か蛇の姿から再生、永遠を現してる…だっけ?ミシャグジ対策と蛇は蛙を食べるっていうさりげない喧伝とか……

「より強い方に信仰は集まり、人々はより頼む……洩矢諏訪子、あんたの信仰をいただくよ!」

「奪えるもんなら力尽くで奪うんだね!朗人も妹紅も手を出さないでよね!私がこいつを薙ぎ倒してやるからさ!」

2人は同時に空へ飛び立つ。そして互いに色鮮やかな弾幕と御柱、鉄の輪、何時の間にか集まっていたミシャグジを操り戦いだす。私と妹紅は境内で茶を啜りながら観戦。ついでに防護結界を張り、人払いをする……妖怪や妖精が流れ弾を喰らっているが気にしないことにする

諏訪子がミシャグジを操り神奈子を祟っているようだが神奈子の注連縄によって阻害されているらしい。攻める側って守る側より有利だよね。相手に対策練れるし……それでも諏訪子が押しているのは流石といったところか……さっきから何匹かミシャグジが被弾して墜落してるが放置でいいよね?

「朗人、お前どっちが勝つと思う?」

「どうした?急に」

「いや、なんとなくさ。結構互角だから結果が気になってな」

「妹紅はどっちだと思う?」

「うーん、このままなら諏訪子かな?」

「そうだね。最終的にはどっちだと思う?」

「……神奈子かな」

「私もそう思う……何年も泊めてもらってるから応援はしたいけど、ミシャグジが全部落ちたら全体的に諏訪子が負けると思う」

会話を辞め再び空を見上げる。相変わらず派手な戦いを繰り広げている。地面にクレーターを作り諏訪湖に高波を立てている。いい加減妖怪たちが可哀想になったので妖避けの結界も張ってあげた

少女達戦闘中……

神奈子が宣戦布告してから丸一日諏訪子達は戦い続けてる。丸一日も神力を使い続けてよくまだ余裕です!って感じでやってるよな〜。その間私と妹紅は飯食べつつ妹紅のおかずを取って妹紅に殴られ、風呂に入って一緒に入った妹紅の髪の毛で芸術的アートを作り妹紅に殴られ、境内に戻り2人にイタズラしようとして妹紅に殴られ止められた。2人の顔をへのへのもへじにするくらい別にいいじゃん……

また少女達戦闘中……

丸二日経った。あの2人まだやってるよ……流石に2人とも疲れが見えてきたけどまだ続きそうだ……しかし、昨日と比べて諏訪子が押され始めてる……正史は覆らないかな……

またまた少女達戦闘中……

いつまでやってんだよ!もう三日目だぞ!そろそろ終わりそうな雰囲気だけど三日三晩戦い続けるってかなりきつくないか?……まあそれはともかく諏訪子の操るミシャグジが全部落とされ、神奈子が押している状態になった。御柱を投げたり振り回したりして疲れないのか?……あ、諏訪子が御柱でブン殴られた……そこに御柱を二つ投擲………どーん、と。決着かな……

神奈子が開けたクレーターに近づくとその中に目を回した諏訪子と諏訪子の帽子……帽子って体の一部だっけ?

「はあ、はあ。あんたもやるの?」

「いや、手を出すなって言われたから辞めとくよ。何年も泊めてもらってるから敵討ちしてもいいんだけど、正々堂々やって負けたんだしね。とにかく本殿でこれからを話し合おうよ。ほら行った行った」

少女達移動中……

「朗人〜妹紅〜」

本殿に行き、目を覚ました諏訪子が泣きついてきた。とりあえず頭を撫でておく

「ほら泣かない泣かない。自分が今まで築いてきた信仰を信じなって。信仰は勝った負けたで移るもんじゃないでしょ」

そう、実際その通り。ミシャグジ信仰という恐ろしくもありがたい神がそう簡単に変われる筈がない。……結局その翌日に神奈子が神交代の知らせをしたが、街の人達から受け入れられなかった。その結果名前だけの新しい神として神奈子が洩矢神社に位置づいた。そして洩矢を守矢と改名してやっていくことになった。神奈子を前に、諏訪子を後ろにでやれば信仰も集まりやすいだろうとの神奈子の意見だった。しかし三日三晩戦い得たのはそこまで大きくないようだ……しかし…

「飽きないね〜」

神奈子と諏訪子がまた喧嘩をしている。神社の方針が決まってから諏訪子は神奈子に悪態をつきながらも仲良くやっている。……喧嘩するほどがつくのが傷だが……

「ねえ、朗人が諏訪子と神奈子を同時に相手にしたらどうなるんだ?」

「私の圧勝だね」

「うわぁ、迷いなし」

「事実だしね」

そう、ただ面倒だというだけで実際少し強めにやれば勝てるだろう……で、それを聞いていらっしゃった神奈諏訪の2人が……

「じゃあ私達2人と少し勝負するか」

「負けないよ朗人〜」

神奈子が少し怒り気味に、諏訪子が楽しそうにどんどん進行させていく……面倒なことになったな……

「まあいい、やろうか」

ここで受けるあたり私も戦闘狂なんかね……

「さあ、2人共どっからでもかかっておいで。今回は少し本気でいくよ」

「直ぐに本気を出させてやるさ」

「そうそう上位の神2人相手に手を抜けると思わないでよ〜」

「朗人って旅の時も全然力を出さないからな……こりゃ楽しみだ」

「じゃあこの硬貨が地面に落ちたら開始ね」

ピンッ

硬貨を指で弾く……緩やかに頂点に達し落ちていく……

チャリーン

「さあ、開始だ!」

「朗人覚悟〜」

開始と同時に大量の神力弾を撃ってくる……そんなもの効かないがな!

「二重結界」

自分の周りに結界を張りそれに神力弾がぶつかる。宣言したとおり強めに張っておいた

「強そうなこと言って結界だよりか?そんなもんすぐぶっ壊してやる」

「朗人、流石に舐めすぎじゃない?」

2人共お怒りのようだ……まあ当然か。2人には神としてのプライドが少なからずある。しかも『少し』本気でいくと事実でありながら挑発的な発言もしているのだ……

「……そんなんじゃ私に一回も攻撃出来ないまま終わるよ?……森羅万象・天候」

空が動く……雲が押し寄せる……風が吹き出す……雨が降り出す……雷が落ち出す……雪が舞い出す……霰が散り出す……雹が落ち出す……守矢神社に複数の天候が襲い出す……

「さあ、大和の神、土地神の頂点。私に触れてみなよ……この攻撃を防ぎながらね……」

天候……雨を降らしたりできる者はこの世界には居るだろう……だがこの量を操れる者は何人居るだろうか……

「やるな……朗人っていったね。この八坂神奈子を舐めるんじゃないよ!」

「土地神の頂点の名はだてじゃないんだからね!」

御柱と鉄の輪を投げながら叫ぶ……だが台風が極地的に降っていれば目を開けることも難しくなる……勿論、それが人間だった場合だが……

「こんな攻撃軽い軽い!雷以外は大した事ないねぇ!」

「残念だけどもっと強くないとね〜」

余裕そうに突っ込んで来る2人……慢心、油断。無いと思っていても一時的に陥ってしまう……

「じゃあ強めるよ。風を鎌鼬に、雨を弾丸に、雷を龍に、雪を冷気に、霰を寒気に、雹を砲弾に変更。目標を迎撃せよ」

瞬間………世界は変わる……風が身体を裂き、雨が身体を痛めつけ、雷に身体を焼かれ、雪に体温を下げられ、霰に身体を凍らされ、雹に身体を落とされる……必死に空からの攻撃を防ごうとする2人……だが四方八方から直接的で千を超える攻撃を、間接的に身体を蝕む攻撃に誰が耐えられるだろうか……結果……


2人の神は敗北した……


………………
「だー!負けたー!」

「あーう〜。強くてもいい勝負くらい出来ると思ったのに〜。本当に一回も攻撃させてくれないなんて〜」

「いつもやってる模擬戦でどんだけ手を抜いてるんだよ……」

「いやでも上級魔法を使ったのは久しぶりだったよ。流石に最上級や禁術は使いたくないしね」

「……あれよりさらに上があるのかい?」

「といっても最上級と禁術は合わせても30くらいだけどね……どれもこれも通常戦闘じゃ絶対に使わない技だよ……」

「30って……合計すると朗人が持ってる魔法は幾つになるの?」

「だいたい……800くらいかな?戦闘用以外にも家庭で使う用も沢山あるし」

確かそんぐらいだった筈だ。禁術10、最上級20、上級100、中級250、下級300、家庭用120だっけな

「……ところで私の妖術はどの位に入るんだ?」

「普通の炎は下級。地底火山は中級だ」

その発展系の「溶岩の狂い咲き」があるけど流石にそれは教えたくない……妹紅に上級の技はね……自制効かないし……

「……ふーん」

「言っとくと上級魔法以上は教えないぞ。霊力の絶対量が全然足りないし危険過ぎるからね」

「ちぇっ」

「よーし神奈子!もっと信仰を集めてあれに勝てるくらいに強くならなくちゃね!」

「ああ!強力してもっと信仰を集めるぞ!朗人!覚悟しておけ!いつか倒してやるからな!」

「期待しとくよ」

……ていうか神奈子と諏訪子仲良くなりすぎじゃね?諏訪子神社乗っ取られてから一週間経って無いよ?……まあ仲良いなら良いに越した事はないか……この先どうなるんだろう……

二十二、人から人外へなった者達

諏訪大戦から100年近く経ち、結局神奈子と諏訪子は仲が良いままだった。まあ喧嘩するほどが着くけど……あの後表に出るのは専ら神奈子になった。神奈子は信仰集めに積極的なので守矢神社は今まで以上に信仰を集めている。諏訪子は今までより仕事が減ったと喜んでいる。それでも信仰は増えるのだから全く文句は無いらしい。あの後も神奈子と諏訪子と戦う事があった。上級魔法を使ったのはあれが最後だけどね……中級と下級だけでも戦えたし、一対一じゃ比べられないくらいの力はあったからね……神奈子と諏訪子、時々妹紅は作戦を練って挑んで来た時も勝利してやった。今なら誰にも負ける気がしない……神奈子と諏訪子は諏訪大戦をもう全然気にせず日々を楽しんでいた。そして、そんな2人を見ていてふと思いついた

「そろそろ一回幻想郷に戻ろうかな……」

旅を始めて400年経つ。確かに顔くらい見に行っても良いだろう……それに旅を再開させるいいチャンスだ。そうと決まれば出発だな……

「神奈子、諏訪子、妹紅。そろそろ旅を再開させようと思うんだ」

「……あ〜そういえば朗人と妹紅って旅の途中でずっとうちに居座ってたんだっけ」

「そうそう、だからさずっとお世話になっててあれだけど、また行こうと思うんだ」

「そっか。じゃあ明日からまた行こう」

「そうか、淋しくなるな……」

「よし、じゃあ今日は宴会だ!最後くらい……今までも派手だったけど派手にいこう!」

その晩、私達は浴びるほどの酒を飲み眠った……

翌日私と妹紅は玄関で見送りを受けていた

「それじゃあお世話になりました」

「元気でな。今度は負けんぞ」

「朗人も妹紅も元気でね〜また遊びに来てよ」

「じゃあな、神奈子に諏訪子。次は不死鳥の怖さを見せてやるからな」

別れを惜しまず私達は別れる……また会う日を信じて……まあ私は未来の幻想郷で会う事を知ってるんだけでね、淋しくない訳じゃないんだけどまだ安心感があるというか……

『で?次はどこ行くの?』

《次はあっちの村じゃないの?》

「久しぶりに喋ったね。擬人化も始め以降してないし」

『私達はご主人様の神力によって生きてる様なもんだからね』

《ご主人様が博麗神社で信仰を受けないから力が減ってきてるのよ》

『ご主人様は今の人々に認識されてないからね…』

《むしろよく今も信仰があるって方が不思議よ》

「朗人……お前自分の神社放ったらかしで旅してるのか?」

「あれは奈々の神社だよ……だけど一回帰った方が良いかな……」

「それが良いよ。村ももう目前に……っ!」

突然妹紅が数歩下がり、私の頭に槍が当たり砕けた。私の身体に傷を付けられる道具なんてあんまり無いからね〜

「おい、そこの2人。君達は妖怪だな。いや、白い方は違うか……ともかく、今は村は閉鎖状態だ。お引き取り願おう」

「さて、どうしようか?」

『突破に一票』

《妹紅に任せるに一票》

「青鮫にしては珍しいね。じゃあ私も妹紅に任せるで。妹紅、後任せた」

「は?いや待て朗人。人間相手に力を振るうのはちょっと……」

「大丈夫。先頭の女の人は妖怪……いや、半人半獣だから」

「!……よく分かったな。皆さんは危険ですので村に戻っていて下さい。ここは私が引き受けます」

「……そうか。じゃあ頼みましたよ慧音さん」

「……はい」

再びどーん。慧音に遭遇しちゃったよ。守矢神社から出て直ぐにこれとは……私東方運あるのかな……腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪。 頭には頂に赤いリボンをつけ、赤い文字のような模様が描かれた青い帽子を乗せている。 衣服は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服。 間違いない。さっき名前呼ばれてたし

「そういうわけだ。覚悟しろ妖怪」

これは……戦う雰囲気。さっきから出てるけどそれは置いとこう。今、私がするべきことは……

「一名様ごあんなーい!」

「は?何を……ってきゃああぁぁぁ…」

…そう!今私がするべきことは落とし穴に落とすこと!ついでにその落とし穴に空間転移の効果を付けておいたから強制的に移動する。行き先は幻想郷だ!説得とかバトルとか面倒になってきた

「お、おい朗人。いきなり何してんだよ?」

「妹紅もGO!」

「え?ってうわああぁぁぁ……」

「さあて、久しぶりの帰郷だ。奈々は元気かな?」

少女達落下中……

「ぅぉぉぉおおお!」

グシャ!

「いってー!朗人のやつ〜」

「いたた、お前達は私をどうしたいんだ?村を襲いに来たのだと思ったらいきなり落として」

「それは私も聞きたいよ。私達は別にあの村を襲おうとしたわけじゃない。旅をしていて偶然通りかかったんだ」

「旅?妖怪も旅をするのか?」

「してるんだしそうなんじゃない?私は元人間だけどね」

「元……人間?」

「そ。蓬莱の薬ってのを飲んで不老不死になっちゃったんだ。朗人のおかげで自分を守る術も付いたし、私の事情を知らないから行く先で変な顔されることも無い。だから今も旅をしてるの。笑っちゃうでしょ?これでも元貴族のお嬢様だったのよ。それが周りの視線を理由に逃げ出して旅をしている……滑稽でしょ……」

「……いや、そんなことはないさ。私だってあの視線に晒されてよく逃げ出さないものだと自分でも思う。……だがあそこが私が居れる唯一の場所だったからな……」

「……慧音はあの村に居たくなかったの?」

「……私は人間の中で生きていくことが目的だった。私はあそこ以外人間が穏やかに暮らしている所を見た事はないし、そこには私の家があったからな……私も元々人間だったしな」

「え?慧音って始め人間だったの?」

「ああ。何十年か前に村の守り神が祀られていると言われる祭殿に入ったんだ。そこで見つけた巻物を面白半分で開いたらこの有様さ。たぶんハクタクの一部が封印してあったのだろう。私は半人半獣になり、人々に蔑まれて生きてきた。……だがやはりあそこは私の生まれ育った場所だ。…そう簡単に捨て去れなかったんだ。だがら私はたまに村を襲う妖怪達を退治することであの村で過ごしてきた……それでも変な目で見られるのは変わらなかったがな……」

慧音は自重気味に薄く笑った。……その姿に妹紅は過去の自分を思い浮かべずにはいられなかった。
似ている……慧音は私に似ている……人から人ならざる者となり、同族であった者達に嫌われる……自分と全く同じ……私達で違ったことは逃げ出したか留まったか、ただそれだけだった……だからこそ妹紅は思う……助けたい…慧音を助けたい……

「なあ慧音。幻想郷って聞いたことあるか?」

「幻想郷?噂程度だが、ある地帯に妖怪が極地的に集まっている所がある…その中心には小さな人里がある。人里は妖がおそえないが、それを守れば幻想郷は全てを受け入れる。……そう聞いたな。だがそんなの夢物語だろう?幻想郷の妖は手練れが多く退魔師でさえかなりの実力が無ければ到達できないそうじゃないか。幻想郷があったとしても人里は無いだろう。そんなに沢山の妖を抑えるなど不可能だ」

「いや〜そうでもないよ」

「「!!」」

なんかいい話になってたのに世間話になったから飽きちゃった。まあ私の発表を聞けばそんなことどうでも良くなるだろう

「ようこそ、幻想郷へ。上白沢慧音、藤原妹紅。あなた達に幻想郷の人里の居住権を渡したくて連れてきた」

「……人里の居住権だと?」

「朗人、いきなりなにを…」

「さっき言ってたでしょう?人里で争いを起こさなければ幻想郷は全てを受け入れるって。半人半獣でも不死人でもね。……さあ着いておいで。人里に案内するよ」

「ちょ、ちょっと待てよ朗人」

「…結局私はなんで連れて来られたんだ?」

二十三、繋がれるはぐれ者達

慧音と妹紅を落としたのは妖怪の山の麓。さすがに人里に直接落としたらただの人間でも不審に思われるからね。で、今は人里に向けて三人で歩いているわけだ。
……ここで少し話を変えることにしよう。私はこの世界に来るまでは男だった。だがそれは数千年前の話。前の世界なんて大昔だ。……だけど、慧音達を見ていて昔の自分達を思い出してしまった……いい思い出というわけではないが、少し過去を思い出してみようと思う……

あれは小学5年生の頃だった……私が……いや、僕が人間を嫌いになった年だ……

どこの学校でも運動神経が良い奴がクラスで慕われ、力で強い奴が番長のような存在になる。実際に私の学校ではその二種類の人間が居た。運動神経抜群の中田陽(なかたよう)、番長みたいな竹中白羽(たけなかしらは)が居た。中田はスポーツ刈りで細く、竹中は太っててでかい(ジャイアンそっくり)当時の私はクラスの皆と仲が良く当然中田とも竹中とも仲が良かった。

……だが、偉ぶった奴は自分の我儘を通そうとする。それにより世界はイジメというものが発生されていくのだ。そして、竹中の奴はそれをやり始めた。ターゲットを決め、イタズラをする。だが竹中は決して自分では実行しない。なんてことはない、教育ビデオにでもありそうな、ありきたりな事。……そのうちターゲットは中田になりイタズラの実行犯を僕に命令してきた。中田と仲が良かった僕がやる事で精神的にイジメようとしたらしい。……きっかけはこれだ、これを僕が断る……その後は想像できるだろう……

僕への集中的なイジメ。靴に画鋲や物の紛失は当たり前。放課後殴られたりもよくされたっけ?

だが私と他の奴の違いでケンカの強さがあった。10対1の時も撃退したレベルだ。親父が昔空手をやっていたらしくよく特訓させてもらっていたおかげだった。

しかし当然あっちは面白くないので荷物へのイタズラが殆どになった。Bを直接ボコしてもよかったが、人間のように利己的な考えで拳を握るのを躊躇い只管放置していた。

……そして竹中は僕がイジメられるようになった原因の中田を嗾ける事にしたらしい……

ある日の放課後、中田が私と対面し、

「朗人、悪いが殴られてくれ」

バカみたいに頼み込んできた。たぶん自分を庇ってくれた奴なら自分の頼みを聞いてくれる。と、勘違いでもしたのだろう。本当に……


どいつもこいつも人間らしくて気持ち悪いったらありゃしない……

その日も僕はいつものように殴りかかってきたAを殴りその場所を後にした。その時見たAの目……恨むような目つき……自分を是とし他人を非とする……人間らしくて醜い奴だ……

この世界には人間が溢れている。その分欲望が溢れている。人間が居る所に欲望が溢れているなら世界中に欲望が溢れている事になる。

……だが溢れているのは欲望だけではない。……外れている者を除け者にし優越感に浸り快楽を得ようとするバカどもも当然溢れている。欲という概念ではなく、実際に『物』として存在している者達がいる。

………こんな世界に救いという言葉はあるのだろうか……

……その日も毎日のように考えながら家に帰っていた。だがある時、ふと立ち止まり横を見てみた。学校からの帰り道で必ず通る公園……そこの滑り台の上で1人の女の子がボーッとしていた……よく見るとクラスメイトの中山静香だった。

あいつは頭が良すぎる、という理由でいじめられていた。イジメというより放置が正しかったが……だれもあいつの話を理解できなかった……だがそれを簡単に必死に伝えようとしていた静香を何度も見たことがあった……それでも結局、意味不明なことを話す気持ち悪い奴、という立ち位置になり、最近は休み時間は1人でよく分からない本を読んでいた

そんな奴が滑り台の上で空を見上げボーッとしている……この日僕はどうでもいいと思い、とっとと帰路についた。

だが次の日も次の日も静香は滑り台の上で空を見上げ続けていた。相変わらず何がしたいのか分からない奴だ……

それから一ヶ月経ち、帰り道で静香を少し眺めるのが日課になっていた……静香は学校でも公園でも相変わらずだった。私も相変わらず変わらない。……だが静香の姿に少し同情を覚え始めた……いや、正確には親近感を覚えたのだ。静香は小学3年生までは皆と普通に接していた。……だが頭が良くなりその結果、今はぶられている。私も5年生の始めはいつも通りだった。それでも今は、皆からはぶられている。

……似ている

この時の僕は静香と話したいと思い始めていた。なんだかんだ言っても、まだ幼いのだ。助けて欲しい気持ちが少しはあったのかもしれない……だからある日……

静香に話しかけてみた……

「こんな所で何をしているの?」

「……あら、誰かと思ったらクラスのいじめられっこじゃない。私に何か用?それともイジメられ仲間とでも思ったの?生憎だけど私は貴方と違って自分から離れているの。だから残念だけど貴方と私は違うわ。分かったら早く帰ってくれないかしら?私は鳥を眺めるのに忙しいの」

そう言って静香はまた空を見上げ始めた

……いきなり早口で言われ驚いた上、頭があまり良くなかった私には静香は空ではなく鳥を眺めていることと、自分から皆と離れていることくらいしか分からなかった。なのでその日は大人しく帰ることにした

しかし、その日から毎日公園に行くのが日課になった。公園に着き、「また来たの?」「貴方も暇ね」と、静香に言われて「なんとなくね」「暇ではないよ」と返し、私も滑り台の横で鳥を眺めるのが日課になっていた。静香も何も言わないのでそれを続けていた

ところがある日、いつも通りの会話をした後静香が話しかけてきた

「ねえ、貴方は人間は好き?」

いきなり何を?と、思ったが取り敢えず本心を返すことにした

「……大っ嫌い」

「……それは貴方をイジメるから?」

「それだったら人間なんて大袈裟に言わないよ。僕は人間の……性格みたいなのが嫌い」

「……例えばどんな?」

「欲望で動くことや、自分達から外れた物を嫌うこと。……1番は自分の非を認めない所。誰もが他人のせいにして、くだらない責任の押し付けあい。バカみたいだ……ニュースを見れば不正だのなんだのって政治家が叩かれてる。周りを見れば外れてるからと、イジメが起こる。……人間は上の人間も下の人間もみんな自分のことしか考えてない……人間は自分の長所を自分の欲のために使ってる……長所を生きるために使う動物の方が人間よりずっといいよ……」

「……そう」

つい強めな口調で言ってしまった。気分を害したかな?と思い、静香の方を見上げて見ると……

笑っていた……それも凄く怪しい笑みを……

「貴方、結構面白いじゃない。少し興味が湧いたわ……いいこと思いついた……朗人、明日また此処にきなさい。その時に面白い話をしてあげるから」

そう言うと静香はとっとと帰っていった。静香の姿が消えるまで私は立ち尽くしていた。……クラスの皆が言っていた意味が分かった気がする。静香とは会話が出来ない。ただの一方的な質問と回答。何を考えているか分からない。……明日、静香は何を言い出すのだろうか……


翌日、言われたとおり公園に行き静香が来るのを待った。普段はいつも静香が先に来てるから珍しい……その小さなこともこれから静香が話すことに繋がっているように思えてくる……

20分ほどして静香が走ってきた。手に何か持っているようだが、今は気にしないことにした……

「ごめんね、遅れて。少し準備が長引いちゃってね」

「準備って?」

「順を追って話すわ。それよりも……朗人、貴方に質問よ」

「……なに?」

さっきから静香の顔が真剣そのものになっていて少し怖い。遅れて来ていきなりまた質問。次は何がくるのか……

「貴方はいつまでイジメに耐えられるかしら?」

「えっと、どういうこと?」

「質問に答えなさい。……いえ、質問を変えるわ。貴方はイジメを卒業まで耐えられる?」

「……そのくらいなら」

「そう、それなら続きを話しましょうか」

そう言うと静香はさっきまでの真剣な雰囲気を取り、見たこともない明るい表情で話し始めた

「ねえ、朗人。貴方の種族は何かしら?」

「え?」

いきなり意味が不明過ぎる。イジメの話からなんでそっちに行く?

「え?じゃないわ。貴方の種族は何?」

「に、人間だけど……」

何を当然のことを聞いてくるんだ?

「そう、貴方は人間。貴方が昨日大っ嫌いと言い放った人間。欲望の塊である人間なの。自分のことしか考えてない、他人の事なんてどうでもいい人間なのよ。勿論、貴方をイジメている奴等全員も、ね」

「そ、それはそうだけど…だからなんなの?」

「つまり、貴方も欲望の塊である人間ならその本能に従っても別に問題ないということよ。そして、私もいるから正統性を主張しつつ、世間的にも悪役にならず奴等に鉄槌を下せる。ね、そう考えるとわくわくしない?私達が大っ嫌いなに人間を真っ正面から潰せるのよ?うふふ……」

また早口で言われ、内容もよく理解出来ていないのでどう反応していいか分からない……その上、静香が悪魔もドン引きな笑みを浮かべている。マジで怖い……

「えーと、つまりどういうこと?」

「理解力が無いわね。……そうね、簡単に言うと……あいつらに仕返ししてやろうってとこかしら。それも完全にあっちが悪役でね」

「仕返し?」

一瞬何をくだらない……と、思った。だけどあいつらが困った顔をするのを見るのも悪くないと思った

「……面白そう」

「でしょ!あの普段威張り散らしてるバカどもの泣きっ面なんて想像しただけで笑えてくるでしょ!?やっぱり貴方は面白いわ。『普通』の子供なら乗ってこないもの。さあ、作戦会議よ。私の家に来なさい!」

「分かった!」

やべー面白くなってきた。作戦会議とか色々楽しそうな響きがしてる。なんだかオラわくわくしてきたぞ!

「さあ、ここが私の家よ。遠慮しないで入りなさい。今日は両親居ないからちょうどいいわ」

変な事に悩んでるより行動すべきだよな。そうだよ、人間なら人間らしく生きなくちゃダメだよ。あいつらが標的だから罪悪感も浮かばないし

「ここが私の部屋。さあ、入って」

何するんだろ?落とし穴とかかな?それとも靴隠したりとかかな?

「ところで朗人。……朗人?……ニヤニヤしてて気持ち悪いわね。話は……聞いてなさそうね……あ、そうだ。確か冷蔵庫に……」

でも卒業は何で聞いたんだろ?それまで奴等と戦うとか?

「さて、どんな反応をするのかしら?えいっ!」

「うがっ!げほっ!ごほっ!酸っぱ!なにこれ!?」

「やっと目が覚めた?なにボーッとしてるのよ」

「な、何をしたの?」

「ちょっとレモン汁を飲ませただけよ。さあ、これからのことを話すわよ」

なんか理不尽ではあるがそれよりも先の話が気になるから静かに聞くことにした

「まずは襟首にこれを着けなさい」

そう言って静香は小さいバッジを渡してきた

「……何これ?」

「見て分からない?バッジよ。……ただし超高性能カメラ付きの……ね。ついでに私も着けるわ。効率的にね」

「……で?これでどうするの?」

「カメラに撮って学校に提出する」

………この瞬間僕の期待が崩れるのを感じた

「なんかつまらなそう」

「はぁ、もしかしてただ撮って提出するとでも思ってるの?」

違うの?そう目で訴えてみる

「そんなわけないでしょう。物事にはタイミングという物があるの。それにより効果が何倍にも膨れ上がることもあるのよ。分かったらこのバッジを毎日着けて明日から登校しなさい。家とトイレでは外していいから」

「えーと、それでこれからどうするの?」

「言った通りよ。貴方はとにかくそれを着けて登校しなさい。以上よ。さ、もう暗いから帰りなさい。親が心配するわよ」

そのまま静香は部屋から僕を追い出した。本当に何がしたいか分からない……

そして次の日から僕はバッジを毎日着けて登校した。いつも通りイジメられ、放課後その服や道具を広げ数秒眺めてから帰る。その後あの日以来公園に来なくなった静香が居た場所に座り鳥を眺め、家に帰る。カメラは土曜日に静香に渡して現状を聞いてはぐらかされる。その繰り返し

そのまま一年以上経った。この学校の卒業生が行く中学校は皆入試があるので試験勉強でイジメも減った。たまに試験勉強で溜まったストレスを発散される程度だ

12月の土曜日。いつも通り土曜日にカメラを渡しに行ったら、静香が家に誘ってきた。準備が整ったそうだ。何もしていないからただの暇つぶしかと思っていたがしっかり行動していたらしい

静香の部屋に入り静香と向かい合った

「では問題。私は何故報復を卒業近くまで待ったでしょう?」

また質問で始まった。分かるわけないじゃないか。……あり得るとすれば

「暑いうちに動くのが面倒だから」

ゲシッ

「蹴られた……痛い……」

「阿保な回答をするからよ。たく、私が待ったのはやるなら効果が1番出る時がいいと思ったからよ。つまりこの時期特有の?」

「卒業?」

ゲシッゲシッ

「に、2発……」

「違う。入試よ。今それのために皆一生懸命でしょ。そこをつくのよ」

……成る程。確かに僕は高い所に行かないとはいえ勉強はしている。そこを邪魔されれば誰でも普通以上に効くだろう……考えられてるな……

「つまり入試前日とかに言うんだね?入試の邪魔をするために」

「……まあ、普通に考えればそこに行くから良しとしましょう」

あれ?外した?

「私はね、そんな生ぬるい方法じゃ満足しないの。覚えときなさい。やるなら徹底的にやること。くだらないことでも、ね」

再び物凄い怪しい笑みを浮かべる静香。マジでその笑みやめれ

「じゃあ結局どうするの?入試の邪魔以外なんて……」

「ふむ……朗人。これから先を聞いたら貴方も関係者。もしかしたら罪悪感も感じるかもしれないけど……聞く?」

笑みを消した静香が尋ねてきた。入試の邪魔は僕が考える限り1番酷いと思うけど……それ以上……怖いけど……それよりもその先に興味があった……

「聞きたい……」

「いいわ。話しましょう。いい?まずは……」

………………….

「…………」

「……以上よ」

「……静香って悪魔?」

「私は肉体的な死など興味無いわ。精神的や社会的な死こそ意味があるの」

「発言が悪魔っぽいって」

「で?貴方は協力してくれるのかしら?」

……此処まできたら引き下がるなんて出来ない……この先罪悪感を感じても……

やっぱり僕も人間なんだな…欲には勝てない。この先起こることを傍観なんて勿体無い……自分の事なんだ、自分で締めたいじゃないか

「やるよ。静香の案、乗るよ……」

「……驚いた。此処で辞めると思ってたけど……少しは男っぽい所あるのね」

「そりゃ男だからね。……それが終わったらあいつらどんな顔するだろ?」

「さあ?どんな顔だとおもう?」

「'(*゚▽゚*)'→v(^_^v)♪→(・A・) ?→Σ(゚д゚lll)→((((;゚Д゚)))))))→\(^o^)/
って感じ」

バキッ

「死ぬほど分かりづらいわ」

「ぐ、グーパンはさすがに……」

「とにかく決行は一ヶ月後。……いいわね?」

「……うん」

……この日から僕はよく寝付けなくなった。一ヶ月後に興奮、もしくは恐怖を抱えて……

〜一ヶ月後〜

あれから一ヶ月、720時間待った。いや、もうちょっと短いかもしれないけど……とにかく待ちに待った時がきた。静香に言われた通りにやれば万事上手くいく……はず……

そう士気を高め?静香の家に向かった

少年移動中……

「いらっしゃい。さあ入って。早速始めるわよ」

「準備は終わってるの?」

「貴方は5日前行動という物を知らないの?私はちゃんと5日前に準備し終わったわ」

知らないし何の自慢だよ……まあそれはともかく準備出来てるなら早速はじめなくちゃ

「さ、始めましょうか。50人のクラスのうちなんと23人が泣きっ面になる報復を……ついでに何人か巻き添え食らいそうだけど」

そう言って取り出した紙。それと同じ物を何枚も出し、それに適確な文字を書く。僕も静香の指示に従ってそれを手伝う

それがすべて終わると室内に静寂が訪れた……この紙たちがこれからの作戦を実行してくれる……ペンは剣よりも強しとはよく言ったものだ……全くその通りなんだから……

「お疲れ様。もう今日は帰っていいわ。少なくとも一週間以内に教室内にかなりの変化が起こるわ……」

「そういえば僕の行く中学校は大丈夫なの?僕も何発か殴ってるからそれを言われると……」

「大丈夫よ。貴方の行く中学校にはもう1人この学校出身の、尚且つ未来の被害者が居るから。貴方の事は擁護してくれるはずよ」

「考えてるね〜」

「当然じゃない」

「ははは、じゃあ帰るよ。じゃね」

「ええ、また月曜日」

そのまま静香と別れた。僕の目にも分かる変化はいつ頃になるのだろうか……

僕は帰宅しながらこれから先のことを想像しながら

「騒動が起きそうだな……」

そう呟いていつも通りの休日を過ごした

〜3日後〜

騒動は思ったより早く起こった……

            学級閉鎖

中学入試を全員がすべて終わり、それから一週間も経たずに学級閉鎖だ。誰も彼もが怪しがるだろう。……僕と静香以外は。そう、これくらいは想定済み……なんたって……

今頃学校では……中学校からの電話が殺到している筈だからだ。この近辺の中学校は結構厳しい。だから小学校からの情報を詳しく聞き、性格からも合格基準を入れている(と、静香が言っていた)。そして、僕達はカメラで撮ったイジメ動画を静香が編集し、それを中学校に送りつけたのだ。その結果今の様になっている。静香曰く、殆どの確率で合格取り消しになるだろうとの事だ。流石に同情するよ。助けるつもりはないけど……まあそれはともかく、今僕は静香と共に学校に向かっている。動画を送ったのは僕達だから事情を聞かれるのは当然だろう……さて、どっちに転ぶかな?

少年少女移動中……

「事情を説明してもらおうか?」

開幕一発目にえらく不機嫌なオールバックで身長180もある担任の福岡雷(ふくおからい)が質問してきた。静香が言うには福岡もイジメを黙認していた事から「ついでに学校も巻き込めるわね」と、いう事でしっかり被害を受けていたらしい。風評がある学校からしたらクラスの半分が合格取り消しなんていい笑者。なんとかして中学校側を納得させるために僕達をだしに使おうという魂胆だろう……と、静香は予想している……僕役に立たね〜

「事情?イジメを告発するのは当然のことでしょう?」

「時期という物を考えるべきだろう……」

「時期?イジメとどういう関係が?私達がしたのはイジメがあったから告発した。だけど……」

一息ため、静香の眼光が鋭くなる……

「イジメを『黙認』している小学校に出しても意味がなさそうだったから中学校に送ったまでですよ」

「ぐ、むぐぐ」

という感じにあっさり黙らせた。その日は福岡から頼むから口裏を合わせてくれと言われ続けたがキッパリ断って帰宅した

それからは本校始まって以来の大事件を引き起こした「イジメの完全復讐事件」として今回のことは語られるようになった。この噂がある限りこの学校でイジメが起こることは無くなると信じたい。
静香は「朗人と一緒の方が面白そうだわ」と言って超難関中学の入試を蹴って中の中の中学校に入学した。それ以降は本当に仲の良い親友だった。小学校の時に外れた2人は知能実力は違えど、本当に楽しい日々を送れていた……たとえ外れた世界でもそれは続いたのだ。小さな出会いから自分を支えてくれる親友が出来た。

だからこそ私は慧音を幻想郷……いや、妹紅と共に来させたのかもしれない……同情や憐れみじゃない。同じ境遇の物同士のみが感じられるやすらぎを慧音と妹紅にも知ってもらいたかったのだ………


いつかは離れなくてはならなくても、過ごした大切な時間は絶対に無くなりはしないのだから

二十四、古く懐かしい再開

「……と」

昔の私……くだらないことで怒り、嫌いと言った人間のごとく人を陥れた。……だが微塵も後悔していない……大切な親友を得られた……それと比較したらたいしたことはない

「…い、……きと」

慧音と妹紅。程度は違うが私と静香にそっくりな2人。その2人の為にしたことは間違いとは思いたくないな……後で確認はとっとかないと

「おい、朗人!」

「うわっ!び、びっくりした……なに?」

びっくりした〜、過去の思い出に浸り過ぎた所為で現実が疎かになっていたようだった……反省、反省

「お前よくあれを前にして余裕で居られるな……」

「あれ?」

呆れ顔の妹紅が指差す方向……そこには

「本当に貴方は私をイラつかせてくれるわね。せっかく会いに来た知人相手に失礼じゃなくて?」

日傘をさした緑髪の美女、昔ちょっと(←ここ重要)喧嘩してその後幻想郷に誘った相手だ。しかしひっさしぶりだな〜、何百年ぶりだっけ?

「お〜、久しぶり〜幽香。幻想郷に来てくれたんだ。誘ったかいがあったよ」

「ええ、取り敢えず片っ端から勝負を挑んでの幻想郷巡りを楽しめたわ」

うわ〜こえ〜。と言っても竹林には静香が居る。てかそれ以前に入れないし、妖怪の山は流や来てれば悠がなんとかするだろう。神社も奈々と巫女さんがいるからなんとかなる……後は……私が潰されて困る所は無いな。湖の妖精は勝手に復活するし……

「楽しめたなら良かったよ。それで……何人に負けた?」

「…………」

黙った……やはり無敗というわけにはいかなかったのだろう……誰だろう?私が知らなかったら是非会って見たいもんだ

「三人……いえ、実質四人ね。山の河童と鬼。あと上の神社の神に撃退されたわ。巫女もそこそこやるようだけど殆ど神が戦っていたわ」

………あれ?今おかしな事を幽香が言ってなかったか?神社の神が、幽香を……撃退?いやいやいやいや、ないないないない。だってあいつだぜ?あんな里の子供達と遊んで笑ってる子供神様だぜ?それが……大妖怪でも上の部類に入る幽香を撃退とか……

「ね、ねえ幽香。本当に、神社の神が幽香を撃退したの?山の河童と鬼はまだ分かるけど、神社の方が全く想像出来ない……」

「……貴方が何を言いたいのか分からないけど、負けたわ。……神社の神に」

「うわぁぉい。後で神社にも寄らなくちゃいけないな……」

「そうそう、そろそろ良いかしら?」

「ん?忙しかったの?」

また新しい所へ幻想郷巡りに行くのだろうか……

「ええ。貴方とと戦う為に此処に来たんだもの。雑談なんてつまらないでしょう?」

「そう?結構楽しいと思うけどね?私は」

「貴方はそうでもお付きの子達は嫌そうよ?」

幽香にそう言われて後ろに居た妹紅と慧音を見た。……そこには怯えたような表情の慧音と敵意を剥き出しにしつつも、恐怖を隠しきれない妹紅の姿があった

「妹紅、慧音、大丈夫?」

「わ、私は大丈夫だ」

「私も大丈夫。……なあ朗人、あいつは誰なんだ?妖怪だとしても力がでかすぎるぞ……」

そっか、妹紅って幽香と会うのは初めてだったね。妖力だけなら悠も上回っているのだから怖くなるのも無理はないね

「えっと、彼女は風見幽香。向日葵の畑で過ごしていたら、私という侵入者を見つけて退治しに行ったら逆にやられた妖怪」

「貴方は本当にムカつくわね。殺したくなるわ」

実際合ってるし未来の知識を披露出来ないのが辛いとこだな……しかし、幽香はドSだけど勝てない勝負を挑んでくるとは思わなかったけどな〜

「……なあ、まずは私にやらせてくれないか?あのレベルにどこまでやれるか試してみたいんだ」

お、いきなり挑戦的な妹紅の大胆発言。幽香相手に勝負を挑むとは……度胸が付き過ぎだな、妹紅は

「だ、大丈夫なのか?妹紅が戦えるかは分からないが、あいつはかなり危険だぞ」

「大丈夫だって。ぼろ負けしても死にはしないからさ」

「そういう問題ではないのだがな……はぁ」

慧音の心配も意味無しと。ていうか本当に妹紅と慧音は仲良くなるの速いな。私と静香は結構かかったのに……おっと、それよりも……妹紅vs幽香の話だったな……

「う〜ん、まあ前あった時と妖力はあまり変わってないし別に大丈夫でしょう。ただ妹紅、幽香は強いからね。油断はしないように」

「ああ、分かってる」

「幽香も妹紅が相手でいい?」

「……いいわ。準備運動にはなるでしょう」

さすが幽香。妹紅を準備運動とは……まあ実際私に勝ちたいならそれぐらいじゃないとダメなんだけど

「なめるな!」

ボワッ、と炎を纏い臨戦体制に入る妹紅。……さて、幽香相手にどこまで食らいつくか……

「行くぞ!滅罪寺……」

「遅い」

一瞬……7.8メートルはあった距離が一瞬で無くなり、幽香が妹紅の前に移動した……速度だけなら鬼より速かった……

「くっ、この……」

「準備運動にもならなかったわ」

ドガガガガガガガ、ドゴン!

「ガッ、ハァ!」

「この程度なの……期待外れね」

手に持った日傘で妹紅を7度叩き、最後に頭を思い切り下に殴る……前に会った時とは全然違うじゃないか……誰だ!前と変わってないなんて言ったやつは!……私か……

「さあ、次は貴方よ朗人。数百年ぶりの私の力を見せてあげるわ」

ゴウッ!

「!!」

「なっ!」

「うわっ!」

突如幽香から溢れ出た妖力に少なからず驚いた……これ、昔の倍近くあるぞ……昔でもかなり高い妖力を持っていたのに……これ程とは……妹紅なんて近くに居たから吹っ飛んでるし……あ、落ちた

「おいおい幽香ちゃん、地獄巡りし過ぎじゃない?どんな修行すればそんなに一気に強くなるんだ?」

「貴方に負けた屈辱に比べればあの程度の修行なんてどうってことないわ。……さあ、始めましょうか。今日こそ貴方に勝つわ!」

「……確かに強いけど、まだ私ほどじゃないね。幽香、覚悟!赤霧、青鮫、行くよ!」

ドス

私が刀達を呼ぶと同時に幽香が地面に傘を突き刺した……今度は何をするのだろうか……

「花緑庭園(ガーデニング)」

「……!!!」

ニョキニョキ、パァァァァ

幽香の技名と共に辺りから沢山の草木や花達が湧き出てきた。……しかもその植物は、オトギリソウ、イチイ、アゼムシロなど、毒を持つ植物ばかりだった。つまり、完全に相手の領域ができてしまったということだ……幽香め、いきなり魅せてくれる……

「だが、それがいい!内蔵改造(オペレーション)」

体の至る所を強化してくれる内蔵改造で、周りから襲ってくる植物達を避け、斬り、避け、斬り。………あれ?そういえばさっきから木や草も操ってるけど幽香の能力って『花を操る程度の能力』だよな?おかしくない?

「ねえ、幽香って花以外も操れるの?」

「戦闘中なのに余裕そうね。まあいいわ。確かに始めは花以外は操れなかったけど修行している間に他の植物全てを操れるようになったわ」

「うわ、なにそれ怖い」

「短い生を懸命に生きる花以外にも、季節を感じさせ自らを強く主張する他の植物達にも美しさを見出したから修行してみたの。成功して正直驚いたわ。勿論、花の強化も忘れていないけど……」

いやいや、やってできる時点でかなり凄いでしょそれ。何百年も会ってなかったけど努力してるんだな〜

「この子達もその中のひとつ。薔薇の菜園(ローズエリア)」

ニョキニョキ、パァァァァ

うんうん、綺麗な薔薇だ。……しかし知っているかね?綺麗な薔薇には棘があるという言葉を。……もしその棘が、地面から出ているだけでも5mはある薔薇だったらどうだろう?……もうね、棘じゃなくて剣だからあれ。一本一本どれだけでかい棘だよって話。しかも花の中心にはでかい口まであるんだぜ?食人植物って奴。それがさっきから5本も10本も生えてくるんだよ?やってられないよ

「どうかしら?とても綺麗でしょう?さあ、貴方も何か見せたらどうかしら?ただ攻めて守ってをやってもつまらないわ」

「……ふむ、それもそうだね。それに幻想郷に妹紅は置いて行くつもりだったし丁度いいね」

「え?朗人?どういうことだよ」

「妹紅、見てろ……これがお前に教えた技の最終形態だ……幽香、覚悟!不死鳥の頂点(キング・フェニックス)!!」

赤く、紅く、緋く、朱い炎。強く、大きく、激しく、荒ぶる炎。羽ばたきは熱風を起こし、声は火炎となる。全長15mほどもあり、光り輝く目を持ち、長く鋭い嘴を持つ。並みの妖怪では近づくことさえ出来ない不死の鳥……

「これが上級魔法のひとつ……不死鳥の頂点だ。……不死鳥は死なない。なら生まれはどこからくるか。……それは朱雀という、神獣である鳥から生まれる。……つまり、不死鳥は自らを分かち、新たな不死鳥を作る。分かれた分身である不死鳥は、言うならば炎の気質のみで出来ている。故に炎に身を投げたのち、新たな不死鳥となり蘇る。……つまり、炎を操る者がこれを修得すれば本当の不死になる…………分かった?妹紅。これが最終的に妹紅が辿り着かないと行けない所だよ」

「こ、これが……」

さて、これを妹紅はどう受け取ったかな?……いちいち不死鳥不死鳥言ってたのは、『不死』という部分を感じ取って欲しかったんだけど……幻想郷で住むということは幾度の別れを経験するということと同じだ。不死を受け入れ、越えられなければ普通には生きていけないのだから……勿論妹紅が旅を続けたがれば連れてくし、慧音が村に戻りたがれば送って行くつもりだ。最終決定は本人にやらせないと意味が無いからな……

「マスタースパーク」

ビィィィィィ!!

シリアスモードに入ってたら下からいきなり撃ち抜かれた……幽香め、相変わらず空気が読めないな……まあ戦闘中なのに余所見した私が悪いんだけどさ……

「うわ〜、身体が半分消し飛んじゃったよ。マスパも前より全然強いじゃん」

見てみると右の羽根と身体が少し消えていた。それに余所見してたからしっかり見てなかったけど、前の最後のマスパと比べて倍はあった……とはいえ

「不死鳥となった私にその程度が効くと思うな!」

ボワァッ!!

「フェニックス再誕。そんなんじゃ私は倒せないよ……さあ、続けよう!」

「いいえ、今回はこれくらいでいいわ」

「は?」

「正直今は勝負なんてどうでもいいし」

「「「( ゚д゚)ポカーン」」」

唖然……私も妹紅も慧音までもがそれに相応しい顔になった……幽香が勝負を投げる……だと……

「本当は今回は貴方と勝負するために来たわけじゃないわ。ちょっと頼みたいことがあったのよ」

「幽香が頼みたいこと?簡単なこと?」

「ええ、簡単なことよ。ただ私の向日葵畑をこの幻想郷に移してくれればいいの」

「どこが簡単か3行で説明」

「頼む
相手が
前原朗人」

「ま、まあね。その程度余裕でできちゃうけどね?……しかしなんでいまさら?」

「今までは年に何回か私が帰って世話をしていたのだけど、さすがに何度も移動するのが面倒になってきたのよ。で、丁度貴方もいることだし頼もうと思ってね」

ふむふむ、さすが私。ナイスタイミングで帰ってきて幽香の役にも立っちゃうとか……なんて優秀なんだ!

「なるほどね。分かったやり終わったら報告するよ。でもならなんで勝負を挑んできたの?」

「力試しよ」

「わかりやすい説明をありがとう。ただ喧嘩したかっただけなんだね」

たく、人騒がせな。まあ、嘘ではないんだろうけど巻き込まれる方の気持ちも考えようよ……

「まあいいや。じゃあこれから人里行って神社行って山行った後、畑を移動させるよ」

「随分多いのね。それじゃ、よろしくね」

そう言うと、幽香はそのまま歩いて去って行った……畑以外はほんとに力試しだったのか……

「それじゃ、改めて妹紅、慧音、行くよ」

「わ、分かった」

「………」

返事をする慧音と黙ったままの妹紅……さっきの瞬殺が効いたんだろうか……まあ私もあそこまで幽香が強くなっているとは思ってなかった……私のミスかなぁ?

「あ、なんだかんだしてたら見えてきた。ほら、あれだよ。幻想郷の唯一の人里」

数百メートル先に小さい門と門番が見えてきた。久しぶりの帰郷だ。奈々の奴元気にしてるかな……信仰なくして消滅とか笑えないぞ……

「おい朗人。ぼーっとしてどうしたんだ?ここからは私達はお前を頼るしか無いんだが……」

そんなことを考えていたら門を通過して人里の中に入っていたようだ。まだ黙ってる妹紅と元気に走り回っている子供達をみて微笑んでる慧音。やっぱ慧音には人里があいそうだな。妹紅はともかく……

「よし、じゃあまずは家から紹介するよ。来る時に魔法で覗いたけど式がうまくやってくれているらしいからね。その後は奈々……幻想郷の神に相談して円滑に進むようにするって方向で……行く前に買い物でもするか!」

「「え?」」

これにはさすがの妹紅でも驚いたらしい。片や蓬莱人、片や半人半獣。まともに買い物が出来ない訳ではないが、人と話すのは苦手なのだろう……

「じゃあさっそくそこの饅頭屋から!」

「ちょ、ちょっと待て!普通に外から来たこたを見られているんだぞ!?そんなに目立つ行為は……」

「そうだ!朗人、そういうのはもうちょっと後で……」

「これからここに住むんだよ?そんなんでどうする。あ、おじちゃん。オススメの饅頭3つ頂戴」

「あいよ。毎度あり」

呆れ顔で店の椅子に座り、妹紅達に言ってやる……ここは良いところだと……

「妹紅、慧音。周りを見て何か気づくことない?」

「周り?」

「気づくこと?」

言われたとおり周りを見回し観察する……ただ人が歩き、暮らしているだけ。特に変なところは無いが……

「何もないが……」

「私もないな」

「……門番が素通りさせている妖怪も何人かいるでしょ?それに私達の時もチェックなんてされなかった。そして、里の中でも妖怪が歩いている。それなのに騒ぎが起こってない……つまりここには妖怪ですら気軽に足を運べる里なんだ。人種の差なんてどうでもいい。生物としての違いもどうでもいい。そんな里なんだよ、ここはね」

「……へい、饅頭お待ち」

「あ、どうも。とにかく!そんなこと考えてる暇があったらもっと有意義につかいなよ」

「……ああ、そうだな……ところで……」

「私も気にしないことにしよう……ときに……」

「「あれはなんだ?」」

「あれ?」

妹紅と慧音が見ていた方を向くと……大砲のような力の塊が突っ込んできた

二十五、博麗の神と巫女

ドッガガガン!!

いきなり突っ込んできた大砲もどき。朗人はそれを片手で受け止めていた。前原朗人を知らない人間なら驚くだろう。知っている人間なら当然だと納得するだろう。……だが、本人の朗人は違う。前原朗人は大魔法使いなので魔方陣の設置は一瞬でできる。だがステータスの高さゆえあまり使って来なかった……だが不意打ちとはいえその魔方陣を使っていた……防御をするということは、普通では耐えられない攻撃だからだ……無論死にはしないが怪我を負う可能性がある……それを飛んできた術から感じていた……

……しかし、それに前原朗人は嬉しそうに微笑む……まるで、弟子が育って喜ぶ師匠のような笑みを……

「久しぶりだね、奈々」

目の前の少女に言い……

「久しぶりじゃな、朗人」

目の前の少女も言い返す

「随分強くなったじゃないか」

「朗人がいない間もしっかり統治してやったわい」

「ほんと、潰れてるんじゃないかと心配したよ。奈々って微妙に頼りないから」

「それが何百年も放って置いた者に対する口の利き方か!!」

相変わらず元気そうな神様で安心した……数百年前、博麗神社に放置した神の奈々……神力の変化のせいか少し背が伸びている……神力も最後に見た時とは比べられない……

「博麗神社はどう?改築した?」

「それはしておらん。だが清潔さは保っておるぞ」

自信満々に胸を張り威張ってくる可愛らしい神様。これならもう大丈夫そうだな……

「ときに朗人……帰ってきたのには理由があるのか?」

「理解が早くて助かるよ。人里の居住権が欲しいんだ。ここを統治してる神社の神とはいえ、許可なく住むのは悪いと思ってね」

「ちょっと待て!博麗神社の祭神は妾じゃぞ!?」

「私のことを知らない里人には今度紹介してもらうとして……」

「だから妾の話を……」

「あ、二人分よろしく。家は前居たときに暇つぶしで作った家に住ませるから」

「聞けと言っとろうがぁぁぁぁ!!」

人里の中でありながら大声を上げて神力を解放する奈々。神が統治してる場所で暴れてどうするんだよ……

「お、また喧嘩か?」
「奈々様が居るぞ!がんばれ!」
「春ですよー」

……ここの人里の人々は喧嘩が始まるのは分かるのに逃げる気は無いらしい……しかも私と奈々を囲むように野次馬化してるし……やっぱ奈々、後で説教!

「赤い勾玉!!」

「な!?いきなり使うのか!?」
「皆!もっと離れろ!巻き込まれるぞ!」
「春ですよー」

奈々の声と共に野次馬共が下がり始め、奈々の前には宣言通り赤い勾玉が浮かんで力を溜めているようだ……しかし本当に慣れているらしい……あとさっきから余計なの居ないか!?ついでに今は夏だ!

「炎弾神弾!火力の赤!」

ドォンドォンドォン!!!

さっき不意打ちしてきた時と同じ大砲のような力の塊……それを三つ一気に撃ってきた……奈々の新しい力か……結構気になる……

「まあ、あっさり当たるわけ無いけどね……」

軌道を見れば人に当たらず、それでも私が避けにくそうな処に撃っている……戦闘のセンスも前より全然上がったらしい……なら!こっちもそれに応えよう!!

「死角阻害(フレームアウト)」

補足しておくと、あの可哀想な子のように存在感が消えて目に見えなくなる技と認識してもらえばいい。ふざけ魔法も使えるもんだ

「な!?消えた!?隠れるとは卑怯だぞ!」

「隠れてないよ。ただ存在感が薄くなっただけ。某アニメの影響でやってみたくなった!」

「なら……藍色の勾玉!身体活性!強化の藍色!」

赤い勾玉が消え、奈々の頭上に藍色の勾玉が現れる……現れた瞬間に奈々の『目』が変わった……実際、薄水色の瞳が紅く染まった……

「そこか」

そんな奈々は目を気にした様子はなく真っ直ぐこちらを見つめてくる……奈々の言葉からして身体能力を強化するらしい……それにより存在感が薄くなった私も見られた、という事だろう

「力量増加!青い勾玉!細胞硬化!緑の勾玉!」

そのまま攻撃するのではなくさらに左右に青と緑の勾玉を配置する……状況を考え、万全で挑む……これもできるようになっている……

「行くぞ!」

ダンッ!!

「!?後ろか!」

踏み切る音が聞こえた数瞬後、奈々は後ろまで移動していた……あの風見幽香ですら朗人の後ろはとっていないというのに、だ

ガキィィィン

今まで刀の名を呼ばずに抜刀した事は無かった……でも、気がついたら抜いていた……

「強く…なったなぁ」

ひとつの行動でも本当に強くなった……竹林で倒れていた時から知っているが、こんなに凛々しくなっていたことは無いだろう……

この時は、本当に奈々を認めていた……あの頼りなかった奈々がこんなに立派になってくれた……そんな充実感だった……

「後は……知り合いにも油断しないところかな?」

まだ刀に触れている奈々の腕を取り、足を払い、二の腕を受け流し、そのまま一本背負い……どーん

「ぐっ!」

「均衡状態の時にずっと触れているのはダメだよ。一旦距離を取らないと」

「……うーむ、妾もまだまだじゃな」

意外とあっさり認めて立ち上がった。諦めず攻撃してくると思っていたが、その気は無いらしい

「なんだ、もう終わりか?」
「これからが良いとこなのに…」
「な、夏ですよー」

がっかりして散っていく人々と、空を飛び帰っていく春告精。これはどうしても問いただしたい

「ところで……今の野次馬はなんだ?」

少し強めの物言いで問い詰める……うっ!と困った顔をして言い訳を考えているらしい……

「えーと、それはじゃな……一度信仰集めの一環で妖怪退治を皆の前でやったのじゃ。……そしたら妖怪が攻めてくるたび野次馬化してしまって……も、もちろん被害が出ないように配慮しておるし、怪我人を出したことはない。日傘を持った妖怪の時は神社まで誘導してからやったぞ……で、大丈夫かな…と」

「……はぁ」

奈々の信仰が上がっているから成功なのだろうけど、怪我人出たらどうするんだよ……万が一ってのがあるのに……

「ま、数百年も留守にしてたんだ。方針に口出しは出来ないか」

「う、うむ。そう言ってもらえるとありがたい」

「で、本題。あそこの2人をこの里に住まわせて欲しいんだ。両方訳ありの元人間。現在は不死人と半人半獣」

「分かった。里長に許可を貰いにに行こう。家は良いのじゃろう?ならたいして問題もあるまい」

「随分あっさりだな。もう少し詮索してくると思ったけど……」

「『幻想郷は全てを受け入れる』なのじゃろう?それに朗人が問題を投げ込むともおもえんしのぅ」

「あれ?そのフレーズ奈々に言ったっけ?」

「ボヤいてるのを一回聞いた。じゃが妾はいいと思うぞ。実際人里に来る妖怪もたまにいるしの。鬼とか天狗とか」

「へぇ〜。じゃあそれを妹紅達に知らせとくよ」

「分かった。一日では足りないじゃろうから先に博麗神社に行っといてくれ」

「りょ〜かい。じゃ、また後で」

一旦奈々とは別行動だ。と言っても私が何かをするわけでもなく、妹紅達の処に戻ることにした

……そこには

おばちゃんやおじちゃんに囲まれて戸惑っている、妹紅と慧音だった……

「嬢ちゃん達がこれから里に住む子達ね。困ったら何でも言いなさい」
「そうそう、遠慮せずに頼るといい」
「住民は一致団結しなくちゃねぇ」

「えと、あの……」

「あ、ありがとうございます」

「そうそう、これ持って行きな。新鮮なお野菜。うちで作ったのよ」
「ならうちの饅頭も持ってきな!すげーうまいぜ!」
「ふっふっふ。おれんちの漬け物に勝てると思うなよ!」

見ているうちに両手がいっぱいの貰い物で溢れていた。ここの住民は本当に良い人たちらしい……

「おーい、妹紅、慧音。今日は神社に泊まるから着いてきて」

「あ、ああ。分かった。…皆さん本当にありがとうございました」

「(ペコリ)」

最後に慧音が挨拶をし、妹紅が会釈する。そのままこっちに小走りでやってきた

「良い人たちだったみたいだね」

「ああ、とても良い人たちだ」

「……まあ、悪くはないな」

「そうか。それはよかった。じゃあ博麗神社まで少し歩こうか」

少女達移動中……

「おお!懐かしき我が家よ!」

「朗人、恥ずかしいから辞めてくれ…」

「たまに奇行に走るよな、朗人は…」

慧音に呆れられ、妹紅に馬鹿にされながら博麗神社の鳥居をくぐった

ザッザッザ

境内には1人の女性がいた……髪を結い、解けば腰まで届きそうな黒い髪を風に揺らしている……身長は170ちょっとといったところか……そして1番おかしなところは……刀を持っている……見ていて思ったが、今代の巫女は巫女というより侍だった
帯刀しながら箒で境内を掃いている姿は少し奇妙に見える……あ、こっちに気づいたらしい

「こんにちは。御詣りですか?」

見た目とは裏腹に、声だけなら貴族のお嬢様と言われても信られる気がした……掃いていた時のような仏頂面を笑顔に変えていたところもプラス評価だな……

「いや、私達は御詣りではない」

「祭神目の前に居るしね」

「朗人、黙っててくれ」

「え?奈々様ここにいるんですか?」

「いや、そうじゃなくて私が博麗神社の祭神なんだって」

「……貴方、何者ですか?博麗神社の祭神を名乗るなんていい度胸してますね……」

視線を尖らせ、刀に手をやり構えをつくる……なるほど、霊力の量からしてそこいらの妖怪よりは全然強いようだ……

「朗人…お前はなんでいちいちややこしくするんだ?」

「慧音、呆れ口調やめて。離れてたとはいえ、可愛い可愛い博麗の巫女だよ?私が色々教えてあげなくてどうするの?」

「だが……」

「まあまあ、慧音。たまには朗人も師匠っぽいことしたいんだよ」

「うーん、そうでもないけど……まあいいか。さて、それじゃおいで。今の博麗の巫女はどの程度かを」

先程と変わらず構えを崩さない巫女に呼びかける。殺気こそないが闘志は半端ない。刀は抜いてないから分からないが、名刀の類だろうか……

「まだ質問に答えて貰ってません。貴方は何者ですか?」

「何度も言うけど博麗神社の祭神」

「そうですか……では、私程度に負けるなどありえませんよね?」

「勿論……」

「では……斬ります!」

途端に走り出し、こちらに向かって来る博麗の巫女。霊力の使い方が上がっているようで、足に霊力を溜めて速度を上乗せしているらしい……間を詰められ縦に一太刀
それを横に回避し、横薙ぎの一閃を一歩下がり回避。ついでに弾幕を放っておく。真っ赤だが五百円程度の大きさを5個ほど

それを避けてさらに向かって来る巫女に、さらに弾幕を投下。

「はぁぁぁ!!」

それを巫女は刀で斬る、斬る、斬る。撃った弾幕を全て落とし、距離が空いたので、また構える。剣士としては良い腕前……だけど……

「重心が右に少し寄ってる」

「え?」

「右足を外に出し過ぎだ。刀はもう少し低く構えろ。足を縦に一直線にするのは避けられた時に反撃に対応をしずらいからその時は重心を少し下げた方が良い」
「一体何を……?」

「改善点。そうすれば初速がもう少し速くなるし、攻撃を受けた際の次への動作がやりやすくなるよ。……さ、続けようか」

「……一体貴方は…」

「こらぁぁぁぁ!!」

ゲシッ!

「ウオッ!?」

いきなり蹴り!?誰!?何!?何者!?

「朗人!自分の巫女を苛めるとはどういうことじゃ!?妾がせっかく里長に頼んで2人分の居住権を貰ってきたと言うのに!」

「な、なんだ奈々か……脅かすなよ。それに苛めてない。巫女の実力を見てただけだよ」

「む、むぅ〜。なら仕方ないが…今日は終わりじゃ。雪!夕飯の準備を!五人分だから大変じゃが頼んだ!」

「え?あ、はい!ただいま!」

奈々に言われ巫女さん…雪って言ってたね。雪が神社の中に走って行った

「まったく、朗人も少しは場合をわきまえるべきじゃ。あの子は育ち盛りであまりにも離れた実力は自信の喪失に繋がるのじゃぞ」

「驚いた。奈々が正論を言っている」

「お主らも止めてくれれば良いのに……」

こちらから視線を外し、貰った袋を開けて饅頭を食べていた妹紅と慧音に話を振った。…ていうか私の分がない!

「朗人を止めるのはもう諦めてる」

「私達の言うことを聞く奴じゃないからな……」

ひどく投げやりな答えをした妹紅に、ついには慧音まで同意しちゃったよ……行動改よっかな……

「……まあ、朗人じゃしな……」

……そのなんかもう馬鹿過ぎて見捨てた、みたいな感じの言い方辞めろよ、傷つくぞ……

「あ、そうじゃ。お主らの居住権はしっかり貰ってきてやったぞ!里長に頼んだら『ああ、奈々ちゃんの知り合い?オッケー、オッケー。すぐ証明書用意するね』と言ってあっさりくれたぞ!」

「大丈夫かな?その里長……」

「あまり信用出来ない感じがするな……」

エッヘンと威張る奈々に対するツッコミは私も同感だ……軽過ぎだろその里長……

「奈々様〜。ご夕飯の準備、出来ました!」

「出来たか!分かった!すぐ行く!お主らも今日はゆっくりしていってくれ。朗人が世話になったようじゃしな」

「世話したのは私だけどな」

「まあいいじゃろう。さ、飯じゃ飯じゃ!」

「じゃあお世話になります」

「失礼しまーす」

「ただいま〜」

さて、夕飯を食べながら近況報告でもするかね

二十六、隙間と血との邂逅はいかが?

「朗人様、朝食が出来ました。もう皆さんは集まっているのでお早めに」

「ああ、ありがと。すぐ行くよ」

昨日は奈々と雪にこれまでの大雑把な説明と、雪と妹紅と慧音に私達博麗神社の創立について話してあげた。全部話し終わると奈々は懐かしがり、雪は鳩が弾丸を食らったような顔になり、妹紅と慧音は呆れていた。そのあと雪に「すみません、すみません!」と何度も謝られた。正直タメ口でも私はいいのだけどね……立場上きついだろうけど

「お待たせ」

「朗人、遅いぞ」

「ごめんごめん」

妹紅と慧音は前も言ったが私が暇つぶしで造った家に住むことになった。暇つぶしといっても4LDK×2といった大きさと設備は十分な処だ。里人も優しそうだったしなんとかなるだろう

「朗人、今日は予定はあるのかのう?雪が剣の修行をつけて欲しいらしいのじゃが」

「ご、ご迷惑でなければ……」

「今日は幽香の向日葵畑を持って来るのと、昨日奈々が話してくれた奴に会えたら会いに行くから稽古は夕方だね。それでもいい?」

「は、はい!勿論です!」

「しかし幽香とも知り合いとは……本当に朗人は顔が広いのう」

「だてに旅してないよ」

幽香との約束通り今日は向日葵畑を幻想郷に移動させるつもりだ。嫌がらせついでに乙女チックな小さい家も付けてやろうと思ってる。……それと昨日奈々が話してくれたんだけど、あの奈々が持っていた勾玉。それはとある人物から貰ったそうだ。なんでも幻想郷を案内したら、お礼でくれたらしい。7勾玉3鏡1剣あるらしい。そしてその人は背中に蝙蝠の羽を生やしていたそうだ……おかしいだろ?アレは西洋の妖怪で日本に居るはずがない……だから目的を聞くために探そうと思っている。奈々達にはお礼を言うためと言ってあるが……

「ごちそうさま。それじゃあ行ってくるよ」

「分かった。妹紅と慧音は妾に任せよ」

「頼りにしてるよ。奈々」

まずは向日葵畑の移動から。昔行った場所は覚えてるし、能力を使えばすぐに終わりそうだな……

………………

なんて思ってた時期が私にもありました。私は今、ゆうかりんランドの前まで来ている。このまま能力を使って終わり!……でも良いんだけど、私的にどうしてもこのまま終わらせたくない……この妖怪とは絶対に邂逅したい……

「こんにちは。幻想郷の主さん?」

そうこの八雲紫とだけは。日傘をさして扇子で口元を隠して薄く笑っている美女。隙間妖怪と呼ばれている東方の幻想郷の管理人……

「やあ、ストーカーさん。一週間経ってやっとの登場か?待ちくたびれたよ」

「……あら、気づいてらしたの?」

「空間を操る人間が空間の異変に気付かないわけないでしょ?」

そう、実際に紫は一週間程前から、つまり守矢神社に居た時から私達を観察していた。それをあえて無視していたのは相手のアクションが気になっていたのだが、何もしないのでそろそろ指摘しようと思ってたところだ

「そうなんですの?ああ、申し遅れました。私、八雲紫というただのしがない妖怪ですわ。しかし幻想郷の主ともあろう者が向日葵の咲き乱れる畑に何の用で?」

「知ってるでしょ?風見幽香に頼まれたの。それ、先に済ましていい?ついでに私は前原朗人ね」

「ええ、勿論。大妖怪や陰陽師を軽く手玉に取ると言われる、前原朗人の実力を見せて頂けるかしら?」

本当に紫って怪しいな……リアルで会うと美しさ二倍の胡散臭さ十倍って感じだ……

「面白いもんじゃないよ?」

「ええ、構いませんわ。ただ私が見たいだけなのですから」

「そ。じゃあ……展開」

空間を向日葵畑を全て覆うように広げて、包み込む……

「隔離」

一旦空間の外と中を分け、接点を無くす……

「収縮」

空間の対比はそのままに、空間そのものを小さくしていく……そして大きいサイコロ程度の大きさまで縮め、そのままポケットへ

「はい終わり」

さっきまで向日葵畑があった場所には、地面を凹ませた平地が出来上がっていた……修正は…ま、いっか

「……凄いわね」

「そりゃどうも」

「いえ、冗談ではなく……」

相変わらず扇子で口元を隠しつつも、驚愕を隠せないといった感じで軽く目を見開き、唇が引き攣っている
紫ってこんな表情するんだ……

「さて、帰るか」

「あら、もう行くんですの?」

「まあね。この後もう一ヶ所行きたい所があるから」

「私もご同行しても?」

「どうぞ」

「……随分あっさりですわね」

「特に困らないしね〜」

というかむしろゆかりんと一緒とか、ご褒美すぎるでしょ!これは金を積んでも得られないものなんだから!
……さて帰りますか

………………

この辺りでいいかな。人里から離れてるし、日光もよく当たるし、シルバニアフ◯ミリーみたいな家も作ったし
今私とゆかりんは妖怪の山からして南の方へ結構行った所に居る。ここら辺なら幽香も気に入るだろう

「さて。拡大」

収縮した空間を元の大きさまで戻し、地面に埋めつける

「座標特定。修正っと」

座標を決めて元から埋まっていたのと比べても違和感が無いようにした

「これで終わりか」

「本当にすぐですわね。この規模なら数日掛かってもおかしく無いのに」

「魔法と能力だけが私の得意分野だから」

「戦闘以外でも役立つのですね」

「そ。そういえばさ、敬語やめてくれない?慣れてないからさ、タメ口の方が良いんだ」

「あら、いいの?私も誰かに敬語なんて殆ど使った事が無かったから、変な事言ってないか気が気では無かったわ」

「へぇ、十分な敬語だったと思うよ。さて、次は……霧の湖の方か」

探知空間を最大に広げて探査したところ、知り合いじゃなく幽香と同等かそれ以上の実力者の反応は霧の湖の上に一つ、そのさらに奥に一つの合計二つ。どっちが当たりか……それ以前に二人は誰なのか……気になるね

「……だけどその前に」

「不埒な輩が居るようですわね」

ガサッガサッ!

「グルルルルル!」

妖怪狼……しつこい奴らだ。といっても今回はそれだけじゃないみたいだけど……

「ガルルルル!」
「ギャウギャウ!」
「シャアァァァ!」

……多いな。動物を主体に数百匹か……

「何かに操られていますわね……」

「みたいだね」

身体から出ている黒い靄……霧のような物が集まってきている妖怪の身体から発生していた……邪気とでもいうべきか?
まあそれはともかく数が多くて面倒臭い……倒すのは楽だけど作業ゲーは嫌いだ……

「マ、マエバラアキト…」
「コロセ、コロセ…」
「アルジノタメニ…」

こいつら……喋るぞ……
あの靄は知能でもあげてるのかね?……まあそのおかげでハッキリした。こいつらは完全に私を狙ってる……仕方ないのかなぁ?こいつらの仲間ぶっ殺しちゃったし……

「?オカシイ……」
「オンナダト?…」
「トニカクコロセ…」

「前原朗人さん、この喧嘩……私も混ぜてもらって構わないかしら?」

「気にしないよ。だけど私に巻き込まれないようにね」

「重々承知していますわ」

「じゃ!大妖怪の実力を見せてくれ!」

「大したことは出来ませんがね!」

「「「グルォォォァァァ!!」」」

様々な妖怪が咆哮と共に向かってきた。向日葵畑は空間で守ってあるから加減をする必要もなし。さらに見方にはゆかりんまでいるっていうね。ああ、相手が可哀想だ……

「赤霧、青鮫!切り殺すぞ!」

『《分かった!》』((久しぶりの登場だ……))

地を蹴り、相手方が一望できるくらいの高さまで跳ぶ
ここは剣戟の大量発生地だ!

「処刑の太刀、断頭台」

スッ、ドッ

音を少なく斬る……鋭すぎる刃は痛みを感じさせずに絶命させる……
飛ぶ剣戟、その上空から落ちてくる……こわっ!空からギロチン落ちてくるとか死ぬだろ……実際二百個落としたら百何十匹か死んでるし……
まあいいか。紫の方は……

「貴方達如きが私にたてつこうなどとはいい度胸……その度胸を評価し一撃で殺してあげるわ……さあ!美しくこの世から亡ね!」

出でるはスキマ……放つは弾幕……しかも高密度、高出力ときたもんだ。当たった奴弾け飛んでるし……ご愁傷さま

「「「ガァァァァ!!」」」

紫の敵に南無南無やってたらこっちにまた敵が来たようだ……気が済むまで遊んでやるよ!

「マスタースパーク」

ビィィィィィ!!

「拒絶の空間」

ゴォォォォォォ!!

「「「ギャァァォォォォァァ」」」

突然目の前の……というより私に向けて放たれたと思われる光線は、私に飛びかかろうとしていた妖怪を消滅させてくれていた……あれはもちろん……

「おお、幽香!グットタイミング!」

「別に貴方を助けたわけじゃないわ。というより貴方を狙ったのだけど……失敗のようね」

はぁ、とため息をつきつつも寄ってくる妖怪を傘で倒すのを忘れない幽香……さすがツンデレゆうかりん!そこにシビれるあこがれるぅ!!

「幽香のデレ……か。どうすれば出るのかねぇ」

「くだらないこと考えないで頂戴」

「ちょっ!傘振り回すな!危ないって!」

たく、これだけでこんなに暴れるなんて……っていうか紫と幽香が殆ど倒しちゃってるんだけどどうしよう……なんか私相手に来たはずなのに私が始め以外空気化してるよ……さすがにトドメは

バキッ!

「ふぅ、これで終わりね」

「幽香!な、なんてことを……最後の獲物を……」

「あら、それは残念だっわね。先ほどから空気化していたものだから気付かなかったわ」

うぐぅ、言い返せない……あれ?そういえば紫は?

「あら、楽しそうね。私も混ぜてくれないかしら?」

「わっ!びっくりした」

よく突然出て来て驚く描写があるけど、本当にビビるね、これは。まあ空中から顔が出てくりゃ誰でも驚くか

「あら?前原朗人、この胡散臭い妖怪は何かしら?先ほどからチマチマ戦っていたようだけど」

「前原朗人さん、この大雑把さが滲み出る方はどちら様?先ほどから雑な戦い方をしていたので気になって」

うぉい!いきなりなんで喧嘩始めるの!?二人の間に火花飛んでるし、互いの妖力上がってきたよ!?

「えーと、こっちの緑の髪の方が風見幽香。植物を操る妖怪。……で、こっちの金髪の方が八雲紫。境界を操る妖怪」

「あら?私能力の説明までしましたかしら?」

やべっ、そういえば話してもらってないや……

「魔法、魔法」

適当に誤魔化せばなんとかなるだろう……

「「…………」」

うぅ、お互い黙って睨み合うの辞めてくれませんかね?……居心地が悪い……

ザッ

「「「!!!」」」

「あれ?朗人様じゃないですか〜。久しぶりですね〜」

気配を感じなかった……あの紫ですら姿を隠せなかった私にあっさりと、当然のように近づいてきた……そいつは……

「……杉原…血月」

血の様に赤く長い髪、血の様に赤く輝く目、160cm程なのに幼くも大人っぽくも見える顔……だが、そんなものはどうでもいい……問題は身に纏う雰囲気だ……よく思った……こいつは妖怪なのか!?…と。負の気配が息を詰まらせる……死に誘うような、心を折ろうとするような感じがする……

「あ〜、覚えてて下さってんですか〜。この杉原血月(すぎはらちづき)、朗人組のメンバーにとってとても光栄なことです〜」

そう、こいつはまだ私が山で静香、蒼鬼、未来と一緒に住んでいた頃の知り合い……こいつとの邂逅は……正直思い出したくない……こいつは…ヤバイのだ……実際、紫やあの幽香でさえ血月の登場に一歩引いている……

「……ん〜しかし後ろの2人……美味しそうですね……」

「っ!!血月!まっ……」

「血杭の儀式(ブラッディパイル)」

ヒュンヒュン

私の横を通り過ぎ、何処からか現れた真っ赤な杭が紫と幽香に飛んでいった……

二十七、血飛沫と花吹雪の猛闘

パチン  ブンッ!

スッ   バキン!

血月が放った血杭の儀式は、一つは紫の指打ちと共に現れたスキマに呑まれ、紫の後ろに飛んでいき、もう一つは幽香の振り下ろした傘によって叩き落とされていた

「あれ〜?遠距離じゃダメ?なら、近づいてみようかな〜……」

「「っ!!」」

血月の気持ち悪さ…………紫や幽香まで怯ませるなんて……

「はい、そこまで」

一応静止をかけ……

スパッ

そのまま私は血月の胴体を真っ二つに斬り落とした……

「うわっ!」

驚いたような声で血月の上半身は地に落ちた……

「いいの?そいつ殺しちゃったみたいじゃない?」

「貴方の仲間と言って無かったかしら?」

幽香と紫の主張はもっとも……だけど……この程度でこいつが死んでくれるなら苦労なぞしていない……というか殺す気もない

「いった〜い。イジメはいけませんよ〜」

ズゥルリ!グチャッ!ズルズル!バキッ!ゴキッ!

身体が元に戻っていく……身体を作る時の音まで気持ち悪い……
殺るんじゃなかったかな……

「朗人、こいつは何なの?」

「妖怪……なのよね?」

「……うん、妖怪だよ。種族は分からないけど妖怪なのは確か……」

「いくらなんでもあの威圧的な……否、劣悪的な妖気はなんなの?」

「それに……彼女の能力も気になるわね……」

「何の話ですか〜?」

斬られた事など無かったかのような軽い調子でこちらに話しかけてくる……斬られた跡も服も既に治っていた……やりずらい……

「お前の能力について」

「な〜んだ、そんな事か……私の能力は『血を奪う程度の能力』ですよ〜」

ニヤニヤした目つきと手に溜められた血がイラついて仕方がない……どうやって追い払おうか……バトルなんてなったら不味いからな……紫はともかく幽香とは相性が悪過ぎるし……

「ねぇ、貴方はいつまで突っ立っているのかしら?」

そうこうしている間に幽香が血月に話しかけ始めた……
こんな時ばっかり人の嫌がることして……頼むから喧嘩は売らないでくれよ……

「そう言われましてもねぇ〜」

頼む売るなよ〜。そこ!フラグとか言わない!

「早くかかって来なさいよ。貴方みたいにキモイくせに肝が小さい奴が一番嫌いだわ」

……幽香、君には絶望した……
そして今のなんか聞いたことあるセリフが出たぞ……

「あはは、そんなこと言われてあっさり行くわけ無いじゃ無いですか〜。貴方みたいに単細胞馬鹿とは違うんですから〜」

ブチッ

……ヤバイ……幽香が満面の笑みになった……傘持つ手が震えてるし……何かが切れた音?私は何も聞いていない!

「ゆ、幽香……分かってるとは思うけど……」

「安心しなさい、朗人。理解しているから」

ああ、よかった。さすがに幽香も前みたいに見境無く喧嘩するなんてことは……

「つまり死なないから何度殺しても構わないってことよね?」

「全然ちげぇーー!!」

「うるさいわ。黙りなさい」

「いやいや、そうじゃなくて!血月との勝負は……」

「大丈夫よ。五十回くらい殺したら辞めてあげる」

「いや、だからそうじゃなくて!」

「わかったわよ。百回殺すのね」

「何故増やす!?」

「うるさいわね!私に指図しないで!」

ダッ!

「ちょっ!あーもー!」

少しでも幽香に期待した私がバカだった……このままじゃ幽香がやばいかも……

「まあまあ、朗人さんも落ち着いて。あの方も強そうじゃない。どうなるか少し楽しみだわ」

「紫、そうじゃなくて幽香の戦い方は血月の攻撃……といっていいのか分からないけど、被害を受けやすいんだ」

「……被害?」

「そう……」

もういいや。このまま幽香達の戦いを見守ろう……紫もそのつもりらしいし、やばくなったら止めればいいだけなんだから……

「さあ、埋まりなさい!」

そうこうしてるうちに幽香は戦闘開始しちゃってるよ……確かに殺すのだけなら問題は無いけど……

グッシャァ!

血月の身体があっさり肉塊になり血を噴き出す……その血を浴びながら浮かぶ幽香のドSっぷりが少し怖いよ……
当然また嫌な音をたてながら血月は身体を戻してしまった……

「いたいなぁ〜。とはいえ……一回私は殺されたんですから〜、貴方を私が殺してもしょうがないですよねぇ〜?」

手には血のように赤い杭とトンカチを携えている……血月が殺された時の血も残ってるから目が痛くなってくる……

トッ

「殺せるならね」

「っ!!」

ズガン!

「うわぁ!」

今度は背後に回り血月の腕を斬り落とし、そのまま首の骨を折り、殺した……

………………

何十回幽香が血月を殺しただろうか……幽香にも疲れが見え始めた……対する血月は……

「……ふぅ…」

「おやおや〜?もうお疲れですか〜?体力無いですね〜」

「あら、頭の次は目がおかしくなったのかしら?私がこの程度でバテるわけないでしょう?」

「へ〜、そうですか〜。……そろそろいいかな……」

……ヤバイ……本気でヤバイ……血月がここまでしたんだ……幽香、死なないよね?

「今度はどんな姑息な手を打とうとしているのかしら?まだ一回も私を殺せてないじゃない」

「……じゃあ反撃するよ。準備は……終わったから……」

「へぇ、その粋がり……すぐに潰してあげるわ!!」

さらに幽香が血月に攻撃するために近づこうとするも、警戒しているのかさっきのようには飛び込まないようだ……
血月のほうはじゃあいきますね〜とユラユラしてる……

「苦血写し(ペイン・プレゼント)」

ブシャァァァァァ!!

瞬間……幽香の鮮血が辺りに飛び散った……

「っ!!!!!」

「あら、凄いわね……」

突然の出来事により悲鳴こそあげなかったものの、幽香もここから見ていた紫でさえ驚いている……

苦血写し……血に傷を記憶させ、傷ごと外すことで血月の怪我を治し、それを浴びさせることにより相手に血がもつ傷の記憶を与える……

要約すると相手に自分の傷をそのまま返す技だが、全部の血を相手に付けられる訳がないので劣化するとはいえ、何度も血月を殺しまくったからそのダメージは相当な筈……
やはりそろそろ止めなきゃ……あの静香でさえあれには死にかけたんだから……

「嫌いなんだよね……自分が強いって自信を持ってる奴……強い奴とつるみ、強い奴と戦い、強い奴に勝つ……そんな奴には絶望を与えたくなるんだよね……お姉さんは強いからそんな風に地に伏したことないんじゃない?それも私みたいに弱い奴のせいで……なんてね」

血月は幽香を見ているような見ていないような表情で見下ろす……どうしよう…動けない……今動いたら幽香に絶対恨まれる……直感だが今は助けちゃいけない気がした……

「おやすみなさい、お姉さん。貴女の最期は私みたいな弱い奴の手によって幕を引くんだ……」

そのまま血月は手に持った杭を振りかぶり……そのまま幽香に向けて…振り下ろした

ガシッ!!

「!!」

だが、出血多量で意識も朦朧としていた筈の幽香が血月の杭を幽香が瀕死の状態で掴んでいた……

「はあっ、はあっ、ふざけんじゃないわよ。私は…私はまだ前原朗人に勝ってないわ!!」

バキン!

掴んだ勢いのまま幽香は血杭を握り、破壊してしまった……ギロチンでも壊れない硬さのはずなんだけど……

「なっ!?私の血杭が……」

「……貴女、言ったわよね?こんなふうに地に伏したことないんじゃない?って。ないわけないでしょう、数百年前に前原朗人に圧倒的な力の差を見せつけられ、地に伏しながら私がどれだけ悔しかったか……貴女にはわからないでしょ?……私はあの日以降自分が強いと思ったことなど一度もないわ。どれだけ他者を踏みにじろうとも私は朗人に勝っていないのだから……だから、貴女ごときの基準で物を測るな!反吐がでるわ!」

バキッ!

「うっ!」

幽香が傘を振るいまたお互いに距離ができた……それより私って幽香にそこまで恨まれてたの?結構ショックなんだけど……いや、確かに普通に泥つけちゃったけど……

「あっはっは、くだらない。そんなのどうでもいいよ。私には関係ないからね」

「……ええそうね。私のことより今は貴女を殺すことが目的だものね」

まだやるのかよ〜。いい加減この場所から離れたいんだけどな……
つかそれより……

「幽香その出血量はやばいって。
いくらなんでも死ぬよ」

「心配ないわ。もう止血と消毒はしてあるもの」

「あれ?何時の間に?」

「植物は毒草だけでなく薬草もあるのよ」

「あーなるほど」

とはいえ血までは戻せないはずだし、血月のほうもさっき幽香にやられた傷が戻ってない所をみると血切れかな?
ということはあと一、二撃で勝負がつくか……

「あはは、私がここまでされたのは数千年ぶりですよ。連戦とはいえ流石ですねぇ……」

「連戦?」

その言葉に幽香は眉を細める……当然だろう、ここまでして相手が連戦……つまりさっきまで戦っていたというのだから……
実際私も前会った時はもっと血の量が多かった気がしたし……
あの時は魔法の新技試すのに調子に乗ってやりまくったからな……

「ええ……さっき湖の近くで……
真っ黒い服着て羽生やしてカッコいいって感じでしたね……ちょっと喧嘩売っただけなのにぶっ殺されましたね……返り血も浴びてくれなくて……はぁ…」

「いや、それ全部お前が悪いからな。何回くらい殺られたんだ?」

「852回」

「………多いな……」

「それも全部近接攻撃……それなのに全然攻撃当たらないし……」

「悲惨だな……」

……というよりその男は何者だ?
血月は特別強いわけじゃない……ただ弱いわけでもない。
あの状態になれば死なずに幽香とも戦えた筈だから、一方的にやられたって状況が考えにくい……
うーんわからん……

「……つまり今の貴女は本気じゃないってことかしら?」

私と紫が考えていると幽香が血月に切り出していた
確かに幽香にとっては大切なんだろう……私を倒すために……
幽香とは有効的な関係を築きたいんだけどねぇ……

「うん、まあそうだね。私が来たのは本来血の匂いが沢山するところに来ただけでぐうぜんだから」

「さっきと違う口調は?」

「攻撃モードと通常モード」

「……はぁ。興が削がれたわ。今回はここまでにしましょ」

「「!!」」

幽香が勝負を途中で辞めるなんて……
その事実に私と紫はかなり驚いていた。
USCとも呼ばれている幽香が……
……っていうか、驚いてるゆかりんかわええ……

「いいの〜?またそのうち襲うかもよ〜?」

「そしたらその時にまた殺してあげるわ。……私は帰るから後はご自由に」

「あ、そうだ。幽香!幽香のために向日葵畑の中に小さい家作っといたよ!」

「……家?」

「そうそう」

危ない、危ない。忘れるところだった。あのシルバニ◯ファミリー
の家を幽香に気に入ってもらわないと

「じゃ、行こう。血月、あっちの里は襲っちゃだめだよ。襲ったら拘束して首と手首切った後お湯に浸けっぱなしにするからね」

「……バトル終わった瞬間私の扱いが乱暴過ぎませんか〜?」

「そんなことないよ。じゃ、またね」

「はいでは〜。……あ、最後に一ついいですか?」

「……なに?」

「ミーも生きてるらしいですよ」

「……そうか」

ミーか、そういや血月とはなぜか
仲が良かったっけ?なんか思ってた以上に大戦の生き残りいるな……まあミーナの能力なら生き残るのは簡単なのか……

「お、着いた」

気づくともう幽香の家(私作)に着いていた。さりげなく血月も着いて来てるけど……

「へぇ〜、可愛いお家ですねぇ〜」

「魔法って便利ねぇ」

「ま、まあ悪くないわね」

血月、紫、幽香の三人から悪くない評価を貰えた。まあこれはかなりの自信作だったからね!
……なんか幽香の挙動がおかしいな……私の知識をフル動員すると……もしかして……

「もしかして幽香って少女趣味?」

ブンッ   バキッ!

「痛い!」

二十八、紳士な鬼と僅かな指針

幽香と血月と別れた後、私と紫は
霧の湖に来ていた。血月が戦って負けたという相手がこの湖のさらに向こう側にいるらしい……
というわけで来てみた。
852回も血月を殺した奴だし残虐な奴だと思っていたんだが……

「初めまして、私は
クロウ・スカーレットと申します。クロウとお呼びください」

なんか紳士だった。
身長は180cmはあり、凛々しい顔で……まあイケメンだった。
蝙蝠の羽、尖った八重歯、黒いマント、鋭い爪、明らかな吸血鬼……しかも実力も相当あると思われるくらいの妖力の多さだ。
吸血鬼は相手を見下す傾向があるが目の前の吸血鬼……クロウはそれを感じさせない上品さがあった

「初めまして、私はこの幻想郷の要の博麗神社の祭神の前原朗人です。以後よろしくお願いします」

「私は八雲紫です。どうぞよろしく」

一応互いの紹介はしたが……さてどうやって話すべきか……

「博麗神社と言いますとあの奈々ちゃんが居た……」

あちらから話題を振ってくれたか、ありがたい。今回の目的の一つだったしね

「はい、奈々とは同じ神社の祭神です。お世話になったそうで」

「おお、それはそれは。奈々ちゃんにはお世話になりました。異郷の地でどこに行けばと悩んでいましたところ助けられまして」

「しかしこんな辺境の地になにか御用で?」

「ええ……少し、探している子がいるんですよ……」

「探している子?」

「ええ……
フランドール・スカーレットを」

「「!!」」

「フランドール……」

「あの破壊の化身と言われている……」

スカーレットから予想はしてたけど……というかフランって地下に幽閉されてたんじゃ……

「ええ、お察しの通り『あの』フランドールです。あの子は……私の娘なんですが……屋敷を抜け出してしまい探してるんです。もし見つけたら……いえ、なんでもありません。では、私はこれで」

バサッバサッ

そう言うとクロウ・スカーレットは飛びたってしまった。
フラン……か、少し調べてみようかな……

「あ、そうだ。紫」

「なに?」

「紫ってフランドールの居場所とか知らない?」

「あら、まさかあの子にあって見たいとか言うのかしら?」

「知ってるのか」

「……まあ、ね。と言っても居場所だけよ。話したことも会ったこともないわ」

居場所を知ってるなら十分だ。
色々気になるけどフランと会ってみたいし、行ってみようかな?

「よし!じゃあ……」

「貴方、巫女ちゃんの稽古はほっといていいのかしら?」

「あ」

忘れてた……確かにもう夕方だし会いに行くのは明日の方が都合がいいか……

「なあ紫、お願いがあるんだけどいいかな?」

「なにかしら?」

「明日、頃合いを見計らって私をフランドールの所に連れて行ってくれ」

「……分かったわ」

紫は少し考えた素振りを見せながらも、了承してくれた。
しかし紫とは初対面の設定なのに
今日だけで沢山迷惑掛けちゃてるな……

……………………

「ただいま〜」

紫が「あの子の様子を見てくる」
といってスキマに入って行ったので1人で帰る事になった

「あ、お帰りなさい朗人様。
早速ですがご指導願えますでしょうか?」

帰って早々雪に見つかった。まあ実際探す手間が省けたからいいのだけど……

「えーと、剣で相手すればいいのかな?」

「はい!できればそれでお願いします!」

「おー、元気いいね。じゃあやろうか」

「ちょ、ちょっと待ってください!洗濯物をまだ取り込んでなくて……」

「分かった。待ってるよ」

「ありがとうございます!」

……あの腰の刀……四六時中つけてるけど邪魔じゃないのかな?
……腹減った

………………………

「よ、よろしくお願いします!」

「うん、肩の力を抜こうか」

実力が分からなくて怖いのか、神様に刀向けるのが後ろめたいのか雪はガチガチだった。
初めてあった時は勇ましかったのに……

「今回はなんの力もない刀でやっていくから、怖がらなくていい」

「い、いえ!これは……武者震いです!」

なら足を数歩下げたり出したりするなよ……まあ、まずは実力の
確認って所か……

「ほら、かかっておいで」

「で、では!」

トンッと、軽い音で勢いよく此方に雪が突っ込んでくる。まずは、

「最初は全部受け止めてみよう」

ガキン、ガシャン、キン!

激しい刃競り合いを繰り広げ、神は余裕の表情、巫女は悔しそうに刀を振り回していた
途中から巫女が掌打も混ぜはじめたが、それもあっさり止められてしまっていた

「はぁ…はぁ…当たらない…」

「直線的すぎるね。雪はスピードで相手を倒すタイプみたいだけどそれだけじゃだめだよ。フェイントや弾幕も使わないと。掌打を加えたのは良かったけどね」

「は、はい!もう一回お願いします!」

「おいで、時間の許す限りね」

「はい!」

二十八.五、????

グチャッ!グチャッ!

壊れた街……そこの道の真ん中を1人の少女が歩いている……
周りは壊れた家屋、死んだ人々
その道の真ん中を少女は泣きながら歩いている……

「……マ………サマ……」

憎い……世界が憎い……
世界の全てを壊したい……
破壊の限りを尽くし、
壊し尽くしたい……

「……エサマ……ネエサマ……」

私を閉じ込めた……私をいらない子にした……
あいつらが……あいつらが……

「オネエサマ……ナンデ?」

二十九、悪魔の妹フランドール

「ふむ、ここの所で力の向きを変えるといい感じになりそうだ」

昨日色々あって疲れていたので、気分転換に八卦炉の改造でもと思って始めたが……いや〜進むね。
最近やってなかったから腕が落ちてると思ったけど、大した事なかったか

「あとは外側を補強すれば……
   完成だ!」

新八卦炉の完成!
なるべく出力を上げられるように作ってみたが、魔理沙が使っていた八卦炉と同じ形になるとは……
考えて作られてたんだね〜

「さて、紫が来るまで暇だし次は新しい薬の開発でも……」

「楽しげな所悪いわね」

「あ、紫か」

「ええ、お邪魔するわ」

「どうぞ〜」

紫も来たし一区切りついたから
フランの所に行かないと

「で?紫、フランドールの居場所分かった?」

「ええ。だけどあの子、かなり
不安定よ。気をつけたほうがいいわ」

不安定……たしか街を破壊しまくってるんだけっけ?軽く調べた限りかなりやばいらしい……

「分かった。じゃあ行こうか」

「少し離れた所に出るわよ」

「ん、分かった」

フランとの初対面……東方で一番好きなキャラだったから、紫が出してくれたスキマを通る時も私は
ドキドキが止まらなかった……

……………………

「コワレロ……コワレチャエ…」

グシャ!バキバキ!グチャ!

フランドール・スカーレット……
少女は破壊された街で歩き回っていた……家を薙ぎ倒し、人を破裂させ、地面すらも平ではなくなっていた……

「……紫……あの子だよね?」

「ええ、そうよ」

現在私達は私の空間結界で気配等もろもろを完全に消しているので気づかれることはないだろうが、
そこから見える景色はとてつもなく異常だった……

フランを洞穴で見つけたのが昼前だったのでそのまま観察していたのだが、夜になりフランが起き出して外を出歩いていたまでは普通だった……
だが遠くに街が見えた時……

「あ……まち……」

ゆっくり、静かだが『まち』と言って歩き出すのを確認した……
だが街に入った瞬間、

「ミンナ、コワレチャエ」

右手に小さな玉の様な物を出現させ、握り潰した……
たったそれだけで街は地割れを起こし、フラン自身は暴れ始めた

そして一通り暴れた後、空間把握で見ても誰も居なくなった街でフランは歩き回っている……
紫に聞くといつも街を壊したら、最後に街を泣きながら歩いているらしい……

「泣きながら……ねぇ……」

泣きながら……当然意味はあるはずだと、私は思案を開始した……
好きなキャラが泣いているのは、嫌な気分がするもんで真剣に悩んでいた……のだが……

「よくわからないな……ちょっと休憩っと」

「まだ10分も経ってないわよ?」

「『メモリーメロディ』使って音楽聞くだけだって」

「メモリーメロディ?」

「そ。記憶の中から昔聞いた音楽を脳内で流す魔法。音漏れしないから近所迷惑の心配もない。昔も魔法の研究が詰まるとよく聞いてたんだ。お気に入り魔法だよ」

「へぇ、便利ねぇ」

やっぱ今かけるなら『U.N.オーエンは彼女なのか?』だよね♪
……さて、私は知と技の魔法使いだから考えるのは苦手じゃない。
だけど……

「チマチマ考えるより突撃が一番私に合ってるよね!」

「……貴方、たまに魔法使いかと疑うほど考えなしの時があるわよね……」

まあ流石に何も考えていないわけじゃないけど、やっぱ子供とは
話してぶつかり合うのが一番!

「紫、ここから狂気と正気の境界を操ってできる限り正気にしておいてくれない?」

「いいけど……どうするつもりなの?」

「じゃ!頼んだ!」

「……分かったわよ」

狂気と破壊の化身、フランドール
私はそう簡単には壊させてやらないぞ〜!

…………………

「やあ、こんばんはお嬢さん」

「……誰?」

訝しげな表情でこちらに顔を向けたフランに笑って応対する

「噂好きな妖怪だよ」

「ああ……」

悟った様な表情で顔を背けられた
私みたいのは少なくないようだ

「そういう馬鹿なことをするのは人間だけだと思ってたけど、妖怪でもそんなことするんだね」

ククッと小さく笑う姿は周りの街からは連想できないような可愛さがあった。
とは言ってもここまでの状態で話が出来るのは紫のおかげだから、後でお礼を言っておこう…

「さて、じゃあやろうか。珍しくこんなに長く話しちゃったよ」

「やる?やるって何を?」

「決まってるじゃん。殺し合い」

「殺し合いねぇ……そんなことしにきたわけじゃないんだけど」

「私の前に立ったのに今さらそれはなしだよ。こんな憎い世界、私が隅から隅まで壊し尽くしてやるんだから!」

興奮を抑えきれなくなったのか、最後は叫ぶように言い放ち、
片手には赤い炎を掴んでいるように見える魔剣レーヴァテインを
携えた

「あはっ♪簡単に壊れないでね!」

吸血鬼……
その名に相応しいスピード、妖力を伴い突っ込んできた

ガキィィィィン!

「私をそこいらの有象無象と同じにしない方がいいよ。上には上が居るってね」

互いの剣をぶつけ合い、人が消えた街の中で一際派手な戦闘が
始まった

三十、僅かな慰め

「ところでなんでフランは街や村を壊して回ってるんだ?」

今現在、私は狂気と破壊の化身、フランドールと廃墟となった街の上で戦っている。
お互い剣で戦っているが、戦況は五分五分といったところか……
黙って斬り合いもなんなので話しかけてみることにしたのだ

「なんだいきなり……そんなの、憎いからに決まってるじゃん」

「それは人間が?」

「それだけじゃない……人間が!妖怪が!妖精が!神が!動物が!虫が!自然が!何もかもが憎い!
私は!私は……!」

いきなり我を失ったように叫び出してしまった……
目を血走らせ、顔を千切れそうなほど引っ掻いている

「……質問を変えるよ。フランは何があったせいでそんな風に思うようになったの?」

いつも通りど真ん中直球勝負で挑んだ。どこかから「それはやりすぎじゃ……」とか聞こえたが気にしないでおこう

「……ぷっ、あっはは!いくらなんでもやりすぎだよ!流石に教えるわけないじゃん!」

「む、笑うとは失敬な。興味でたからきいたのに……」

……それでも、まだ笑っている
フランを見ているとやはり子供だと思った。こんな異郷の地で必死に生きていても幼さは除けていなかった……
そして、それこそが彼女の本当の姿に見えた……今の…街を壊している彼女は無理をしているように見えて仕方がなかった

「……ふぅ。うーん、なんかさっきから脱線ばっかりしている気がするよ」

「気のせいだよ。ほら、こうしている間もフランも私も剣をふってるじゃない」

「いや…そうだけどなんか本気じゃないっていうか……」

「不服ならフランが本気を出して私が喋っている暇が無いくらい攻めればいいじゃないか」

「……本気……か」

本気、という単語が出ると途端にフランの目が冷めていった
遠い目で昔を振り返るような……

「余所見しちゃダメだよ?」

一瞬フランの表情を眺めていた隙を突かれたのだろう、フランが私の後ろに回り込み逆さのまま剣を振りかぶっていた

「後ろに行っただけで余所見だと指摘されるのは心外だな」

すぐさま剣を後ろに回しフランの斬撃を受け止め……

「くっ!!」

ガキィン!

フランの剣はフランの斬撃を受け止めた筈の剣ごと私を吹き飛ばした

「おっとっと……おいおい、さっきまでとは力が違わないか?速さもさっきの倍近くあったように見えたぞ。……甘い!」

その後も攻撃してきたが一度見てしまえば大した事ない。静香やら悠やらの方が断然速いし強い

「まだまだ私は行けるぞ!さあ、どんどん来い!」

戦闘になると変なテンションになるけどまあ気にしないでおこう
フランは……今何歳だ?霊夢が生まれてないから495以下なのは分かるけど……とにかく今これだけ力が有るんだ。将来はどうなるか楽しみになるな
……ああ、本当に私って雑念多いな……

「……本当にまだ余裕そうだね」

「私は生まれてこの方嘘をついたことないからな!(というのが嘘だがな)」

「あはは、貴方なら私の本気も倒しちゃいそうだね」

「さあね。やってみないと分からないよ?」

あくまで余裕の表情で。多分だけどフランの本気に勝った時にフランの悩みが聞ける(はず)

「ねぇ貴方……貴方って自分の悩みを全て話せるような相手って居る?」

…と思いきやこの流れは……

「親友みたいなものか……
うんいるよ」

静香は話すというより何故か悩みを言い当てて言わせるが正しいけど、静香なら悩みを話せるっていう面ではあっている

「そう……じゃあ両親は?」

「居たよ。ちょっと私にも分からない理由で今は居ないけど」

「へぇ、そう」

あれ?まずったかな?なんか興味無さげな表情になったけど……

「さっき私の悩みは何かって聞いたよね?」

「ああ、聞いたね。教えてくれるの?」

「……ねぇ、貴方はその人達に裏切られたこと……ううん、拒絶されたことある?」

質問返しか……でも、これがフランの悩みであることには間違いなさそうだ……

「裏切りは親友の方が度々してきたけど、拒絶はないね……」

「……私の悩みはその人達みんなに拒絶された……ただ、それだけだよ……」

「……………」

……流石に今話しかけることは私には出来なかった……親友に拒絶され、両親にすら拒絶される……
それも妖怪とはいえまだ子供がだ

「……甘えるなよ、ガキが……」

「なっ!?」

「なんだかんだで結局逃げてるだけか。いや、逃げるだけじゃなく八つ当たりもか。ふざけんな!!
世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ口をつぐんで孤独に暮せ。
それさえ出来ない奴が悩み抱えて人殺し?甘えるのもいい加減にしやがれ!お前は立ち向かったか?拒絶された相手にもう一度理解してもらおうとしたか?逃げたら逃げたで幸せを掴もうとしたか?
過去を忘れろとは言わない。だがそれをいつまでも引きずるな!
お前は……お前の家族は死んでないだろ!何度も何度もやり直せるんだ!それをただ怖いってだけで投げ出すなよ!」

「……………」

「……ハァハァ……あ」

やばいやばいやばいやばいやばい
やっちゃったよ、どうしよう!
学校のイジメや未来や蒼鬼のこととか思い出してたらつい口が……
流石に無神経過ぎた気がしまくってるよ!フラン俯いて震えてるし

「………たら……」

「え?」

「だったらどうしろっていうんだよ!!」

「グハッ!」

速い!そして重い……剣を出さずにそのまま殴ってくるから止めるのが少しきついかも知れないな…

「私がどうなりそうだったか知らないくせに!私がどれだけ悲しかったか知らないくせに!私がどれだけ苦しかったか知らないくせに!!」

「くっ、あぶな……」

「私もお姉様もお母様もお父様も静かに皆で暮らせていれば良かったのに!あの人間のせいで!!」

くっそ!さっきから拳が速すぎる。魔法のための時間が取りづらい……でも、ここで逃げたら相手のことを言えないからな!受けてたつぞ!……だから溜めたもんを全部吐き出しちまえよ、フラン…

「私はいらない子なのか!?私はこの世界で何もしちゃいけないしされちゃいけないのか!?
(この世界の全てが憎い……)」

「!?なんだ?今の…」

「私が望むことはそんなに悪い事か!?別に財宝なんか興味ない!不老不死とかみたいなものだっていらないよ!!
(それなのに……なんでだろう)」

「……また……これは……」

「私は!!お父様に褒められて、お姉様と一緒に遊んで、お母様の子守歌を聞きながら眠る……
たったこれだけで良かったのに!それ以外何もいらないのに!!
(1人で生きてきて……この100年間もの間……)」

「……………」

「これだけのことも世界は許してくれないのか!?だったら私は何のためにここにいる!?なんで私を世界は作った!?私なんていらないじゃないか!生きる価値も…何もないじゃないか……
(……どうして家族を憎めないんだろう?)」

私を殴る手は既に止まっていた。
フランは思っていた事を全部吐き出せただろうか?

「フラン……泣くのを我慢する必要はないよ」

気づけば私はフランを抱きしめていた。咄嗟の動作にフラン(私も)
驚いたようだが、すぐに胸に顔を埋めて泣き出した

「…グスッ……ヒック……」

「よしよし……フラン、お母様ではないけど私が歌を歌ってあげようじゃないか」

「…グスッ……え?」

「10人のインディアンの男の子が食事に出かけた♪
一人が咽喉を詰まらせて 9人が残った????

9人のインディアンの男の子が夜更かしをした♫
一人が朝寝坊をして 8人が残った♬

8人のインディアンの男の子がデヴォンに旅した♩
一人がそこにとどまり 7人が残った♪」

「これ……お母様の歌?」


「7人のインディアンの男の子が薪を割った♫
一人が真っ二つになって6人が残った♬

6人のインディアンの男の子が蜂の巣で遊んだ♩
一人が蜂に刺されて5人が残った♪

5人のインディアンの男の子が訴訟を起こした♫
一人が裁判所にいって4人が残った♬」

「お母様……お父様……それに」

「4人のインディアンの男の子が海に出かけた♩
一人がニシンに飲まれ3人が残った♪

3人のインディアンの男の子が動物園にいった♫
一人が熊に抱きつかれ2人が残った♬

2人のインディアンの男の子が日光浴をした♩
一人が熱で焦げて一人が残った♪」

「……お姉様……」

「一人のインディアンの男の子が一人ぽっちになった♫
そして自分で首をくくって誰もいなくなった♬」

「……………あは♪」

歌を歌い終わった後、フランは見た事もないような笑みを残し眠りについた

三十一、過去の自分の積み重ね

フランを寝かせてから私達はフランを見つけた洞窟に戻っていた

「うまく丸く収めたみたいね」

「そうだね。結構疲れたよ」

「そうは見えないわね。殴られてる時も痛みより他の事に気を取られてたって表情だったわよ」

「その原因のくせによく言うよ。
あの時のフランの心の声は紫が聞かせたんでしょ?」

「さあ、どうかしら?」

「まあいいけど」

……実際、あの時フランの声が聞こえてこなかったら、私はどんな風に行動しただろうか……
あの時はフランが家族の事を忘れられず、尚且つ恨んでいなかったから家族を思い出させれば収まると思ってやったが……もしフランが家族を恨んでいたら逆上して、私かフランが死ぬ未来が………
やめとこ。考えても鬱になるだけだ。それよりこれからを考えないとな

「ところで朗人、なんでこの子の母親の歌が分かったの?」

「ん?ああ、それね。さっき教えた『メモリーメロディ』でフランの記憶から母親の歌を頭で流してそれを歌ったんだ。相乗効果を
つけた眠りの魔法と一緒にね」

「……なるほど。どうりで歌が終わった瞬間眠ってしまったのね」

紫は寝ているフランの顔を撫でながら、そう呟いた。紫も小さい子が好きなのか……なんか見てて
微笑ましい……

「ま、それに伴い疲労回復、精神の安定、ポジティブな思考な夢を見れる魔法も付与しといたから、フランは暫く寝てるよ」

「そう……この子は何年苦しんでいたのかしらね……」

「……そういうのは私達が考えるような事じゃないよ。ありきたりだけど、今までの不幸を笑い飛ばせるくらい幸福になればいいんだからさ」

「……そうね」

「それじゃあ、寝たままで悪いがフランを招待しようか!
全てを受け入れる幻想の郷、
幻想郷へ!!」

「そのままね……」

……………………

……ずっと夢を見ているみたいだ
お父様とお母様とお姉様……
笑ってる三人……でも、私の方を見ているみたい……
私もあそこに加わりたい……
でも、あそこに私の居場所は……

……ないんだ

……………………

知らない天井……

「起きたか」

目の前に……名前知らないや。
私を止めてくれた女の人が無表情で出てきた。どうやら眠っちゃったみたい。あ、布団も敷いてある……迷惑かけちゃったな……

「ここは……どこ?」

「幻想郷」

「……………」

「……………」

「続きは?」

「博麗神社」

「……………」

「……………」

「続きは?」

「客間」

「……………」

「……………」

「……遊んでる?」

「ばれたか。まあ目が覚めたみたいでなによりだ。気分はどう?」

さっきまでの無表情は何処かに忘れたと言わんばかりに笑顔になった。さすがにあれを通すのは無理だと思ったのかな?

「特にない…かな。むしろ前より良くなってる気がするよ」

昨日までの憂鬱な気分が全部とは言えないけど吹っ飛んでいる。
疲れも取れてるような感覚がする……気がする

「そうか、よかった。魔法はしっかり効いているみたいだね」

「ところで貴方、なんで私を助けてくれたの?あと貴方名前は?」

もうこの際だ。全部聞いてから
これからのことを考えよう

「私は前原朗人。幻想郷の主、
と自負しているしがない妖怪兼
神兼魔法使いだよ。よろしくね」

「ええと…よ、よろしく」

「で、助けた理由はなんとなく」

「……………」

「……………」

「…………は?」

なんとなく?あんな風に壊れてた私を助けた理由がナントナク?

「私は泣いてる子供や兄弟喧嘩、姉妹喧嘩が大っ嫌いなんだ。
子供は笑うべきだし、兄弟姉妹は仲良くすべきだ。だから助けた。
それに……助けたいっていうのは感情の問題だよ。打算的な行動は私には合ってないからね」

「………で、でも!わざわざ…」

私なんかを助ける理由なんて……
私が何人の人間を殺したと思ってるの?私が幾つの幸福を不幸に
したと思ってるの?
私なんか……私なんか……

パチン!

「あいた!」

「さっき言わなかった?子供は
笑うべきだって言っただろう。
だったら少しは笑ってくれ。そうしてくれないと私が助けた意味がなくなっちゃうじゃん」

目の前にはデコピン(鼻にされた)の構えをした朗人(でいいよね?)が、不満そうな顔をしていた。
……本当にこの人には助けてからなんて無かったんだろうな……
表情で分かるなんて……クスッ

「そうそう、その顔。可愛いんだからそういう顔してなよ」

「……うんっ♪」

「……いい笑顔だ」

そう言って朗人も優しく微笑んでくれた。その笑顔はとても安心できて、不安まで吹き飛ばすようだった

「あら、お邪魔だったかしら?」

「わっ!びっくりしたぁ〜」

「紫、フランを驚かすな!フランが可愛いだろ!」

「……そのセリフは感謝と受け取っていいのかしら?」

……びっくりした。いきなり空中から人……いや妖怪が現れるなんて……朗人の知り合いなのかな?

「んじゃあ、紫。やっちゃって」

「ええ。……反転」

「え?なにを……」

グルン!と視界が回転……
何が起きたか分からないまま私は地面に叩きつけられていた

ビタン!

「いったぁ〜い」

「大丈夫かフラン」

「何が起きたの?……ってあれ?ここどこ?」

辺りを見回してみるとさっきまで室内に居たはずなのに外に居た。
少し古そうな神社に赤い鳥居も
ある

「えーと、さっき言った…えーとはくれい神社?でもなんで急に外に……」

「フラン、色々すっ飛ばすけど先に言わせてくれ……ごめん」

「え?何が?」

「………『フラッシュバック』」

……………………

キィィィィィィィン

「え?あ、ゔ、ガァァァァ!」

何?頭に何かが流れ込んでくる!
頭が、頭が割れる!これ、映像?
見たことがある……
これ、昔の…

『フラン、あっちの方に綺麗な花が咲いてたの。見に行きましょ』

『お姉様、あんまり急ぐと転んじゃうよ?』

やっぱり。私が……私が私を壊した日の……記憶……

『吸血鬼。お前らさえ殺せれば俺は一生遊んで暮らせるんだ』

『フ、フラン……』

『お姉様、下がって!』

そうだ、あの日二人で遊んでいた日。いつも通りの日常だった日だったのに。あの人間が……あの
人間が銃を向けてきたんだ……

『フラン!大丈夫!?』

『……………』

そして気がついたら私の服は血にまみれ、さっきまで生きていた
人間はグチャグチャになって地を転がっていたんだ……
その瞬間、私に『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』が身についたんだ。
対象の急所、『目』を手の中に
引き寄せ、握り潰すことで対象を破壊する能力……

『フラン!無事ね!よかった!
貴方が無事で本当によかった!』

『……私もだよ、お姉様。
お姉様が無事で本当によかった』

この時は自分の能力がいきなり目覚めたことや、使い方が何故か分かることなんてどうでもよかった
ただ、お姉様が無事で本当によかったってことだけを思ってたんだ
……それが、その日から少ししておかしくなっていったんだ

『キャァァァァァ!』

『どうした!?』

『フ、フランドール様が……』

私の部屋の中に血塗れの私と肉塊になったなにか……
確かこの時は私の勉強を見ると言ってやってきた妖怪を殺した時だったっけ?
優しかったけどしつこくて、少しイラついただけだったのに、
……私は殺してしまった

『これは何事だ!』

『お、親方様……』

『……お父様?』

『………お前達、至急フランに
新しい部屋を用意しろ。そして、今日のことは誰にも言うな』

『し、しかし……』

『誰にも言うな』

『……はい』

『フラン……今日はもう寝てしまいなさい。…明日になれば落ち着くかもしれん……』

『………はい、お父様』

……この時のお父様は何故こんなことをしたとか、事の顛末を聞かずそのままにしてくれた
……でも、お父様の顔は酷く歪んでいた……
………私のせいだ

ズキッ

『フラン、精神が不安定になるのは、子供ならよくあることよ。
だからあまり気にしないでね』

『………お母様……でも……』

『もしフランが大変な事になったら、私もあの人も絶対に、命をかけてでも守るから』

『………はい、お母様』

お母様はあんな事があったのに、いつものように一緒の布団で寝てくれて、子守唄も歌ってくれた。
でも、布団の中で優しく微笑んでくれたお母様の笑顔は、やっぱりいつものものではなかった……
………私のせいだ

ズキン

『フラン外に遊びに行くわよ!』

『……お姉様?……まだ昼の3時だよ?まだ起きるには早いんじゃないの?』

『うっ……そ、そんなの関係ないわ!フランが落ち込んでるって聞いていてもたっても居られなくなったのよ!』

『え?そんなの誰から……』

『いいから!こういう時は遊ぶのが1番よ!お父様に頼んで今日は勉強ないから沢山遊びましょ!』

『……はい、お姉様!』

お姉様はいつもこうだった。私の為に一生懸命で、私が元気がないと遊びに連れ出してくれて、私が風邪をひいたら付きっ切りで看病してくれて、結局お姉様に移って私がお姉様を看病して……
……そんなお姉様が大好きで、
頼り過ぎな私が大嫌いだ。
お姉様は笑ってくれている……
でも、きっと無理してる……
………私のせいだ

ズキン ズキン

……でも、3人がいくら頑張っても私の無意識の破壊は止められなかった。
……そして、お父様に言われた

『フランしばらく地下で落ち着きなさい。1人で居れば落ち着くだろう』

『……え?』

この時の私はお父様が何を言っているか分からなかった。地下で
どうすればいいのかも。
……とても単純で、そして
とても辛かった

「うっ、うぅぅ……」

『お父様!お母様!お姉様!
出して!出してよ!』

『フラン、お前の力は危険だ。
本当にどんな物も破壊してしまうのだ。それになによりお前が…」

『なんで!?お父様!なんで…』

『すまんフラン……』

『ごめんなさい、フラン……』

『……………ごめんね、フラン』

『お…姉様……まで……』

嫌だ……嫌だ!!こんなの……
思い出したくない!!3人に見捨てられた夜のことなんて!!

『あ…あぁぁぁ、ァァァ……』

『お父様も、お母様も、お姉様も私を捨てたんだ。いらなくなったんだ。
………ならもう私は』

「……アァァァァァァァ!」

『……ここには…イラレナイ』

「ァァァアアアア!!!
ヤメロ!ミセルナ!コンナモノ!
コンナモノヲワタシニ……
ミセルナアァァァァァ!!!」

………………………

「ァァァアアアア!!!
ヤメロ!ミセルナ!コンナモノ!
コンナモノヲワタシニ……
ミセルナアァァァァァ!!!」

「来たか。さーて、覚悟を決めないとな。痛覚を下げとかないと、向こう側でショック死かな?」

自我を失った暴れん坊な子吸血鬼
ギロリとこちらを睨んでいるその姿は今にも泣きそうだ。

「さあ、フラン。我慢は毒だぞ?今の記憶を見せてるのは私だ。
私が生きてる限りまだまだ続くぞ?」

「コロス……コロス……」

少し前かがみになったままフラン
は右手をこちらに向けて来た。
その突き出した手にはピンポン球より少し小さいくらいの玉が
出来上がった

「キュットシテ……ドカ〜ン」

グシャ!

肉が飛び散り血が吹き出した。
人や妖怪が死ぬ光景、今まで何度も見た光景……でもあの朗人は
もっと頑丈……私の力を受け止められる!

「キャハハハハハハ!!!!
アレ?アキト?ナンデシンダフリナンカシテルノ?アレクライジャシナナイヨネ?」

周囲を見回して見る。きっとうまく隠れてるんだろう。
そして、目の前を見る。きっと
精巧な死体なんだ。

「ネエアキト……ドコ?」

今までの朗人ならここらへんで
『いやー凄いね。びっくりした』
とか言って出て来てくれる筈……

「……………アキ……と?」

朗人が本当に死んだ?でも……
朗人なら私の本気も……

『さあね。やってみないと分からないよ?』

「あ、あはは。死ぬ……わけないよ……ね」

……初めはあの人間を殺した
……その次は勉強を教えてくれた妖怪を殺した
……さらに陰口をしていた妖怪、
屋敷から逃げたした時に追いかけて来たお父様の配下達、
道中で会った強い妖怪達、
みんな、私がきゅっとしてどかん
しただけで例外なくみんな死んでいった。
……だったら、朗人も……

「また、殺しちゃったの?私は、また……」

もう……さすがに耐えきれないよ

私は自らの手を……鋭く尖った爪の生えた手を首元に近づけた


グシャリ

東方魔妖録

東方魔妖録

とある大学の帰り道、主人公前原朗人(まえばらあきと)は普通の日常を送っていた。いつもと変わらない日常に入り込む非日常。ヒロイン?の中山静香(なかやましずか)と共に幻想郷を生き抜く。

  • 小説
  • 長編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-09-07

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND
  1. 一、 訪れる非日常
  2. 二、 人間な妖怪
  3. 三、 山の主との激闘
  4. 四、 右手の争い
  5. 五、 魔法使いの実力
  6. 六、魔法を通じて
  7. 七、子供永琳登場
  8. 八、 別れの時も笑顔のままで
  9. 九、前夜の集いは覚悟の時
  10. 十の一、居場所
  11. 十の二、知らなかった世界
  12. 十の三、信じられなかった過去
  13. 十の四、思い込みを辞めた時
  14. 十一、決着と始まり
  15. 十二、腹ペコ神様!?
  16. 十三、新天地開放
  17. 十四、新しい?物語
  18. 十五、無茶と修行と海の神
  19. 十六、変わりゆく日々
  20. 十七、自分勝手な剣と主
  21. 十八、夏に彩る花の妖怪
  22. 十九、攫う鬼と攫われる不死人
  23. 二十、死の頂点と土地の頂点
  24. 二十一、諏訪大戦!神奈子進行
  25. 二十二、人から人外へなった者達
  26. 二十三、繋がれるはぐれ者達
  27. 二十四、古く懐かしい再開
  28. 二十五、博麗の神と巫女
  29. 二十六、隙間と血との邂逅はいかが?
  30. 二十七、血飛沫と花吹雪の猛闘
  31. 二十八、紳士な鬼と僅かな指針
  32. 二十八.五、????
  33. 二十九、悪魔の妹フランドール
  34. 三十、僅かな慰め
  35. 三十一、過去の自分の積み重ね